「待てやカグヤァァァァァァァァァァ!!」
モコウ、空を駆ける。
「カグヤだと!? マスター、こいつ......!」
突如現れた、銃で撃たれても死なない謎のモンペ少女。
その口から、聖杯戦争関係者の名前が出た。
間違いなく聖杯絡みの関係者のはず、しかしここまで姿も形も見せなかったこの女の正体が知れない。
未知の存在に最大限の警戒をする赤のセイバーであった。
が、獅子劫は努めて冷静に対応する。
「お前さん、カグヤと言ったな」
「ああ! 知ってんならさっさと......」
「あっちだ」
獅子劫は夜空を指さす。この場をしのぐには、早急にこの正体不明人を遠ざけたほうがいいと思った。
「あそこに射手座があるだろう。ここからだとちょうど矢の先端あたりの星を目指せばたどり着けるだろう。
空を飛ぶ巨大な空中要塞がそこにある。カグヤはそこにいるはずだ」
「空を飛ぶ巨大な空中要塞、だとぉ?」
「ああ」
先ほどユグドミレニアから入った連絡によると、何者かが空港を襲撃したらしい。
目の前の少女をその下手人だと仮定すると、ここまでの話に合点がいく。
なら、自身の銃弾で死ななかったことも踏まえて、この少女も何か魔術師など一般人から遠い存在であるだろうとあたりがつく。
危険人物ではあるだろうが、赤のキャスターへの異様な執着と、あまり冷静ではなさそうな見てくれから、核心に触れないこの程度の説明でも十分だと獅子劫は考えた。
そしてズバリ、予想は的中した。
「なるほどなぁ......いかにもアイツが好みそうな物だ」
「行くんなら、すぐに行ったほうがいいぜ。いつ終わっちまうかもわからんからな」
どうやって行くのか。
何のためなのか。
そもそも本当に正気なのか。
「ふ......ふふっ......ハハハハッ......!」
そんなこと、藤原妹紅にはどうだっていい。
「そこにいるのかあ! カグヤアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
眼を血走らせ、突如火の鳥となった妹紅は空へと翔けだした。
「よし。セイバー、俺らも行くぞ」
「お......おう。ほっといて大丈夫なのか? あれ......」
「どっかいったんならいいだろ。一応、ユグドミレニアのカウレスって奴には連絡入れておく。
それに俺らの鳥は、あんなのよりもっと速いからな」
「マジかよ! くぅ! 俄然楽しみになってきたぜ! 戦闘機ってやつが!」
そして、この二人もまた、拠点の倉庫から空中要塞へと飛び立つ。
自身を容易に抜き去っていく戦闘機を見た妹紅がさらに燃え上がったという。
× × × ×
「これでっ......突破ぁ!」
『神宝「サラマンダーシールド」』!
カッコいい骸骨兵士たちを上手いことまとめて焼き払う! これで行ける! かな!?
「うおらあああああぁぁぁ!!」
バゴォォン!!
「ヤバッ! 割れてない!?
しかも左のグローブも終わった!?」
いい音なったじゃん!? 砲台壊せたと思うじゃん!?
私のグローブだけぶっ壊れて砲台はギリ破壊しきれませんでした! これで両グローブ破壊済みです! 腕が軽いよやったね(白目)。
ヤバイ砲台に魔力集まり始めた! チぬ! くっそぉこうなったらヤケだ!
「知れたことかぁ! おらあああああ!」
バゴォォォォォン!!
「い゛た゛い゛いいぃぃぃぃ!!」
ヤケクソに左手で素手殴りしたらめっちゃ痛い! 多分腕折れた! 狂っててもわかる、これはやった(´・ω・`)。
でも砲台も道連れしてやったぜ、イェイ♪ 砲台はあといっこ! 私にはまだ右腕が残っている! 行けるぞおおおおおおおおおお!!
しかも残る砲台がもう目の前にある! 行くしかねぇよなあああ!!
「おりゃああああ! 届けええええええええええ!!」
『図に乗るなと言っただろう?』
「ガッ!? ァ......」
ゆ、油断した......
鎖が......体中に巻き付いて......動けないよぉ......
「狂人風情が。よくもまあここまで仕事してくれたな」
「......へへっ、普段仕事してない分、ここぞってときにはやらないと追い出されちゃうかもだからね......!」
目の前にワープしてきたラミラミラさん(アカン名前忘れた)、になんかめっちゃ睨みつけられてる!
何か悪い事したかな私? あ、もしかして最初の赤サーヴァント交流会おランチに誘わなかったの恨んでる!? ごめんて! ラミさん(今呼び方決めた)だけ部屋の場所知らなかったし、天草くんも「今少々忙しいので」って超にこやかスマイルで言ってたし!
「遺言は済んだか? 狂人風情が」
許されてない! 魔法陣大量に出てきてるし!
ひえぇ......誰か―――
『お姉......ちゃん......』
「っ!? ジャックちゃ―――」
空中要塞を見て目にしたのは、全身が赤くただれている痛々しい姿のジャックちゃん。
ケモ耳アーチャーさんを相手にしてたはずなのに?
「なるほど。あの子供が黒のアサシンだな?
アーチャーは撤退したか......ただ、渡した毒は上手く使えたようだな」
毒......ですと? おのれ卑劣な!
「まあよい。貴様を殺してから、あの子供も倒すとしよう」
依然、ピーンチ!
「待て! アサシン!」
ホ! その声は!
「ライダー......この我に背くとは、それ相応の理由があってのことだろうな?」
「ああそうだ」
アキレス腱のにぃちゃん! さっきからうちのパンツさんとかルーラーさんとハッスルしてたけど......もしかしてオワった? え、黒の陣営崩壊した?
「黒のアーチャーは倒した。ルーラーは構っててもしょうがないから放置してきた。
どうだ、成果を持って帰って来たんだ。一言くらい聞いてくれても、神様のバチは当たらんだろ?」
ヤバヤバ! 結構ボコボコにされてるなぁ......
あとそれとは別にジャックちゃんとアカくんには生きて幸せになってほしい思いがある。
つまり私はこの状況から、
①どうにかしてジャックちゃんを救う(なお方法案無し)
②どうにかして残る一個の砲台を破壊する。アカくん生存のため(なお方法案無し)。
③どうにかして逃げて空中庭園に着地する。聖杯のため(なお(ry))。
賭けれるもの:己の命(薬一個飲んでる)、右手の令呪二個、以上!
補足:左腕は使い物にならない。
不利ッ......! 圧倒的不利ッ......!!
勝ちのビジョンを下さい...!
「......まあ、申してみよ。ライダー」
「前にも言ったが、俺にはこの姫さんが操られていると思ってるんだ。
多分、そこにいる黒のアサシンに薬の宝具でも飲まされたとふんでいる。じゃなきゃ、あのお優しい姫さんが裏切って、ここまで狂ったことすると思うかい?」
してます......!
裏切って、狂ったことしてます......!
なんで仮にも月の姫が、先陣切って一番槍で突撃かまして拳で戦ってるんだろうね。最高にルナティックだぜ☆ イェイ♪
「ふんっ。ならばそこに転がっている黒のアサシンから潰すとするか。この距離、逃がしも外しもしない」
ヒェッ、ラミさんが大量の魔法陣をジャックちゃんに向けちゃった。
あ、でも私の拘束の力が緩んだ。ハハ~ンさてはラミさんダブルタスク苦手ですな?
つまりこの後、ほんの一瞬―――須臾の隙があるということ。
そして私は永遠と須臾の罪人。逃がしも外しもしないのは、私も同じだわ。
「墜ちろ、黒のアサシン!」
大量の魔弾が射出される。同時に私の全身の拘束が緩む。
アキレスのにぃちゃんもこっちを気にしていない。
お願い、最後まで付き合って! バーサーカーちゃん!
"狂姫"
"竹取飛翔"
「はあああああああああああああ!!」
魔力放出、全開。全身に傷を作りながら無理やり拘束を脱出する。
驚くラミさんの横顔を直ぐに抜き去り、魔弾も抜き去り際に後方に弾幕を展開していくつかを相殺。須臾を稼ぐ。
「令呪を以て命ずる!!」
これを言ったら、もう引き返せない。
驚き、喜ぶジャックちゃんの顔が正面に見える。けどごめんね、今からお願いすることは、あなたたちにとって酷なことだと思う。
でも、それでも、あなたたちには生きてほしいの。生きていれば、また会えるはずだから。
「私の右手を持って、アカくんのところに転移して! 生きて!!」
ジャックちゃんのもとについてすぐ、私は落ちている肉切包丁を使って、
いってぇぇぇえええ!! でもこんなんあの娘との殺し合いで慣れっこ!
「構わん! 吹き飛べ!!」
ラミさんの追加の魔弾が着弾し、私が吹き飛ばされる。ジャックちゃんは無事に右手を持って転移できたように見えた。
これで安心だ。ジャックちゃんのお母さんから託された令呪は手放しちゃったけど......でもアカくんなら、大丈夫。
これで私はやっと、自分を賭けられる。
「全拘束、可能な範囲で解除。宝具......!」
魔弾で吹き飛ばされ、計算通り最後の砲台へとたどり着いた私は、魔力が充填され始めた巨大な岩盤目掛けて叫ぶ。
「※こんな岩盤は砕け散ってしまえ!※」
『
―――私の意識はここで途絶えて、カグヤは空中要塞に落ちた。
× × × ×
「......ぁ......ぁぁ......」
やだよぉ......やだよお姉ちゃん......
一人に、、ひとりにしないで......
「ぁぁぁ......ぁぁ.....!」
行かないで......!
私も、一緒に......!
「アサシン、大丈夫か!?」
「っ!?」
起きたら、ヒコウキの中だった。
ニホンからこっちに来る時にも乗ったから、わかる。
「俺だ、アカだ。何があったんだ!?」
何があったのか―――そうだ。
わたしたちの体を見る。ほんのり消えかけ始めた体。手に持ったお姉ちゃんの右手。そこに刻まれたわたしたちの令呪。
そして、転移する前に聞いた言葉。
"生きて"
「......アカのお兄さん。お願い。
お兄さんに、わたしたちのマスターになってほしいの!」
ニホンに召喚されたときと同じだ。
あのときはお母さんがいてくれた。
でも、今のわたしたちは一人だ。
「......俺が、か?」
「うん。これ、お姉ちゃんが渡してくれたわたしたちの二画の令呪。
これ、お兄さんの左手に移植する。そうすれば、わたしたちともパスがつながる」
お母さんは、助けてって言っただけで、全部わかってくれた。
だまって、笑顔で、うれしそうに、令呪をもらってくれた。
でも、お兄さんには、うまく言えないかもしれないなぁ。
「ごめんなさい......わたしたち、お兄さんのおともだちにひどいことして、怖がらせちゃって、悪いことして......それでも、お願い......」
......かなり、泣いちゃいそう。
でも、それでも頭を下げる。お母さんがやっていたように。
......わたしたち、生きたいから。
「......俺は正直、未だにあなたが怖い。目を見ると、君の世界で見たロンドンの情景を思い出してしまうんだ。
アストルフォを殺されたのだって、正直まだ心の整理ができていない。まだ彼とは全然話ができていなかった。もっと一緒にいたかった。そしてそのとき心に宿った思い、これが憎しみなのだと、知った......
でも、あなたも生きるために必死で頑張っていたのだと知った。これが戦争で、人と人との争いが悲しみを生む、その結果こうなってしまったのだと教わった。
それに、ちゃんと謝ってくれたあなたを、アストルフォなら許してくれると思う。だから、俺も許そう」
恐る恐る、といったかんじに、あたまに手が乗った。少し、ふるえてる。
「あとは......あなたのマスターであるカグヤの、そのマスターとしての責任と......美味しかったハンバーグのお礼ってことにしよう。
俺のサーヴァントになってくれるか、黒のアサシン」
「......! うん! よろしくおねがいします、マスター!」
様々な過去を乗り越えて、
ここに、アカと黒のアサシンの契約は結ばれた。
「おい、もう間もなく要塞の射程距離に入る。覚悟を決めておかないと......って、黒のアサシン!?」
契約が完了し、アサシンの応急処置が完了した二人のところに、カウレスが訪れた。
「カウレスさん、カグヤがやられた。今はどこにいるのかわからない。
彼女がやられる寸前にアサシンをここに転移してくれたおかげで、アサシンは無事だ。今は俺のサーヴァントになっている」
「......なるほど。よし、アサシンが無事なら好都合だ。さっきみたいに霧を展開してもらえないか? あの隠蔽能力以上に安全なことはない。もうアサシンの宝具だということを隠す必要もないしな」
「......頼めるか、アサシン?」
「うん、わかった......ふー---っ......」
『
「......よし、ありがとう黒のアサシン。これで比較的安全に突入できる」
再び超広範囲の霧がカウレスたちの乗る飛行機全てを覆い尽くした。
赤のアーチャーは黒のアサシンが撤退させ、『
突入準備は整った。
「それじゃあ、俺は姉さんのところに戻る。無事でまた会おう」
そう言い残し、立ち去ろうとするカウレスを、
「カウレス、一つ頼みがある」
アカが、覚悟を決めた目で呼び止めた。
「ん、なんだ」
アカは、令呪二画の宿る左手をそっと撫でていた。
この後、程なくして。
黒のマスター組、フィオレ・アーチャーペア、アカ・アサシンペア、ルーラー、そしてカウレスが、空中要塞へ無事降下、侵攻を開始した。
× × × ×
「やってくれたなぁ、姫さん」
空中要塞、その一画。
粉砕された砲台の残骸が降り積もった場所、赤のライダーは気絶している"元"赤のキャスターを見下ろしていた。
「あんたの活躍のおかげで、黒の連中は無事空中庭園に上陸、うちの本丸目指して一直線ってワケだ。
赤のアサシンの弾幕や召喚獣たちを、まるで少女の戯れであるかのように美しく捌き、倒し、砲台を破壊していくその姿、見惚れなかったと言えば嘘になる。あのときの彼女は正しく、戦場に咲く一輪の花であった。
だが、それもここまでだ。
「あんたは操られているのかもしんねぇ。だが、こうなっちまった以上、あんたをこれ以上見逃すわけにはいかない。俺だって赤のサーヴァントだ」
"お前の槍は、いずれお前が愛する者を穿つ"
思うところは多分にある。それでも、赤の陣営への被害を自分が招いた以上、その責は自分の槍で償うと心に決めた。
「じゃあな。愛してたぜ、姫さん」
最後は、無情に。
アキレウスの槍が、カグヤの心臓を貫いた。
「っ!?」
ヒュン!
刹那、感じる殺気。
赤のライダーは戦士の直感に従い、後ろに大きく跳躍する。
先程まで自分がいたところに、頭部・心臓・踵を正確に穿っていた矢が刺さっていた。
「まさか......!」
「そのまさかですよ。強敵を倒したときは死体まで確認しろと教えたはずです」
「ちぃ......!」
とっさの判断で、赤のライダーは槍をカグヤの体に残したまま全力で撤退した。たとえ槍があってもなくても、この体での近接戦闘であの人に勝てないことはわかりきっている。あの人との真剣勝負に未練がないといえば嘘になるが......それだけだ。
それに、狙われるとわかっていて槍を引き抜く隙を与えたくなかった。たとえ僅かな隙であってもあの人は射抜いてくるという確信がある。
そして撤退した先には、柱だらけの広大な戦闘用スペースがある。そこで迎え撃つ算段を瞬時に建てた。
勝算は、まだある。
「残念だったが、キャスターは倒した! 悔しければ追ってこい! 黒のアーチャー!!」
赤のライダーは弱体化してなお余りある速さで撤退した。
「マスター!」
「ええ、後を追います。赤のキャスターは任せられる人がいますから」
「わかりました。あれは私が必ず仕留めます。この弓に誓って」
赤のライダーと黒のアーチャー。
二人の戦いも、最終幕を迎えた。