「ふーっ、何とか着地成功だぜ。命からがらってな。
ったく、王の最期を看取っての生き証人とは。ペディヴィエール卿ってガラじゃあねぇぜ俺は」
空中庭園から脱出を図った獅子劫らは、獅子劫が一応と準備していたパラシュートによって、無事降下に成功した。
カウレスとフィオレを背負って降下―――途中で気を失ってしまったので背中にくくりつけて―――したため、一歩間違えれば錐揉み回転となり不時着のリスクもあった。
風の魔術制御ができたとはいえ、聖杯戦争で一番危なかった場面かもしれない。
「あとは、あの小僧とアサシンの小娘、それとキャスターの姫ちゃんにお祈りするしかねぇな。聖杯ももう諦めるしかねぇし、我ながら情けねぇ限りだ」
唯一誇れるところは、我が王が討つべき女王の首を取る手助けとなれたくらいか。
後は、背負ったこの二人を助けられたくらい。
「ま、俺にしちゃ上出来か。ハハハ」
ちょっとした軽口に応えてくれる最高のサーヴァントは、もういない。
寂しさを感じながらも、獅子劫は最後の仕事として、大切な重荷を背負いながらミレニア城塞の方角へと歩み始めた。
勝利を。いつもと変わらない明日を、信じて。
× × × ×
「新難題『幼き龍の子–巣立ちの息吹–』!!」
まず放たれたのは特大弾。
それに纏わり付く無数の弾幕ごと、藤原妹紅に襲いかかる。
「お前がそんな考えになっちまうなんてな! さぞかしこの旅は楽しかったんだろうなぁ!」
巨大な火の鳥を模した弾で対抗。
威力は互角。相殺と炸裂を幾度となく繰り返す。
「ええ! とても楽しかったわよ! あなた達のいない世界はねぇ!」
「ああ!? 喧嘩売ってんのか!? 売られる前に買い叩いてやらぁ!」
だが、普段と違うサーヴァントとしての力と魔力を扱える輝夜と、相手にとって見慣れた弾幕しか放てない妹紅とでは、対応しなれた輝夜に有利。
予期せず撃ち漏らした弾幕が肩と脇腹を強かに打つ。
「サーヴァントとしてこの世界に呼ばれて! ライダーの兄ちゃんやケモ耳ちゃんに、太陽の人と仲良くなって! 一緒にがんばろうって食べたご飯は美味しかった!」
「つまりその見た目は、サーヴァントかぐや姫の姿ってことかよ! ブサイクだなぁ! まあでも元の姿よりはマシかぁ!?」
「蓬莱山輝夜ちゃんのほうがキレイでしょーが!!!
そんで! かわいいバーサーカーちゃんに負けちゃって! 大切なアカくんにマスターになってもらって! 嬉しかった!!」
妹紅の炎に密度で勝る弾幕は、さながら龍の息吹のように妹紅を追い詰める。
いよいよ壁に背中がついてしまったところで、しかし壁を蹴ることで輝夜に急接近。得意の近接戦を仕掛ける。
「かぐや姫サマが男に惚れて都落ちってか!? 面白くねぇぞ!!」
「そういうのじゃない!
けど! もうちょっとしかない命を燃やして! 一緒に戦争に挑もうって姿はカッコよかった! 一緒に戦って! ゲームして! ハンバーグも作った!
でも! まだ全然だよ! もっと一緒にいたい!
そして!!」
新難題『美しき花園の乙女–末期の意地–』
しかしそこには、二枚目を構えた輝夜が。
「それはこの子だってそうだから!!!
ナ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ラ゛ラ゛ラ゛ラ゛ラ゛ラ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」
「がああァァァ!?」
突然、全身に雷を纏った輝夜が、狂ったように声を上げて、似合わぬ怪力で拳を強打、強打、強打。
最後に鳩尾に強烈な一撃。吹き飛ばされ壁に全身を強く打つ。
妹紅といえど、生身の体でサーヴァントの連撃を受ければ、耐えられない。
これで、一回。
「ゲームしてるときはいつも一緒で! 電気を使いすぎるなって、ふざけたこと言うなって、カウレスくんを困らせるなって!
同じサーヴァントとして痛烈なツッコミをくれるこの子とだって、まだまだ一緒にいたい!!」
「...かはっ...はぁ、はぁ、くっそがぁ!!」
内蔵が尽く潰れ、溢れた血が口から吐き出される。
誰がどう見ても致命傷ながら、不死の肉体に生き返らされ、妹紅はふらふらと立ち上がる。
死に体で、目だけが力強さを訴える。
対する輝夜から、放たれていた電撃が鳴りを終わらせる。一瞬だけの、眩い輝きであった。
「ごめんねバーサーカーちゃん、ありがとう。一瞬だけでも力を貸してくれて。
大丈夫だから、もう休んでてね」
「はぁ...はぁ...! まだまだァ!!」
復活し、起き上がる妹紅に、輝夜もまた構える。
新難題『全て遠き新世界–見果てぬ理想–』
「神父さんだって! この手段は間違いかもしれないよ! でも! 皆が平和に生きられる世界を願うだなんて! それに本気になって努力してさ!」
輝夜が再び天草四郎の刀を手に切りかかり、刀の軌跡からも弾幕を、追加で周囲からナイフ弾をばらまき、妹紅に襲いかかる。
「誰かを助けたいって気持ちは! 絶ッ対に間違いなんかじゃないんだから!」
「でも! それで不老不死の呪いを無差別にバラ撒くのは間違いだろうが!
それを押し付けと言うんだッッ!!」
だが近接戦闘なら妹紅に分がある。
最低限の弾だけ相殺し、ナイフ弾に肌を裂かれながらも、好機を見て刀を彼方へ蹴り飛ばし、そのまま焔の拳で輝夜の腹を殴り飛ばした。
「ぐふっ!?」
「すぅ~、ふぅ~...こっちも一発だ...!」
輝夜は腹を抑え蹲りながらも、蹴り飛ばされた刀を目で追った。
煙と砂埃で非常に視界の悪くなった部屋。
刺さった地面のすぐ隣に、見知った顔を見つけた。
「
傍から見れば、襲いかかる謎の強敵と、襲われている自らのサーヴァント。
「令呪を以て命ずるッ!
アサシン! あいつを倒してくれ!」
呼び掛けた声に、マスターは令呪の赤い光でもって応えた。
新難題『暗き灰都の親子-切れぬ絆-』
「何を...!?」
輝夜が叫んだ刹那、煙と砂埃に、
それは瞬く間に広がって、輝夜と妹紅を覆い尽くした。
(ッ!?これ、毒かよ!?)
霧が治りかけの傷口に沁みる。目もやられ、呼吸は非常に困難となる。
そして、独特の臭い。
(硫酸!!)
妹紅は全力で脱出を試みた。炎の翼で荒々しく羽ばたき、飛んだ先は上か、右か、左か、下か。
(方向感覚が...!? まずいまずいまずいまずい!!)
第六感が全力で警鐘を鳴らす。痛みも疲れも忘れて翼をはためかせる。
しかし、一度獲物を捕えた毒霧から出ることは叶わず―――
「残念、時間切れ♪」
「てめぇ...!?」
僅かに輝夜の声が聞こえ、反射的に拳を放ち、空を切る。
その背中は、無防備であった。
『宝具―――
幼き少女の叫びと共に、背中に走った刀傷。
そこから、瞬く間に全身へと巡り、胎へと還る呪詛。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!?!?!?!?!?」
サーヴァントの渾身の宝具が、妹紅を喰らった。
× × × ×
「あら、いらっしゃい。テュールさん...でよかったかしら?」
「......」
「これは珈琲...かしら? ありがとう、夜中にピアノを弾かせてもらえるだけでも感謝しているのに、悪いわね」
ミレニア城塞。その一室。
客人である私は、我が子の無事を祈り、あの子が好いてくれていたピアノを弾き続けている。
譜面台には、あの子とお友達にあげたお守りの、自分の分。
手の甲からの繋がりも渡したこの身には、この繋がりを信じて祈ることしか、できないから。
「うん、美味しい。ありがとね」
「......」
いただいた珈琲はとても美味しかった。人生で一番高級な珈琲だったに違いない。
言語がわからないから会話はできないけれど、見た目はキツそうなこの人の中の優しさが、珈琲と共にとても温かく沁みる。
けれど、ゆっくり味わう間も無く、私はピアノを弾く。弾き続ける。
どうかあの子に届けと、祈るように。
「......」
テュールさんも、一礼して去っていった。
再び、部屋には私一人。
けれど、孤独ではない。渡したお守りと確かな絆が、確かにあの子たちと結ばれているから。
「...どうか、あの子だけは」
だから、せめて祈りを。
トロイメライ。
大好きなこの曲に乗せて。
× × × ×
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛......!」
解体聖母。
死を与えた後に死因が訪れるという、凶悪無比極まりない一撃。
それが、死なない不老不死の躰を蹂躙し、死に、死に、死んで死んで死んで、されと死なない矛盾により生き返り、生き返った細胞からまた殺される。
サーヴァントですら逃れられない死の一撃。ましてや生身で受けた妹紅の苦痛足るや、筆舌し得ない。
「アサシン! 大丈夫か!?」
「はぁ...はぁ...! けほっけほっ...! わたしたち、やったよ...! お姉ちゃんの敵は、わたしたちが...ううっ...!」
一撃離脱。
令呪の力と共に最後の力を振り絞ったアサシンは、反動で動けなくなる。
パキン......
天草四郎の刀も、既に許容を超えた魔力で振るわれていたところに、全力の呪詛を込めて振るわれたことで、朽ちて粉々に砕け散った。
「あ゛あ゛あ゛あ゛......! が......ッ......!......!」
藤原妹紅の、腹が、肺が、喉が潰れ、遂には苦悶の声すら上げられず、血も廻らず、ただ痛みのみ絶えず訴える。
意地でもと、それだけはと、正気だけは繋ぎ続けて。
されど呪詛は死を求め、遂には脳まで達し、
「あ―――」
意識が―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
× × × ×
―――楽園を見た。
そこは色鮮やかで、多種多様な者が生き生きとしていて、こんな自分を気味悪がることなく受け入れてくれる、正に楽園だった。
やれ神社で宴会だのと。やれ喧嘩だの、弾幕ごっこだの、異変だのと。非日常が日常で、退屈とは程遠い。そんな世界。
だが、それも永遠ではない。
終焉は、平等に。
―――いつか訪れる、終わりを視た。
―――ついて来なさい。
目の前の輝夜が、こちらに手を差し出して微笑む。
輝夜の先には、楽園。それも、永遠に終わりの訪れない、完璧な楽園。
輝夜の作り上げた、理想郷。
対して、自らの背後には、荒廃した世界。
永遠が否定されたために、全てが終わりを迎えた現実。
―――ついて来ないの?
輝夜の優しい微笑みが眩しい。そういえばこんな顔だったなと妹紅は思い出した。
永遠が、眩しい。
優しく、安らかに、温い。
そんな永遠に、妹紅は手を伸ばし―――
「ついて来なさい、じゃねぇ...!」
―――されど、彼女は、藤原妹紅だけは、
「てめぇの方こそ、ついて来やがれ!!!」
絶対に、永遠を否定する。
× × × ×
「ああああああああああああ!!!!!」
「...わーお」
最後に死んでからどれくらい経った。
わからない。
この体は無事なのか。
わからない。
あと何秒動けるか。
わからない。
次の攻撃は耐えられるか。
わからない。
では何をするべきか。
それだけは、わかる。
「...
昂る戦意。
「永遠なんて必要ない」
爆ぜる感情。
「永遠だけは―――」
猛る炎。
藤原妹紅。
未来永劫、永遠を否定し燃え続ける焔。
魔術の世に則り、敢えて名前を付けるのならば―――
「―――永遠にだけは、負けられない!!!」
『
未来永劫、
「......ふふっ。
いいわ、決着をつけましょう!!!」
新難題『気高き勇者の飛翔–背負い貫く意思–』
対するは赤のキャスター、蓬莱山輝夜。
全身に魔術も永遠も須臾も全てを込め、全霊を以て拳を打ち出す。
「輝夜ああああああああああ!!!」
「妹紅おおおおおおおおおお!!!」
焔の拳と、魔力の拳。
激突に、大聖杯が震えた。
× × × ×
「――――――――」
一面の、銀景色。
ともすればあの郷を思い起こさせる、幻想的な空間。
体を起こせば、雪の精霊か、見目麗しい女性が一人、私を見ていた。
「ようこそ。此度の聖杯戦争の勝者よ。貴女の願いを聞かせてください」
「...そう、願いね。なら、教えてくれるかしら」
そうだ、尋ねられたのなら答えよう。
「ここはドコ? あなたはダレ?
...というか殴られたお腹めっちゃ痛い...ごめん...タスケテ...」
挨拶も早々にうずくまって、塩をまかれたナメクジ状態になった私に、雪の精霊さん―――ユスティーツァさんがアワアワと駆け寄ってきた。
× × × ×
「そうだよね!? 私負けたよね!? 間違いじゃないよね!?」
敗北ッッ!!
カグヤちゃん、敗北ッッ!!
もこたん鬼強ええ...逆らった私ボッコボコ...何なら今まで見たことない炎の出力だったよぉ...
てか今の私ってサーヴァントなんだけど??? 神秘しか効かない凄い体なんじゃないの???
普通に勝負になって普通にダメージ与えてくるあの娘なんなん???
愛おしすぎるでしょ。
はー、もこたんしか勝たんわ。
ふぅ~、良かった良かった。
無事に負かしてくれて。
「...様々なマスターとサーヴァントを見てきましたが、貴女は変人ですね」
「えっへん」
「褒めておりません...負けて喜んでいる意味がわかりかねます...
それでは、聖杯戦争の勝者となった貴女の望みを聞きます。何が望みでしょう」
うん。
そうなんだよね。
私がもこたんに負けようと、私たち―――アカくんとジャックちゃんと私の三人―――が聖杯戦争の勝者なのは、実は天草くんを倒した時点で決まってたんだよね。マスターがアカくんで、ジャックちゃんと私はあの子のサーヴァントなんだし。
だからまあ、別にもこたんが来たところで、私はやろうと思えば願いを叶えられてたってワケ。残念だったねもこたん。ぐへへへへっ。全人類を不老不死に、ぐへへへへっ。
「私の願いね。まあ、三つあるんだけど...貴女に叶えて欲しいのは二つだけ。三つ目は、最後に伝えるわ。
あ、
でもまあ、それは聖杯戦争のルール。
蓬莱山輝夜である私には、もう一つ守らなければならないルールがある。
「とりあえず一つ目。
幻想郷絶対の法、スペルカードルール。
負けた方が勝った方の言うことを聞くこととする決闘。
私はあの娘に負けちゃったんだから、あの娘の言うことは聞いてあげないとね♪
「承りました。妖怪、八雲紫に位置をお知らせいたします。
それでは、あと二つの願いを聞きましょう」
そう聞いてくる超美人のお姉さん。何度見ても美人さん過ぎて凄いな。まあ私のほうが美人だけど♪
「その前に確認なんだけど...天草くんの願いって、もう聞いちゃったよね? それを無しにってのは、やっぱダメ?」
「天草四郎の願いは聞きました。それを無しにということはできません」
「そっかー...ちなみに、お姉さんってここから遠く離れて別の場所で暮らしたりってできる?」
「私は聖杯です。ここから離れることはできません」
そうか~...そうなんじゃないかなーとは思ってたけど...
あーあ。聖杯の中にこんな美人さんがいるだなんてな~。
お願いする内容の三つ目、ちょっと躊躇しちゃう。
このお姉さんにとってそれはそれは残酷なことで。
そして、今回の祭りで出来た、アカくん、ジャックちゃん、ルーラーさん、パンツさん、アキレスの兄ちゃんとか他の皆との素敵な絆。それが今後新しく出来る可能性が無くなるかもしれないのが、凄く悲しいけれど。
でも、これは私がやらないといけないから。
「うん―――でもその前に!
ユスティーツァさん、ちょっとお話しましょ♪」
「......はい?」
まあでも?
ちょっとくらいは好き勝手させてもらってもいいわよね♪
私はかぐや姫なんだから♪
× × × ×
「へ~♪ ホムンクルスの魔術にそんな使い方が―――」
「私を作った方がこう言っていました。―――」
「髪も瞳もとってもキレイね♪ あーあ、私も元の体で美貌勝負してみたかった~」
「...勝ち負けが必要な意味がわかりかねます...」
「貴女の願いも、ヘブンズフィールによる不老不死だったのね...」
「旧き友人と共に、創造主はそう願っておりました。争いの無い平和な世界を求めて」
「もこキックはこう! 意味も無くポッケに手を突っ込んで無駄にカッコつけたまま! 貴女も! はい!」
「し、しかし、ポケットに手を入れる意味が...」
「いいから! やればわかるから! はい!」
「はい! や、やあ!」
「上手い! どう!? どう!?」
「やっぱり意味がわかりません!」
「きゃっ!?」
「なんだ!?」
「あらら?」
「うわーーーっ!? 痛ってええええ!?!?」
「あらら、お早いご到着ね、皆様♪」
むー、まだもこパンチ教えてないのに...
美しい雪の世界に、あまりにも似つかわしくない気味悪い裂け目、スキマが突如現れ、中から人が五人現れる。ジャックちゃん、アカくん、レイカお母さん、そしてルーラーさんの依代になってた人? みんな無事のようだ。
そしてもこたんだけ凄い上空からドシャッとダイナミック入場。グッジョブよ紫!
でも紫本人は姿を出す気が無いみたい。見てるんだろうけど姿も気配もありゃしない。恥ずかしがり屋さんなんだから♪
「お、おかあさん!?」
「ジャック! あらあら、元気にしてた?」
「うん...! うん...! わたしたち元気だよ、おかあさん!」
「そう、良かったわ。アカくんも元気そうで...そちらの紅い服の方は?」
「っ! そうだ、お前! カグヤから離れろ!」
再開を喜ぶ親子に、私ともこたんの間に立つアカくん。
こういうのがカッコいいんだよ。カッコよさってのはポッケに手を突っ込んだり袖を破いたりすることじゃないんだよ。ねぇもこたん?
「そーだそーだー、もこたんなんか焼け落ちて土に還ってしまえー」
「ふざけてないで説明しろ輝夜! ここドコだ!?」
「だいたい何なの? 幻想郷の外よ? 来るとは思ってたけど何で来るの? ストーカーなの? ちょっと引いたよ?」
「バカにするなああああ!!
ああもう!来るんじゃなかったあああああ!!」
「...この状況、わかりかねます...」
ふふふ、賑やかでいいじゃない♪
やっぱ、祭りは最後までこうじゃないとね!
「なるほどねぇ。
聖杯戦争はジャックとアカくんとカグヤさんの勝利で、ここは勝利した人だけが来れる場所。
白い貴女は聖杯の意思のような方で、私はその力で呼ばれたと。そしてそこの紅い貴女は...」
「ただの部外者!」
「輝夜てめぇ!」
「カグヤの友達ってことか...わかりづらい冗談はよしてくれカグヤ...」
説明おわり!
いや~! ここまで長かったね! でも楽しめたし、満足満足!
「説明も終わったことで! これからの話にするよ!
ユスティーツァさん。二つ目のお願いだけど、このジャックちゃんを受肉させてもらえるかな?」
「可能です。黒のアサシンに新しい肉体を与えます。黒のアサシンもよろしいですね?」
「うん! おねがい!」
レイカお母さんが、ジャックちゃんを抱えて恐る恐る近づく。時間かかりそうだし、後はユスティーツァさんにおまかせしましょ。
「おい、輝夜。お前まさか不老不死を広めようなんで願って無いだろうな...?」
物凄い怒気と殺意をファンサしながら話しかけてくるもこたん。嬉しすぎてチビっちゃう。
ちょっと怒らせ過ぎたかしら...
「安心して。本当は私も、
「は???」
ヤバい、もこたんの顔が面白過ぎる。危うく吹き出して怒られて焼き尽くされるところだった。焼き尽くされちゃうんだ...
「本気の本気で不老不死にするんなら、こんな手の掛かる方法とらないわよ。永琳に頼んで、飲み物か食事に蓬莱の薬でも盛れば一発でしょ」
当然、永琳には反対されるでしょうけどね。
「おい、ならなんでこんなことを」
「塵一つ」
「あ?」
「塵一つ 数えて楽しむ 我が身さへ
量り尽きれば 心冷えたり」
「妹紅。貴女もそうだったんじゃないの?」
最近のこの娘の炎には、いまいち熱が込もって無かった。
私も飽きが来てたし。
「おまっ...まさか、そんな理由で...?」
ふっふっふ...!
「当然よ! 退屈は人を殺す。ましてや不老不死の私達にとっては一番の敵なんだから!
そのせいで最近の殺しあいもマンネリ気味だったからね。久々にガチの"負けられない勝負"ができて、とっても楽しかったわ♪」
特にあの炎!
もこたんが最後に目覚めた最高の焔!
とっっっっっても美しかった~...!
「そ・れ・に♪
望むなら、難題を与えて、達成した者にこそ、褒美を与える。
それでこそ、
ねぇ、も・こ・た・ん?」
というわけで、種明かし!
なんと輝夜ちゃん、実は全人類の不老不死なんて望んでませんでした! ハーッハッハッハー!!
「こ、この......」
ねぇ、どんな気持ち?
まんまと乗せられて必死になって戦っちゃって、どんな気持ち???
「このトラブルメーカーがぁ!!!!」
ガツーンッ!!
ボコボコボコボコ!!
モ゛ッ゛コ゛ー゛ン゛ッ!!!
× × × ×
「おねぇちゃん! 見て見てー! 受肉したよー!...あれ、どうしたのおねぇちゃん。頭にでっかいたんこぶがあるよ?」
「大丈夫。私今とっても気分がいいから。痛くて泣きそうになんてなってないから。良かったねぇジャックちゃん」
「う、うん!!」
嘘である。
本当は痛くて泣きそう。あとちょっとだけチビった。てへぺりんこ。
「ったく...おい紫。いるんだろ。帰らせてくれ」
「うん。皆で帰りましょうか。皆で。
先にどうぞお二方」
「うん! ありがとうおねぇちゃん!」
「幻想郷、楽しみね、ジャック」
「うん!」
「は?」
開いたスキマ。やっぱり見てるんじゃない。
当然、行き先は幻想郷。
おんぶされたジャックちゃんと、抱き締めるレイカお母さん。二人とも笑顔でスキマに入っていった。
あぁ...尊いなぁ...! この光景が見れただけでも頑張った甲斐があるってもんよ。やったねカグヤちゃん。
「カグヤ。俺も幻想郷とやらに行っていいのか?」
「いいよいいよ! アカくんが望むなら、行っちゃいな!」
「...ありがとう、カグヤ。偶然自我を持てただけの俺がここまで来れたのは...いろいろあったけど...本当にいろいろあったけど...カグヤのお陰だ...多分...」
「えっへん! カグヤちゃんを信じて良かったでしょ! アカくん!」
「...アカ。この名前は、アストルフォとカグヤの二人から貰った。二人の願いと意思に恥じないよう、頑張り続けてきたが...本当にここまで来れるとは、勝てるとは思っていなかった」
「それだけ君が頑張ったんだよ!
最後に残ったマスターである貴方が、聖杯戦争の勝者さ! おめでとう! 誇りな誇りな!」
「ああ...じゃあ、先に行く。待ってるからな」
「ありがと~! ばいちゃ~♪」
「ん???」
アカくんも頑張ったねぇ! ジャックちゃんのマスターにもなってくれたし、最後の令呪もナイス判断だった!
間違いなく私にとって最高のマスターだったね。向こうでも仲良くしたいなぁ~。
「あ、紫~。この倒れてる金髪の子は地元に戻してあげてほしいんだけど、できる?」
忘れるところだった。
ルーラーさんの依代だった子は、見た感じ学生ちゃんっぽいから、元通りの生活をしてもらったほうが良さそうだからね。
あっ、スキマに吸われていった。大丈夫っぽいね。
「おい輝夜。どういうことだ? 奴らを幻想郷にって。正気か?」
「正気も正気。マジもマジよ」
「―――――――はは」
あ、もこたんがツッコミ疲れちゃった。
「はぁぁ~...知らんからな。奴らの面倒は最後まで見ろよ」
「ん、わかってるって♪」
当然! みんな大事な友達よ!
紫のお気持ちだけ心配だったけど、無事に送ってくれたってことは許されてそうだし、良かった良かった♪ 向こうに帰ったときが楽しみだねぇ~♪
「ふうぅぅぅぅ...んーーーー! 頑張った頑張った!!
んじゃ、お待たせユスティーツァさん。最後の願い、聞いて貰わなきゃね」
残ったのは、私ともこたんと、この大聖杯の核であるユスティーツァさん。
このままだと、全人類を不老不死にしちゃう、ユスティーツァさん。
「わかりました。最後の願いを聞きましょう」
「うん―――ごめんなさい。貴女と聖杯を、私の宝具で、海に沈めます」
話をしても、この方法しか見つからなかった。
この聖杯は、どこまでもユスティーツァさんと結び付いているらしく、彼女と聖杯を引き剥がすことはできそうもない。
そして、私がこの聖杯を止める手段も、一つしか無かった。
「―――わかりました。聞きましょう、その願い」
一度目を閉じて、はっきりとそう口にした。
とても美しく、綺麗だった。人間味が無いほどに。
「...死ぬのか? 彼女...」
「ええ、殺すわ」
「そうか...なあ、ユスティーツァさんとやら」
妹紅が、前に出た。
「もう知ってるかもしれんが...私達は死なない。老いることも死ぬこともない。
だから...まあ、巡りめぐって、いつかこの世で会えるといいな。その時は、よろしくな」
ポッケから手を出し、手を振る。やだイケメン。
「...一つ、聞きたいのですが」
驚いた。ユスティーツァさんが、初めて向こうから言葉を発した。やっぱイケメンには弱いのかな? あっ違いますかすみませんハイ。
「不老不死とは、いけないこと、なのでしょうか」
それは、とても難しい問いであった。
これに答えられる存在なんて、少なくとも私は
「...全人類にとって、どうなのか。そんな大それた話は、正直わからない。不老不死に成ろうとした奴なんて、両手の指じゃ足りないほど見てきたからな。
だが―――何も知らない無垢なままに成っていいものじゃない。それこそ、"そいつ"の難題でも達成してまで成りたいって言うような覚悟の決まった物好きでもない限り、不老不死になんて成るべきじゃない。
少なくとも、それだけは私から言える」
満足か? と小首を傾げる妹紅。
「―――はい。ありがとうございました」
ユスティーツァさんが頭を下げた。
相変わらず人間味は無いけれど、心なしか、肩の力が抜けたように感じた。
「んじゃ、後はどうにかするんだろ輝夜。早く帰ってこいよ」
「ん、任せなさい♪」
「遅かったら代わりにメシ食っちゃうからな」
妹紅もスキマに入っていった...どうしよ、朝ごはん間に合うかな...
さて、残ったのは、私とユスティーツァさんだけ。
最後の魔力を、赤のキャスターの宝具に込める。
「あ、そうそう。
戦争の最初に私を誘ってくれたのって、ユスティーツァさん?」
そういえば、気になってたんだった。
召喚されたときに聞いた声。今思えばユスティーツァさんの声だった。
「はい、私です。赤のマスターの召喚儀式と触媒に基づき、カグヤ姫である貴女を召喚いたしました」
そうしてこの外の世界に来て、赤のキャスターとして、その後はアカくんのキャスターとして、出会い、戦い、駆け抜けた。
ええ、本当に―――
「―――楽しかったわ。ありがとう」
全ての出会いに、心の底から、感謝を。
そして―――
「バイバイ、聖杯戦争―――
『天の羽衣【口惜しや 心有りける 地の都】』」
―――さようなら。
降り注ぐ月の光に照らされて、石化する大聖杯と砕ける空中要塞。
海に落ちていく大聖杯と、崩壊した空中要塞から見た朝日は、戦争の終わりを彩るに相応しい美しさで。
ここに最後のサーヴァント、カグヤの脱落を以て、聖杯戦争は終劇を告げる。
ああ...本当に...!
「主役は楽しかったなあああああああああああああ!!!!」
最終話となります。ここまでご覧いただき誠にありがとうございました。
Fate/apo×東方 という狭きジャンルにも関わらず、多くの方にお読みいただき嬉しい限りです。お陰様で完結いたしました。
よろしければ、評価・一言ご感想などいただければ幸いです。
一応、幻想郷での後日談も考えてはおりますので、よろしければご期待ください。