[裏技]仮面ライダーゲンムVS魔法少女おりこ☆マギカ ロンリー・プレイヤー 作:柳川 秀
父である
元々幻夢コーポレーションの初代社長だった父は、
周囲の人々も父を信頼していたし、母も応援していた。
私は――利用されていた。
「彼の才能の芽を潰すことは何よりも罪深いことだ」
父の本性は究極の利益優先主義者だ。
あらゆる他の存在は商品として見なされる。
父にとって、息子である私すらそれは例外ではなかった。
「商品価値が下がってしまうからなァ……」
彼の目が嫌いだった。
傲慢と冷徹を孕んだ目が、私を見てくることが嫌いだった。
飼い馴らされ続けることが恐ろしかった。
私の才能が殺されてしまうと感じた。
「あなたは私の誇り」
彼と決別したのは、母が亡くなってからだ。
その頃にはもう、私は幻夢コーポレーションでゲームクリエイターとして働いていた。
そして計画を着々と進めていた。
「この世に生まれてくれた奇跡なのよ」
母である
翌年のゼロデイの原因と同じバグスターウイルスによって、母はゲーム病になり肉体が消滅した。
その感染を起こしたのは、他でもないこの私だ。
医療機器メーカーの開発部における2000年問題の仮想シミュレーション。
その中で意図せず未知のコンピューターウイルスを生み出してしまった
ネットを漂流していたそのウイルスを檀正宗に発見され、利用され続けた男。
バグスターウイルスとは、人体に感染するよう進化したそのウイルスだ。
「このままではバグスターウイルスのパンデミックにより人類が危機に陥る可能性があります」
感染した人間は、ストレスによって悪化するゲーム病と呼ばれる感染症になる。
最終的に感染者の肉体は消滅し、バグスターは宿主を必要としない完全体として存在し続けることができる。
「何故私の息子にバグスターウイルスを感染させた!?」
「あれは息子が勝手にやったことでして……そういう行動に出るとはわかっていましたがね」
世界で初めてバグスターウイルスに感染したのは、当時8才の
それも私の手によることだが……皮肉なことに彼が宝生清永の息子だったのは偶然である。
いや、運命とも言うべきか。
「永夢、悪く思うな」
宝生永夢が感染してから10年後。ゼロデイの前年。
私は宝生清永の協力で眠っていた彼を拉致し、ゲノム研究者の
「誰だお前? なんで俺はここに?」
その結果世界で初めてバグスターとして誕生したパラドと共に、私はウイルスを進化させる計画を始めた。
母にウイルスを感染させ新たなバグスターであるポッピーピポパポを生み出したのは、その後のことだ。
ゼロデイとはバグスターウイルスを進化させるためのものだった。
10個のプロトガシャットから仕込んであったバグスターウイルスをテストプレイヤーに感染させる。
その責任を父に被せ、私が幻夢コーポレーションCEOとなる。
対策のためを装い、母の
聖都大学附属病院に設置された電脳救命センター(CR)のバックアップを得て、バグスターと戦える装備と謳い私は前代未聞のゲームを作る。
全てが計画通りだった。
≪GAME OVER≫
しかし、その後紆余曲折を経て、私はゲーム病患者と同じく消滅した。
プロトマイティアクションXガシャットオリジン。
私が一番最初に開発したα版のガシャット。
その中にゲームオーバーにされた私のデータは保存されていた、
産油国の首都にあるような近未来的で特徴的な建物の並ぶ場所。
聖都より発展を遂げたユビキタス社会である都市。
見滝原市に今私は存在している。
何故かは私にも理解できていない。
気付けばここにいたのだから。
それでも、私が存在する意味ならハッキリとわかる。
どんな世界であろうとも、どんな時代であろうとも。