完成されており、不完全の魔導書。 作:ゴールド@モーさん好き
「大切にされた事がない?」
「おい、なんだよその言い方。まるであたし達があいつの事を大切にしてないような言い草。」
「あーうん、これはアタシの言い方が悪かったな。言い方を変える、あいつは家族を知らずに育ったんだ。」
「アルフ、掻い摘み過ぎてよく分からないからもう少し詳しく教えてくれる。」
「うーん、でもまぁお母さんの言う通りだからもう少し詳しく言うか。実はさ、時の杭や今回みたいな事は結構起きているんだ。それこそユーノが闇の書事件の後、本格的に無限書庫で働くようになって初めての開拓作業を終わった後なんか司書の皆が度肝を抜かれたよ。」
「何があったんだ。」
何か悪い事は確かだ、だがクロノは聞かずに居られなかった。今彼の中にあるのは友人の異変に気づかなかった自分への不甲斐なさ、そしてそれならば全てを知らなければという義務感だった。
「ユーノ本人が言うには攻撃的なトラップがあったらしくてね、”腹に槍がぶっ刺さっていた”よ。」
「……は?」
「あいつ自身も治癒魔法は使えるけどそれを使うには槍を抜かければいけないから、使ったのは痛みを感じにくさせる暗示魔法だけ。後は血流を抑える為に紐で──」
「ま、待ってくれ!腹に槍がぶっ刺さった?そんなの僕は何一つ聞かされてないぞ!」
「そりゃそうだ、あいつがそれをしないでくれと態々頼んだんだからな。」
「なん…で、そんな事。」
「そんなの、クロノも分かっているんじゃないか?心配を掛けたくない…否、彼奴からしたら切り捨てられるのが怖かったっていう可能性もあるな。」
その言葉に流石のクロノも怒りを示した。
「何故僕がユーノを切り捨てるなんて事になる!あいつは僕の友達だぞ!」
「確かにそうだ、これは単なる私の憶測でしたかない。」
「なら何故そんな事を!」
「──見たんだよ。」
「?見た?一体何を見たんだ。」
「あいつの過去を。」
♢
「ユーノの…過去?」
「そうだ、もっと正確に言えばあいつがまだスクライアに”世話”になっていた頃の記憶だ。皆知らないだろ?あいつが”どのように育った”か。」
その言葉はここに居る誰もが同意し、そして気づいてしまった。自分が彼の事について知らなすぎる事に。
「それ、は──」
「まぁあいつ自身が積極的にそういうのを話そうとしないし、聞こうとしてもまぁはぐらかしてたからしょうが無いけどさ。っとまた脱線しちゃった、要は怪我するあいつがほっとけ無くて護衛で着いてくようにしたんだよ。それでさ、何回かこなした後私も余裕と言うか油断が出来ちまったんだよ。お陰様で私とユーノは魔導書にある魔法をかけられちまったのさ。」
「な?!アルフ!大丈夫だったの?!」
「あぁフェイト、体は大丈夫さ。ただ、あれ程迄に無力だと感じさせられたのは珍しいかもね。」
「どういう事?その時何があったの?」
「受けた魔法はなんて事ない…ただ対象の幼少時の記憶を他者に見せる。たったそれだけだよ。」
「………それだけ?なんでそんなので」
「それ程迄にユーノの過去が、沈痛なものであったと。そういう事なんだな?」
「流石クロノ、話が速くて助かるよ。そうさ私はそこであいつの過去知った…知ってしまったんだよ。いやほんとに、何かをあんなにも呪った事は無いかもね。」
アルフは苛立って来たのか目付きが鋭く、口調も強くなっていき、手で頭をガシガシとかき始めた。
「あ、アルフ?」
「本当に胸糞が悪かったよ、あんな事を子供にするのかって…如何してそこまでやれるのかって!そして何よりもあんなユーノに今まで気づけなかった自分にムカついたよ!」
彼女の荒れようはハッキリ言って凄まじいものだ、確かに彼女の性格は少し荒っぽい所もあるが何でもかんでも荒れ散らかす様なものでも無い。つまり、ここまで荒れる”ナニカ”がユーノの過去にあった事になる。
「アルフさん、教えてください。一体ユーノ君に何があったんですか?」
「あぁ教えるよ、ただ約束してくれるかい?」
「約束?一体どんな事?」
「簡単だよ。”何もしない”、たったそれだけさ。」
「分かった約束するわアルフ、皆もそれでいいよね?」
「あぁ。」
「はい、大丈夫です。」
「そうかい、良かったよ。じゃあ良く聞いていてくれ、ユーノはスクライアにいた頃──」
今思えばこの日は本当に思い知らされる1日だったと思う。
「虐待を受けていたんだ。」
私達は彼の事を何も分かっていなかったのだと。