それと2019秋イベも投稿した日付から約一週間後とか、中規模に留める可能性が高いので楽しみですね(その前に資源貯まるかな?)。
以下はあらすじです。
~あらすじ~
南方棲鬼の出現で一度は危機に陥るも、薩摩を中核とした援軍の強力な援護を得て生き延びた叢一達。
一同が帰路に着こうとした時、思わぬドロップ艦が姿を現す。
後日談 一日目
戦いは終わった。
この世界に特Ⅰ型駆逐艦叢雲として顕現した。
次に目覚めたショートランド泊地では比叡や橿原司令官、叢雲の姉に当たる白雪や初雪、軽空母飛鷹と出会った。
そこからは恐ろしく長く感じた夜間行軍の始まりで、最初は死の恐怖を感じることもあった。雪風が傍に居なかったら、今この海面に立っていることはなかったと思う。
それでも一度は死にかけたと思う。むらくもと交信する事で今はまだマシだけど、それでも負傷しちゃったから後でどうにかしたいな。
これで後は隊列を整えて、本土から来た艦娘にとっては前線拠点、僕や白雪達にとっては母港であるショートランド泊地に帰投するはずだったんだけど。
「久し振りだな、大和。この姿では初めましてか?」
「久し振りで良いわ。まさかこんな形で会えるとは思っても見なかった。会えて嬉しいわ、武藏」
唐突にドロップ現象(因みに僕は初めて見た)が発生して、大和型戦艦二番艦武藏がドロップした。あまりに予想外だったのか、武藏がドロップした直後は僕を含めてほぼ全員が呆然としていた。
すぐに薩摩がそれを注意したので、みんな我に返ったけど。戦闘後とは言え安全と確認されたわけでもないから、敵がいつ出てくるかも分からないし当然だとは思う。
「はいはい、注目! 貴女が武蔵よね。私は薩摩。日本初の国産戦艦、準弩級戦艦薩摩よ」
手拍子しながら薩摩が話し掛けた。手拍子の音響が静寂に包まれたソロモン諸島に響き渡り、山彦のように聞こえた。
「準弩級戦艦。と言うことは、私にとっては先達か」
「そう言うことになるわね。それで、一つだけ聞きたいことがあるのだけど」
「なんだ」
「今この場にいる艦娘で、誰に着いていきたいかしら?」
薩摩の質問に武蔵は首を傾げるが、聴かれたことには素直に従うみたいだ。目当ての相手を探すように視線を巡らせる。
少しして、僕たちのうち一人に視線を留めた。
「──貴様、名前は?」
「佐世保第1鎮守府所属、特型駆逐艦、綾波と申します。よろしくお願いしますね」
自己紹介しながらぺこり、と会釈した。今のやり取りからお目当ての相手を見つけたと察せられるけど、詳しいことは僕には分からない。帰ってから座学を受けるなりしないと。
「叢雲ちゃん、移動の前に楽にした方がいいですよ。肩を貸しますね」
「悪いわね。お言葉に甘えるわ」
こちらの負傷を気遣ったのだろう、白雪が曳航を申し出てきた。傍らには初雪もいる。
右脇腹に負った傷口からは変わらず血を流し続けていた。戦闘が終わって緊張が抜けたからか、今は立っているだけでも辛いので正直助かる。
「それと、叢雲ちゃんの槍は回収しておきました。損傷しているので、艤装としては無力化されてますけど」
「それでも、回収は出来た。私にとって無くしたくないものだったし、その、感謝してあげるわ……」
言ってる間にそっぽを向いて言った。槍は確かに損傷していて、横に突き出た刃先は何本か欠けている。やはり大和型の砲撃には耐えられなかったのだろう。
ただそれでも全壊はしていないし、白雪が探して拾ってきてくれたのが嬉しい。ただそこは叢雲クオリティ、ここで素直じゃないツンデレをしなければ。
「ここから、ショートランドまで……結構かかると思う。二人で曳航しても……どれだけかかるか」
今のツンデレ発言を聴いたからか、初雪がジト目で見ながら言ってきた。
「最低でも私が雪風達と来た時と同じくらいかしらね。頑張って耐えるしかないわ────ゴホっ、ゴホゴホッ!」
初雪にそう言った直後、唐突に咳き込んだ。慌てて空いた左手で口元を覆ったら、微かに温度のある何かが吐き出される。
「────嘘っ」
左の手のひらには、真っ赤な血糊が付いていた。それを見た僕は、更に視界までが揺らぐ。
急に体から力が抜けていく。海面に立つだけの力を失った体は倒れこみ、激痛が走った。次に痙攣が体を揺さぶる。
「叢雲ちゃんっ!? しっかりして、叢雲ちゃん!!」
激痛で混濁していく意識のなか、焦ったような、泣きそうな声で叫ぶ白雪の顔が霞んだ視界に映った。
「し、らゆ……き」
何とか声が絞り出して名前を呼び、限界が来た。
徐々に視界は暗くなっていき、体を襲う激痛すら意識と共に遠退いていく。
そして僕は、意識を手放した。
◇◇◇
叢雲は容態が急変して倒れ、気絶した。元々、曳航しようと傍にいた白雪が更に呼び掛けようとしたが、いきなり叢雲から強烈な光が溢れる。
「──何が……っ!? これはっ」
光が収まった時、白雪は驚愕した。
叢雲はショートランドを出撃した時と同じ形態に戻っていたのだ。正確には敵旗艦に大破させられる前の状態で、重症だったはずだと雪風が教えてくれた。
「そんな……!?」
それが本当なら、早く入渠させなければいけない。現に、叢雲が倒れた海面には流れた血が滲むように広がり始めている。出血も深刻だった。
「落ち着きなさい。取り敢えずよく見て」
その時、一人の艦娘が声をあげた。誰もが視線を向けたその先には、大和達増援組を統率して戦闘に加わっていた戦艦薩摩がいた。
「全身血塗れな状態で分かりにくいけど、薄く赤い光を纏ってるわ」
言われて白雪を含む全員が注目した。確かに言われてみれば、叢雲の体を赤い光が薄く包んでいた。
そして、その現象を白雪は知っていた。
「まさか、改造の条件を満たしたんですか!?」
「その、まさかよ。改造が可能な段階になったことで、一時的にだけどこの駆逐艦はまだ大丈夫そうだわ」
艦娘には改造可能な段階が、日本で確認されるだけでも二段階存在する。
まずは『改』。これは一般的に普及した改造で、艦種問わずどの艦娘でも可能になっている。
次が『改二』。これは近年になって開発された改造であり、この場にいる艦娘では綾波と夕立、金剛が該当する。
今回の場合は前者だった。元々、特Ⅰ型の駆逐艦娘は大して高い錬度は必要無かったが、叢雲は鬼・姫級との度重なる戦闘で貢献していた。その関係で改装するに足る経験が貯まったのかもしれない。
更に、改造にはある利点が存在する。改造すれば例え大破していても修復できる点だ。急いでショートランドに帰投し、ドックで改造を受ければ彼女の傷が癒えるだろう。
「把握できたようね? なら、この娘を預かるわ」
白雪達が納得したのを確認して、薩摩は海面に倒れる叢雲を拾い上げた。
「……改装するために、先に叢雲ちゃんを連れていくんですね? なるべく早く済ませるために」
「良く分かってるわね」
「私だって、“薩摩道場”の門下生ですから」
薩摩道場とは、日本国防海軍に所属する艦娘が構成した派閥の一つである。白雪は薩摩に教えを受けた弟子の一人だった。
「叢雲ちゃんのこと、お願い致します。薩摩師範」
「任されたわ」
白雪の言葉を背に受けて、薩摩は立っていた海面から瞬時に飛び出した。
◇◇◇
「行ってしまいマシタネー、相変わらずpowerfulな人デース」
水平線の彼方を見つめて金剛は言う。同じくそれを見ていた菊月が話し掛けた。
「実地試験艦隊旗艦に意見具申を許可願いたい」
実地試験艦隊とは、本土からの増援を指した正式な部隊名だ。今作戦の前提となった南方棲地強行偵察作戦の直後にドロップした戦艦大和の性能評価、改二改装した綾波と夕立、同じく改装した旗艦である金剛で編成されている。
薩摩が同行していたのは、本人が希望したからだった。金剛達が本土を出発した時点では、南方作戦がここまで泥沼化するとは想定していなかった。
彼女が同行したのも改装直後はどうなるか未知数の改二艦3、錬成途上の新鋭戦艦と軽巡1駆逐1の不確定要素が多い編成だったからである。
「許可シマス。何デスカ菊月?」
「そろそろここも安定化した。私は目的の場所に向かいたい」
菊月はその為にここまで来た。大和の護衛、金剛達の支援という役割を請け負ったのも、今まで待ち望んできた目的を果たすためだ。
「なら付き添いが必要デスネ、ワタシも行きマスヨ?」
「綾波も残ります。まだ南東の敵艦隊が残ってるはずなので、それに備えた方がいいと思います」
「夕立も残るっぽい! 素敵なパーティしましょー」
「えっと、大和は」
実地試験艦隊の面々が菊月に同行すると進言するなか、ドロップして日の浅い大和は判断に迷っていた。
「金剛、私は大和と一緒にショートランドまで戻るわ」
「え」
言い出したのは矢矧だった。
「構いマセンヨ。ヤマチャンも錬度はまだ低いデスカラ、無理しない方が良いネ」
「助かるわ。菊月、ここで別れるわね」
「ああ。ショートランドには我々も後から向かう」
「あの、私は」
話がトントン拍子で進んでいく。その間にも大和は何か言おうとするが、結局はドロップ直後の武蔵を連れて先に戻ることで話が纏まった。
「金剛さん。私達二水戦は十八駆を残してショートランドに戻ります」
そこで神通が話を切り出した。
「二水戦が抜けた後はどうなってマスカ?」
「一水戦が引き継ぎます。その後は十八駆も後退してもらいます」
「ならワタシ達も構いマセン。白雪、初雪、比叡?」
「お姉様には申し訳ありませんが、ショートランドに戻ります」
「私も戻らせて頂きます。泊地を空けたままにはしておけませんから」
「同じく」
名前を呼ばれた三人がそう返した。
「ならmeetingはこれでfinish! 皆サン、分かれてクダサイネー!」
「「「 はい! 」」」
金剛の号令に、神通達二水戦とショートランド組、二水戦からこの場で残る十八駆と菊月達、大和達先行帰還組が応えた。
その後、南方作戦に参加した艦娘達はそれぞれの行動に移った。
◇◇◇
『う、ん……? ここ、は』
エコーが掛かった自分の声。ということは、ここは僕と叢雲の内側か。
『気が付いたかしら』
前世から聞き慣れた叢雲のエコー掛かった声が聞こえてくる。視線を向けると、叢雲がこちらを覗き込んでいた。
『叢雲。僕は、どうしてここに』
『受けたダメージが貴方の魂の許容する範囲を超えそうになったのよ。幸い、ちょうど改装できる段階にあったからまだ死んでないけれど』
『改、装?』
どう言うことだろう。あと、後頭部に何だか柔らかくてほんのり暖かい感触がする。ちょっと気持ちいいな。
『ここで上手いこと説明はできないわ。むらくも! 叢一が起きたわ』
『あいよ』
叢雲が呼ぶと、同じようにエコー掛かった声が返ってきた。後ろから足音が聞こえてくる。それは段々近付いて、すぐ近くで止まった。
『どうやら、目が覚めたようだな? お姫様の膝枕は心地よかったかな?』
『…………え?』
話し掛けてきた声は叢雲が呼んだ時からもその主はむらくもだろう。同名だからややこしいな。でもそれどころじゃない。
今、彼女は何て言った?
お姫様の膝枕?
この精神世界では僕と叢雲、むらくもしか居なくて。つまりはむらくもが言ったお姫様も僕を覗いては一人しか居ないわけで。
『な、何よ……!』
頭上の叢雲に視線を向けると、顔を赤面させていた。
『あー、叢雲』
『何……っ』
『率直な感想なんだけど、男子高校生的にはすごく良かったよ』
そう言った僕の表情をだらしないものに見えたかもしれない。でもしょうがないよね?叢雲みたいな美少女の膝枕とか、夢みたいな体験だし。
『……ね』
ぼそり、と呟きが漏れ聞こえた。
『ん、何か言った?』
『勘違いしないでよね!』
何かの前置きのように叫んだ。
『別にアンタの事なんかどうとも思ってないんだから! アンタと私の内側の世界でも、流石に甲板上で寝かせておくのもどうかと思っただけだしっ。 それだけなんだからッ!』
『テンプレなツンデレ発言ありがとう。この体になってからはそう言うの聞いてなかったし、うん。これでこそ叢雲だね』
『本当にな。ここまでお約束なリアクションをしてくれるとは、見た目通りに可愛いじゃないか』
叢雲の反応を見た僕とむらくもがそれぞれ感想を言う。
『アンタは何時までそうしてるのよッ!』
『ガッ!? ~~!』
いきなり枕代わりにしていた膝を退けられ、勢い良く甲板に頭を打ち付けた。肉体に影響のない精神世界で木製の甲板とはいえ、馬鹿に出来ない激痛に襲われて悶絶した。意外と固いな、駆逐艦の甲板。
『そんなことよりっ、むらくも! 今の状況を説明して頂戴』
『はいよ。立てるか、叢一?』
『うぅ、単純に痛いだけなんだけど地味にキツイ』
気遣ってくれたのか、むらくもが手を差し出してきた。
そこで初めて、この世界でのむらくもの姿を目にした。
頭に被っているのは簡素な構造をしている紺色の制帽、確かスコードロンキャップだったかな? 『第ニニ護衛隊 むらくも』と刺繍で描かれていた。
服装は自衛艦だった史実に基づいたものらしく、白を基調とした男性海士の着るセーラー服に女性用の丈が長いスカートを組み合わせたもの。これらはむらくもの記憶から引用したから分かった。
容姿については叢雲と明らかに異なっていた。
流れるような銀色、夜間なら光の反射で青に見える長髪だったのに対し緑色の短髪だった。瞳の色は金色で、背は叢雲よりやや高いくらい。
『そんなに見つめてどうした、叢一? 私に惚れたか?』
『別にそうじゃないんだけど、君の姿を見るのは初めてだったし』
『そうか。戯れもここまでにして、本題に入ろう』
面白半分でからかっていた自覚はあったみたいだ。
『まず現状についてだが、現実の肉体は問題ないだろう。倒れて気絶した直後には、改装可能な状態だったからな。今は戦艦薩摩が曳航してる最中だ。超高速でな』
『超高速と言うと、どれくらい?』
『冗談みたいな速力よ。長距離を高速で跳躍しながらショートランドに向かってるわ』
『このペースで移動すればショートランドまでそんなにかからないだろう。到着までは20分というところだな』
先の戦闘でも常識はずれに思えたけど、想像以上に凄い艦娘だったらしい。
『むらくも、一つだけ聞いても良いかな?』
『何かな? 状況確認は済んだと思うが』
読みは同じでもニュアンスから反応できるらしい。叢雲もそれは同じな様で、困惑した様子もない。
『多分、少しは関係あることだよ。君と叢雲、二人についての事だから』
今まで戦闘に明け暮れていて必死だったから考えもしなかったけど、今になって思えば不思議だったことだ。
『何故、この世界で叢雲が僕と融合するまで顕現出来なかったか。それに、どうしてむらくもと三位一体の状態になったのか』
はっきり言って疑問だ。むらくもの記憶を見た限り、人類と深海棲艦の初接触から26年が経過してるはず。原作で登場した叢雲以外の吹雪型の艦娘は見かけたのに、彼女は僕と融合しなければ顕現出来なかった。その原因が分からなかった。
むらくもに関しても同様だった。同名であっても、艤装もベースとなった船体も別物だ。にも関わらずこうして共生できている。
『何故、か……。叢一こそ、既に薄々気付いてるのではないか?』
『……なら遠慮なく聞くね』
自信がなかったけど、本当は想定できていた。叢雲とむらくも。同名であっても全く異なる艦が共生できた理由を。
『特型駆逐艦としての叢雲。みねぐも型護衛艦としてのむらくも。両者を結びつけたのは、名前だよね』
『……正解だ。正確には、名前に込められた
補足を交えて、むらくもは肯定した。
『我々艦娘は、前身となったのは軍艦だ。それぞれ、進水時に命名されて就役する。この名前を付けると言う行為が重要なのさ。軍艦は完成した時点ではただの巨大な鉄屑だが、名前を付けることで個としての存在になる。命名とは、対象となる物体に命を吹き込む行為とも言える』
『お互い、沈んでいた場所が問題でもあったわね。似たような座標で沈んでいたせいで、互いに
『……僕はその為の緩衝材だった? 駆逐艦叢雲を形はどうであれ、艦娘として顕現させるために』
もしそれが猫吊るしの目的だったとしたら、僕はタイミング良く手元に転がり込んだ素材だったのか。
『我々についての考察はこんな感じで概ね間違いないだろう。後は気長に待つとしよう』
『薩摩がショートランドに辿り着いて、原作通りなら改装して損傷も無くなるよね?』
ゲームでは、例え大破でも改装可能な状態ならそれが可能だった。
『その認識で間違いないとは思うが、私と叢雲の損傷を計算に入れればそれなりの時間、意識は戻らんだろうな』
『そう言えば、叢雲の時は大破しちゃってたよね。魚雷を至近距離で撃たなければ良かった。ごめんね』
あの時は危険を顧みず突撃するだけだった。雪風の酸素魚雷だけが頼みの綱で、時間稼ぎさえ出来たかは怪しい。
『次からはもっと慎重になりなさい。大胆に突撃するのは新兵には早すぎるわ』
意外なことに、叢雲は注意しただけで済ませた。
『……怒らないの?』
寧ろ、初期の信頼関係が築けてない時期に有りがちな雷を落とされるかと覚悟していたんだけど。
『なに、怒ってほしいの?』
『そうじゃないけど』
『なら、良いでしょ。さっきも言ったけど、アンタは戦闘処女ではなくなっただけの新兵よ。それに、相手が悪すぎたわ』
『叢一の前世でも撃破難易度が上位に位置する程の強敵のようだったからな。それより、良く生きてたものだ』
むらくもが言っているのは、前世の原作についての記憶だろう。少なくともドロップ直後の艦娘なんかで太刀打ちできる相手じゃないし、改二か高錬度の艦娘じゃないと難しいと思う。
『……そろそろ時間切れのようだ』
この世界に顕現した時と同じように、叢雲の船体が光を放っていた。各部が光と共に、徐々に消失していく。
『取り敢えず一言だけ言っておく。私達の身の上だが、なるべく他人に漏らさない方が良い。それだけは注意してくれ』
『駆逐艦叢雲が実は男子高校生を取り込んだ存在で、しかも表の精神が貴方だなんて信じてもらえるかは疑問よね。信じてもらえたとしても、そこからリスクを生むことになりかねないけれど』
『……分かった。気を付ける』
少なくとも、信用に足る相手でもない限り秘密を共有するのは控えた方が良いだろう。
僕の言葉を聞いて、むらくもは満足げに表情を緩めた。
『私の力は常に、叢一と共にある。何時、何処でどう使うかは君を信じて任せる。機会があればまた会おう』
船体を包んでいた光は僕と叢雲、むらくもにも及んでいた。
それらが顔まで到達して視界は白く塗り潰されていき、やがて意識が途絶えた。
◇◇◇
日本国防海軍ショートランド泊地埠頭
「古鷹さん、何か見えますか?」
「まだなにも見えません。もう少し待ってみましょう」
古鷹の背後から吹雪が声を掛けた。水平線の向こうを睨みながら、古鷹が答える。
「大破した叢雲ちゃんのために明石さんが改装ドックの準備をしてくれましたけど、これで良かったんですよね?」
「改装ドックは叢雲ちゃんが“改”になれるだけの錬度に達したからだと思います。それで間違いないでしょう」
だとしたら、相当な修羅場を連続で潜り抜けたと言うことになる。まだドロップ直後で実戦未経験の状態だったにも関わらず、驚異的な戦果と言えるが古鷹には尚更不安だった。
初陣から生と死のギリギリのラインで戦うのはあまりに無謀だ。幾ら泊地の防衛戦力である自分達までもが駆り出される事態とはいえ、それで死地に飛び込むことなどなかったはずだ。
「あっ! 古鷹さんっ。12時の方向に水柱です!」
吹雪と古鷹の視線の先にある水平線上で水柱が屹立する。次の瞬間には、泊地手前の海面でも水柱が立ち上った。
少しして水飛沫が晴れると、一人の艦娘が姿を現した。恐らく薩摩だろう。片腕には気絶していると思われる叢雲が抱えられている。
「叢雲ちゃん!」
率先して吹雪が埠頭から降り立ち、古鷹もそれを追い二人で駆け寄る。
「出迎えてくれて助かるわ。ドックの準備はできてるわね?」
「はい。明石さんが待ってくれてます」
「了解したわ。この
手荷物でも預けるように、気絶した叢雲を手渡してきた。
叢雲の体はどこも傷だらけで出血も多いが、赤色の淡い光が包んでいるのを見る限りまだ間に合うはずだ。
「さて、私はここの提督に挨拶してこようかしらね。あの飲んだくれは何処かしら?」
「私が案内します。こちらへどうぞ。吹雪ちゃん。叢雲ちゃんをお願いしますね」
「はい!」
案内を申し出た古鷹は吹雪と別れ、薩摩を先導して歩き始めた。
◇◇◇
アイアンボトムサウンド海域より北に位置するF諸島、ンゲラスレ島の沖合い。
そこでは、本来の目的を果たした菊月とそれに付き添う金剛の姿があった。
「すまない。遅くなった」
「そんなに待ってないネ。思ったより早かったデース」
菊月の言葉に金剛はそう答える。
「それで、持ち帰る物品は選んで来たんデスネ?」
「ああ。帰路途中で交戦する可能性を考慮すれば、あまり大きな物は持ってこられなかったが。これだけは持ち出せたな」
言いながら、金剛の目の前に差し出す。
「フム? ひょっとしてそれは、駆逐艦菊月の部隊識別帽デース?」
「ああ。船体は原型すら留めていなかったが、それでも艦内には入れた。これはそこで見つけてきたものだ」
金剛の推測を菊月は肯定した。彼女の言う通り、それは酷くボロボロに傷付いてはいるが、菊月乗員であることを示す識別帽だった。
「私は今まで、自分の半身が存在していて、そこで確かに沈んだのだと言う証を求めてきた。その望みは叶った」
「それは良かったデース! 菊月の目的もこれでfinish! さて。綾波、夕立?」
『周辺にはぐれの敵駆逐艦が来ましたが、問題なく撃破しました』
『eliteですらないただのロ級で歯応えないっぽい』
周辺を警戒していた駆逐艦二人が無線で返答してくる。
「十八駆はどうデスカ?」
『ル級が付近に居ましたけど、排除完了しました!』
無線から活発さを感じさせる声が聞こえてくる。二水戦の三個ある駆逐隊のなかでは底抜けに明るく、気配りの出来る駆逐艦として評判の彼女だ。激戦に次ぐ激戦でもそれの衰えを感じさせない。
「他に敵が来ても面倒デース。ショートランドに撤退シマショウ、各艦は合流してクダサイ」
『『 了解 !!』』
「では、行きマスヨ菊月」
「承知した」
踵を返して島から離れていく金剛の後を追おうとして、トウキョウ・ベイの海岸に座礁した残骸を振り返る。
「さよならだ、かつての私。いつか、静かな海で会おう」
それだけ言い残し、今度こそ金剛の後を追い掛けた。
以上、色々な要素を導入した回と相成りました。
ここで一つ連絡させていただきます。この作品は現在連載中の作品、『艦これ×鋼鉄の咆哮~力の重さ、強さの意味』と世界線を同じとすることを決めました。
元は本作が見切り発車の作品だったので、鋼鉄サイドなのか別の世界線にするのかをハッキリさせるのが遅れてしまい、本当に申し訳ありません。
これからは本作を鋼鉄作品の外伝として連載していきますので、読者の皆さま方にも出来ればお付き合い頂ければと思います。
後書きが長くなってしまいたが、以下は次回予告です。
~次回予告~
重傷を負って倒れた叢一は、ショートランドで改装して傷を消した日から二日以上眠り続け、目を覚ました。そして目の前には見舞いに来たらしい雪風と、頬を緩ませた不知火が彼女に抱き付いていて……?
「雪風ニウムを補充しています。何ですか、不知火に何か落ち度でも?」
次回、後日談 四日目
新たに自衛艦娘出したいけどどうしよう?
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ミサイル護衛艦あまつかぜ
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対空護衛艦たかつき
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ヘリコプター護衛艦しらね
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どれも一緒に出そうか