まだ先があるって言うのに、自分でも心配になってきますね。
それはそうと第11話ですが、特定の艦艇毎に解説する流れになるのでしばらく続くと思います。
それでは本編をどうぞ。
蕪木、加藤ら特務運用群のトップとの対談から約一時間後。私は艤装を展開して、泊地の埠頭から洋上に出ていた。
私の艤装は、駆逐艦叢雲の艤装が改装されたことで修復されていたらしく、2基の76mm連装速射砲と三連装魚雷発射管もこの目で見る限り元通りだった。
隣に視線を向ける。その隣を並走するように、1隻の内火艇が航行していた。その船上には操縦する下士官、更に蕪木と加藤の姿があった。
『むらくも、間もなくひゅうがに到達する。スターンゲートの正面まで行ったら、デッキ科員の誘導に従ってくれ』
「了解した」
今はまだ日中で、強引に連れ込まれた二日前の夜に比べれば明るい。だからこそ、目の前にある艦艇がいかに巨大か分かった。
第一甲板(一番上の層)までは見上げるほどに高い。船体中央右舷側には艦上構造物(航海、作戦指揮等の艦橋)が配置され、艦首舷側には自衛の為か速射砲があった。
指示通りにひゅうがの後方へと回り込んだ。スターンゲートは既に解放されていて、薄暗いけどウェルドックの内部が覗ける。
解放されたスターンゲートから目測で40m位だろうか? この規模の強襲揚陸艦型にしては舟艇等を収容するウェルドックが狭い。
ウェルドックの水面より高い位置にある壁には通路もあり、そこには暗所でも認識しやすいようにか、黄色のベストを着込んだ男性のクルーが手に持った誘導灯を振っていた。彼がデッキ科員だろう。
デッキ科員の振る誘導灯の動きを見て、ウェルドックより奥にある傾斜まで進む。
「よく来たね、待ってたよ」
話し掛けてきたのは傾斜の上に居る黒色を基調としたセーラー服の少女、十傑の時雨だった。傍らには同じく十傑の山城も居る。
「確か、時雨と山城だったな? お前達、どうしてここに」
「やっぱり解るんだね。三位一体なら当然かもしれないけど、とにかく宜しくね? それとひゅうがには運用する現場の声を聞きに来たんだよ。僕は戦闘以外だと、兵器の開発アドバイザーって言う立場に居るからね」
これがその名刺だよ、と言いつつ名刺を渡してきた。それには『国防省技術研究本部 先進技術センター 特別技術研究室/装備開発臨時顧問 大尉相当艦 時雨』と書かれていた。臨時と書かれているのは、非正規に採用された役職なのだろう。だとしたらかなり期待されていることになる。
「現場の声を聞きに来たと言うなら、もしや? ひゅうがの装備は貴艦が……?」
「厳密には違うよ。僕はただ、原案を出しただけ。それを形にしたのは技本の仕事だよ。こうして来たのもお使い程度の役目だしね」
「こんな大型艦の視察をお使い程度か」
どう見ても設計は強襲揚陸艦がベースだぞ?
起工から進水、就役するまで何年前までか知らないが、この艦は新しいように見える。新造艦とは思うが、何時からそんな立場に居たというのか。国内有数の実力者で兵器開発に口を出せるマルチスキルの持ち主か、リアルチートだな。
「時雨は艦娘のなかでも特に優秀な頭脳の持ち主なの。それに眼を着けた前任の技本室長が招いて、意見を求めた。そうしたら大成功よ」
それまで黙っていた山城が我慢しきれなくなったのか、自分の事のように時雨を褒めちぎった。前から思っていたが、山城は時雨を大層好いてるようだな。
「さ、ここからは案内するよ。ついてきて」
「了解した」
ウェルドックの傾斜を登ると同時に艤装は収納した。艦娘の艤装は魂に格納でき、こうして自由に展開することが出来るらしい。
初陣で出撃した際、明石が叢雲の艤装を台車で運んできたのは、顕現した時に気絶してしまい、ショートランドに運んですぐ艤装を取り外したからだそうだ。
先導する時雨、山城の後に続いて歩く。その直後、時雨が右側に指先を向けた。そこには弾薬を示すマークが描かれた木製ケース、ドラム缶等が床に固定具で固定されて置かれていた。
「ここはひゅうがの第4甲板、艦後部に位置するドック区画だよ。あれは艤装整備隊が艤装への弾薬、燃料の補給を行うスペース。今は半舷上陸で、残ってる人員も思い思いに休んでるから誰も居ないんだ」
『半舷上陸。確か、軍艦が泊地や鎮守府のような主要軍港で停泊する際、右舷または左舷から順に休息を摂らせて、上陸を許可するんだっけ?』
『概ね合ってるわね』
年若い割りには中々どうして、良くしってるじゃないか。
『年若い割りにはって……。むらくも。なんだか年寄り臭くない?』
私は戦後の海上自衛隊にあって、私は様々な経験をしてきたからな。
みねぐも型を含む対潜護衛艦、対空護衛艦のハイローミックスによる八艦六機体制の時代。
就役当初から期待された新装備として配備された無人哨戒機《DASH》、国産のFCS-1Bと76mm速射砲を初めて装備して運用データの収集に従事。
更には海上自衛隊発足以来四代目となる護衛艦隊旗艦を務めた。
「次は第3甲板に行こう。この艦の艦載機が置いてあるよ」
「艦載機?」
強襲揚陸艦だから、航空機も配備しているという事か?
「自分の眼で見る方が早いさ。艤装格納庫を抜けて階段で第3甲板に上がるよ」
それから更に先へと進んで格納庫の一番奥まで辿り着き、壁際にある通用口を潜って急勾配の階段を上っていく。その先も通路は天井は低く横幅も狭いため、先導する時雨と山城に注意を受けながら進んでいった。
「ここが航空機格納庫。さっきまで居たドック区画のちょうど真上に来たから、今居るのはその中央だよ」
内部は思ったより広々した空間だった。そのなかに所狭しと、艦だった頃、
「何だあれは? 艦娘の艤装に近いように見えるが」
どちらかと言えば海外のSF映画なんかに出てくるような、パワードスーツにも似た装備だが。
「近いと言えば近いよ。あれは開発元がアメリカなんだけどね、
実在する戦闘機を模したものでもある、と時雨は補足した。
「……まさか、あれで深海棲艦に?」
一応、座学で叢一が学んだので分かる事だが無理だよな?
まず前提として、人間或いは人間が扱う兵器の類いは深海棲艦にダメージを与えられない。
何故ならば、妖精の加護を普通の人間は受けられないからだ。それを受けられるのは同時期に出現した現在の対深海棲艦戦の主兵である艦娘、或いは例外的に存在する加護を受けられるごく稀少な人間のみ。
だから、妖精の加護を伴わない兵器をどれだけ生産しても、深海棲艦の航空機ですらまともに歯が立たない。対深海棲艦を想定した新型は作るだけ無駄なはずなんだが。
「言いたいことは大体分かるよ。だから対深海棲艦用と言うのは寧ろ建前だと、僕も技本も考えてるよ」
「本音は?」
「艦娘先進国である日本、英国等の欧州各国の防衛力をコントロールしたいんじゃないかな。自国製の兵器を売り込んで利益を得たいのもそうだけど、それぞれの国が同様の兵器を持ってればその分だけ保有する兵器の枠は削れるし、アメリカとしても都合が良いんだよ。例えば自国以外、全世界が敵になっても良いようにね」
「……最悪に備えよ、ということか?」
「その解釈で間違いないと思うよ」
時雨は肯定して頷いた。いつの時代でも、彼の国は横暴な振る舞いが変わらんようだな。艦だった頃も乗員達が苦労したものだ。
「おーい、ちょっと待ってよ」
時雨の先導で再び歩き始めようとしたその時、後ろから声を掛けられたので振り返ると加藤中佐が居た。運動不足なのか息を切らして走る彼の後ろからは、蕪木准将が悠然と歩いている。
「加藤中佐、叢雲は僕と山城が艦隊を案内します。後は任せていただいて大丈夫ですよ」
「そう言うわけにもいかないよ。招待したのは僕ら特務運用群なんだから、筋は通さないと」
「心配要りません、その辺りは根回ししておきますので」
山城が腕を組ながら言った。彼女は十傑の第1位であり佐官に匹敵するほどの権限を持つらしいが、加藤中佐以外にも艦隊の最高指揮官が居る。
「山城、彼女は私が艦隊へと招待した。この件は、一応は防衛艦隊司令部からも許可を得ている。江崎海上幕僚長閣下も認知した上でな」
蕪木群司令が何かしら主張するところまでは予想してたが、こうして見ると異なる部署同士の権力争いみたいだな。
互いに海上幕僚長という海軍のトップがいるし、特務運用群は防衛艦隊司令部経由で海上幕僚長に報告までされているから、どちらが有利かは決まってるようだ。
「……そこまで話が済んでいるなら仕方ありません。ここは諦めましょう」
「解ってくれたようで何よりだよ。所で……何処まで説明した?」
渋々と言った調子で山城が引き下がると、加藤は視線を時雨に向けてから訊いた。
「ひゅうがの最大の特徴であるドック機能と、艦載機であるトップアームズの開発経緯については話したよ」
「よし。それなら現在の国防軍が、トップアームズに求めた役割について話しておこうか」
加藤は艦載機であるF-4 BJに近付いていく。時雨達はここで別れるらしく、先程出てきた航空格納庫の出入り口に歩いていった。
「まず最初に、国防軍ではトップアームズを対深海棲艦用の戦力として数えてはいないんだ」
「対抗可能な戦力じゃないなら何故?」
「理由は簡単だよ。例え倒せない相手でも、生き残ることなら出来る。その可能性を向上させる手段として、トップアームズが選ばれた」
加藤の言葉を聞いて、私はトップアームズという兵器の優位性について想像してみる。
装着型の機動兵器であるトップアームズは、従来の攻撃ヘリや戦闘機に比べてかなり小型で軽量だ。それこそ、全長十メートルを超えることも珍しくないジェット戦闘機と比較してみても、トップアームズは小柄で小回りが利く。
それこそ○ーベル映画のアイ○ンマンのようなものかもしれない。飛行するところを見てないので何とも言えないが。
更に言えば、深海棲艦の艦載機はかなり小型だ。それこそ前世でも普及したドローンと変わらないサイズだし、従来の戦闘機が狙おうにも赤外線探知や空対空レーダーでさえ捉えるのも困難だ。
だからと言って、トップアームズならそれが解消されるわけでもないだろうけどな。第一、深海棲艦はその悉くがレーダーやソナーで感知できない。妖精の加護が伴わない為だ。
「まさか」
「多分、君の想像した通りだよ」
加藤がこちらの思考を読んだように頷いた。
「トップアームズは艦隊防空の為の兵器だけど、搭乗者が居なくては動かせない。パイロットは、これらに搭乗して艦隊を生かす為の囮になる」
ゴクリ、と生唾を呑み込んだ。
相手を撃墜できるわけでもないのに、同じ土俵に立って有視界戦闘しろと言うのだ。死ぬ確率が高すぎて、志願者を集めるのも大変じゃないのか?
「──それでもこの艦への配属を志願した」
「……神山少佐」
話し掛けてきた相手は、第一印象として無骨さを感じさせる男性だった。
タイミングから考えて、トップアームズの
「紹介するよ。叢雲、
「まずは初めましてだな。紹介に預かった神山だ」
「駆逐艦叢雲の同居人、みねぐも型護衛艦、三番艦のむらくもだ。噂と言うが、具体的には?」
「なに、大したことじゃない。ドロップで顕現して処女航海を実戦で経験し、先の作戦でMVPを飾ったスーパールーキーがショートランドにいる。そんな感じの噂だ」
『正直、あれをMVP扱いで良いのか今となっては疑問なんだよね』
叢一。私達の関係性を鑑みるに、これはもはや必然だぞ。だからこそ生還できたのだ。
『むらくもの艤装で戦ってる時だって損傷を負ったじゃない? 結局は薩摩達が間に合ってくれたから助かったけど』
それも踏まえて、だ。
「──難しい顔をしているな? 自分の活躍に疑念があるなら、気にすることはない。運も実力のうちだ」
「……私は、そんなに分かりやすいか」
「流石に練達したベテランの艦娘と比較しない方がいいが、表情は豊かだな」
「……今度からは、白雪からその辺りについて習うことにする」
今後のやりたいことが一つ追加されたことを確認して、神山団司令が話を戻した。
曰く、ひゅうがにトップアームズを配備した理由は艦隊の保全が目的であること。トップアームズを駆る彼ら母艦航空団が上空で
勿論、それは言うほど簡単ではない。トップアームズは人間が装着して活動する強化外骨格に近いもので、飛行用に規格をかなり小型にしたジェットエンジンまで装備した、制空用の機体を装着して高速で飛び回るのだ。
当たり前だが、生存率を上げるための防弾装備は取り付けられている。とは言え敵機をまともに撃墜できる訳がないし、ただ消耗するだけと考えれば気休め程度だった。
「防御できない部分に被弾したらどうなる?」
「諦めるしかないな。次に目が覚めたときはあの世だ」
流石に20㎜以上の機銃弾を受けてはひと堪りもない、と言うことか。人が乗り込む航空機ではなく装着した装備である以上、何から何まで詰め込むのは難しい。何処かのア○アンマンスーツではあるまいし、これが現実なんだろう。
「むらくも。トップアームズの説明は大体終わったし、次に行こう。時間が押してるんだ」
「分かった」
戻った頃には夕方だろうし、夕食を済ませたら白雪と座学の続きがあるんだよな。あとは学習内容をまとめて、感想も込みでレポートを提出しなきゃいけない。
「神山団司令。トップアームズについて色々教えてくれたこと、感謝する」
「礼を言われる程ではないさ。本土に連れていくことにもなるし、また教えることはできるから楽しみにしてくれ。貴艦に妖精の加護があらんことを」
そんなやり取りをして神山団司令と別れた。
その後は居住区、トップアームズの装備を整備するための
多分お気付きの方もいると思いますが、ひゅうがはアメリカ海軍のタラワ級強襲揚陸艦がモデルです。ただ、艦娘運用のために仕様が変更されています。
それと蕪木と加藤のコンビですが、あの二人はとあるライトノベルに登場したキャラクターです。こちらはタグにもある通りになっています。今後はこういった他原作のキャラクターを登場させる予定でいますので、予め御了承くださいm(__)m
では、次回予告です。
~次回予告~
蕪木と加藤の案内で特務運用群の旗艦であるひゅうがでの見学を終えたむらくも。次に向かうのはひゅうがを護衛する巡洋艦こんごう。その艦には、艦乗員が生き残るために工夫を凝らした兵装が搭載されていた。
次回、第11話 むらくも改装計画 こんごう編
新たに自衛艦娘出したいけどどうしよう?
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ミサイル護衛艦あまつかぜ
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対空護衛艦たかつき
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ヘリコプター護衛艦しらね
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どれも一緒に出そうか