お待たせしたついでに申し訳ありませんが、今回は長くなりそうなので分割します。執筆はなるべく急ぎます。
『前衛旗艦矢矧より雪風、電探で敵影は捉えているかしら』
「むらくもさんが何度か潜水艦を捕捉、撃沈しましたが電探に反応はありません!」
離れた海面を航行する軽巡洋艦矢矧と、僕の五メートル後方で航行する雪風が隊内無線でやり取りする。
僕はと言えば、アクティブソナーを起動させた状態で反射してくる音響に耳を澄ましていた。
一般にソナーと言っても大きく分けて二種類の系統がある。
自艦から音波を発信して、捜索対象から反射した音波を受信して包囲や距離を割り出すアクティブソナー。目標が立てる音を探知するパッシブソナーだ。
前者はむらくものような
後者はむらくもには搭載されなかったが、後に対潜戦がパッシブを中心とするようになってからは後発の護衛艦に装備されるようになった。
それで僕が今やっているのは、二種類のアクティブソナーによる索敵と
艦首のバウソナーから
むらくもに搭載されている
ソナーによる索敵を掻い潜って近接してくる潜水艦もいたけど、それは73式短魚雷と71式ボフォースロケットランチャーで対応した。雷撃されたら73式で迎撃、ボフォースで撃沈と言う具合だね。
『そう、了解したわ。改めて思うけど、流石はむらくもね』
「はい! むらくもさんは頼りになります!」
うん。確かにむらくもは頼りになるよ?
必要があったら体のハブを交代して活動してくれるし、白雪の座学と併せて海上自衛隊についてあれこれ教えてくれたりと、普段から勉強させてもらってるからね。
でもさ? むらくもの状態のままハブを渡さなくてもいいじゃない?
昨日のうちに特務運用群の艦艇の4隻中2隻での見学を終えて、それから明石と一緒に改装の話を橿原司令官の所まで持っていったら、同じタイミングで上層部からむらくもに関連する任務が通達されていた。
取り敢えず任務を順調に消化していったんだけど、報酬はすぐには受領できず、統合司令部まで受け取りにいかないといけないらしい。そこは追々、橿原司令官も一緒に本土まで出向することになった。
そこからは夕飯の時間も忘れて明石と話し込んで、様子を見に来た白雪に叱られてから、むらくもはハブを渡してきたんだよ。
むらくも曰く、『たまには私になりきって過ごすのも良いだろう?』とのこと。僕は演技が特別上手い訳じゃないんだから、勘弁してほしいよ。
因みに、白雪は僕が表に出てきた直後に見る目を変えてきた。やっぱり見ただけで分かるらしい。意味深げな笑みを向けてくるので、いつボロを出すか楽しみに待っているんだろう。そう簡単に思い通りにはしないからね?
それで今こうして海上で潜水艦狩り何てしてるのは、後続の任務が出撃だったからなんだよね。
タイトルは《護衛艦『むらくも』、出撃せよ!》で、ゲームで言えば特定の艦を指定する出撃系の単発任務だと思う。概要はサーモン海域北方に出撃、敵水上打撃部隊を撃破すると言うもの。
今朝がたこの任務を知らされ、橿原司令官が泊地にいる暇な艦娘を集めたんだけど、それが意外な組み合わせだった。
戦艦は薩摩、大和。軽巡洋艦は矢矧。駆逐艦は白雪、初霜、霞、雪風、浜風、磯風。むらくもを含む一部を除けば、坊ノ岬組+αって言う感じかな。
坊ノ岬沖海戦と違う点があるとすれば、薩摩と白雪と言う絶対的エースが艦隊に編入していると言うこと。先日の大規模作戦でも見たけどこの二人は別格。
片や国防海軍統合司令部直属の特務艦隊旗艦で最強クラスの艦娘、片やその候補者である十傑第4位。2013年秋イベまでの時点で登場した深海棲艦なら、負けることはまずない。
『随伴より本隊旗艦、こちら薩摩。ヌ級が艦載機を発艦させようとしていたから、先手を打って沈めておいたわ』
『こちら大和、了解しました。引き続き、遊撃行動を願います』
『白雪より戦果報告。リ級が中心の巡洋艦隊を撃破しました。索敵を継続します』
その頼もしい2名の艦娘は無線で敵艦を撃破した旨の連絡をしてきた。今も現在進行形で索敵、発見次第撃沈しているんだろう。水上戦闘で強力に支援してくれてるんだ、対潜戦闘で下手を打たないように気を付けないと。
「──ん? 妙だな」
「どうしたんですか、むらくもさん?」
「……DASH二番機のシグナルがロストした。故障の可能性もあるが」
ソナーの捜索範囲内のギリギリを飛行させていたんだけど、唐突に飛行中のDASHの信号が途絶した。海上自衛隊で運用した当時でも故障による墜落は珍しいことではなかったけど、これは何かが違うように感じる。
「──むらくもより旗艦へ。DASH二番機の信号が途絶した。故障の可能性はあるが、念のため誰か確認して貰いたい」
『それなら私が往くわ。無人機を落としたのが何者か気になるし、実力を考慮すれば一番安心よ』
無線で要請してみると、薩摩が名乗りを挙げた。確かに、彼女ならそうそうやられる危険はなさそうだ。
『分かりました。薩摩にお任せします。むらくもの誘導に従い、当該地点へ移動願います』
『了解。じゃ、ちょっと見てくるわ。また後で連絡するわね』
大和からゴーが出ると薩摩はそう言って通信を切る。
その直前の台詞はまるでコンビニまで行ってくると言うような気軽さで、それだけで大丈夫だという気にさせられた。
◇◇◇
「さて、むらくもの指示した通りならこの辺りのハズだけれど」
大和達後進の艦娘達に絶対の自信を覗かせてから少し経ち、艦隊より先行して薩摩は索敵を実施していた。
今のところ敵影はない。むらくもの無人哨戒機を残骸だけでも発見できれば最低限の役目は果たせるはずだが、未だそれも発見できていない。
(それにしても、この辺りは随分海底が汚くなったのね。綺麗な海だったのに)
時折、足元を見下ろしていた薩摩は内心で呟いた。
当時は艦だったが、薩摩は第一次大戦でもこの海に来たことがある。
本来、サーモン諸島の海は澄んでいた。海底までの水深は浅いため太陽の光が届きやすく、コバルトブルーの海水は海中の景色を眺めることが出来るほどに透明性があるはずだった。
今や、サーモン諸島の海底は人類と深海棲艦双方の船舶や艤装の残骸などで埋め尽くされていた。
26年前の深海大戦初期に人類がまだ艦娘と邂逅していなかった頃、米海軍インド大平洋艦隊を中心に集結した多国籍軍が深海棲艦に挑んだ『大海戦』と呼ばれる戦い。そして、先月と合わせて行われた二つの南方での大規模作戦。
それらの人類と深海棲艦による戦闘で、かつてのような珊瑚礁を眺められそうな程に澄みきった透明感は、既にこの海からは失われていたのだった。尤も、大平洋戦争当時でも更に多くの艦船が沈んだのだが。
「任務でなければ船上でゆっくり眺めてはいたいけれど──! 回避っ」
迫る攻撃の気配を察知し、その場から飛び退く。
飛び退いた海面に波紋を作り、そこを白い航跡が通過していった。間違いなく雷跡だった。
「挨拶代わりに雷撃とは──!」
少し離れた海面に着水し、そこから爆発的な加速で更に跳躍する。
「これを放ったヤツが、DASH二番機を撃墜したと見て間違いないわね!」
雷跡を辿って突き進む。狙うは雷撃を放った敵艦、その撃破による艦隊の安全確保だ。
◇◇◇
『薩摩から平文ですが通信が来ました。敵と交戦したようです。全艦、第四警戒航行序列で戦闘隊形に移行してください』
「こちら前路掃討隊雪風、了解しました! 行きましょう、むらくもさん!」
「了解した」
雪風の誘導で針路を修正、他の艦娘との合流に向かう。
流石の練度と言うべきか、艦隊はすぐに集結した。
僕と雪風が先鋒なのは変わらず、ここに初霜が加わり三隻態勢で前方への警戒に当たる。
その後方を矢矧、浜風が航行して、以上が前衛艦隊の編成になる。
更にその後方から大和、磯風、霞、白雪の順で本隊が航行している。隊列から離れて戦闘中の薩摩を除けば、これが今回の任務に参加した艦娘の全てだった。
「初霜ちゃん。むらくもさんは対潜警戒中で対水上戦闘は難しいので、援護お願いしますね」
「良いわよ。潜水艦以外の標的は、こちらで引き受けるわ」
「……すまないが、よろしく頼む」
対潜護衛艦であるむらくもを含んだみねぐも型には、DASHを運用しながら主砲までFCSでの統制は出来ないことが弱点だった。
だからこそ必然的に僚艦との連携が要となってくるので、援護してくれるのはありがたい。ある意味、当時の海上自衛隊が描いた二種類の護衛艦の運用構想と同じだと言えるし。
「こちらこそ宜しく。貴女の対潜戦闘能力は既に見させてもらったし、アテにさせて貰うわ」
初霜が期待を込めた言葉を掛けてくる。その内容自体は素直に嬉しいし別に良いんだけども。
『闇が深そうな瞳をしてるわね』
『何人か殺ってそうには感じるな』
それなんだよなぁ。
今見せている表情も緊張感を保ったもので凛とした面持ちなんだけど、瞳はハイライトが灯っていない。過去に何があったかは分からないけど、味方である以上は不審な言動は慎まないといけない。
「──むらくも? 何か気になることでもあるかしら?」
「……何でもないぞ」
危ない危ない。山城と言い、白雪と言い、今回の初霜と言い。勘が鋭い艦娘多すぎじゃないかな?
いや、これは女の勘とでも言うべきか。何にせよ、不用意に何か考え込むのは控えるべきかな。
『──旗艦大和より各艦、薩摩からの連絡がありました。敵艦の識別が出来たとのことです』
そんなことを考えてる間に大和から無線で新たな一報が入る。
『こちら前衛旗艦矢矧、判明した敵艦は何だったの?』
『──イロハ級の戦艦、レ級です。連絡によれば、elite個体とのこと。各艦は、対空、対水上、対潜警戒を厳として下さい』
矢矧からの問いに対して、大和が一番聞きたくない情報を伝えてきた。
僕の前世でも、原作では駆け出しの提督には荷が勝ちすぎるほどに凶悪な性能を持ち、それが
どれくらいヤバいかと言えば、開幕は航空爆撃と先制雷撃のダブルパンチを繰り出し、護衛駆逐艦並の対潜能力を併せ持った並の姫・鬼級を凌駕する性能だと言えば、ある程度やり込んだ提督諸氏に伝わるはずだ。レ級eliteとは、それほどに厄介すぎる相手だった。
だけど、薩摩ならあるいは……ん? この反応は
「こちら前衛むらくも、バウソナーが水中の影を捉えた。艦隊より10時の方角、距離約8キロ。深度はやや浅いようだ」
『こちら大和。そちらで撃沈できますか?』
「やってみよう」
反応があった地点までSFCS-3の誘導でDASH一番機を移動させる。それに意識を集中するところで、あることを思い付いた。
「前路掃討隊むらくもより旗艦大和へ意見具申したい」
『こちら大和。何ですか?』
「DASH一番機が墜落することのないよう高度を逐一確認したい。零式水観による観測を要請する」
『了解。飛行中のDASH一番機の現在位置をお願いします』
無線でDASH一番機の現在位置を教えた。それから少し経ってから、アクティブソナーで海中を走査しながら大和の零式水観から送られてくる海面までの高度等の情報を確認しつつ、目的の地点まで移動させていく。
「──む、これは」
「どうしたんですか?」
こちらの呟きに初霜が訊いてきた。
「水上レーダーに感、反応多数が接近中だ」
展開した立体ディスプレイには高速で接近してくる反応が表示されていた。
「敵の艦隊ですか!?」
「敵襲には違いないだろうが、反応が小さい。恐らく飛翔体、艦載機だろうな」
大方、超低空飛行で接近しているんだろう。だから
敵攻撃隊の編成は解らないが、こちらに航空戦力はない。雷爆連合である可能性が高そうだ。
「前路掃討隊むらくもより前衛旗艦矢矧。接近する飛翔体は敵の雷爆連合である可能性がある、迎撃の許可を願う」
『こちら前衛旗艦矢矧。敵攻撃隊への迎撃を許可します』
「了解した。──雪風」
雪風の方を振り返ると、頷いてから叫んだ。
「これより前路掃討隊は、防空戦闘に移ります! 対空警戒!」
雪風と初霜がそれぞれ主砲や対空火器を構え、僕も
今はDASHの誘導のためFCSが使用できないから精度は落ちるけど、これだけでも敵機の撃墜には問題ないはずだ。
次回は薩摩さんとレ級eliteの対決となります。個人的に早く書きたかったので、筆は進むと思っています。
新たに自衛艦娘出したいけどどうしよう?
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ミサイル護衛艦あまつかぜ
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対空護衛艦たかつき
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ヘリコプター護衛艦しらね
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どれも一緒に出そうか