~前回のあらすじ~
むらくもの改装のため、国防海軍統合司令部からの指令に従い関連任務をこなしていく橿原司令官。その大詰めとして出撃任務を受諾し、戦艦大和旗艦の第2艦隊でサーモン諸島海域に展開した。
むらくも(叢一)が敵潜水艦を数隻撃沈するなど対潜哨戒中、艦載機である無人機DASHが信号を途絶させたことに気付く。
それを敵艦によるものと想定して、同行していた戦艦薩摩が第2艦隊より分隊。会敵して交戦を開始、第2艦隊も戦闘隊形に移行して備えた。
矢矧旗艦の前衛艦隊の前方を航行する、雪風を分隊指揮艦とする前路掃討隊が防空戦闘を開始した頃。
「──
艤装の一部である軍刀を閃かせては攻撃の悉くを切り落とし、時には艦載機を撃墜していく攻防が薩摩とレ級eliteの間で繰り広げられていた。
「嫌みな奴ね! 手数が多くてキリが無いじゃない!」
「──!」
激しい戦闘機動をしながら予め練り上げたマナで艤装を強化し、レ級eliteに向けて斬撃波を放った。
(やっぱり、この程度では大したダメージにはならないか)
それなりに本気で練り上げたマナによる斬撃波だったが、レ級のelite個体となれば装甲も強固らしい。
加えて、レ級はあらゆる攻撃能力を保有している。
戦艦としての砲撃力は勿論、重雷装巡洋艦並の雷撃力、正規空母並の艦載機運用能力。その攻撃手段の多彩さ故に、日本最強の艦娘と呼ばれる薩摩をして拮抗した状況を強いられていた。
「──こちら薩摩! 旗艦大和、応答して!」
『大和です。そちらの状況は?』
「レ級が思ったより手数多くて少し困ってる! そちらから白雪を分隊して此方に寄越せないかしら!?」
『申し訳無いですが、難しいですね。本隊と前衛艦隊は現在、敵艦隊と交戦中です。敵の主力は通常個体のレ級とヲ級flagship、後は随伴です』
予想していない展開に薩摩は舌打ちした。
強化されていないとは言えレ級には違いない。あの何でもありな性能と同時に敵の機動部隊が相手ともなれば、空母もいない本隊と前衛艦隊から白雪を引き抜くのは愚策だ。
「なら、むらくもでも良いわ。前路掃討隊を此方に寄越しなさい!」
『師範、流石にあの娘達が抜けると私も厳しくなるんですが』
「貴女は“準戦略級”よ、白雪。駆逐艦娘2隻分が抜けた穴くらい、充分カバーできるはずよ!」
艦娘の戦闘力を表す等級は下から順に戦術級、戦略級候補、準戦略級、戦略級の四つが存在する。
戦術級は文字通り戦場におけるユニット単位までの戦力や要素しか持たない艦娘を指す。
戦略級候補は特定の条件を満たした艦娘が到達できる等級。
準戦略級は戦術レベルとしては最強を誇る艦娘で、更にその上の戦略級は軍事戦略を左右し得る能力を持つことで認定される。
爆弾で分かりやすく例えるなら、戦術級が戦闘機や爆撃機に積める爆弾、戦略級候補が米軍のM O A Bのような世界最大の通常爆弾、準戦略級が戦術核、戦略級なら戦略核と言ったところだろう。
駆逐艦娘である白雪で核兵器並の実力と言えるため、薩摩の指摘は間違っていない。今回の臨時編成の艦隊では大和と矢矧、むらくも(と共生関係にある叢一と叢雲)以外は既にその実力を知っているので説得力はあるだろう。
『……了解しました。少し面倒ですが、引き受けましょう』
「聞き分けてくれて何より。大和! むらくもとその護衛をこっちに回して!」
『良いでしょう、白雪の力を信じます。むらくもと、護衛には雪風さんに随伴してもらいます』
「到着までレ級を押さえるわ」
交信を終了し、改めて目の前の敵艦に意識を集中する。
「さて、まだまだ遊んであげるわよ」
◇◇◇
「ここからは本気を出しますか」
既に激しい防戦を繰り広げる艦隊の最後方で、海面すれすれに接近してくる雷撃機を振り向きもせず撃ち落としながら、仕方ないと言った様子で呟いた。
「先ずはむらくもさんと雪風ちゃんの離脱支援ですね。ここで消耗して貰うわけにも行きませんし」
どちらも実力にはまだ不安がある。
雪風は素質こそ驚異的なものがあるものの、一皮剥けるには今一つ足りない。今後に期待するしかないだろう。
むらくもは顕現したばかりなので論外だ。
武装こそ既存の駆逐艦娘と比較しても先進的で高性能だが、本人の練度が伴っていないため未熟だった。
加えて、改装もしていない。未改造の艦娘は高難度海域では実戦に堪えられないのが常である。彼女の装備が生かし続けている様なものだ。
「ここは、“導眼”とマナ操作を全力で行使しましょう」
宣言すると、白雪の全身から金色の光の奔流が溢れ始めた。それは渦を巻くようにして、やがてそれは収まると白雪の体を同色の膜が覆っていた。
変化はそれだけに留まらない。本来なら髪と同じ茶色の瞳に蒼い光を灯らせ、全身を包む金色の膜のなかでも一際強く輝いていた。
「往きます」
海面を力強く踏み込むと、衝撃波を伴ってその場から跳躍した。艦隊の最後尾から霞、磯風、大和の順で瞬く間に追い越しながら突進していく。
「本隊の白雪より前衛旗艦、前路掃討隊の進路を開くため遊撃に移ります。以後、連携は考慮しないよう願います」
『了解したわ』
矢矧からはすぐに応答があった。彼女には白雪の実力の一端を見せているため、それを認識した上で任せてくれるらしい。
「感謝します。では始めましょう」
両手に携えた専用の連装主砲を構える。
前方では大和からの指示でむらくもと雪風が離脱を図るため、敵編隊と交戦しながら艦隊から離れようとしているところだった。
だが、当然だが敵も勝手を許してはくれないようだ。雷爆連合による空襲とレ級の遠隔雷撃を受けている。何とか凌いでいるが、これ以上は消耗する恐れがある。
「主砲で弾幕を張ります」
右手の連装主砲の一門から、続いて左手の連装主砲からも一門だけを発砲する。
撃ち放った砲弾は砲口から金色の軌跡を描きながら、吸い込まれるように射線上の敵機に直撃した。そこで終わりではない。敵機に直撃した勢いそのままに貫通すると、更にその先の敵機にも直撃する。
そんな現象が二つの射線で同時に発生したからか、敵編隊の動揺を示すように陣形が乱れた。
その隙を逃さず、二度目の跳躍でむらくもの目前へと辿り着き、旧海上自衛隊仕様のセーラー服を掴んだ。
「し、白雪……っ?」
「白雪さん……!?」
いきなりセーラー服を掴まれたむらくもは、これには動揺を禁じ得ないようだ。そんな
「何も怖がることはありませんよ? ちゃんと(師範の所まで)一気に(飛ばして)、逝かせてあげますから」
「ちょっと待て、それってどういう意味──だああぁぁぁ……!!」
水平線の向こう側目掛けて思い切り投擲した。むらくもの叫び声が徐々に遠ざかりやがて聴こえなくなると、次は雪風のセーラー服を掴む。
「えっ! 私もですか!?」
「はい。この方が早いし捕捉される心配もなくなります。泊地に帰還したら(戦略級候補にするため)、徹夜でお手入れしてあげますね。大丈夫、(艦体艤装出せるようになるだけなので)怖くないですから」
二度目の容赦ない投擲。何やら誤解されていそうな様子だったが、すぐにそんな余裕もなくなるだろう。
「……日本語って難しいですよね?」
クスリ、と笑みを溢しながら嘯く。
艤装の恩恵を受ける艦娘であっても通常ならあり得ない剛力で投げ飛ばしはしたが、薩摩の目前に届くようにしたので受け止めてくれるだろう。
そんな事を考える白雪に、少し離れた海面で対空射撃中の初霜が視線を向けながら。
「何やってるのよ……」
防空戦闘の合間に息継ぎするついでに、溜め息を吐きながら呆れた表情で呟いていた。
◇◇◇
同じ頃、未だレ級eliteと拮抗状態で戦闘を継続していた薩摩もまた、急速に接近する存在を感じ取っていた。
「そう来ると思っていたわよ!!」
レ級eliteを牽制するため主砲による砲撃、喫水線下の魚雷発射管から空気魚雷を掴み取って投擲する。その直後に予想される着水地点を目指して駆け出した。
間もなくすると、視線の先にある水平線の向こうから放物線を描いて翔んでくる艦娘が見えた。
「自分以外のマナを操作するなんて、あんまり気が進まないけど!」
片足を振り上げ、海面に叩きつける勢いで振り下ろす。
ここでマナ操作とは何なのかを簡単に説明しておこう。
まず最初に、マナとは世界の万物に宿る超自然的エネルギーを指す。人間を含めた動物、或いは植物などの生命体等が特に保有しているが、鉱物のような無機物にもそれは備わっている。
つまりマナ操作とは、その名前の通り物体に備わるマナをコントロールする技術の事だ。とは言え基本的に自分以外のマナに干渉するのは難易度が高く、先程も白雪が見せたように自身のマナを操作し、戦闘能力を強化するのが薩摩道場の艦娘には一般的だった。
これから薩摩が行うのは前者であり、特に高難易度な“海のマナに干渉して形状を変化させる”というものだ。
これだけ聞けば魔法のようにも感じられるが、マナ操作はどこまでも万能というわけではない。習得には特定の才能が必須であり、そうでないものは絶対にマナ操作を習得できない。
その才能を持っているとしても、自然と心を通わせ、自身を客観的に見れなければ身体強化すら儘ならない。現状では、マナ操作を実戦で活躍するレベルまで習熟してるのは薩摩や白雪を含めて数人程度しかいないのだ。
「ちょっと痛いけど、我慢しなさい!」
海面に勢い良く踵落としを叩き付け、水飛沫のカーテンを巻き上げる。それは幾重も連なって発生したまま、海面から水流を噴き上げた状態で固定された。即席のバリケードネット代わりだ。
直後、二人の艦娘が高速で水のバリケードネット目掛けて突入してくる。
「うぶっ!?」
「ひゃう!?」
むらくも、雪風の順で水のバリケードネットを直撃してすぐに薩摩が受け止める。
幸い、白雪による投擲の勢いを削ぐことが出来たようで、二人ともそこまで外的損傷は見受けられない。それを見て薩摩は内心で胸を撫で下ろした。
「二人とも、大丈夫よね?」
「あぁ……」
「はい、何とか」
「それは何より。大変な目に遭ったばかりで悪いけど、仕事を頼まれてくれるかしら」
むらくもと雪風が一呼吸整える間に、薩摩が必要な手順を説明していった。
「──了解した。エリレの甲標的モドキは私が引き受けよう。それが片付いたら防空戦闘だが、それまでしっかり守ってくれよ? 雪風」
「任せてください! 雪風は勿論、むらくもさんも、薩摩師範も沈みません!」
「心強い限りね。それじゃ、私はテンプレみたいに律儀に待ってくれてるエリレを倒してくるわね」
「「了解!」」
そこからはむらくも達と分かれ、軍刀の柄を握り直してレ級eliteに向かっていった。
◇◇◇
レ級eliteは太平洋に分布する深海棲艦のなかでも別格と言っていい程に強大である。同じイロハ級の戦艦であるル級やタ級は勿論、姫・鬼級でさえ下位の個体では相手にならない位には。
実を言えば、この場にいるレ級eliteは人類と深海棲艦が開戦した頃から存在している歴戦個体でもあった(つまり、先の大規模作戦で討伐された戦艦棲姫と同じである)。
以上の理由から、南方海域に分布する姫・鬼級の深海棲艦とも対等と言える地位を確立していたレ級eliteは、人類側のどの様な戦力に後れを取ることはないと確信していた。そのレ級は南方で確認されたイレギュラーな艦娘を確認するか、可能なら撃沈しようと進出してきた艦隊に挑んだ。
「ナゼダ、ナゼコンナ!?」
レ級eliteが信じがたい光景を目の当たりにしたように、愕然とした表情で目の前の状況を眺めていた。
発艦させた艦載機が、突如として流星のように戦場へと飛び込んできた二人組の艦娘によって叩き落とされる。
特に、片方のイレギュラーな艦娘は主砲による射撃精度があまりにも正確だった。網で虫を捉えるかのように砲撃で絡め取っている。
それ以前にも驚愕するような事象は起こっていた。展開した潜航艇がいの一番に撃沈されたからである。艦載機が急激に落とされ始めたのはそれからだった。
「──余所見厳禁よ」
薩摩はレ級の動揺した隙を見過ごさない。不意を突く形でレ級を強襲する。
「!?」
咄嗟に尻尾のような艤装で下段から振り上げられた軍刀を受け止めるが、踏み留まれず大きく吹き飛ばされる。
むらくもがレ級の遠隔雷撃を無力化し、雪風と共に艦載機を相手取るようになってから薩摩は一度に対処する物量が大幅に減り、レ級elite相手に全力を発揮しやすくなっていた。
「何故、コンナ! 何故、海ガ!?」
受け入れがたい現実を目の当たりにしたように動揺したレ級eliteが叫ぶ。
現在、戦場となっている当海域の海面には黄金色の光の帯が浮かんでいた。それはサーモン諸島全域から薩摩へ収束するように動いており、その現象は薩摩に力を与えていた。
「この海は話せば分かるから助かるわ。汚染が酷い海ではこうも上手くいかないもの」
レ級eliteとの戦闘中という土壇場であった為、上手くいってくれたことに胸を撫で下ろしていた。
薩摩が現在進行形で行使しているのは、彼女が編み出してきたマナ操作の技術のなかでも特に難易度の高いもの、海と対話してマナを借り受ける為のイメージの発信だ。
基本的には前述した《物体のマナに干渉する技術》の延長であり、海水のマナを通して行われる。
「何故、海が。そう言ったわね? 単純な話、騒ぎ過ぎだから静かにしてほしいみたいよ。私はそれに手を貸すからマナが借りられた」
レ級eliteの疑問の声に答えると、それまで振るっていた軍刀を納める。
直後、薩摩の目前の海面から黄金色の光の柱が飛び出した。
「誇ると良いわ。私がここまで本気を出したのは、過去に数度しかない。自然から力を借り受けて初めて出来る、戦略規模の一撃よ」
光の柱を見上げながら、レ級eliteに薩摩なりの最大の賛辞を送る。腕を掲げ、勢い良く振り下ろした。
「
力ある言葉を呟き、圧倒的なエネルギーを解放した。高さ数百メートルにもなる巨大な光の剣が振り下ろされ、レ級eliteは光に飲み込まれた。
薩摩さんや白雪さんのは某地球の守護神の特撮怪獣映画とか、某魔導冒険譚の漫画とかがイメージとしては近いかもです(分かる人には分かる)。
あと、最近になって活動報告で各作品の進捗率や更新予定なんかをお知らせしていくにしました。今回の更新を含めて幾つか投稿してからそちらも更新します。
新たに自衛艦娘出したいけどどうしよう?
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ミサイル護衛艦あまつかぜ
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ヘリコプター護衛艦しらね
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どれも一緒に出そうか