死んで叢雲になったわ。なに、不満なの?   作:東部雲

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 読者の皆様、明けましておめでとうございます(年明けて一ヶ月以上経ってようやく投稿)

 ~前回のあらすじ~

 出現したレ級eliteと交戦に入り、攻撃手段の多彩さと物量に予想よりも苦戦する薩摩。その状況を打開するため、むらくも(叢一)と雪風を現場に呼び寄せる。
 その援護の為、白雪が全力の状態を発揮して圧倒的な実力を見せつける。そのついでにむらくもと雪風を誤解を伴った状態で水平線の向こうまで投げ込んだ。
 それを見越した薩摩がマナ操作を駆使し、二人を回収して合流する。
 むらくも達前路掃討隊が手数を封じる事で薩摩に余裕が出来、奥の手と言うべき一撃を持って完全に消滅した。


第13話 第2艦隊③

 薩摩が繰り出した一撃は、周辺に天変地異に等しいほどの暴威を撒き散らす程に強烈で、その余波だけでも相当なものだった。

 

 レ級eliteに向けられた攻撃で生じた衝撃波は海面を叩き、隕石の落下によるそれを思わせる程の巨大な津波が発生した。

 

 同時に津波は僕と雪風を呑み込まんと押し寄せ、って暢気に解説している場合じゃない!

 

 

「雪風ェ!」

 

「解っています! 退避しましょう!」

 

 手早くむらくもの艤装に曳航索を取り付け、津波から逃れようと雪風は急発進した。僕も機関を一杯まで回し、推進力の足しにしようとする。

 

 

「くそっ、これでも足りないか!?」

 

 発生した津波から距離をとることはできた。ただ、海面は戦艦棲姫の砲撃が着水した場合とは比較にならない程に激しく波打ち、バランスを崩して転倒しそうになるのを何とか踏ん張って堪えるのがやっとだ。

 

 転倒して被害を被るのが僕ら(むらくも)だけですむならいいけど、今は雪風が曳航してくれているから転倒するわけにはいかない。今は雪風の邪魔をしないようにしないと……!?

 

 

「雪風!」

 

 前方を見ると付近の島の崖にでもぶつかったか、先程の津波が反復してきていた。全速で航行する雪風を強引に背後へ庇い、津波の第二波に対して身構える。雪風よりは凌波性に優れているはずだから、何とかして受け止める。

 

 

「──無茶はいけませんよ?」

 

「なっ……!?」

 

 真横から声がしたと思い視線を向けてみれば、そこには少し前に僕と雪風をここまで投擲した白雪が立っていた。

 

 迫り来る津波を見据えて、右足を海面から離し、

 

 

「止めます」

 

 勢い良く艤装靴を踏み込んだ。

 

 白雪の足元から黄金色の光が放射状に拡散する。眩いほどの光は津波に接触すると、防波堤で塞き止められたかのように水飛沫を派手に散らせた。

 

 有り得ない、津波ならかなりの物理エネルギーを伴っているのに、それを相殺した!?

 

 

「白雪、今のは」

 

「高密度のマナで壁を作っただけです。それより移動しますよ!」

 

 白雪はそう言うと僕と雪風のセーラー服を鷲掴みした。って、また投げる気なの!?

 

 

「白雪さん!?」

 

「跳びます!」

 

 雪風の悲鳴のような叫びにそれだけ答えた。その次に白雪の体から黄金色の光が溢れ、僕と雪風をも包み込む。

 

 直後、視界に映る景色がブレた。

 

 周囲の荒波を置き去りに、正面の空いている津波の間隙を縫って通り過ぎ、高速で動き続ける。

 

 

「──ここまで来れば大丈夫そうですね」

 

 浮遊感を伴う長距離の跳躍は、そんな白雪の言葉で終わりを告げた。て言うか、今のって……!?

 

 

「今の、薩摩と同じ跳躍じゃないのか!?」

 

「その通りですよ、むらくもさん。マナ操作を全力で行使したので、あれだけの高速で跳躍できたんです」

 

 「時間がないので、説明する余裕はありませんでした」等と白雪が言う。

 

 ……まだ実力は底が知れないけどもしかしたら、白雪は日本国防海軍の艦娘のなかでも最強に近いんじゃないのか。そう思わせるほどに、白雪の強さは薩摩のそれを彷彿とさせるほどに強大だった。

 

 ……それにしても、だよ。

 

 

「いきなり水平線の向こうに投げ飛ばすことないんじゃないか? 流石に死ぬかと思ったぞ」

 

「あ、あははは……」

 

 先程の投擲を思い出したのか、雪風も乾いた笑い声を漏らした。冗談抜きで寿命縮むかと思ったんだけど?

 

 

「何の考えも無しに無茶はしませんよ。こちらには薩摩師範が居ましたし、あの方なら受け止めてくれるだろうと言う確信がありましたから」

 

「悪びれもしないか。それでもやり方があるだろうに」

 

 今回の件で確定した。白雪はだいぶアグレッシブな性格だ、そうに違いないんだよ!

 

 

『気持ちは分かるけど落ち着きなさい?』

 

 憤慨していると叢雲が宥めてきた。

 落ち着いてられないよ! 男子高校生は多感なんだよ!

 

 

『いい加減、学生気分でいるのは辞めた方が良いわよ』

 

 ……うん。そう言われると確かにそうだね。

 前世では高2で自動車にはねられて死んじゃったし、今は駆逐艦娘叢雲の中の人みたいな状態だから。軍属だから確かに学生とは言えないよね。叢雲の言う通りだったよ。

 

 

「……あの、むらくもさん。どうかしましたか?」

 

「何でもないぞ雪風」

 

 急に黙り込んだので不審に感じたのか、雪風がおずおずと訊いてきたので慌てて取り繕う。流石に脳内で叢雲との会話に没頭しすぎたね。気を付けないと。

 

 

「安心してください、むらくもさん。あなたの身の安全は私が保証しますから。だって……」

 

 前置きするように言ってからこちらに歩み寄り、耳元まで顔を寄せてきた。

 

 

「あなたは将来、私の義弟(おとうと)君になって貰うんですから」

 

「……っ?」

 

 耳打ちする形で囁かれた言葉に、僕はただ困惑するしかなかった。

 

 将来は義弟になって貰う?

 今はこうして僕とむらくもが叢雲を世帯主とした形での共生関係にある。義弟と言うのだからそれは僕を指しているんだろうけど、その意図が何なのかは掴めない。

 

 

「なぁ、白雪。それって」

 

「そう言えば白雪さん、本隊は今はどうなってるんですか。確か、本隊と敵のレ級を迎撃しているはずでは?」

 

 白雪に発言の意味を問おうとしたところで、雪風にそれを遮られた。

 

 ただ、それは僕も気になっていた。

 こんな短時間でここまで来られたのは、先程のような跳躍を駆使したからだろうと推測はできる。だけど、大和達第2艦隊はその機動力に着いてこれる筈がない。

 

 

「本隊なら心配する必要はないですよ。レ級を含む、敵艦隊を壊乱状態にしてからこちらまで跳んできましたから」

 

「……私達を投げてから30分しか経っていないぞ。まさかレ級は」

 

「邪魔なので沈めてきました♪」

 

 イイ笑顔で何言ってるの(困惑)。

 

 白雪が今言った通りなら、30分足らずの内にイロハ級最強の戦艦レ級を撃沈して、敵艦隊の戦力を少なくとも三分の一を漸減させ、指揮系統の混乱を確認してからこちらまで急行したと言うことだ。

 これだけ聞くと気持ち良く無双しているように思えるけど、実際は欲しいものを手に取るのに邪魔になるものを退かすのとなんら変わらない扱いでしかない。

 

 ……白雪って、本当に駆逐艦か?

 

 

「──残念ながら、白雪は吹雪型二番艦よ。信じがたいことだけれど」

 

「! 初霜、来ていたのか」

 

 背後から声がするので振り向くと、初霜が近寄ってきていた。白雪の後を追ってきたんだろう。

 

 

「あら、初霜ちゃん。予想より早く合流しましたね?」

 

「単純に追いかけるだけでは間に合わないから、未来位置を予測して先回りしていたのよ。それでも機関を一杯まで回す必要があったわ」

 

「それはそれで充分凄いことだぞ」

 

 敵艦、敵機と交戦しながら白雪の動きを予め想定するって、あんなデタラメな跳躍をするのも加味した上でだから相当難しいはずだよね? それが出来る時点で未来予知に等しい精度だよ。

 

 

「そこにいる白雪程ではないわよ。吹雪型の魔王(白雪)よりはね」

 

「あら、魔王なんて酷い。これでもか弱い乙女なんですよ?」

 

「白雪さん、か弱い乙女は艦娘を水平線の向こうに投げ込んだりしません」

 

 惚けた台詞を言う白雪に、雪風がツッコミを入れた。

 うん。あんな危険行為を軽く超えたような所業、か弱い乙女とやらに出来るわけないんだよ。雪風、良く言ってくれた。

 

 て言うか、白雪ってそんな風に呼ばれ恐れられてるの?

 『魔弾』なら二つ名として聞いたことがあるんだけど、『吹雪型の魔王』と来たか。うん、白雪にピッタリだ!

 

 

「──むらくもさん。帰ったらたっぷり可愛がってあげますね♪」

 

「……覚悟しておこう」

 

 しまった、白雪に考えてることがバレてる!

 そう言えばこの世界は艦娘がニュータイプ並の直感持ちだ、迂闊に頭で思い浮かべるべきじゃなかったのにやっちゃったぁ!?

 

 

「茶番はそれくらいにして。薩摩さんが戦闘を終了したわ」

 

 なんて事を考えていると、初霜がそう言ってきた。よし、取り敢えず今は状況終了まで集中しよう。

 

 ここから離れた海面に視線を向けると、まだ波は少し荒れ模様だがそれでも津波そのものは収まったようで、少しずつ静けさを取り戻してきているようだった。そこに腕を降り下ろした姿勢のまま薩摩が立っている。

 

 

「──師範、こちら白雪です。感度は如何ですか?」

 

『薩摩より白雪、感度は良好よ。貴女がそこに居るってことは、前路掃討隊と合流できたのよね?』

 

「危ないところだったようですけどね。戦略級の攻撃を繰り出すなら、その余波で生き残れる艦娘以外が退避してからにして欲しかったですが」

 

『貴女が近辺まで辿り着いていたのには気付いてたからね。本気を出してる状態なら、二人を担いで離脱できると確信していたからね』

 

 「それを強要される側は堪ったものではないのですが」と白雪が苦言を呈した。

 天変地異に匹敵するレベルの一撃の余波だけで沈み掛けたのだから、僕としても同感だった。隣で雪風もウンウンと首肯しているし。

 

 

『それは悪いと思っているわ、ごめんなさいね。ただ、白雪を信頼してるのは確かだから、ね?』

 

「……まあ良いでしょう。そちらに合流します。大和さん達も今頃は残敵を掃討していると思いますから、彼女達とも合流後、ショートランドまで帰投しましょう」

 

 率先して白雪が移動を始めたので、その後を雪風と初霜とで追随していく。

 

 その後は薩摩と合流して

(苦戦していたと思っていたのに煤を被っているだけで、大した損害を受けた様子は見られなかった)、矢矧達前衛艦隊と大和達本隊とも集結を果たした後、ショートランド泊地への帰路に就いた。

 

 

 

 

        ◇◇◇

 

 サーモン諸島海域で大和を旗艦とする第2艦隊が展開している頃、日本本土の防衛省国防海軍統合司令部。

 

 そこは、20年前の1993年まで海上幕僚監部が置かれていた防衛省庁舎A棟に設置された、日本国防海軍の上部機関である。同時に、全ての鎮守府の提督からは上層部、艦娘からは『大本営』や『赤煉瓦』等と呼ばれる場所でもある。

 

 その屋内の廊下を、二人の艦娘がツカツカと靴音を立てて歩いていた。

 

 

「──確認だが、防衛艦隊司令部からの通達の内容に間違いはないのだな?」

 

 振り返りもせず背後に問い掛けるのは、先頭を進む20代前半と見られる純白の第一種礼装に身を包んだ女性だ。

 黒い長髪を三つ編みのおさげにし、それを右肩に回している。腰には儀礼用の軍刀を下げており、歩を進めるたび鞘と刀身が音を立てている。

 

 

「はい。特務運用群司令蕪木准将が現場の判断で即応、特別警備隊に出動を要請したようです。現在は事故後に浮上した潜水艦を監視する態勢に移行しています」

 

 それに答えるのは、大正時代の女学生の間で流行したようなファッションの着物に身を包んだ少女だ。

 緋色の振り袖と、腰には黄色の腰帯と桃色の袴に身を包んでおり、腰まで伸ばしたストレートの赤毛に腰帯と同色のリボンを結び付けている。

 

 

「……隣国の動きはかなりアクティブになってきたな」

 

「それにつきましても、政府は事態を重く見たようです。これからの会議は首相官邸ともオンラインで繋いだ状態で開催される予定です」

 

「各省の連絡官も居る筈だな?」

 

「はい。陸・空の派遣要員と、首相官邸所属の職員も会議室でお待ちです」

 

「……こうして集まるのは、東日本大震災以来初めてとなるな」

 

 日本国防軍は自衛隊時代より、有事の際に問題となるであるだろう致命的な弱点が存在した。それは、組織間の情報共有が不足していることだった。

 とは言え、これは深海棲艦との戦争が開始される以前から日本と言う国全体で共通していた。業界や部署の区別なく、社会全体に蔓延する問題だったのである。

 

 現に、二年前に発生した災害──東日本大震災では当時の政府の動きは緩慢であり、その初動が遅れていた。

 地震と津波により甚大な被害を被った被災地のため、当時の陸上幕僚長が責任を追及されることも覚悟の上で、独断で陸軍を動かしたのが最初の被災地支援だった。

 

 この行動はやはり責任を追及される事となるが、陸上幕僚長を擁護する人物もいた。当時の就任したばかりだった海軍大将である。

 陸上幕僚長が独断専行をするに至ったのは政府や防衛省の初動が遅滞していたからであり、結果としてそれは多くの人命を救うこととなり、迅速な状況解明にも繋がったのだと。そんな主張と共に正当性を説いたのである。

 

 

「あの時は大変でした。当時の陸幕長が独断専行をしたと耳にするや、閣下までヘリ搭載護衛艦を含む護衛隊群を動かすなんて言い出すんですから」

 

「シビリアンコントロールより国益を優先したまでだ」

 

「また防衛省の職員から陰口を言われますよ、三笠司令長官」

 

「言わせておけばいい。現在、シーパワーの中心は我々だ、神風」

 

 現日本国防海軍連合艦隊司令長官、三笠 八枝(みかさやえ)海軍大将。それが少女──神風と会話している女性の名前と肩書きだった。

 

 連合艦隊司令長官とは、かつては旧大日本帝国海軍に存在した連合艦隊司令部の長官に与えられる役職であった。

 海上自衛隊が国防海軍に格上げされてからは、艦娘がその主兵となるのに伴い強力な権限を持った役職が設けられた。それが現在の連合艦隊司令長官である。

 

 その初代長官であり、現在もその地位に居続けているのが三笠大将だ。

 今でこそ国防海軍最強の艦娘として名高い戦艦娘薩摩と同じく第1世代でもあり、国防海軍の発足にも関わってきた。その関係で防衛省に対しても強い発言力を有しており、政界への影響力も強い。東日本大震災の後に陸上幕僚長を擁護できたのはそれが理由でもあった。

 

 

「それでも怪我の功名でしたね。情報共有の円滑化を図られたのは、それが切っ掛けでもありましたから」

 

「有事が起きてからでは遅いのだがな」

 

「減棒で済んで良かったですね」

 

 そんなやり取りをしている間に、目的の会議室前まで辿り着いた。

 

 

「──司令長官三笠、秘書艦神風。入るぞ」

 

 神風が会議室のドアを開放して、三笠が先に入室した。神風もドアを閉めながらそれに続いた。

 

 

「私で最後だったか」

 

「はい。お待ちしていました、三笠長官」

 

 最初に出迎えたのは首相官邸との連絡を担当する派遣職員、五十嵐だった。

 

 会議室の内部には、既に多くの要員が集まっているようだ。

 

 コの字にテーブルが配置されている。

 その右側手前から順に上記の五十嵐。海上保安庁の森三等海上保安監。国防陸軍の佐川陸軍少佐。国防空軍の柳少佐。警察庁の清水警視。外務省の安全保障政策課の森元担当官等、関係各省庁の役人が揃っていた。

 

 向かい側には国防海軍統合司令部側の官僚達が座っていた。

 手前から首席法務官の野垣海軍大佐。指揮通信情報部長の柳井海軍准将。装備計画部長の池田海軍准将。防衛部長の嘉山海軍准将。人事教育部長の高田海軍准将。総務部長の源田海軍准将。海上幕僚副長の小林海軍中将等。

 

 そして、部屋の奥にあるテーブルには国防海軍のトップが待ち構えていた。

 見た目七十代と思われる年老いた男性だ。年齢から来る衰えか、自衛官としては幾分か細い。顔も皺が多く白い顎髭を生やした、典型的な老人のようだ。

 

 この人物こそが国防海軍のトップであり海上自衛隊時代から現役の高官、艦娘運用のパイオニアとも言われている最初の提督だった。

 

 

「三笠大将、参りました。提督(・・)

 

「儂は既に君の提督ではないぞ。とは言え待っていた。臨時会議を始めるとしようかの」

 

 かつて三笠が自身の提督に選んだ人間、国防海軍海上幕僚長、江崎信三郎海軍元帥が宣言した。




次回以降は多分、最後の辺で出てきた会議を進めていくことになりそうです

新たに自衛艦娘出したいけどどうしよう?

  • ミサイル護衛艦あまつかぜ
  • 対空護衛艦たかつき
  • ヘリコプター護衛艦しらね
  • どれも一緒に出そうか
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