死んで叢雲になったわ。なに、不満なの?   作:東部雲

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 大分お待たせしました。

 前回の投稿から9ヶ月以上過ぎていて本当に遅れてしまいましたが、投稿しない間にも何話かを平行して書いているので、上手く行けば近日中に連続して投稿できそうです。

 活動報告でも発信してきましたが、今年の8月下旬頃に今流行りのアレに感染してしまいまして、感染から数日後には今までの人生で前例がない高熱を出して死にそうでしたorz
 今は完全に症状もなくなったので職場に復帰しましたが、皆さんもどうかお気を付けて。

 今回は前回のあらすじを省略して、本編をどうぞ。


第13.5話 隣国の脅威

 日本国国防海軍の上部機関である統合司令部。

 その一角にある会議室では、首相官邸と各省庁の職員も交えた臨時会議が開催された。

 

 

『──では、件の潜水艦は大亜連合の所属と見てほぼ間違いないのだな』

 

「肯定です、総理。潜水艦の乗員は揃って黙秘を続けていますが、臨検の結果から見てもその可能性は濃厚です」

 

 オンライン回線で繋がった首相官邸のトップを相手に、会議室に設置された大型のスクリーン画面越しに三笠は答えた。

 

 

『そうか……。大亜連合の活動は活発化してきているようだな。つい先月にも、リンガ泊地近海で大亜連合の駆逐艦と我が国の護衛艦が睨み合ったばかりだ。──それで、例の艦娘(・・・・)がドロップ現象で顕現したのと関連性はありそうか?』

 

「それについては、現時点では考えられないと推定します」

 

 本井総理が言う例の艦娘とは、つい1週間以上前に顕現した駆逐艦叢雲の事だろうと三笠は思った。

 

 サブ島沖で重巡洋艦古鷹を旗艦とするショートランド泊地所属の艦隊が発見、保護してからは何故か数日も意識を失った状態だった。そして目覚めてみればショートランド泊地統括官橿原准将の命令を拒絶し、同所属の軽空母飛鷹に同行してもらって泊地を飛び出した。

 

 その先で軽巡洋艦神通を旗艦とする第二水雷戦隊と合流後、飛鷹から役目を引き継いだ第二水雷戦隊の援護下でサブ島沖に進出。当該海域で戦闘中だったショートランド泊地艦隊を支援し離脱させることに成功する。

 だが、練度の低い叢雲では相手が悪すぎたようだ。当該海域で交戦した敵の旗艦は現時点で最強クラスの攻防性能を誇る戦艦棲姫であり、圧倒的な戦闘能力の前に叢雲は轟沈寸前まで追い詰められる。

 

 相討ちに持ち込もうと至近距離から空気魚雷を投射して海面に倒れ伏した直後、発光現象が発生した。姿を変貌させ、それまでの吹雪型駆逐艦の艤装から戦後の自衛艦の艤装を纏った『むらくも』として戦闘を再開した。

 『むらくも』の性能はレーダー・ソナー等のセンサー類が別格で、それは対空戦闘をしていた時点で判明した。追撃してくる戦艦棲姫を背後に、『ひゅうが』に同行して進出してきていた金剛達実地試験艦隊と交戦する南方棲戦姫、その艦載機相手に高確率で砲撃を命中させ撃墜していった。

 

 その後は敵の増援である南方棲鬼に不意を打たれたこともあって再び窮地に陥るが、薩摩や白雪達ショートランド泊地艦隊の救援で態勢を建て直し、最終的に戦艦棲姫の撃破に成功する。決定的な打撃を与え、止めを刺したのも薩摩だが、勝利に貢献したのは間違いない。

 以上が駆逐艦叢雲のショートランド泊地で目覚めてからの経緯であり、三笠がそれを知ったのは、横須賀海軍基地統括部の執務室に防衛艦隊司令部から報告が上げられてからだった。

 

 それらの情報を加味して考えてみたが、三笠としては有り得ないと結論付けていた。

 

 叢雲が顕現したのは一週間前。そして、件の潜水艦がショートランド泊地沖で捕捉されたのは昨日だ。

 叢雲が顕現した事実を日本国政府として公式な発表は未だされていないし、仮に情報が何処かからか漏れていたとしても、通常動力型の潜水艦で近隣の大陸から南太平洋まで一週間前後で辿り着くのは難しいだろう。

 

 それに、気になる情報がもう一つ報告されていた。

 

 

「件の潜水艦はディーゼルエンジンを搭載した通常動力型で、ドライデッキシェルターが1基取り付けられていることからSDV……小型潜水艇を装備していたと思われます」

 

『小型潜水艇……? それはつまり』

 

「特殊部隊を乗せていた可能性があると言うことです。それについては、防衛部長の嘉山准将に説明をお願いする」

 

 三笠に指名されて、国防海軍側のテーブルの後ろから3番目に座る男性が席を立った。

 

 

「本件について説明させて頂きます。まず件の潜水艦ですが、大亜連合が保有する通常動力型潜水艦『(ユアン)型』に類似するものと判明しています。全長は約80メートル、『元型』が74メートルですから6メートル程伸長されています」

 

『ドライデッキシェルターとやらを取り付けたタイプだそうだが、国防海軍としてそれをどう捉える?』

 

「は。ドライデッキシェルターは、主に米海軍の原子力潜水艦が装備しているものです。東側の潜水艦で装備したものは確認されてはきませんでしたが、今回で大亜連合が特殊部隊を潜水艦で輸送するようになったと考えますと、脅威と捉えねばなりません」

 

「その件についてですが、現地の沿岸警備隊が蕪木群司令の要請で治安出動しています。特殊部隊が上陸している可能性は考えられますか?」

 

 海上保安庁の森三等海上保安監が挙手しながら質問した。

 

 ショートランド泊地周辺には、海上保安庁の実働部隊である沿岸警備隊が駐在している。

 これは、日本が艦娘戦力を南方海域に展開する為の足掛かりとしてショートランド泊地を建設する関係で、サーモン諸島政府との安全保障協定を締結後、それに伴って治安維持を目的として派遣されていた。

 

 

「実は、件の潜水艦は先に報告したものとは別にもう1隻、存在が確認されています。残念ながら、そちらは振り切られて追尾に失敗したとのことです」

 

 嘉山が報告したその内容に、会議室内の緊張した空気がより一層重くなる。

 

 大亜連合所属であると疑いがある潜水艦を巡る騒動は、ショートランド泊地沖合いを巡回するおやしお型潜水艦『あさしお』がパッシブソナーで探知したところから始まった。

 

 元々、『あさしお』の任務は所属する特務運用群の旗艦である『ひゅうが』を護衛することにある。だからこそ停泊中の『ひゅうが』が浮かぶショートランド泊地沖合いを潜航していたのだが、その最中に『あさしお』の水測員が不審な音響を捉えたのだ。

 それは直ぐ様『あさしお』の船務長に報告され、更に同艦の艦長から『ひゅうが』まで伝えられた。むらくもが特務運用群に見学のため訪れたのは、ちょうどその頃だった。

 

 『あさしお』が新たに不審な音響を捉えたのも、それから間もなくの事だ。該当潜水艦の追尾に掛かるため舵を切ったのと同時に、付近の海底付近からも反応を探知したのである。

 既に追尾行動中の『あさしお』はそれに対処するのは難しいため、代わりに『ひゅうが』でショートランド泊地に来ていた横須賀第2鎮守府の潜水艦娘、十傑序列第9位のイムヤ(伊168)を旗艦とする伊号潜水艦隊が追尾行動に入った。

 

 嘉山が報告したように、追尾行動中に振り切られてしまい、所在は不明となっている。

 

 

『防衛部長。行方を眩ませた潜水艦は小型潜水艇と乗員を回収したと思うか』

 

「その可能性は低いものと考えています。『あさしお』が捕捉して即座に追尾行動を開始したからか、気泡を多く漏出させていたとのこと。エアロック関係でミスがあったと考えられます」

 

『それが小型潜水艇を回収していないとする根拠か。それなら情報を持ち帰られた可能性も同様に低いわけだな。停船させられなかったのは残念だが、既にもう1隻は臨検に移っていた筈だからな』

 

「その件についてですが。件の潜水艦群がショートランド泊地周辺まで進入してきた事にひとつ、心当たりがあります」

 

 本井と嘉山の会話に三笠が割り込んだ。

 

 

『心当たり?』

 

「どのような針路でここまで辿り着いたかについてです。……神風」

 

「──既に資料の配布は終えています」

 

 その一言で、室内にいる者の何人かがギョッとした様子でテーブルの卓上を見た。

 いつの間にか、今までそこになかった筈の資料が全員分、テーブルに置かれていたのだ。すぐ後ろを通過するだけでなく、資料を配ったことすら気取られずに。

 それが並外れた気配遮断能力と静音性に優れた卓越した技術によって実現したと言うのは、実力を知りうる国防海軍関係者を除けば国防陸軍や海上保安庁の一部の関係者にのみ察せられた事実であった。

 

 

「では、手元の資料をご覧ください。まず最初に、先に実施された大規模作戦の推移についてご説明します」

 

 室内にいる全員が配布されたプリントを手に取り、三笠が会議室のホワイトボードに貼られたオセアニア地域の作戦地図に指揮棒を当てた。

 

 

「先に実施されたサーモン諸島海域攻略作戦。その前段作戦として発動した強行偵察作戦の準備として、国防海軍はパラオ泊地を起点にオセアニア地域の遊弋する敵棲艦の排除に乗り出しました。これが今年度の2013年10月の事です」

 

 指し示すのはオーストラリアより北に位置する島嶼群。そのなかでも北方に位置する、日本国国防海軍の海外泊地が置かれているパラオ諸島。それを中心とするオセアニア地域の各国の領海に、艦娘を主戦力とする艦隊の部隊名を記したマグネットが貼り付けられている。

 

 この一連の作戦行動については、既に各国の承認を得ている。

 アジア・太平洋地域において米国と並んで最大の艦娘保有国である日本は、非艦娘保有国や戦力の乏しい小国にとって生命線に等しい。それを考えれば当然と言えるだろう。

 

 

「それは2週間のうちにオーストラリア以北の主要な海域の制圧に成功しました。これにより、しばらくの間は同地域内での深海棲艦の脅威レベルは著しく低下するものと考えられていました」

 

 三笠が推移する戦況の説明に合わせ、神風が次の用具を取り出してホワイトボードに貼り付けていく。

 

 

「大亜連合にはそれが狙い目だったのでしょう。海域攻略後、深海棲艦の圧力が大幅に減じたタイミングで件の潜水艦を進出させてきたものと考えられます」

 

 所属不明潜水艦と記された新規のマグネットがインドネシア領ニューギニア島沖まで進出する。

 そこに至るまでの航路もボードマーカーで描かれ、見事なまでに島伝いだった。大陸沿岸はヴェトナムとマレーシア、その先はインドネシア領の島々を経由している。

 

 

『行方を眩ませた潜水艦は同じ海路を使うと思うか?』

 

「その可能性が高いと見て、パラオ泊地で待機していた『いかづち』と『そうりゅう』を動かし、予想される航路上で待ち構える手筈を整えています。通過させた後に追尾する計画です」

 

 パラオ諸島周辺に『いかづち』、『そうりゅう』と名前が付いたマグネットを張り付けていく。それらはインドネシア諸島より北側から沿うように西へと航路を取り、ヴェトナム沖に展開する。

 

 流石に威嚇射撃まではしない。

 魏弩羅のように秘密裏に暗殺するならまだしも、人間が乗る潜水艦を航行中に攻撃するのは軍事的緊張を高めすぎてしまう。世界有数の核保有国である大亜連合を刺激するのはやはり避けたいところだった。

 

 

『目標は潜水艦の帰属する国家の特定だな?』

 

「はい。追尾した先で潜水艦が進入した海域によって決まります。これは許可が下りればすぐにでも」

 

『許可しよう。我が国の管理下にある水域に何の連絡もせず、許可を得ず侵入した潜水艦の国籍をハッキリさせてくれ』

 

 本来、潜水艦が侵入した海域はサーモン諸島の領土であるショートランド諸島の近海だが、上述した通り安全保障協定を締結している。

 その為、ショートランド諸島の陸上に艦娘や軍用艦艇が停泊できる泊地建設をサーモン諸島政府から認可された上で行っている。加えて、泊地周辺の海域は日本国国防海軍が使用することも決定されている。そこに侵入してきたなら日本の領海を侵犯したのと同義だった。

 

 

「了解しました。結果は後程、お知らせします」

 

『頼んだ。それと、後始末(・・・)はしっかりやらないとな』

 

「……は。なるべく急がせましょう」

 

 後始末。

 それは今回の事件に呼応して動いている国内外の工作員をどうするかも含んだ、大亜連合絡みの痕跡を抹消することである。

 

 魏弩羅は有志の艦娘を幹部に据えた隠密集団であり、日本国防海軍の全鎮守府を統括する連合艦隊司令長官直属の非公式な組織だった。

 連合艦隊司令長官直属でありながら非公式な理由は単純なもので、活動内容が公にできないからである。日本で水面下の活動をしている工作員の監視、不法入国する外国人を必要に応じて処置(・・)するなど、機密性の高い影の集団だった。

 

 

(今回の発言は魏弩羅の近況についてか)

 

 最近、活動が過激になりつつある魏弩羅について頭を悩ませているところであった。

 

 任務中に殲滅目標の工作員を廃ビルごと叩き潰したり(異能持ちの(右翼手)がやらかした)、血迷った殲滅目標の工作員が住宅街に逃げ込んで人質を取ったのに問答無用で狙撃したり(何故か同行した(参謀)が狙撃銃で正確に撃ち抜いた)と、目立つ行動が増えている。

 

 そのせいで三笠は揉み消しや口止めに奔走する事も増えてしまい、挙げ句に今回は直接的な表現ではないものの本井から釘を刺されてしまった。

 実際に意味するところは「工作員は排除しても良いが、機密が保たれる範囲で済ませるように」と言った具合だろう。本井を含む一部の政府関係者の間でも問題視されているのは容易に察することができた。

 

 その後、今回の所属不明潜水艦のサーモン諸島海域への進出を鑑み、各海外泊地の対潜哨戒網構築や必要とされる装備など、整備する必要性などについても意見を交換し合った。

 

 

「……所属不明潜水艦の案件はこれで充分でしょう、次の議題に移りたいと思います。……神風」

 

 三笠が言い終わるより早く、神風は所属不明潜水艦の進路について説明するため使用した小道具を片付けていた。

 それに代わって、ホワイトボードにボードマーカーで次の議題を書き込んでいく。

 

 

「──次の議題は、先の作戦時にドロップ現象で顕現した艦娘『叢雲』と、彼女と同時に顕現した初の自衛艦娘『むらくも』についての説明と、今後の方針についてです」




 今回の本文中、サーモン諸島政府という用語が出てきましたが、最近は時事ネタとの関係もあるので、作中の展開も考えなければならないかもしれませんね。

新たに自衛艦娘出したいけどどうしよう?

  • ミサイル護衛艦あまつかぜ
  • 対空護衛艦たかつき
  • ヘリコプター護衛艦しらね
  • どれも一緒に出そうか
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