最近はいい意味でも悪い意味でも関心事が増えすぎたので、更新がこんなにも遅れてしまいました。近いうち、各章ごとのあらすじをまとめた内容の回を設けようかとも思います。よろしくお願いいたしますm(_ _)m
政府首脳を含んだ各省庁関係者による臨時会議*1は、所属不明潜水艦の国籍を明らかにする事を三笠*2が提示し、本井*3からの許可が下りたことで正式に決定となった。
そして、会議は次の議題へと進行していた。
「装備計画部長の池田です。それでは、今回の件……護衛艦むらくもに関する説明に移らせていただきます」
次なる議題は、最近になって顕現した全く新しいカテゴリーの艦娘──国防海軍初の第2次大戦後に建造された艦から顕現した自衛艦娘についてだった。
むらくもが顕現した当時の状況については叢一の存在を公開せず(一部の関係者を除き、最重要機密とされた)、叢雲との因果関係や顕現後の交戦記録等に触れていった。
「艦名が同じだからと、それで不都合が生じるものなのか?」
疑問を口にしたのは人事教育部の高田だ。
先日の作戦では駆逐艦叢雲、それと肉体を共有するむらくもが顕現している。情報の開示レベルによっては防衛大学の提督候補生達にも周知することにもなるため、確認する必要があった。
「そのことにつきましては──」
「私から説明しよう」
池田が説明を続けようとするのを遮るように、少女の声が会議室に響く。
「猫吊るし……!?」
コの字に配置されたテーブル、その中心にある空いたスペースにセーラー服を着た少女──猫吊るし*4が立っていた。
「驚かせてすまないね、お邪魔しているよ」
両手でぶら下げるように持った白い猫を揺らしながら言う。
「珍しいのう、君がこうして出てくるとは。吹雪型駆逐艦叢雲とみねぐも型護衛艦むらくもは、それほどまでに重要事項と言うことかの?」
「そう思って貰っても構わない。と言うのも、件の顕現した2艦は予てより懸案でね。今になってようやく解決した問題だったのさ」
猫吊るしの突然の出現にも江崎*5は落ち着いた様子で、自然に話しかけていた。
その一方で、国防海軍側に動揺した空気が広がった。
日本が艦娘を対深海棲艦の主兵として運用するようになってから25年以上の間、猫吊るしは非常に重要な役割を担ってきた。
日本の深海棲艦に対する防衛体制を確立するため、猫吊るしは最適な方策を提示する。
日本政府側はそれを実現するために必要となる条件を整えてきたが、その結果としてもたらされたのは深海棲艦に対してだけでなく、それまでの日本が今までに悩まされてきた問題の解決だった。
それは直接猫吊るしと関わってきた国防海軍上層部の知るところであり、だからこそ彼女が解決に手間取ったと言うのはあまりにも衝撃的だ。
「駆逐艦叢雲の浮上は、君でさえも難儀な課題だったと言う訳じゃな」
「ああ。要因は幾つかあるが、一番難しいのが名前だったよ」
そう言って前置きすると、駆逐艦叢雲と護衛艦むらくもの因果関係、顕現を妨げてきた要因について語り始める。
その内容は偶然にも、白雪が叢一に説明したものと同様だった。
「……まるでオカルトだな」
高田がその場の殆ど全員を代表して言った。
それも無理のないことだった。
二十数年も前より人類を海洋から駆逐するようになった深海棲艦、それに呼応するように出現した艦娘や猫吊るしのような妖精が登場した時点で超常現象と言って良いのに、既存の科学的常識が役に立たない事象について聴かされる。
現場に近い人間なら未だしも、後方にいて、妖精も見えない通常の人間には理解が難しい話題だった。
「それは無理もないけど、取り敢えず話を進めよう。まずは、ショートランド泊地艦隊にこなしてもらった関連任務についてだね」
「装備計画部長、どうかね?」
「ショートランド泊地からは受領した任務の完了を確認しました」
池田は任務開始から任務目標完遂までの推移を説明していった。
説明していくうち、外務省の森元担当官が挙手した。
「たった今説明されました情報に戦略級の攻撃を使用したとありますが、周辺への被害は出なかったのでしょうか?」
「目下のところ、確認中ですが、該当海域に民間船舶が進出する可能性はほぼないと考えています」
海上保安庁の森三等保安官が答える。
当時のレ級eliteと交戦していた薩摩が繰り出した攻撃は、周辺の環境への影響が懸念された。その為に、艦娘の護衛を伴った海上保安庁隷下沿岸警備隊によって直ちに調査が実施されたのだ。
幸い、現場海域の天候に若干の影響が出ている以外は特に異常は見当たらず、沿岸警備隊*6の巡視船と航空隊も既に帰投している。
以上を説明すると、猫吊るしはばつが悪そうな表情を浮かべた。
「強大な力を持つのも考えものだね。彼女は第2世代を顕現させるための布石として、“マナの管理者”としての権能を付与した第1世代だったんだけど。第1世代は艤装を考慮しない場合のスペックが第2世代以上だからね。本気でマナを行使したら、周辺への影響が大きくなりやすいんだよ」
「薩摩は良くやってくれている。……それで、予想よりも今回の任務は戦闘の規模が大きくなったようじゃが、無事に完遂されたのう。それによって、お主は何をもたらしてくれるんじゃ?」
江崎は剣呑な眼差しで問い質した。
そもそもの発端は、猫吊るしにこそあった。
海軍統合司令部が南方での作戦成功との報告を受けた直後、何の前触れもなしに姿を見せてこう進言してきたのだ。
『自衛艦娘むらくもが顕現したので、色々やりたいから任務を拵えて欲しい』
あまりに唐突な要求だった。
この時の国防海軍統合司令部は旧海上自衛隊に縁ある艦の艦娘がドロップしたということで混乱が生じており、兵器派*7や海上自衛隊時代からのベテランやOB等が激しく反発するなどして国防海軍首脳部を大いに悩ませた。
反対派は対立派の勢力が増すのを嫌うか、或いは自衛艦が艦娘になることに抵抗感を拭えない人間が主だった。
しかも質の悪いことに、そう言った者達は政財界と繋がりがあるか進出しているため、国防海軍のトップである江崎でも彼らの声を容易には無視できない。
しかし、それでも猫吊るしからの要求を無下にも出来ないので強引に強行したというのが国防海軍統合司令部側の事情だった。
「今回は凄いよ? 何せ、戦後に就役した自衛艦艇が艦娘として生まれてきたのだからね」
猫吊るしはそう言ってパチンッ、とフィンガースナップを一回してみせた直後。会議の出席者全員の目の前の机上に書類が前触れもなく出現した。
「今配布した資料には、私から今後提供する予定の技術やその関連要素について記している。史上初の自衛艦娘のむらくもの出現から、予想できた内容も含んでいるかもしれないね?」
「――確かにそのようですが、しかしこれは……」
森元担当官は机上の文書を手に取ると、記載された内容を読み取って動揺した。
それもそのはずだ。
猫吊るしが配布した資料に記載されていたのは、大亜連合の国民感情を刺激し、米国からの内政干渉すら誘発させかねない内容だったのだから。
「むらくもという福音を得て、日本は更にチカラを増す。第3世代を本格的に戦力化することでね」
新世代の艦娘の配備を宣言したこの日から、世界は否応なしに変化を迫られる。
その中心に立たされる立場になった日本の官僚達が動揺し浮足立った様を、猫吊るしが嘲笑うかのように口の端を歪めているのを三笠は見逃さなかった。
番外編追加するならどれ?
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オリジナルキャラ視点
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未登場の原作キャラ視点
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大和視点