死んで叢雲になったわ。なに、不満なの?   作:東部雲

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前回から一ヶ月後の投稿です。

それはそうと、最近比叡が発見されたそうですね。ツイッターなんかでも色々意見はありますが、大体が『おかえり』『おつかれ』『おやすみ』と彼女を労う言葉も多かったと思います。

今回の話にも彼女は出てきます。と言っても次回を含めて説明回のようなものかもしれませんが。

あとお気に入り登録は初投稿と2話目で急増してビックリしました。ありがとうございます。

では本編です、どうぞ。


第2話 ショートランド泊地

 目が覚めた時、最初に見たのは見慣れない天井だった。

 

「知らない天井ね」

 

 取り敢えずお決まりの台詞を言ってみた。そして自分の発した声と言葉に違和感を覚える。だが、直前まで体験した出来事から直ぐに払拭できた。

 

 僕は今、駆逐艦叢雲になっているはずだ。それも僕が夢にまで見た、艦娘としての叢雲に。

 

 そこまで理解してから上体を起こす。そして部屋を見渡した。

 

「結構真新しい建物みたいね」

 

 見たところ室内は医務室のようだった。

 白いベッドが幾つも置いてあり、僕は窓際で寝ていたらしい。今着ているのは病院で入院して着るような薄い患者衣だった。

 

 傍らには着替えもあった。前世でやっていたゲームでは改二改装するまでお馴染みだったワンピース風のセーラー服などが、ベッドの横にある棚にハンガーで引っ掛けてあった。その手前には叢雲のトレードマークと言える艦橋マストを模した槍が立て掛けてあった。

 

「取り敢えず着替えようかしら」

 

 そう呟いてからハンガーの着替えに手を伸ばした。

 

 

 

◇◇◇

 

「こんなところかしらね」

 

 患者衣から駆逐艦叢雲としての装束に着替え、意識せず満足げに呟いた。

 

 今の僕は叢雲と一心同体、否。二心同体だ。

 叢雲と一つに交わり、僕がこうして第2の人生を歩むことになった。その上で、僕は決めた。

 

 自分の艦歴と容姿に絶対の自信をもった、プライドの高い艦娘叢雲になりきる。叢雲になったなら、それ以外に選択肢はない。

 

「まぁ、実際はその方が変に疑われないで済むからだけどね」

 

 なんて肩を竦めながら言う。まあ僕が発言するたび、叢雲の口調に変換されるから心配しなくても良いかもしれない。

 

 取り敢えずここが何処か把握する必要があるだろう。槍を手に取り、病室のドアに足を向けた時だった。

 

 病室のドアが横にスライドした。勿論僕が開けた訳じゃない、ドアの向こうにいる誰かだ。

 

「叢雲ちゃん……!」

 

 ドアを開けて現れたのは、巫女装束を着た女性──多分艦娘だろう。

 

 前世で学生だった僕はゲームのキャラとして。僕と同化した叢雲は軍艦だった頃に幾度も護衛した記憶から、彼女が誰なのかを直感していた。

 

「久し振りね、比叡」

 

 僕が艦娘として目覚めて一時間もしないうちに第1艦娘と遭遇なわけだし、名前呼ばれたらそれに応えないとね。

 

 戦艦比叡。

 太平洋戦争や日中戦争が始まるより前、叢雲の所属した第十二駆逐隊は満州国皇帝の御召艦に選ばれた比叡を日中間往復で護衛した。その記憶から叢雲は彼女の事を知っていた。

 

「私が誰か分かるんですか!?」

「何となく、ね」

 

 素っ気なく返したけど、言ってることは強ち間違いじゃないよ? 僕はゲームを通して知ったけど、叢雲は感性に従っただけだからね?

 ただ、相手が史実の関係で面識? あるとは言え感覚的に分かるって言うのはどうなのか。その辺りは僕にも、多分叢雲にも今のところ分からないな。

 

「って、そんなこと言ってる場合じゃないです! 早く移動しないと」

 

 何て考えてたら比叡は何を思ったのか、焦った様子で叢雲の手を掴んで引っ張った。

 

「え、ちょっ!? どうしたのよ、そんなに慌てて。それに此処は」

「移動しながら簡単に説明します! こっちです」

 

 よく分からないうちに部屋から連れ出され、廊下に出る。すぐそこに出口もあり、そんなに大きな建物ではないようだ。

 

 それから屋外に出て、視界に飛び込んできたのは南国だった。

 至るところで自生した椰子の木、どうやら海岸線らしい。辺りを照らす夕陽が砂に細かい影を作っていた。

 

「此処はショートランド泊地。貴方がさっきまでいたのは入渠施設の一部です。近くに修理用のドックがあります」

「ショートランド……なるほどね。それで、今向かってるのは?」

「工敞です。隼よ……橿原提督の指示で目が覚めていたら連れてくるよう言われてるんです」

 

 高床式の建物から階段で降りながら比叡が話した。

 何か言いかけた気がするけど、今はそれを気にしてる場合じゃないか。

 

 そこからは走る比叡に手を引かれながら移動した。海岸線を少し走ってすぐ件の建物が見えてきた。

 そこは足場がしっかりした岩場に建てられた、先程と同じ高床式の建物。外観からわかる特徴と言えばこちらの方がかなり規模は大きく、建物の向こうにある桟橋で船が停泊してることか。

 

 そのまま階段を登り比叡が工敞と呼ぶ建物に入る。

 

 内部は騒音に満ちている。正確に言えば、怒号が飛び交っていた。

 

「白雪、初雪が帰港した! 艤装点検、修復材を持て!」

「工敞長! 比叡の艤装修復にはもう少しかかります!」

「修復材残り3割切りました!」

 

 工敞内では整備士が慌ただしく動き回っていた。床に散乱する何かの部品、それと同じくらい多く飛び散っている血痕。

 

 更に外の桟橋と繋がってるらしい入り口からは、二人の傷付いた艦娘が歩いていた。

 

「橿原提督!」

 

 二人の艦娘の近くには、純白の第一種礼装を着た女性がいた。その女性に向かって比叡は名前を叫んだ。

 

「──どうやら目が覚めたようだな? 思ったより早かったじゃないか」

 

 女性──橿原は特徴的なツンツン頭を揺らしながら僕を一瞥して言った。

 

 だけどそれより、僕と叢雲は近くにいる二人の艦娘を見て驚いた。

 

「……比叡だけじゃなかったのね」

 

 それは比叡の時と同じ感覚で理解に及んだから、目の前の二人が誰か分かった。

 

「また会えたわね。白雪、初雪」

 

 旧日本海軍の軍艦、特Ⅰ型駆逐艦二番艦白雪と三番艦初雪の生まれ変わった艦娘がそこにいた。




2話目が書き終わりそうな段階で比叡発見の朗報があったので、急いで仕上げて投稿しました。

次回は明日投稿する予定です。今後の更新も、気合い!入れて!頑張ります!それでは~(^o^)/~~

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