戦姫と神々の多重奏   作:パクロス

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この段階でまだ三話が仕上がっていない……。
早くも投稿ペースに陰りが出るのだろうか……。
何とか3日に三話投稿できるように絶唱顔で仕上げますんで宜しく。
それでは第二話どうぞ。


第二話 始動

 あれから一年、奏は今ヘリに乗り、戦いへ向かおうとしていた。

 父親のPCに残されていたわずかな情報を元に復讐のための力を得るため日本政府の秘密組織『特異災害対策機動部二課』に単身突撃、紆余曲折と文字通り血反吐にまみれながらも世界で唯一ノイズに対抗できるFG式回天特機装束——シンフォギアの奏者となった。

 これから奏の初実戦だ。シンフォギアの使うために必要な適合係数が圧倒的に足りていない奏は訓練施設で適合係数補助薬——LiNKERを使って安定してシンフォギアを起動できるよう訓練してきたが、ようやく実戦に耐えられるレベルまで達したのだ。

 

(ようやくだ……ようやく、これでノイズを——)

『聞こえるか、翼、奏?』

「はい、司令」

「っ! あ、ああ旦那」

 

 通信機より聞こえる二課の司令——風鳴弦十郎の声に隣に座る少女―—風鳴翼と遅れて奏が返事をする。

 

『まもなく現場に到着だ。既に一課により住民の避難は完了している。準備は良いか?』

「いつでもいけます」

「こっちもだ」

 

 威勢よく言うものの奏の表情は硬い。初めての実戦、LiNKERの投薬を済ませたとは言え、どこまで戦えるか―—そんな不安が頭の片隅によぎっていた。

 ふと隣に座る翼を見る。

 風鳴翼——高い適合係数を持つシンフォギア奏者。奏と違いLiNKERの投与を必要とせずシンフォギアを纏い、今回が初の実戦の奏と違い既に幾度となく|戦場<いくさば>にて戦果を挙げている。何度かその時の映像を見たが、当時LiNKERの拒絶反応でまともにギアを纏えない奏と違い涼し気な様子でノイズを切り伏せていた。その姿は無様な姿を晒す自分をまるで——

 

(っ!? 何考えてるんだ、こんな時にっ!)

 

 一瞬心を覆ったどす黒い感情を振り払い、奏は半ば噛みつくように通信機越しの弦十郎に問いかける。

 

「旦那! 『アイツ』は出ているか!?」

『っ……いや。今の所コードネーム『神災(カラミティ)』の姿は確認されていない』

 

 神災(カラミティ)——それは奏が二課に配属となってしばらくして現れた謎の存在。

 ノイズが発生するとどこからともなく現れ、ノイズを全滅すると姿を消す、二課でも未だその正体をつかめていない謎の人物である。

 今の所分かっているのは対象が何らかの聖遺物を所有しているらしいこと、時に二課よりもノイズの存在を察知できること、そして何より重要なのは『ノイズが持つ炭素転換能力に対する耐性』と『嵐や雷などの自然現象を操ることができる』ということである。

 その人の身でありながら人知を越した力を持っていることから、二課ではカラミティの名で呼称されている。

 

(やっぱりアイツなんだろうか……)

 

 思い出すのは一年前、奏を助けたあの赤い髪の男。モニターごしでしか『カラミティ』の姿は見ていないが、あんなことができる奴といえばあの男しか奏は思い浮かばなかった。

 思案げな表情を浮かべる奏をどう思ったのか、モニターの半分に映る弦十郎が言葉をかける。もう片方には櫻井理論やシンフォギアシステムなどを手掛けた稀代の天才科学者——櫻井了子の姿もあった。

 

『奏、くれぐれも無茶をするなよ』

「っ! な、何だよ! 言われなくたって——」

『今回は訓練とは違う! 実戦だ! 思わぬ事態だって起こりうる』

『そうよ。LiNKER投与後のバイタルが安定したといってもそれはあくまで訓練で、だけ。戦闘時の不確定要素で適合係数にどのような影響が出るかはこちらとしても——』

「わーってるよっ!! 気を付ければいいんだろ気を付ければっ!!」

『おい、かな―—』

 

 苛立ち混じりに返事を返し通信機を切る。

 ふとこちらに向けられた視線に目をやると翼が不安げに見ていた。

 なんだその目は。

 苛々する。

 自分は大丈夫だけどお前はどうなのかと言わんばかりのその眼は。

 

(やめろよっ……何で今日に限ってこんなことばっか——)

 

「あの、天羽さん―—」

「戦闘区域、到着しました!」

「降下準備お願いします」

 

 奏にかけた翼の言葉はしかし、ヘリパイロットたちの言葉に遮られてしまう。伸ばした手を引っ込める翼に、奏は自身の中の苛立ちが増すのを自覚しながら席を立つ。

 

「あっ——」

「とっとと行って、とっとと終わらせるぞ」

 

 続く翼の言葉を待たず、奏はヘリから飛び降りる。落下による恐怖を強引に抑えながら、胸元に下げる赤いペンダント、待機状態のシンフォギアをつかみ——

 

 

 

 

 

——その歌を唄った。

 

「Croitzal ronzell Gungnir zizzl―――」

 

 

 

 

 

===============

 

 

 

 

 

 大量のノイズがうごめく市街地。

 そこに『彼女』は降り立った。

 

 全身にフィットしたオレンジと黒のボディスーツ

 

 体の各部に装着されたメカニカルなアーマー

 

 第三号聖遺物『ガングニール』を核としたFG式回天特機装束——シンフォギアを纏いし奏であった。

 

「さあノイズどもっ!! ここからは、アタシのステージだっ!!」

 

 奏が高らかに宣言すると共に両腕のアーマーを接続、射出する。そして空中でパーツが展開し巨大な槍——『アームドギア』へと姿を変えた。

 

『ガングニール、起動を確認』

『適合係数、安定してます』

『よし、奏。まずは慎重に―—』

「うるせえっ! 全部まとめて叩っ切ってやるっ!」

「あ、天羽さん!?」

 

 司令部からの指示と翼の言葉を振り切り奏は歌を紡ぎフォニックゲインによって強化された身体能力で大きく跳躍する。

 そしてノイズの大群に目掛けアームドギアを投げつける。

 槍が幾百にも分裂し流星のように降り注ぐ―—『STARDUST∞FOTON』によってノイズの数が大きく削がれる。

 着地と同時元に戻ったアームドギアを手に取り奏は押し寄せるノイズを次々と切り刻んでいく。

 

「これが、シンフォギアっ! これが、ガングニールっ! ……やれるっ!」

 

 これまで人類の天敵とされたノイズが嘘のようである。やれる、口にした言葉を心の内でも呟いた奏は只々目の前のノイズを粉砕していった。

 しかし、ペースを考えず、そして初の実戦でアドレナリンが過剰に分泌されていた奏の体は訓練の時と違う状態となっていた。

 突如としてギアの纏った体の動きが鈍くなる。同時に押し寄せる不快感。これは訓練でさんざん味わった——LiNKERの限界時間突破の時のあの感覚だった。

 

「っ!」

『適合係数、低下! 戦闘下での興奮状態によるLiNKERの持続時間低下によるものと思われます!』

『奏、下がれ! 後は翼に任せて援護に回れ!』

「なっ! ふざけるな! アタシは、まだっ―—」

「天羽さんっ!」

 

 翼の言葉に奏が正面を見れば、飛行型ノイズが突撃形態で奏に向って加速をかけていた。

 避けられない、そう思った奏の目の前で翼が放った短剣の嵐——『千ノ落涙』を飛行型ノイズに浴びせかける。

 

「天羽さん! 大丈夫ですか!?」

 

 両脚のスラスターで駆け寄る翼が奏に手を差し伸べる。

 差し伸ばされたその手を見た瞬間——思わず奏は振り払った。

 

「——何だよ」

「——えっ?」

「——何だよ。その眼は——」

 

 それは、奏にとって——今の翼への嫉妬心を持った奏にとって許容できることではなかった。

 翼に目を向ければ、

 所詮アタシは紛い物か。

 所詮アタシは出来損ないか。

 |翼<アイツ>が無事でいるための、

 |翼<アイツ>の、|翼<アイツ>が、|翼<アイツ>の

 |翼<アイツ>の

 |翼<アイツ>の

 |翼<アイツ>の

 |翼<アイツ>の

 |翼<アイツ>の

 |翼<アイツ>の

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 

「……ふざけんな! アタシがアイツの……アイツの代わりなんかじゃっ!」

『奏っ!』

『奏ちゃん!?』

 

 奏の心を占めていたのは、どす黒い感情だけだった。

 弦十郎と了子の静止を振り切り、奏はアームドギアを天に掲げる。アームドギアが展開しエネルギー波を放出、それを大型ノイズにぶつける。

 しかし、それだけだった。迫りくる人型ノイズの群れに尚も斬りかかるもしかし、適合係数の低下したガングニールではノイズを相手に十分なパワーを引き出せない。

 ついにノイズの攻撃を防ぎきれず、弾き飛ばされる。倒れる奏に追撃するノイズを、翼が迎撃する。しかし正規の適合者である翼でもこの物量に耐え切れず奏同様吹き飛ばされた。

 

「天羽さん、大丈夫、ですか……天羽、さん……」

「……何で、だよ」

「え——」

 

 倒れる奏へかける翼の言葉。

 しかし返ってきたのは、怨差に満ちた言葉だった。

 

「何で……アタシはこのザマなんだよ! LiNKERを使ってっ! それでもまともに唄えなくてっ! 何で……何で、お前みたいにできないんだよ……」

 

 最後の言葉は涙混じりだった。一年という時の中で見せつけられた第一種適合者(ほんもの)第二種適合者(まがいもの)との覆せない差、それに徐々に押し唾され来た奏の心はもう限界だった。

 

「あ、もう、さん……」

「何で……何で……」

『奏っ! しっかりしろ! ノイズが来るぞ!』

『奏ちゃん、落ち着いて! 今はノイズから逃げて——』

「逃げ、る……?」

 

 倒錯する状況、その中で奏は徐々ににじり寄るノイズを見る。適合係数が低下した今の奏ではノイズの攻撃を防ぎこともできず、炭化してしまうことだろう。あの時と同じように―—

 でも、ここに彼はいない。そしてもう、奏に戦う力は、心は残っていなかった。

 

(ああ、こんな感じ、前にも―—)

 

 腕を振り下ろす瞬間、奏は一年前のことを思い出す。あの時、彼が助けてくれた。しかし今は——

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、目の前のノイズが吹き飛ばされる。

 同時奏を襲う衝撃と爆風、爆音。

 全てが収まった時、奏の目の前にいたのは——

 

「あ——」

「久しぶりだな。一年振りか?」

 

 蒼い兜に口元をマスクで覆っているものの、その声は正しく彼であった。

 以前と同じ蒼い鎧に損傷を補うように各所に布が包帯のように巻かれ、首元には古びた灰色のマント。そしてその背中は以前にはなかった大振りのハンマーと大型銃を背負っていた。

 

「お前、何で——」

「その槍……まあいい。こっちも色々聞きたいことはあるが、今はこいつらを潰すぞ」

 

 全身から青い稲妻を走らせながら、彼——カラミティは背中のハンマーを抜き取り思い切り地面に叩きつける。

 雷撃はハンマーの衝撃ともにノイズを貫き、一気に炭素原子へと還していく。

 そして空いた手に銃を握り、別方向から押し寄せるノイズへ向け光の弾丸を射出、一発も外すことなくノイズを打ち抜いていく。

 次々とノイズを蹴散らすその姿を、奏はただ呆然を見つめる。

 

「何をしているんだ? 許さねえとかなんとか言ってなかったか? あれはその場限りのものか?」

「っ!」

「何があったかは知らないが、少なくともあの時のお前から出た言魂はそんな『何か』で折れる程ヤワじゃなかったがな」

 

 カラミティにかけられた言葉に奏の心が揺さぶられる。

 そして思い出す。あの日のことを。

 そうだ。何のためにアタシはガングニールを纏っている。

 紛い物だろうと関係ない、皆を殺したノイズ、それを全て殺すためならどんな目にあったって構わない、そう決めたんだ!

 涙を振り払い再びその眼に闘志が宿った奏を見て、雷神の目が細まる。

 

「勝手なことを言うな! アタシはここでこいつらに負けてたまるかよ!」

「思い出したならそれでいい。今はとっととこいつらを片付けるぞ!」

「……言われなくてもっ!」

 

 完全に復活した奏と共にカラミティが戦場を駆ける。全身から迸る稲妻がハンマーともにノイズを粉砕する。神災と奏、二人の勢いは収まることなく次々とノイズを打ち砕く。

 

「す、すごい——」

「っ! ガハっ!?」

「っ天羽さん!」

 

 しかし既にLiNKERの効果が切れた状態で現状を維持しきれず、奏は血を吐き出してしまう。

 それを復帰した翼が援護するも、やはり耐えきれるものではない。

 迫るノイズ、それをカラミティはハンマーを投擲して薙ぎ払うが、その程度では焼け石に水だった。

 

「流石にキツイな―—奏、だったっけか?」

「っはあ……っはあ……何だよ?」

「立てるか。少し後ろを向いてろ」

「え? あ、ああ」

 

 カラミティの問いかけに奏は残った力を振り絞って立ち上がる。それを認めたカラミティは奏の背に手をかざし、謎の紋章で描かれた円陣を浮かび上がらせる。

 瞬間、奏は自身に力が沸き上がっていくのを感じた。この万能感、これまでに感じたの無い感覚に奏は行けるを確信した。

 

「これは——」

「行けるな? デカイのを一発決めるぞ」

「っ! ああ! 翼!」

「っ! はい! 行きます!」

 

 翼の返事と共に二人は空高く跳躍する。同時にカラミティは周囲に風を——嵐を巻き起こす。

 それによってノイズたちが宙に放り出され、身動きが取れなくなる。

 それを逃さず奏と翼はそれぞれのアームドギアを投擲、その大きさを自身の身の丈を超すものに変える。

 

「おおおおおおおおおおっ!」

「はあああああああああっ!」

 

 奏と翼、それぞれの雄たけびと共に勢いの乗ったアームドギアによる蹴り——『SPEAR∞ORBIT』『天ノ逆鱗』が宙に浮いた大量のノイズを粉砕、瞬く間に塵へと還ていく。

 

 それからほどなくして、ノイズとの戦闘は終了した。

 

 

 

 

 

===============

 

 

 

 

 

 戦闘が終了し、奏は後ろへ引き返す。

 目当ての人物はすぐに見つかった。先程と同じ場所で、彼——雷神は回収したハンマーを背中に背負いなおしていた。

 

「お、おい! アンタ―—」

「おお、戻ってきたか。 ……で、どうした?」

「あ、あの——」

「ん?」

 

 やや逡巡する様子をみせる奏だが、恥ずかし気に頬を染め、小さくそれを呟いた。

 

「あ、ありが、とう……」

「……ふ、どういたしまして」

「おわっ!?」

 

 奏からの感謝の言葉に、少しして雷神は布越しに笑みを浮かべながら奏の頭をワシワシと撫でる。

 荒っぽい、それでいて大人の大きな手の感触に、奏は不思議と安心を覚えた。

 

「——って! そうじゃなくてっ!」

「そうじゃなくて?」

「あ、いや、ありがとうって言ったのはそうじゃなくなくて……あ~~——」

 

「天羽さん、そこをどいてください!」

 

 混乱する奏をクールダウンさせたのは翼の鋭い言葉だった。

 そしてそれに応じたのは、カラミティだった。

 

「ああ、翼——だったっけか?」

「カラミティ、あなたには聞きたいことがあります。我々と共に特異災害対策機動部二課へのご同行をお願いします」

 

 張りすました翼の言葉に、奏は思い出す。いくら自身にとって恩人ともいえるカラミティだが、二課として何らかの聖遺物を自在に操る謎の人物——ともすれば重要参考人、あるいは危険人物として保護か拘束しなければならない。

 不安げにカラミティを見ると、面倒そうに彼は頭を掻いていた。

 

「悪いがそう言う訳にもいかない。共に戦った仲としてお前たちは信用できるが、上の連中は信用できない。——特に『終わりの巫女』と繋がりを持つお前らの組織とはな」

「っ! 待ってください。それは一体―—」

「悪いがそれ以上は言えない。俺も力が戻っていないうちに『奴』と相まみえる訳にはいかないでな。では失礼する——」

「待てよ!」

 

 続く翼の言葉を遮り奏はカラミティに向けて叫ぶ。それに背を向けた男は奏に目を向ける。

 

「……何だ?」

「っ! ……ずるいだろ。アタシ達のことは何もかもお見通しな感じでいて、アンタのことは何も教えてくれない。せめて——せめて、名前ぐらい教えてくれてもいいだろう」

 

 最後の言葉は奏の私情だった。

 しかしそれを聞いたカラミティはマスクの下でふっ、と笑うと続く言葉を紡いだ。

 

「暮響也——昔の俺の名前だ」

「響也——」

「今はそれだけだ。また会おう」

 

 突風が周囲に吹き荒れ、ふわりと浮き上がったカラミティ――暮響也は、その言葉を最後に目にもとまらぬ速さ飛翔していった。

 後に残ったのは未だ戦場に立ったばかりのうら若き二人の戦姫だけだった。




やっぱり六七年振りの投稿はブランクが……。
どうにも地の文でしっくり来る感じが来ないのね。
感想と指摘があれば宜しくお願いします

この回について補足するとXDのイベント『双翼のシリウス』を強く意識した内容になります。一期本編じゃ仲の良かった二人ですが、出会った当初はこういったわだかまりがあったんじゃないだろうか、と思い描きました。
次回もこの続きで書いていきますんで宜しく。


 
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