凡矢理高校の生徒会長   作:煉獄ニキ

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第2話

 

 

 

「それじゃHRはこれで終わり!今日も頑張れよ〜」

 

 

そんなキョーコ先生の気の抜けるようなエールで朝のHRは終わりを迎えた。

 

途中で一条のゴリラ発言からの、桐崎さんが怒りのストレートという珍事があったがクラスの誰もさほど重く受け止めてない。

あれは一条がわるいしな、うん。

 

いくらなんでも女子にゴリラ呼ばわりはないだろう。

ともあれ桐崎さんの素を見れたことは良いことだ。

 

そしてそんな彼らは今隣同士で座っている。

互いを罵り合う二人を見て知り合いと思ったらしく、キョーコ先生があっさりと決めていた。

 

俺としては、血で血を洗う席替え戦争が起こらずに済んでホッとしていたりする、小野寺と離れたくもないしな。

 

 

「雪村くん」

 

「ん、宮本か。どうした?」

 

「いつもの、できたから頼んでいいかしら?」

 

「勿論、構わないぞ」

 

「ごめんなさい。色々忙しいのは知ってるのに、あなたに負担をかけて」

 

「負担だと思ったことはないよ。寧ろ気分転換に丁度良いし、実は結構楽しみにしている」

 

 

宮本から手渡されるのは一冊のノートと、表紙は全て英語で書かれた分厚い本だ。

いつもの、というのは彼女が洋書を自分の感性で訳した将来のための翻訳ノートの事だ。

 

彼女は中学の頃から翻訳家を目指しており、その練習に俺が付き合っている形だ。

 

これでも十一までアメリカにいたし、英語はかなり得意ではあるから構わないんだが、彼女はいつも申し訳なさそうにして、何かしらお礼をしようとしてくる。

 

 

「いや、それでも申し訳ないから、次の日曜にでも何処かに遊びに行きましょう。その時に何か奢るわ。でも二人だと誤解を生みそうだし、小咲も一緒に」

 

「ええっ!?ちょっ、るりちゃん。私聞いてないよ!それに雪村君にだって都合があるんだし、急に言われても」

 

「良いな、丁度見たい映画があったんだ。一人で見るのもアレだしって思ってたところだ。付き合ってくれると嬉しい」

 

「思ったより乗り気ッ!?」

 

「小野寺は予定とか入ってるか?」

 

「予定はないけど、私も行っていいの?」

 

「「当然」」

 

「それじゃ決まりな。細かい時間とかは後で決めようぜ、もう授業始まるしな」

 

「それじゃ、また後で」

 

 

今日も例に漏れず、遊びに誘って来た。

二人だとデートだな、なんて考えているとそこは宮本抜かりはない、すかさず小野寺を追加してきた。

 

最初は遠慮していた小野寺だったが、最終的にはきてくれそうだし、次の休みが楽しみだ。

 

 

「見たか?」

 

「見た見た」

 

「流石は我らが副会長、あっさりデート決めたぞ」

 

「しかも二人と」

 

「しかも相手から誘われて」

 

「やはり天才、か」

 

「まあ俺たちも休日は遊び行きますし?」

 

「男子だけでな」

 

「お、俺なんか彼女いるし」

 

「画面の中だろうが」

 

「それで、本音は?」

 

『滅茶苦茶羨ましい!!』

 

 

何やら男子連中が騒いでたが、そっとしておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お取り込み中悪い。学校を案内しようと思うんだが……随分仲良くなったな」

 

『なってない!』

 

「息もぴったりじゃないか。それで、どうだ?」

 

 

桐崎さんも飼育係になったらしく、校舎裏のプチ動物園に来てみたところ、またも言い争う一条と桐崎さんの姿が。

 

軽い冗談だったのだが、中々いい反応を返してくれる。

 

 

「いいわよ。こんな器の小さいもやしといるより、断然楽しいだろうし」

 

「こっちこそお願いしたいくらいだぜ。ここの動物はどっかのゴリラと違って繊細だからな、雑な世話をされたんじゃすぐに死んじまう」

 

「はあ、それじゃ桐崎さん借りてくぞ」

 

「おう、ゆっくり回ってくれていいからな」

 

「それじゃ、行こうか」

 

「ええ」

 

 

うーん、やっぱ仲悪りぃわこいつら。

どうしてこうなった、ってぐらい険悪な雰囲気だ。

 

まあ俺には関係ないし、ササっと学校案内するか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず移動教室で使う教室や女子更衣室、あとは保健室なんかを案内した。

 

それで最後に着いたのが生徒会室だ。

ここには話したい事があったから来た。

 

 

「それじゃ、ここが最後だ。何か困ったことがあった時はここ、生徒会室に来てほしい。俺たちが全力で対応することを約束する」

 

「ヘえ〜、ここが」

 

「立ち話しもなんだし、中にどうぞ。今の時間なら先輩たちもパトロールでいないし」

 

「えっ、大丈夫なの!?っていうかパトロールなんてしてるの?生徒会が?」

 

「大丈夫だから、どうぞ。一応敷地内だけをぐるっとな。ま、侵入者対策ってやつだな」

 

 

会話をしながら生徒会室に入り、来客用のソファーに桐崎さんを座らせる。

 

この部屋は無駄に設備が整っている、職員室から持ってきたというデスク、彼女が座っている来客用のソファーや机も学校の応接室と同じものなので結構な値段はする。

あとは温かい飲み物が飲めるように、電気ケトルが置いてあり俺は大抵コーヒーを飲んでいる。

 

 

「紅茶とコーヒー、どっちがいい?」

 

「紅茶でお願いします」

 

「了解。それと、そんなに畏まらないでいいぞ。同じ一年なんだし何なら一条と同じように話してくれると嬉しい」

 

「いやっ、アレは……」

 

「俺はあっちの方が素の桐崎さんって感じで好きだしな」

 

「すッ!?」

 

「ん、どした?はい、紅茶な」

 

「な、何でもないわ。いただきます」

 

「どうぞ」

 

「あっ、美味しい」

 

 

好き、のくだりでビクッと体が一瞬跳ねて途端に顔を赤くした彼女はそれを誤魔化すように紅茶を口にした。

 

軽い冗談で言ったんだが、すごい反応したな、結構初心なんだろうか。

いや、というよりも実家関係で言い寄ってくる男もいなかっただけか。

 

紅茶も気に入ってもらえたようで、話しやすくなったし、本題に入るとするか。

 

 

「桐崎さん、実家はマフィアだよね」

 

 

これにはどういう反応をしてくるかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼、雪村くんは不思議だ。

初対面の時も、全力で走って来て汗だくの私に気を配ってハンカチを渡してきて、しかもそれを指摘することなく何でもない事のように自然に行って。

 

こう、紳士的とでも言うのだろうか。

今までのクラスメイトと比べても圧倒的に大人っぽいし落ち着いてる、ホントに同い年?って感じだ。

 

しかも生徒会役員をしているらしい。

今は校内の案内をされているが、隣を歩く彼の左腕には白の腕章がついている。

 

そうなった経緯は聞いてないが、一年の、それも四月での役員入りなど明らかに普通ではない。

 

時折会話を交えながら歩いていると、彼が一室の前で立ち止まる。

 

 

「それじゃ、ここが最後だ。何か困ったことがあった時はここ、生徒会室に来てほしい。俺たちが全力で対処する事を約束する」

 

「ヘえ〜、ここが」

 

「立ち話しもなんだし、中にどうぞ。今の時間なら先輩たちもパトロールでいないし」

 

「えっ、大丈夫なの!?っていうかパトロールなんてしてるの?生徒会が?」

 

「大丈夫だから、どうぞ。一応敷地内だけをぐるっとな。ま、侵入者対策ってやつだな」

 

 

パトロールとか侵入者対策とかに気は取られたが、彼が開けてくれたドアを通り中へ入る。

 

中は、思ったよりも立派なもので、普通はこんなにしっかりした机とかは置いてないだろう。

その応接用らしいソファーに案内された私に、彼は振り返りながら話しかけてくる。

 

 

「紅茶とコーヒー、どっちがいい?」

 

「紅茶でお願いします」

 

「了解。それと、そんなに畏まらないでいいぞ。同じ一年なんだし何なら一条と同じように話してくれると嬉しい」

 

「いやっ、アレは……」

 

「俺はあっちの方が素の桐崎さんって感じで好きだしな」

 

「すッ!?」

 

「ん、どした?はい、紅茶な」

 

「な、何でもないわ。いただきます」

 

「どうぞ」

 

「あっ、美味しい」

 

 

彼の雰囲気がとても落ち着いているのと、どっかのもやしのせいでついてしまったかもしれない暴力的な女子というイメージを払拭するため敬語で話したのだが、彼にはそれがどう見えたのだろうか。

 

それにどうしようか考えていると、いきなり爆弾を投げつけられた。

 

いきなりす、好きとか!!

多分そういう意味じゃないんだろうけど、でもいきなり好きとか言う、普通!?

 

いまだにバクバクしている心臓を落ち着かせるために出して貰った紅茶を一口含む。

 

それは、思わず声に出るほどに美味しい紅茶だった。

不本意ながら父の職業柄、それなりに高級なパーティーやお茶会に出たこともある私がそう思うのだから相当だ。

 

そんな事を考えながら、そろそろもやしのネックレスでも探しに行こうかと思っていると、またも爆弾を投下された。

 

 

「桐崎さん、実家はマフィアだよね」

 

 

空気が凍った、いや、私の思考が止まった。

思い出したくもないのに脳裏によぎるのは、実家がマフィアだからと遠巻きにしてくるかつてのクラスメイトたち。

 

せっかく親の事を誰も知らないところに来たのにとか、またぼっち生活に逆戻りとか、漸く動き出した思考回路は次々に有る事無い事浮かんでは消えていくが、それを止めたのはまた彼の言葉だった。

 

 

「すまない、誤解させてしまったようだ。確認をとってそれがバレないように手を貸すと言う筈だったんだが、配慮が足りなかった」

 

「そ、それならもっとわかりやすく言いなさいよ!」

 

 

思わず怒鳴るように言ってしまったが、これは彼が悪いと思う。

悪かったよ、なんて頭を掻きながら謝ってくる姿は普段の彼と違い年相応に思えて少し可笑しくて私は思わず許してしまった。

 

 

「それで手を貸すって、具体的にどうするのよ」

 

 

さっきの衝撃で敬語もとれてしまったが、彼もこっちの方がいいと言っていたしこのままでいいかな。

 

 

「その前に確認なんだが、家に帰ってからは何か用事があるかな?」

 

「家に?いや、特にはないけど……」

 

「良かった。それじゃ七時にお邪魔したいんだけど親御さんは帰られてる?」

 

「多分家にはいると思うけど……」

 

 

何故か彼はここではなく私の家で話したいらしく、パパが家にいるかを聞いてきた。

 

それに関しては問題ない。

転校してくる前もそうだったが、いつ仕事してるの?と思うくらいにはずっと家にいた。

 

それにはママが忙しすぎて簡単には会えない私を寂しくさせないように、という気遣いと父がギャングのボスだというそもそも外出する必要がないということも関係するとは思うが。

 

よって、パパに関しては問題ない。

 

しかし私には、それよりも心配することがある。

 

雪村くんは私の実家のことを少なからず知っているらしい、多分先生から聞いたのだろう。

先生にだけは最低限のことは話しているはずだし。

だが話で聞いているのと実際に見るのでは天と地ほどにも差があるはずで、彼がそれにどういった反応をするのかが私にはどうしても気がかりだった。

 

何しろ顔や腕など日常的に見えるところにタトゥーが入った者や、常にジャケットの内ポケットが膨らんでいていざとなればそれを使うことに何の躊躇いもない者たちの巣窟である。

勿論私は子供の頃から知っているし、見た目はアレでも悪い人間じゃないのはわかっている。

 

しかし彼からすれば初対面の相手がそう(・・)なのだ。

怖がるのが普通だし、関わりたくないと思うのが普通の反応だろう。

 

チラリと見る、何やら考え込んでいてこちらの視線には気づかないが、柔らかな表情を浮かべる彼から前のクラスメイトと同じように距離を置かれたらどうしよう、と。

嫌な想像は止まらず、彼の質問にも半端な返事しかできずそんな私を見てどう思ったのか、彼は両手を合わせて拝むようにして言った。

 

 

「いきなり女子の家に押しかけるなんて非常識なのはわかってるけど、どうにか頼めないか?勿論用が済めばすぐに帰るつもりだし、親御さんには俺から説明もする」

 

「へっ?」

 

「家が駄目なら学校に来てもらうしか、いやでも態々ここまで来てもらうのも悪いか。それなら家の近くの喫茶店とかでも……」

 

「いや、家に来てくれるのは大丈夫だから。父は多分家にいるし、そういうのも気にしないから!」

 

「ん、そう?でも何か心配事があるんじゃないか?すごい顔色悪かったけど」

 

「それはその、家の連中ってかなり強面というか、すっごい面倒というか」

 

 

彼は私が黙ったのが、いきなり男子を家に招くことを心配していると勘違いしていたらしい。

クロード辺りの言動を考えればそれも間違いないのだが今はそうじゃない。

 

彼がまたも気を使って別の案を考えているのを見ると、慌てて大丈夫と言ってしまった。

私に関する話なんだし、これ以上彼に負担をかける訳にはいかないと思ったから。

 

ただ私はそんなに顔にでるのだろうか、私が何かを不安がっていることは彼にはお見通しだったらしくそう聞いてきた。

 

少し言い淀んだが、家に来ることは了承してしまったし、遅かれ早かれわかることならば先に知っていた方が良いだろうと、遠回しな表現になったがどうにか伝えた。

 

 

「ああ、荒くれ者だからって?大丈夫だよ、これでもそう言う人達の相手は慣れてるから」

 

 

それに対する答えはあっさりしたものだった。

正直に言って彼が私の言葉をどれだけ理解しているかもわからないし、結局私の不安は晴れなかった。

 

続けて言った彼の言葉を聞くまでは。

 

 

「それに、そういうの(ギャング)を理由に桐崎さんを嫌いになんかならないから、それだけは安心してよ」

 

 

急にそういうこと言うのは、ずるいと思う。

 

 

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