凡矢理高校の生徒会長 作:煉獄ニキ
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あの後、顔を赤くした桐崎さんと話をしていると、何かを思い出したらしく彼女は慌てて出て行った。
もやしとか言っていたし買い物だろうか、意外と庶民派なのかな?
俺はというと、彼女と入れ替わるように戻ってきた先輩達との報告会を終わらせて、今は下校の途中だ。
毎日のことだし別に構わないのだが、なぜ俺が進行役を任されているのだろうか。
それにしても今日の報告会で話題にあがった男、まず銀髪、薄紫色のスーツに眼鏡を着けていたらしい。
マフィアの幹部が何してんだ、という話である。
報告では
下校途中とは言ったが、このまま直接桐崎さんの家に行くために今向かっているのは和菓子屋『おのでら』である。
一応手土産でも買おうかと思ってのことだ。
外国人に和菓子はどうかと思ったりもしたが、この町で一番美味いお菓子屋は洋菓子店を含めても、間違いなくここなので宣伝もかねての選択のつもりだ。
ちなみに店の名前でわかるかも知れないが小野寺の両親がやってる店だ、もう数年は通っているがいまだにお父さんには会えたことがないが。
お母さんには何度か会ったことがある、親子とはいっても小野寺とはかなり性格の違う人で結構グイグイ質問されたのを覚えている。
嫌いではないが、何となく苦手ではあるので今日の店番は小野寺だったら嬉しい。
そんなことを考えながらゆっくり店に入る。
「いらっしゃいませー!」
「良かった、小野寺だったか」
「へっ?あ、雪村くん!」
ショーケースの中の整理をしていたようで手元に集中しており、こちらに視線は向けずドアの開いた音で声をかけてきた。
それが小野寺だったことで思わず言葉が出てしまいそれを拾った彼女は顔をあげ、俺を見つけたらしくショーケースのこちらまでパタパタと寄ってきた。
「これからちょっと人と会う用があって、手土産でもと思って買いに来たんだけど」
「いつもありがとうございます。雪村くんが宣伝してくれるから、この頃お客さん多いんだよ」
「それは何よりだ。でもここの和菓子が美味いのが一番の理由だと思うけどな」
「ふふ、そうだったら嬉しいんだけどね」
「間違いないよ、俺もおのでらのファンだしな」
「ふぇっ!?」
「ん?」
さっきも言ったがここの和菓子は美味い、家に常備するくらいには。
だからこそ知り合いとかお偉いさんとかに会いに行くときは大抵ここの和菓子を買っていく。
そのくらいこの店のファンだと伝えたのだが、言い方が不味かっただろうか。
妙な声を出したと思えば、顔を赤くして俯いてしまいプルプルと震えている。
反射的に出たんだろう、多分俺の言葉の意味はもうわかってると思う。
だからこそこっちに顔を向けてくれないのだろうが。
「あー、そうだな。その売り子姿なんかすっごい似合ってて眩しいくらいだし」
「へ?」
「こんなに可愛い子のファンになるのは、当然で仕方ないと思うんだけど」
「ちょっ!」
「もう二年以上、俺は小野寺のファンだぞ?」
「あわわわわわ!」
このなんとも言えない気まずい空気をぶち壊したい一心で話すんだが、小野寺の反応が可愛くてなかなかやめられない。
俺の一言でいまだに赤い顔を上げてこちらを見て、次の言葉で耳まで赤くなって慌てて止めようとしてくる。
最後にはようやく止まった震えがさっき以上の振動数を叩き出した。
うん、可愛い。
しかし、言ったこと思い出すと口説いてるみたいだが問題ないな、嘘は言ってないし大体本音だから。
「小咲ー、悪いんだけど、裏行って材料取ってきてくれな……い」
ガチャッ、と店の奥にあるドアから入ってきたのは例のお母さんで、彼女にはこの光景がどう映ったのか小野寺への頼みごとであろう言葉も途中で勢いをなくした。
小野寺は音に気づいて振り向いて、固まった。
妙な緊張感すら漂う空間で、再起動を果たした娘とそのきっかけになった母、そして娘を口説いていたであろう不届きな輩(俺)は動けずにいた。
「ゆ、雪村くんのバカァァァァァ!」
「ちょっと、小咲!」
最初に動いたのは小野寺、俺への恨み言を残してたった今母が入ってきたドアから出て行ってしまう。
その時に軽くぶつかられたお母さんは止めようと声をかけたが、聞こえなかったのか遠くから階段を登る音が届いた。
静寂。
そんな言葉が当てはまる静けさがここにあった。
さっきの小野寺とのものを軽く凌駕しての気まずい空気到来である。
「……どうしたの、アレ?」
「なんというか、からかってたらああなりました」
「からかってた、ねぇ。私には口説いてたみたいに見えたけど?」
「まあ、間違ってはないですね」
「へぇ……あの子のこと、好きなの?」
「……すいません、そういうのは本人に言いたいんで」
その沈黙も長くは続かなかった、お母さんが話しかけてきたからだ。
彼女にそんな気はなかったのかもしれないが、それは質問というより尋問に近いものだった。
そんなプレッシャーに負けた俺はついに自白してしまった、母は強しって言うし仕方ない。
でも最後の質問だけは守り通した、ほとんど言ってしまっている気もするが本人には聞かれてないからセーフだ。
「ふ〜ん。まっ、今はそれでいいわ。うちのお得意様だしね。それで、今日は何買ってくれるの?」
「どら焼きを十個お願いします」
「あいよ。いつもありがとね」
「いえ、ここの和菓子は美味いんで一日一個は食べたくなるんです」
「あはは、嬉しいこと言ってくれるね。でもそれだけじゃなくて、小咲のこと。学校での話、いつも聞いてるわよ」
「へえ、そうなんですか」
「そうよ。今日は雪村くんに勉強教えてもらったとか、バスケしてる姿がかっこよかったとか、一日一回は話題にあがるから。最早日課よ」
「ちょっ、それ言っていいんですか?後で怒られますよ」
俺が答えた途端にニヤニヤしながら許してくれた。
本当に小野寺に言うのだけは勘弁してください。
その後も袋にどら焼きを詰めながら話すことに、何故どら焼きかと言えば桐崎さんのお父さんの好物だという情報を掴んだからだ。
ってそれよりも、こっちのお母さんの暴露が酷い。
言ったことが小野寺にバレたら、俺と一週間は顔合わせてくれないぞ。
「バレなきゃいいのよ、だから言っちゃ駄目よ」
「いや、言えませんよ」
「そりゃそうね。はい、どら焼き十個で2000円ね」
「ありがとうございます、これで」
「はい、2000円ちょうどね」
「っと、そろそろ時間ヤバイので帰ります」
「雪村くん、これからも小咲と仲良くしてあげてね。あの子、本当に楽しそうにあなたのこと話すから」
「もちろんです。寧ろこっちが愛想つかされないか心配なくらいなんで」
「ふふ、それなら心配いらないわ」
「それならいいんですけど。それじゃ失礼します」
「ええ、気をつけて帰りなさい」
そんなこと言えるわけがない、自分で自分の首を絞めるようなものだ。
もちろんそう言ってもらえてたのは嬉しいけどね。
ふと時計を見ると、六時半になりそうでそろそろ出ないとまずいのでそう伝えたのだが、彼女から真剣な表情でお願いされた。
けど、それはお願いされるようなものでもない、俺は自分の意思で小野寺と仲良くしていて、彼女から拒絶されないうちは離れたいとも思わない。
そう伝えると、彼女は自信満々な表情で問題ないと笑みを浮かべた。
雪村くんは約束の十分前に門の前に訪れた。
少し前から待っていた私に驚いてたみたいだったけど、そのまま案内することに。
待たせたことを謝られたけど、私の都合で態々家まで来てもらってるんだしこのくらいはしないと。
それで彼を客室まで連れて歩いたんだけど、あまり驚いた様子はない、普通より大きい家だと思うのだけど見慣れてるのかしら。
すぐに部屋に来たパパと挨拶を交わし、緊張してる様子も見せず今日来た理由を話し出す雪村くん。
私やパパと反対のソファーに座っているギャングのボスと話していても平常心の彼が、数時間前の私との会話で慌てていたのを思い出して少しおかしくなった。
「それじゃ、今日はどういった用件でここに来てくれたのかな?」
「はい、彼女が自分の家がギャングであることを周囲にバレないよう協力するため来ました」
「ふむ、確かに環境が変わったし彼女のことを知る人もいないだろう。精々が教師くらいか。娘が友達を欲しがっているというのも気づいていたよ。それについては私も申し訳なく思っていてね。最初が肝心ということかな」
「その通りです。私の知り合いにヤクザの息子がいますが彼は既にそのことを周囲に知られています。クラスメイトは普通に接していますが、それ以外は彼を怖がり遠巻きに眺めるだけです。桐崎さんがそうなるとは限りませんが、最初から隠せるならその方がいいかと思いまして」
「なるほど。では具体的には何かあるかな?」
「まず、登下校はなるべく目立たないようできれば徒歩、無理ならば目立ちにくい車でお願いします」
あと送迎する人も同じく目立ちにくい格好で、と続ける彼を見ながら、話に出てきたヤクザの息子について考える。
その後も続く話を聞いてみればなんとリムジンで登校していたらしい、しかも刺青を晒しながら。
バッカじゃないの、と思いながらもつい今朝同じ目に遭いかけた身としてはあまり笑えない。
「他にも色々ありますが、とにかく一番は目立たないことです。転校生でハーフの可愛い女子というだけでも注目を集めます」
「かわッ!?もう、そういうのサラッと言うのやめなさいよ!」
「何が?」
「だから、その、可愛いとか。好き、とか」
「いや、桐崎さんは可愛いだろ。俺は自分に正直に生きるようにしてるんで、やめることはないな。あと、自分を偽ってる人と生き生きとした素の表情を見せてくれる人、桐崎さんはどっちが好きだ?」
「そんな風に言われたら、後の方に決まってるでしょ!」
「だろう?」
「ふふ、千棘にこんなに仲の良い友達が出来るとはね。しかも一日でこれとはね」
「すいません、話し込んでしまって」
「いや、構わないよ。寧ろ安心したくらいさ。君がいれば千棘も楽しい学校生活が過ごせそうだ」
「ボス、私は反対です」
「ほう。雪村くん、彼はクロードといい我々の側近で最も信頼している者の一人だ」
「そうなんですか。学校にも来られてましたね」
「えっ、そうなの?」
もう、彼のこういうところは天然なんだろうか。
あっさりと言い包められたけど、要するに私もそのままでいた方がいいってことよね。
最初はお淑やかな感じのキャラでいこうとか思ってたけど、よく考えたらそれも疲れそうよね。
うん、やっぱり素の私でいるのがいいのかも。
それにしても、クロードが学校に来てたなんて全然気づかなかった、絶対来ないでって言ってたのに。
この後にでもキツく言っておかないと。
「ほう、気づいていたか」
「はい、生徒会室の隣に隠れてましたね。今日のように敷地内に入るのはやめてもらえませんか」
「そんなことはどうでもいい。私が言いたいのは、貴様が何者かということだ。お嬢がビーハイブのボスの娘であると知っていて限りなく隠した私の気配を察知した。それで一般人であるとは言わせんぞ。貴様はどこの組織の者だ?」
「どこの組織にも属してはいませんよ」
クロードが話しだしてからこの部屋の空気が変わった、なんとなく怖い感じの視線を雪村くんに向けるけど彼は何でもないかのように受け流していた。
クロードが言うには雪村くんは裏の人間なんじゃないか、ってことらしい。
一般人が手に入れられる情報ではないと。
それに対して、雪村くんはさらりと答えた。
「フン、それで納得できると思うか?」
「無理でしょうね。なので一つだけ、私は一人の殺し屋の弟子でした。彼は極めて優秀でしたが、五年前に三つの組織から包囲され死亡しました」
「ッ!?」
「馬鹿な、ヤツに弟子などいるわけ……ッ。まさか貴様が『エンド』か?」
「そう呼ばれていたこともあります」
「ど、どういうこと?」
驚いた。
彼が殺し屋の弟子だったなんて、けど言われてみればその隙の無さは仕事モードの鶫にも通じるものもあるし、本当なのかもしれない。
でも師匠はもう亡くなってるなんて、大して表情を変えずに話す彼を見て少しだけ心がざわついた。
きっと大切な人だったのに、悟らせないようにしてそれは凄く寂しいことなんじゃないの?
そんな風に思っても、それを口にする事はできず、話は進んでいた。
クロードが慌てた様子で問いかける、彼のこんな姿を見るのは珍しい、と思ったけど私の誕生日のたびにプレゼント関係で同じようになってるし、そうでもないかもと思い直した。
エンド?
何のことかしら、流石に黙っていられず話の途中で口を挟むことになったが聞くことにした。
「特殊な殺し屋のコードネームみたいなものです。異名と言ってもいい。巧みな変装で顔は不明でしたが体格からまだ子どもとだけ判明してました。そして、その名を有名にさせたのがその雇われ方です」
「雇われ方?どう特殊なの?」
「通常殺し屋に依頼する時は互いに顔を合わせることなどほぼありません。その後も殺し屋が単独行動で対象を殺しに行く、普通はそうです」
しかしエンドは違う、とクロードは続けた。
彼が言うには寧ろボディガードに近いのだと、それとの違いは身を呈して守ることを最優先にするか、そうしつつも敵を完璧に排除すること。
常に依頼者の側で、守るか、護るため敵に立ち向かうかの違いだと。
実際に守られた依頼者が傷一つ負ってないことから護り屋と言われてもいます、という言葉でクロードの説明は終わった。
その間も雪村くんは静かにこちらを見るだけで口を挟むことはなかった。
「要するに、超優秀なボディガードってこと?」
「間違ってはいないよ。エンドは四年ほど前から姿を消してしまっていたから、死んだと言われていた。まさか日本で生きていたとはね」
「ボス、まだこの男がエンドだと決まったわけではありません。仮にエンドだとしても、信用できるわけでもない」
「しかし、エンドが殺したのは悪人だけという話だったが?」
「それは聞いていますが、それでも危険でしょう。もしかすれば報復にお嬢が巻き込まれるかもしれない!」
「その時は俺が護りますよ、彼女は既に俺が護るべき生徒で友人だ。それを害するというのなら、排除します」
パパが言うには、ビーハイブでも彼をスカウトすべく動こうとしていたらしい。
だがクロードからすれば関係ないらしい、反対理由が私の安全というのがどうにも彼らしいが。
私は大丈夫だと思うんだけど、だって生徒会室でも何もしなかったし今だって彼からの敵意みたいなのは感じ取れない。
これでもギャングのボスの娘だ、敵意や殺意には結構敏感なんだから。
雪村くんが声を発した時、またもや空気が変わった。
それまでの冷静だけどどこか暖かい彼の雰囲気が無くなったわけではない、ただ鋭さが増した。
敵意でも殺気でもなく、闘気だとか、覇気といった方が正しいかも、それを目の前で見せられているのに彼を恐れる感情は何故か全くない。
別に護ってもらうことにときめいたり、友人って言葉に舞い上がったりなんてしてないんだから!
「ふん、ならばその実力を見せてもらおうか。庭に出ろ、雪村とやら」
「構いませんよ。依頼といった関係ではありませんが、信頼を得るためには必要なことでしょう」
えっ、どうしてこうなったの?
なんか急に戦う雰囲気なんですけど。
でも険悪じゃない、クロードもどこか彼のことを認めているみたいだし。
あぁもう、とにかく、どっちも怪我しちゃ駄目よ!
この後の模擬戦は引き分けです(戦闘描写はカット)。