ガンダムビルドダイバーズ Re:スタート 作:aki@ガンプラ
小説という形で文に起こすのは、初めての試みです。処女作みたいなモノなので生暖かく、お読みいただければ幸いです
第 一 章 「可能性の証明」
ガンプラバトル・ネクサスオンライン。仮想空間内でプレイする世界規模のオンラインゲーム。
ガンプラ好きだけでなく、仮想空間での交流そのものを目的にもプレイ可能なため、日々遊びの幅を広げ続けている今、最もホットなゲームだ。
アバターネーム 「ユウジン」こと 青城 雄二(あおぎ ゆうじ) もまた、このゲームにのめり込んでいる男子高校生の一人である・・・だが、彼は他のプレイヤーとは少し違い、とある問題を抱えていた、それは・・・
ズ ド ォ ォ オ ン !
光線と爆音が周囲を包む、飛散するデブリが視界の隅を流れていく。
たった今、一機の敵を手持ちのバスターライフルで大破させ、周囲をキョロキョロと見回すユウジン
宇宙エリアでのガンプラバトル。今日の敵は00シリーズで固めたフォースとの対戦、彼が駆るは0083のガンダム試作3号機「ステイメン」を改造したガンプラだ。
特別に改造されたバスターライフルの火力は凄まじい・・・
相手のガンプラである 「ガンダムヴァーチェ」 が、分離機構を発動させる間もなく凝固な防御フィールドごと、その巨体な機体を破壊するほどだ。
「まだアームも腕も保つか?連射さえしなけりゃ、あと・・・2発ってとこか!」
自分のガンプラの現在の状態を映すコンソールを瞬時に確認し、操縦桿であるグリップを強く握り直し、気合を入れる。
ゴゥン!!とバーニアを吹かして速度を上げる、囲まれる前に距離を取るためだ。
「デンドロビウム」の巨大アームドベース 「オーキス」 の改造機を装着した機体の中で、彼はオーキスカスタムに設けたコクピットブロックでオペレーターを努めている少女に対して、額に汗を浮かべながら聞く。
「敵機の残りは!?何機だ?リン!」
無重力の中での高機動戦闘をかれこれ十数分続けてきたため、頭の中で情報が混乱してきたのだ。
「敵機残り6! センパイ、やりましたよ!初めて相手フォースの数を半分まで減らせました!コレは快挙なんじゃないですかね?ね?」
おめめを輝かせながら、まだ折り返し地点だぞ?と彼の心をへし折りに来るオペレーター、彼女はいつもこんな調子だ
「はいぃ!?まだ半分も残ってんじゃねーか!もう弾もエネルギーも3割切ってんだぞ、ちくしょう!!・・・・・はッ!?」
ピ ー ! ピ ー !
そんな都合はお構いなしと彼のコクピットに警告音が鳴り響く。眼の前に広がるまばゆい光、GN粒子によるビームが四方八方から撃ち込まれデンドロビウムに迫る。
いつも見る。よーく見る光景・・・
時間が引き伸ばされたような感覚。アニメの世界ならばニュータイプが戦闘中に見る刹那の攻防のシーンと言ったところか?だが、コレはゲームだ。超常の力などシステムの再現に過ぎないし、そもそもコレはシステムとは全く関係がない。
なぜなら手も足も、まるで鉄で出来ているかのように重い、十時方向に回避できれば活路を見いだせると頭でわかっているのだが、足掻こうにも彼の身体はピクリとも動きはしない。
デンドロビウムが爆散する閃光に反射的に目をつむり、目をもう一度開けば見える「YOU LOOSE」の文字・・・そう、本当によく見る光景だ。
「あぁー・・・今日もこっぴどく負けやがりましたよ。ちくしょう・・・いや、あの時こう!こう動ければ!・・・いや、うーん・・・アニメじゃアムロ達は動けるのになー・・・」
トホホ・・・と言ってもいないのに聞こえてきそうな様子でため息を付きながらフォースネストの格納庫で突っ伏す。
長身でワイルド系ブラウンヘアー、健康的な肉体に着崩したツナギがエンジニアをイメージさせる彼こそが「ユウジン」である。
彼はそう、【とてもガンプラバトルが弱い】 のである・・・何を隠そう彼は中学校時代、GPDでバトルが苦手な友達同士で集ったチームメンバーに声をかけて、このGBNでフォースを結成した。
通称ビルダー専フォースと呼ばれる分類のフォース 「ユグドラシル」 そのフォースリーダーを努めている。
ビルダー専、と呼称するから察せるだろう、彼のバトル技術はとても低い。
ソレにも関わらず彼は今【たった一人】で戦って惨敗してきたところなのだ・・・
そんな彼の後ろから、銀髪をゴムで止めただけの、2つのおさげを揺らす少々幼児体型、良く言えばスレンダーなアバターにサイバーチックなスーツを着込んだ少女が、ピョコピョコと跳ねながらユウジンの隣で同じ様に突っ伏して、彼の一人反省会に参加してくる。
「アハハ♪先輩、いっつもそう言ってますね~、良いじゃないですか私達ビルダー専ですよ?二人で他のフォースのガンプラ作りのお手伝いをメインに活動するのだって手です。
先輩、色んな所からお誘い?来てますよね?」
と、彼の心を知ってか知らずかへし折る。見るからに後輩!といったイメージが印象的な彼女は、GBN内でのアバターネーム 「リン」 こと
橘 夏凜(たちばな かりん)その人である
「いや、お前・・・もう俺たち二人しか居ないのに、俺も抜けたらこのフォース無くなるじゃねーか!お前一人で残るなんて言い出すような女じゃないだろう?」
勘弁してくれよぉ・・と彼はもう一度ため息をつく
「はい!もちろん私も先輩に付いて行って同じフォースに入れてもらいますとも!私はなんて言ったって先輩のファン1号ですからね! あ、ちなみに2号3号は受けつておりませーん。サイサリスもステイメンもこのファンクラブには無用の長物ですから!」
とドヤる彼女に痛くない程度にヘッドロックをかけながら
「この野郎、無用の長物言いやがったな!?俺の大好きな0083ディスらないでもらえますぅ?・・・はぁ~、しかし勝てないのはなんでだろうなぁ?腕が足りないってのはわかるんだけど、ガンプラの出来では間違いなく勝ってるはずなんだよ。いい勝負くらいは出来ると思ってたんだけども・・・」
痛たたた♪とはしゃぐ後輩を適当に開放し、いつものじゃれ合いを打ち切って彼は真剣に悩みを共有する。5人居た頃のフォースでは一人が悩めば4人が知恵を貸すのが当たり前になっていたからか、頭を搔いてうなだれる
「一人じゃ・・・・やっぱダメなのか?俺が頑張れば、なんてのは俺の自己満足でしか無かったってのか・・・」
ハンガーで修理中の自分のガンプラ 「ステイメン:シグルド」 を見ながら思う・・・自分が持てる全てを注ぎ込んだガンプラで勝てない。勝てないから今の自分達があるのだと言われているようで・・・ソレがどうしても認めれない。
離れていった仲間達にもう一度信じてほしかった。俺たちビルダーは、GBNでだって戦えるんだと。そう耽っていると
「センパーイ。センパーイッてば!!見てみて。コレ!新谷先輩ですよ!」
「ん?・・・何ぃ!!?」
そう言って指差すフォースネストのモニターを彼は飛びつくようにひっつかんで覗き込む
そこに写っていたのは、金髪で後ろ髪をマゲのように縛っている姿も様になる、普通の背丈ながら体幹がしっかりしてるせいか、騎士とか武士みたいなイメージがしっくり来る侍の和服に身を包んだアバターの男。
彼は、かつての仲間でありGBN内でのアバターネーム 「S・A」こと
新谷 智(あらや さとし)であった。
映像の内容は、たった今自分も戦ってきた運営非公式のアングラな大規模バトルトーナメント 「GBNフォースアタックトーナメントウォー」 その予選の試合を取材した番組。
その大会の前回優勝フォースである、フォース 「ソロモンの悪魔」 のフォースメンバー達へのインタビュー映像であった。
リポーターの「今日の試合でのMVPとの声も大きい、フォース「ソロモンの悪魔」期待の新星。S・Aさんですが、強さの秘訣は何でしょう?」という質問に対し、新谷はこう答える
「なんと言っても、柔軟な順応力です。確かにコレを一つと定めて極めようとすることは大事です、ソレは間違いなくその人の武器になりますから・・・ですが、ソレしか無いと決めつけて他の道や、手段を捨てるようなら先には進めません。
GBNは日々進歩し、変わっていきます。コレは良いことですが、ついて行けない人、ついて行きたくない人には苦痛に感じる事も多いでしょう・・・せっかく持っている素晴らしい才能を、僕は一つも取りこぼしたくありません。妥協だなんてと変に意地を張らないで順応することこそが、強くなる秘訣だと、僕は思います」
そう言って切り替わる試合映像での彼の活躍の数々・・・そこに写っていた彼のガンプラ。
フォース「ユグドラシル」のビルダー4人が彼のために作り上げた。彼が想う理想を体現した機体 「ガンダムアストレイGフレーム:武御雷」 に
【自分たちが絶対に付けまいとした装備が増設された機体】だった・・・
バ ン !
モニターを掴みながら壁を叩くユウジン。 「センパイ・・・」リンは彼の背中に何を言えば良いのかと俯き黙ってしまう・・・
「なんでだよ・・・!智。お前、ビーム兵器好きじゃないって言ってたじゃねーか・・・皆、お前のために!お前のスタイルで勝てるようにって!皆がッ・・・!!」
再度壁を叩く、リアルならば血も滲んでいたかもしれない、それほど悔しかった。アイツがフォースを離れたことがじゃない。勝利に拘るのは俺だってそうだ・・・でも!
「俺と沙耶、夏凜に由紀ちゃん・・・4人ともお前にお前らしく戦ってほしかったんだよ・・・だからこそのGフレームだったんだよ・・・」
武道家の家に生まれ、武芸を修めていた智の才能を活かすために、フォース全員で考えて編み出した、鉄血のオルフェンズ 【阿頼耶識システム】 とGガンダム 【モビルトレースシステム】 の融合。パイロットと機体をまさに人機一体と化し、智の誇りである武芸の技術をそのままバトルに転用するためのフレーム。
智の乗ったアストレイGフレーム:武御雷はタイマンで負けたことなど一度もない。俺達でたどり着いた、フォース【ユグドラシル】最高のファイターの為の、最強の機体だった・・・それが、アイツの言う【順応力】とやらでデコレーションされていた、ビーム兵器が好きじゃない智が、ビーム兵器無しで戦えるようにと作り上げたはずだったのだ。
そんな事を考えながら、がっくりと落ち込んでいると、後ろから元気なあの娘の声がする。
「センパイ♪まだ、予選大会は1ヶ月ありますよ!その間にFAWランキングを118位から30位まで上げれば本戦に行けるんです。ジャイアントキリング上等なこの大会ならまだチャンスは有るじゃないですか!明日も私イン出来ますから、一緒に頑張りましょう!オー!・・・・・おー?」
チラチラ!とこちらの様子を確認しながら励ましてくれる後輩に、いつも助けてもらってばかりじゃないかと、ユウジンは頭を振って切り替える
「ああ!明日に90番代に入り込めればガンプラを改良する時間だって捻出出来るしな!任せておけ、機体のコンディションだけは完璧だからよ!」
空元気だろうがなんだろうが、元気に変わりはない!と、ドヤって後輩くらいには胸張ってみせる
「はい♪それでこそセンパイです!じゃあ、私は門限なので今日は失礼しますね、また明日です!センパイ」
そう言ってログアウトしていく夏凜、それを見送るのもいつもの日課だ。
夏凜はああ見えて良いところのお嬢様なのだ。
中学こそ一緒だったが、高校では有名所なお嬢様高に通っていて門限も厳しい。中学時代、GPDで今のチームを組んでいた時も、いつも黒服の爺やって執事さんが送り迎えをしていた・・・・
「GPD・・・か。あの頃はもっと皆、適当でフザケてて・・・最高に楽しかったはずなのにな。なんで、今此処はこんなに冷てえんだよ。俺が、もっと・・・もっと強かったら、こうじゃなかったのか?変われたって、どう変わりゃ良いんだよ?・・・なぁ、智」
誰も居ないフォースネストで、その質問に応じてくれる者は誰もない・・・
気を取り直してログアウトし、ダイバー機器がある叔父が経営する大型店から家までチャリで15分、風呂に入ってベッドに突っ伏してGBNの端末である 「ダイバーギア」を眺める。そこに写っているのはGBNフォースアタックトーナメントウォーの概要だ。
「GBNフォースアタックトーナメントウォー」 通称FAW
公式大会と違い、4ヶ月毎に非公式で行われるこの大会は、とある有志のスポンサーが執り行っており、賞金もきちんと出るアングラな大規模大会である。
本戦の全バトルで勝敗を賭けてのギャンブルが行われており、スポンサーにもかなりのビルドコインが流れているという噂だ。
ルールは公式の大会と大きく異なっており、出場可能なフォースは公式とは違い一組となっている。
フラッグ機を設ける公式の大会と違い、この大会は攻守に分かれての試合となる。
攻守の決定は、バトルに参加するプレイヤーの数で決まる。プレイヤー数が同じであれば、試合開始前にランダムに決まる。
人数の少ないほうが攻撃側で、防衛側を全滅させるか防衛拠点のコアを破壊すると勝利となる
一方、人数が多い方が防衛側となり、攻勢側を全滅させるか1時間コアを守りきったら勝利となる
両フォースにはバトルスタート地点に破壊不可能な補給ベースが設置される
攻勢側はこのベースが移動式であり、自動で少しづつスタート地点から防衛拠点となるスペースコロニーの宇宙港へと移動する。残り時間が15分になるタイミングに宇宙港に停泊する。
防衛側はこのベースが防衛拠点と隣接している。隣接していると言っても、ベースに戻るには一度防衛拠点の外に出なければなならい。
そして、このルールは当初と違い改善が加えられており、大型のモビルアーマーやデンドロビウムの装備品に該当する、オーキスの様な巨大アームドベースをフォースに加えている場合、強制的に攻勢側に回される。
これは、モビルアーマーの防衛能力が高すぎたためである。初期の頃の大会はモビルアーマーは絶対1機以上編成に入ってくるというほどに、大会のルールに対して、あまりにマンチ行為過ぎた事態になってしまったのだ。
両フォースがこのルールに引っかかる場合は、双方が攻勢側となり、相手を全滅させる以外に勝利する事ができなくなる。
この大会に参加したフォース全てのフォースにFAWランキングという順位が与えられ、下位のフォースが上位のフォースに勝てば順位が入れ替わるという仕組みで、上位30位だけが本戦に進める。
なお、大会に出場登録をしなかったフォースのランキングは除名となり、ランキングは繰り上がる
大会開催場所が火星圏の宇宙エリアであるため、一日におこなる試合数は全体で30試合ほど。この30枠に上手く滑り込んで上位のフォースに挑むことになる。ただ、ランキング入れ替えというルールの都合上、30位のフォースへのチャレンジャーが後をたたないため、プレイヤー間で
【31位より下位のフォースは自分のランキングより10位以内の上位のフォースにしか挑んではイケナイというマナー】が生まれ、様々な実力のフォース同士がぶつかり合う大会へと発展した
そして、この大会の最大の特徴であり、最も頭を悩ませるルールがこの
「リソース制戦闘」である
この大会では、バトル開始前に両フォースにモビルスーツ十機分に相当するリソースポイントが配られる。このリソース1機分はフルアーマーガンダム1機を基準としているため、それなりに多い。
各フォースはこのポイントを弾薬やモビルスーツのエネルギー、予備の装備、修繕用エネルギーに変換して各プレイヤーや補充ベースに配布してバトルに挑まなくてはならない。
GNドライブや核融合炉など、ガンダムの設定的にエネルギー切れを起こさない機体であっても、この大会においては適用されない、一応そういう設定の動力炉を積んでる機体は通常のモビルスーツよりもエネルギーが減りにくいように調整はされている。
バトル中もベースに戻ればこのポイントで変換したリソースで機体を修復したり補給する事が出来る。
そして、このルールにはなんと 【バトルに参加するプレイヤーとガンプラの数に制限がない】 のである。
つまり、リソースを上手く分配すれば何機でもバトルにガンプラを投入することが出来るため、強豪フォースすら数の暴力に敗北することもある。かなりハチャメチャなバトルが見れる大会なのだ
そう、バトルに参加するプレイヤーの数に制限がない・・・
つまり、たった一人・・・たった一機のガンプラでもこの大会には参加できる。たった一機で、GBN中に自分たちの強さを証明できる大会、今のユグドラシルがユグドラシルのまま戦えるたった一つのステージなのだ。
手を握りしめて今一度自分に誓う
「俺は、取り戻す・・・アイツらが作ってきた全てを笑い飛ばした連中から、何もかもを取り戻して・・・そんで、もう一度アイツらとガンプラを作る!バトルをする!全力で笑いながら、勝っても負けても後悔しないほど、最高に楽しい日々を取り戻す!!」
この誓いだけは、絶対壊されたりしない!何度壊れたって直して作り上げてきたビルダー魂、見せてやる!!
・ ・ ・ ・
「って言って勝てたら苦労しねーんだよぉ!・・・・はぁ、はぁ・・・」
負けた・・・今日も負けた、まだ時間はあってもコレじゃあ無いのと変わらない
「今日のセンパイは、気合が違いましたね!また快挙ですよ!あと一機、相手フォースのエースとタイマンまで行ったじゃないですか。 ・・・そのあとサクっとやられましたけども・・・」と最後の方は目をそらしながら言う。
無理からぬ事では有る、リソース制であるこの大会では、十機分のリソースを使いこなさなければ勝てない。
あっちは十機以上のガンプラが有るのだから、消耗したり破損したら一度ベースに戻って補充を受ければいい、なにせ補充してる間は仲間が戦いを維持してくれるのだから・・・・
でもユウジン達はソレが出来ない。自分が補充に戻っても誰も自分を護ってはくれない、補充に戻ればその間に一発もらっておしまいである。
だからユウジンはステイメンを選んだ。オーキスと合わさったデンドロビウムならば、個人で携帯できるリソースは5機分に相当する。腕が足りないのにモビルアーマーに乗ればタダの的、モビルスーツのままリソースを大量に持ち運ぶ為にユウジンなりに考え抜いた戦術なのだ・・・だが
「囲んで棒で殴る・・・コレほど有効な戦術をあえて食らいに行くと言ってもいい戦術だよな、よく考えたら! ハハハハ♪」
もう笑うしかない。とにかくどうにかしなければと頭を捻っていると・・・
そこへ彼らに近づいてくるフォースを目の端に捉える。見間違えるはずもない・・・FAWランキング28位、フォース 「マスカレード」
ガンダムには多い仮面キャラ再現フォースだ・・・いや、この手のフォースは多いから人違いの可能性も在るには在るんだが・・・俺に用のある仮面集団は間違いなくマスカレードの連中だ。
特にそのフォースリーダーでSEEDのラウ・ル・クルーゼのコスプレをしている成人男性。アバターネーム 「ラウ」 ってまんまじゃん・・・
コイツは2ヶ月くらい前から俺をフォースのメインビルダーにと勧誘してきてるんだが・・・RPがガチすぎて正直話にならん奴だ
「おっと、お嬢さんと逢引の途中だったのなら謝罪しよう。君のバトルが終わったのを確認できたものでね、この前の返答を聞きたくてつい早る足を抑えきれなかった。
それでどうだろうか?私に君を・・・最後の扉を開く鍵を、授けてくれる気にはなったかい?ユウジン」
本当に面倒な奴である・・・でも俺より断然強いという事実に納得したくない
そもそも、最後の鍵ってラウ・ル・クルーゼが連邦に流したんじゃなかったか??
「前にも言っただろう?俺は今もフォースリーダーだ、リーダーが抜けるなんて筋が通らんだろ」と速攻断るが
「いやいや、君とそこのお嬢さん以外はもう抜けたり、インしてないんだろう?そして、そこのお嬢さんは君と一緒なら構わない。という返事も貰っているよ。フフ♪」
その言葉にキッ!とリンを睨むが、リンは吹けない口笛を吹きながらそっぽを向く
「それでもだ。俺が抜けないってんならリンも抜けない。ほら、フォースは存続する。フォースリーダーの努めは果たさないとならんだろー?」ニコニコしながらも早く帰れオーラを出すユウジン
当然、コレで諦めるならコイツを面倒くさい奴認定なんてしない
「おやおや、リーダーの努めを果たすというならば、フォースでのバトル・・・活躍しないと駄目なんじゃないかい?そして・・・君が活躍できるステージはバトルフィールドではない・・・分かっているんだろう?君はビルダーだ。それも生粋の、コレ以上無いほどにね」
そう言うと彼はオーバーリアクションを取りながら大声で告げる
「だが!私達マスカレードで共に手を取り協力すれば、間違いなく君の作るガンプラはトップランカーどころか、あのチャンピオンの喉元にすらその牙、届くことだろう・・・
君のステイメン:シグルド・・・私は初めて見たときから興味があった。とても洗練されていて、強力で・・・なのにパイロットだけには恵まれたなかった不遇の機体」あぁ・・・と嘆くようなモーション
「それはッ・・・!」
言われていることは本当のことだ、俺は弱い。ガンプラバトルでロクに勝てた試しがない。敵機を撃墜できる理由の9割以上が機体性能の高さゆえだ・・・
拳を握りしめ、わなわなと震える様子を見てラウは此処までか・・・と踵を返す
「失礼した・・・この話しはまた今度と言うことにしよう。でも忘れないでくれ、私は君を高く評価している数少ない人間だ。他の連中は分かっていない。
ソロフォース【ぼっち小隊】などと揶揄するバカどもとは違うのだよ。君は素晴らしいビルダーだ。今度は良い返事が聞けると期待しているよ?フフフ♪ハハハハ♪」
マスカレードが去っていき、その場に座り込む。あぁ・・・なんで何も言い返せないんだろう・・・惨めだ。と絶望していると、またいつもの元気な声が俺を呼び起こす
「センパイ!しっかりしてください。壊れてる場合じゃないですよぉ、ほら自分をリペアして!ほらほらビルダーの仕事でしょ!」
アーウー・・・とゾンビのような声を上げながら自分を取り戻すユウジン、昨日の誓いはまだ折れてはいないが、コレは堪える。思考を巡らせなくてはならない・・・思考を止めれば本当に折れかねん
「でもセンパイ、今日はアレ言わないんですね?ほら、あの時ああすればーとか、こう動かせればーとか」
キョトンとした顔で聞いてくる後輩にはて?と頭を捻る
「俺、そんなにしょっちゅう言ってる?」 え?嘘?俺は今そんな惨めな事になっているのか?と心が本当に折れそうになるからやめて欲しい
「はい、いつもセンパイ良く見えるなーって関心してたくらいですもん。私、すぐ後ろで見てるんですよ?なのにセンパイの言ってる【あの時】とか全然分からないんです」
???俺は遂にバトル中に幻覚を見ているのか?と思い、そこで思考を切り替える。なにか・・・なにか引っかかる、今を変える為の何かを感じる。まるでニュータイプにでもなったかのような、そんな気すらする。
今一度、この俺への評価が青天井な後輩に問う
「リン・・・俺の質問に正直に答えてくれ。俺はいつも言い訳がましくあの時ああすれば、とかこう動けばと言っているんだが・・・お前には見えないのか?だって・・・【あんなにゆっくりに見えるし、分かりやすいだろう???】」
ソレを聞いた後輩は、ポカーンとした顔で・・・
「いや、分かるわけ無いじゃないですか・・・分からないから皆練習するんでよ?敵の攻撃を避けるためとか、防ぐためとか、逆に攻撃するために【動体視力を鍛えてるんじゃないですか】 私みたいに、操縦方法すらまともに覚えてないようなプレイヤーは別でしょうけども・・・って、きゃ!」
思わず後輩の両肩を掴んで目を輝かせるユウジン、彼の脳内で噛み合わないピースが今、カチリとはまった音がしたのだ。
「そうか!!あったんだ!俺にもあったんだ!スゲーぜリン。大手柄だ!ユグドラシルの竹中半兵衛と呼んでも良いくらいだ!お前は最高の後輩だ!!」
いやいや、要りませんそんな称号!といやいやしながら顔を真っ赤にするリン。ユウジンの腕から抜け出して息を整える
「はー・・・フ~・・・それで、何があったんですか?センパイにも戦う力があった?的な話ですか?」
「ああ!俺も知らなかったけど、俺の動体視力はもしかしたら他のファイターのソレを大きく上回ってるかもしれない!コレならどっかで勝ちの目があるかもしれないだろ!?やれる!やれるぞ!!」
センパイが燃えている。ある意味萌えるが黙っておこう、あれ?・・・でも
「じゃあ、なんでいつも操縦が間に合わなくて負けてるんです?」
・・・・・・・ほんとにこの後輩は俺の心を支えてからへし折る天才かもしれないな。うん・・・そうだよね・・・分かっていない訳ではない
「そうだ、操縦技術。ソレが問題だ・・・俺は他のダイバーに見えない程の速度すら見ることが出来る・・・どう動けば良いかも頭では分かってる!・・・でも実際に俺はそのとおりに機体を動かせてない。いや、たぶん動かせないんだ・・・それが俺の弱い原因だったんだよ。
普通より見えてしまっているから【こう動かさなきゃ!】ってのに支配される。
何度も練習して条件反射で、体のほうが先に動く皆と違ってな・・・そのコンマ数秒の差で俺は負け続けてたんだ・・・分かったのに、どうすれば良いんだ?長所の筈の動体視力が枷になるなんて、考えたこともねーよ」
そう言って項垂れるユウジン。彼にとっては天啓を得たかのように思えたのだろう、バトルの才能がない。コレはユウジンにとっては常識であり、操縦技術に役立つ才能だけは何も持っていないのだと、思い込んですらいたのだから。
そんな彼にとって、バトルにプラスに働く才能があった。その事実だけで彼を有頂天にするだけの、麻薬にも似た酩酊感がこの話しにはあった・・・だが現実は甘くはない。事実の先の現実に彼はもう、目の輝きは薄れて消えようとしている。
その姿にリンは。
「ッ・・・・!(そんな・・・せっかく元気になってくれたのに・・・どうにかしてあげたい!いや、する!私が絶対、なんとかするんだ!)」
リンは必死に考えた。彼女はずっと見てきた、彼の側で彼がどれだけ頑張ってきたのかをすべて見てきた。さっきのラウの言葉には私自身が引き裂かれるほどの痛みだった。【彼女】がフォースに来なくなった後ですらユウジンの側に居たのだ・・・だから
私に、私に知恵を下さい・・・なんでも良いんです。センパイが元気になれる可能性が少しでもアレば良いんです。神様でも誰でも・・・
あれ?。かみ・・・さま? 可能・・・性 そう!そうだ、あの作品なら!
「先輩!」息を荒げ、今度はリンがユウジンの両肩を掴んで叫ぶ
「在ります!センパイ! センパイが戦う術が在ります!思い出してください!!在るじゃないですか、思考を、思いを受けて動かせる【可能性の獣】が!!」
そのコトバに目に光を取り戻し始めるユウジン 思わず口から溢れるあの一節。自分が0083と同じく大好きなあの作品の一節を・・・
「内なる可能性を以て・・・人の人たる力と優しさを世界に示す・・・」そう言いながら顔を上げていく、そこには涙を目にいっぱい溜めながら笑顔を返してくれる後輩
「人間・・ゥだけが、グスッ。神を持つ、可能性という名の内なる神を・・・ですよ。先輩」
「忘れて・・・た。ユニコーンガンダムの【インテンション・オートマチック・システム】・・・俺が好きで皆を無理やり引っ張って映画館でさんざん観た・・・パイロットの思考で操縦できる、全身フル・サイコフレーム機!!!」
後輩を抱き寄せる、ありがとう!その想いをすべて込めて
「やる!やってやる!俺が、俺のまま。ユグドラシルのまま!今度こそ勝つ!リン、済まなかったな。俺がしっかりしないといけなかった、お前のおかげだ。だから今度こそ見てててくれ・・・お前の先輩が、いや!フォースリーダーが格好良く勝つ所。後の3人にも自慢してやろう!」
「はい・・・♪グスッ」
涙を拭いながら、後輩はまた笑顔を取り戻してくれた。だからやろう、俺に出来る限りをやろう。1から作る以上時間は限られている。ユニコーンガンダムをベースに、俺の最高傑作「ステイメン:シグルド」を超えなければならない・・・それともう一つ
「地道にランキングを上げても間に合わない。こうなったら本戦出場枠と直接戦う・・・新しいガンプラもせいぜい1日しか慣らし運転はできんだろうしな」 と、この先の予定を後輩と共有していく
「でもセンパイ、上位ランカーに挑むのはマナー違反ですよ?・・・どうするんですか?」
そのとおり、マナーを破って挑んでも相手がそもそも受けてくれない。というより、受けないでスルーできる口実がこのマナーなんだ・・・元々上位30位は、本戦まで極力戦いたくないのだ。それでもマナーの範疇であれば試合を受けるのは、ダイバーとしての教示であり意地だ。
「だからこそ・・・俺はその意地を賭ける。アテはあるんだ、心配するな♪」頭をポンポンしながら笑う。
笑い飛ばしてやれ、智は意地は張るなと言った。でも俺は違う、意地を張ってないと現実に潰されて、立てなくなってしまう奴は、意地だけでも張るしか無いんだ・・・・!
「待ってろよ、ユニコーン・・・俺がお前を世界最強の機体に改造してやる、乗り手は最弱だけど負けてやらねー。俺は勝つ!絶対勝つ!見てろよ、智、由紀ちゃん・・・そんで、沙耶も!」 見えない遠くを見据えながら吹っ切れた顔で意気込む
「・・・・・・」 そんな彼の背中を見つめるリンの嬉しそうな。でもどこか悲しそうな瞳に気づかないほどに・・・
頂いたご意見から、一章を分割しました。コレからはこんな感じで2万文字以下くらいで1話を上げていきます。よろしくお願いいたします