ガンダムビルドダイバーズ Re:スタート 作:aki@ガンプラ
オロバスが大破したとほぼ同時に、ソロモンの悪魔達、全機が動く。ソレを確認したユウジンもスレイプニルに戻ろうと、今一度「ナインズ・ブラクト」を使おうとして異常に気付いた。
なんとエインヘリヤルのエネルギー残量が20%を切っていたのだ、どう見積もっても減るのが早すぎる。この残量でナインズ・ブラクトを使えばスレイプニルにたどり着いた頃にはエネルギーは0になっているだろう
「な・・・そんなバカな!?なんでこんな減ってるんだ?」
慌てて周囲を見回すユウジン・・・なにか、なにか秘密が在るはずなのだ。
そうして見回していると、ユウジンは視界に異様なモノを捉える。おそらくはダンタリオンのTブースターの残骸、その残骸に紛れている特徴的なユニット、鉤爪のような翼・・・そんな印象の装備の残骸だ・・・ユウジンの記憶に引っかかる、たしかアレは・・・
「ま、まさか・・・ゴールドフレームの、「マガノイクタチ」か?・・・・あの大型マニピュレーターはコッチのエネルギーを消耗させるための装備・・・・?」
まずい!と即座にNTーDを切るユウジン、ソレと同時に飛ばしていた4機のワルキューレもファンネル化を解き宙をさまよう
「やられた・・・!NTーDのまま戦ったら数分も保たねー!!ワルキューレもNTーD発動してなきゃただの盾になっちまう!」
とにかく、腰のワルキューレを他のと交換しないと・・・腰のは元々シュヴェルトラウテとグリムゲルデのモノだ。今は盾のみとなってしまっているし、ゲルヒルデもモビルアーマー用に1発しか持ってきてないからコレももう別の装備と交換だ。
急いで行動に移そうとした、まさにその時
ビービー!
と鳴り響くアラート・・・アタッカーの2機に遂に追い込まれた瞬間だった。
機動重視のGフレームと速度重視のデスティニー・・・この2機からスピードや機敏性で逃げおおせる術は、今のエインヘリヤルにはない!
「アタッカー2!念の為先に停止したシールドを破壊して回ってくれ、エインヘリヤルの相手は・・・僕がする!」
エネルギー満タンの状態のGフレーム・・・コチラは枯渇寸前のエインヘリヤル・・・戦力差は圧倒的だ。
逃げたり戦いを引き伸ばす手も使えない、故に残す手は唯一つ!
「真正面から!NTーD無しで・・・やるしかない!!」
ユウジンは即座にグラムを抜き、Gフレームへと突っ込む!どうにか打込み合いに持っていくんだ!グラムなら・・・アイツの作ったこの魔剣なら!
「行くぞぉ、S・A!!」
それは無策な突撃だった、一端の剣士でもあるS・Aからしてみれば素人丸出しにしか見えないだろう・・・ソレでも彼は油断しない、してくれない。なぜなら、もうこの魔剣の力は相手に知れ渡っている。
どんなバカでも受け止めれない剣を受けてくれる程、愚かなはずなど無い
「もう種は割れているぞ、ユウジン!!」
ゴッドガンダムの篭手に付いているクロー、ソレをレアアロイに置き換えたモノでグラムを太刀筋の横から弾くように流して受けるS・A
刃面で無ければ振動破砕も極々小さく、レアアロイ製のクローであれば何度でもこの受け方で受けられる・・・そして、S・Aがこの程度の所作でミスをするなどありえない
「くっ・・・・!」
「ソレは、アームドアーマーVNをソード化した物だな?ウチのメインビルダーが突き止めたよ・・・サイコフレーム刀である以上、本来はNTーDを発動している時に強靭性が最高に達する仕様のはず。主任の見立てじゃ、その柄回りの刃・・・鉄血のテイルブレードのように飛ばせる仕組みなんだろ?刃自体がサイコフレームなら、インコムとして使えるしね」
相手のメインビルダーのご考察の通りであった、グラムはそういった機能を搭載しているし、NTーDを発動していない状態でのグラムは完全じゃない
「ユウジン、いい加減諦めるんだ。そのエネルギー量じゃもうろくに戦えないだろう?今、ガンナー1がアームドベースにとどめを刺しに行っている。リンが乗ってるんだろう、なら此処までじゃないのか?あの娘はこういうの駄目だったじゃないか・・・」
降伏勧告を促すかつての仲間、S・Aもリンが一方的に攻撃されるのを見たくは無いのだろう・・・でも違う、お前は一つ間違えてる!
「 【諦めない】 それが、アイツと俺が此処に立つ為に互いに立てた誓いなんだ。リンも戦ってる、リーダーの俺が先に折れてやる訳には・・・いかない!」
グラムを構え、対峙する。
「そうか・・・なら僕も手は抜かない。僕は勝たなくてはならない!エースとして、この機体を駆る者として!」
シールドを破壊してきたデスティニーもやってきて、エインヘリヤルの後ろで太刀を構える。
「行くぞユウジン・・・Gフレーム 【雷神・掌打】!」
その言葉と共に、Gフレームの拳が真っ赤に轟く!ゴッドガンダムの腕のパーツを使っている為、アレが実質Gフレームの爆熱ゴッドフィンガーだ。
ただし、動力炉がエイハブリアクターになっているせいなのか、Gフレームは爆熱ではなく赤雷を纏う。
しかも、爆熱ゴッドフィンガーと違い威力は低いが持続時間が長く、雷撃を纏うため熱による溶断ではなく感電や雷撃による物理破壊を行う
この一撃を食らうと電子系統が破壊され、一時的にセンサーや通信機能の類が死ぬ
「当然、知っているよな?コレは更に先が在る!」
そう言うと両肩のバルバトスルプスレクスのアームが腕とドッキングし、バルバドスのレクスクローが赤雷を纏う!
S・AとGフレームが徒手空拳で戦う上での最高、最大の必殺技である、しかも必殺技のくせに持続時間が長い長い・・・必殺技っていうより、超攻撃特化バフという方が正しいだろう。
そんな時、エインヘリヤルのコンソールに警告を知らせる表示が浮かぶ。
コレは、自分の装備であるスレイプニルが攻撃を受けている際に出るモノであった。
「クソ・・・・リン、大丈夫か!返事しろ、おい!」
だが、返ってくる通信はノイズばかりで、リンの声は聞こえない・・・絶対安全なオペレーターブロックなのに通信が返ってこないということは、リン自身が通信に出ることが出来ない状態だと言うことだ・・・
「リン!・・・・くそ、ダメだ!俺が・・・俺がなんとかしないと!」
三者互いにジッと動かないまま間合いを測る・・・だが、エネルギーが少ない以上先にこの均衡を破ったのは誰もが予想通り、エインヘリヤルだった。
真っ直ぐにGフレームへと飛び込む!S・Aの受け流す動きを視てから更に刃の角度を変えて攻撃する・・・この手段で挑むしか無い!。
S・Aの格闘戦術は全てリアルの人の動きに合わせたモノだ、人間が剣を全力で振り抜いてる最中に軌道を変えようとすれば健や筋を痛めて自滅する。
しかしガンダムは違う、各部マニピュレーターへの負荷こそあれど人間では不可能な動きが出来るんだ。
横薙ぎにグラムを振るう、Gフレームは当然同じ様に刃の腹をクローで弾くように受け流す。
「此処!」
受け流されるグラムを無理やり捻り、横に流れていく刃を縦に振り下ろす!加速が乗っていない太刀筋ではあるが、コレは高周波ブレード!刃面を食い込ませるだけでダメージは甚大だ。
取った!そう思った、ユウジンの動体視力が見せる何倍にも時間が引き伸ばされた世界の中で、エインヘリヤルは人間に不可能な次元の動きを完遂してみせた・・・だが!
バチリ! グシャァアア!!
と言う音と共に、金属がえぐり取られる様な嫌な音がコクピット下部から聞こえた。
確認する余裕など無い、頭では理解できている・・・S・Aが行ったのは、受け流す 【だけ】 じゃない、所謂クロスカウンターという奴だ・・・防御と同時にコチラの腹部に貫手を放ってきていたのだ、ソレも自分の眼を掻い潜っての一撃だ。
人が向けていられる意識の知覚外からの攻撃・・・いくら動体視力が良かろうと 【視ていない】 場所は見れない!
脇腹を抉られ、体勢を崩したままのグラムはGフレームの右肩を掠める。しかし、その掠っただけの攻撃でGフレームの肩アーマーは亀裂が入り、弾ける!
グラムが持つ、武器としての性能が天と地ほどもある実力差をなんとか埋めていた。
コレには流石にS・Aも驚きを隠せない、トランスフェイズ装甲がまるで役に立たない経験など彼には一度も無かったからだ。
「な、なんて剣だ!魔剣妖刀の類じゃ在るまいし・・・!」
沙耶はまたとんでもないモノを作ったな・・・とS・Aはビルダーという生き物に敬意を感じると共に恐怖する。
武器を変えるだけで・・・機体を変えるだけで・・・ビルダーはそのうち、ガンプラを作れないファイターを過去に追いやる存在と成るかもしれないと、そう感じた
その恐怖が彼を一歩後ろに引かせる、その動きを合図と思った後方のデスティニーが後ろからエインヘリヤルへと斬りかかる!
狙うはコクピットだが、エインヘリヤルの後方は盾が三枚も備わっている。
故に彼が狙うのはミストルティンだ、危険な武器である事は疑いようもないしEパックを破壊出来れば爆発して、バックパック回りを完全に潰せる。
「二対一は気に入らないが、決着付けてやるよぉ!ユウジン!!」
ユウジンは後方へと一瞬視線を切る、盾で護るだけじゃ押し切られる・・・唯一残った装備で応戦する!
今一度、ブリュンヒルデを起動し大型マニピュレーターでデスティニーのレアアロイ製太刀を鷲掴みにする、太刀がマニピュレーターに食い込むが構わず振動破砕で太刀を破壊する。
「ソレはもう見たぜ、貰った!」
デスティニーは即座に太刀から手を離し、パルマフィオキーナを起動させてミストルティンを狙う!
ユウジンは必死に目を見開いた、何倍にも引き伸ばされる感覚の中で自分にできる全てを出しきらねばならない、ミストルティンと仲間を守るためユウジンは振り返りながらデスティニーのパルマフィオキーナを左手で無理やり掴み外側へと引っ張る!
エインヘリヤルの左マニピュレーターを吹き飛ばされながらも、フォールディングトンファーを動かしてデスティニーの首根っこを掴み!引きちぎる!
「うぉおお!!」
「な、なんだコイツ!?・・・ウァああ!」
鬼気迫るユウジンの反撃は、窮鼠猫を噛むというにはあまりに必死過ぎる。
勢いに飲まれ、動きが鈍ったデスティニーの挙動を見逃さずエインヘリヤルはデスティニー胸部にグラムを突き刺し、ハンマー投げのように振り回して、ヴァルトラウテごとGフレームにぶん投げる。
S・Aはコレを受け止めるも、動力炉を貫かれた上に振動破砕でコクピットまでを破壊されたデスティニーはバチバチと火花を上げ、爆散する。
「やるじゃねーか・・・ソロフォースなんて、馬鹿にしてた俺が本当のバカだったな・・・」
やれやれと言いつつ笑いながら、アタッカー2が退場していく。
わずかに残ったヴァルトラウテのミサイルにも誘爆し、大規模な爆風に巻き込まれるGフレームはトランスフェイズ装甲のおかでほぼ無傷だ。
その爆煙の中、S・Aは視界の端に飛び立っていくエインヘリヤルを目にやる。
機体が放つサイコフレームの緑の光・・・あろうことかユウジンはこの土壇場、あのエネルギー残量でNTーDを発動したのだ!。
スレイプニルまで保つはずがない、誰がみても最大のプレイングミスだ。
S・Aは、コレで自分たちの勝ち?と思った時・・・【待ってくれ!】と心で叫んでいる自分に戸惑う。
「なんで・・・?僕は、もっと・・」
置いていかれた子供のようにGフレームの手を、光の彼方へと伸ばす・・・加速力に特化させてあるGフレームのスラスターは、最高速度ではエインヘリヤルにはもう追いつけない。
終わってしまう・・・?ユウジンとの戦いが、アレほど熱いバトルがこんな形で終わってしまうのか?
「待て・・・!僕と、僕と戦えぇ!ユウジーーィン!」
NTーDの緑色の光を放ち、エインヘリヤルは進む。
自暴自棄に見えるだろうか・・・?この残量でNTーDを発動するというのは、試合を放棄したに等しい。
それでも、まだ【手は残ってる】!諦めない、今も恐怖に戦っているリンも助ける。試合にも勝つ!
本当の本当にコレが最後の秘策、成功するかどうかなんてもう俺は考えない!
まだ遥か彼方に在るスレイプニルに手を伸ばす!
「頼む、動いてくれ!俺が造ったんだ・・・皆のために造ったんだよ!今出来なきゃならねーんだ。タダのゲームでも、俺達はマジでやってんだ!だから・・・だからよぉ!」
サイコフレームが、彼の想いに応えるように光り輝く・・・空想も、幻想も力に変えれる世界なら!
「応えてみせろぉ!!ガンダぁム!」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
デブリに深々とめり込んだスレイプニル。そのスレイプニルに対してガンナー1は、グレネードとビーム砲を幾重にも撃ち込んでいた。
モビルスーツなら数機は吹き飛ばせるだけの量を叩き込んでなお、撃墜されない・・・ついため息が出てしまうが仕方ない。
ガンナー1自身、そんなに気持ちのいい事では無かったが勝利の為に、自分が出来る事はもうコレくらいしか残っていないのだと自分を律した。
「にしても・・・なんちゅう頑丈なアームドベースだよ。たしか登録名は・・・スレイプニル、か。とんだじゃじゃ馬だな、アトミック・バズーカにも巻き込まれてるよな?確実に」
ガンナー1は仲間の皆と違い、ユウジンという男を結構高く評価していた。彼が砲撃手なのも理由の一つなのだろう。
性能の高い火器を作り、運用する。誰だってそうした方が強いのだから、そうする。
ソレが出来る人間は羨ましいし、素直に凄いと思う。
操縦技術より装備の質に影響されやすい砲戦をメインにして戦ってきた者として、装備の質で勝る勝利が恥ずかしいものなどとは思わない・・・だが
「チート過ぎるわな・・・俺ら全員何処行ったってエース張れるんだぜ?それをたった一機で・・・凄いを通り越してこえ~よ。もう」
だから、早々に落とさなければならない・・・S・Aの話じゃ、コレにオペレーターを乗せているって話らしい、つまり俺は今無抵抗の相手にしこたま砲弾をブチ込んでる図なわけで・・・
しかも女の子とくれば俺の残虐非道とも取られかねん行いは、スポーツマンシップに則った後腐れのない物にしたい。
元々弾薬も殆ど無いグシオンは、ビーム砲にありったけのエネルギーを回す。コレを撃てばグシオンのエネルギーも数%残すかどうか、お互いキレイに退場して・・・あとでちゃんと謝ろう
砲身に収束する粒子・・・コレで終わりだ!
「ウゥ・・・・ウゥゥ・・・!」
リンは、オペレーターブロックの中で一人蹲って恐怖と戦っていた。
彼女自身、コレはゲームだと理解している・・・それでも彼女にはそこに線引ができない理由があった。
フォースの皆にも明かしていない、明かしてはいけない秘密・・・そうなれば仲間達はガンプラバトルを辞めてしまうかもしれない。此処が、GBNだけがリンの最後の寄る辺なのだ・・・
「センパイ・・・!センパイ・・・!」
自ら送り出した彼は今、必死に新谷先輩と戦っているだろう。新谷先輩もセンパイと全力で挑み決着を付けることが出来たなら、きっと取り戻せる・・・全く同じわけにはいかなくても、仲の良かった皆に戻れる筈だ。
だから戦うと決めた、諦めないと誓ったのだ・・・それでも怖い、今の私は【死んでしまったら】どうなってしまうのだろう?そんな事を考えている時、再び警告アラートが鳴る!
高熱源を捉えた時のアラート、高威力のビーム兵器かなにかが向けられている!?
「ヒィィ・・・嫌だ、嫌だ!怖い・・・怖いよ!」
安全な筈だ!オペレーターもオペレーターブロックも非破壊オブジェクトだ。
でも、いつもは先にセンパイが倒されて試合が終わる。私が先にこういう場面に直面することは無かった。
ビーム砲が臨界まで収束し、発射される!あぁ・・・と向かってくる光に呆けてしまうリン・・・そこへ
「リーーーーン!!!」
必死に叫ぶ、想い人の声がする・・・。その声に応え、緑色に輝くスレイプニルはオーキスのメガビーム砲をグシオンに向かって発射したではないか!?
「なにぃいいい!?」
ぶつかり合い、徐々に押し込まれるビーム砲!コレにはガンナー1もつい叫んだ。
コッチはモビルスーツ用、アチラは戦艦用のビーム砲だ。勝負になんて成るはずがない
もう激突したビームを反らすわけにも切るわけにもいかない、ビーム兵器に強いナノラミネートアーマーも、実は熱には弱い。
照射されているこんな極太なメガ粒子砲の熱量を完全に防ぐことは出来ない。
仮にコレがそこいらのビルダーの造った物ならいざ知らず、ユウジンが造ったとなれば耐えれる可能性に賭けるのは無理があった。
八方塞がりになったグシオン、ガンナー1ももはや笑うしか無い。なにせ、スレイプニルが緑色に発光している・・・装甲が吹き飛んでようやく分かったが、あの野郎・・・
「アームドベースにまで、フルサイコフレーム仕込むかぁ?普通ぅ??」
おかしいとは思っていた、アレ程の量の装備を一斉に扱うには機体の演算処理能力なんかのパラメーターが必要だ。それもとんでもない数値の性能がだ。その性能のアシスト無しで、人力で全部こなしてるんだとしたら、ユウジンが操縦下手くそだなんて誰も思わない・・・種も仕掛けも有ったのだ。
【マルチプル・コンストラクション・アーマー】 サイコフレームによって確立された『構造材にコンピューターチップを盛り込む技術』により、フルサイコフレームは非常に高い演算処理能力を持った構造材として機能する。
それをあのサイズで造ったのだ・・・ファンネルなどと同様に、スレイプニルには遠隔で操作が可能という、とんでもない秘策を持っていた。サイコガンダムを呼び出すフォウじゃあるまいに・・・
「セン・・・・パイ?」
涙でパンパンに腫れた顔を隠しながら、リンは外の状況を見た。
押し込まれたビームが発生させる熱に溶解していくグシオンの装甲、溶けていけば耐ビーム性能の核たる塗料は全てダメになってしまう。
「はっはっはっは♪完敗だ!こんちくしょーが!」
負け惜しみとばかりに最後のグレネードを迂回させるように発射し、爆散するグシオン。
コレで1対1・・・だがエインヘリヤルのエネルギーはもう底を着く寸前だ、すぐにでも遠隔操作でデュートリオンビームを照射する必要がある・・・だが!
ドォン!!
センパイ♪と喜びの声をあげようとしたリンは再び衝撃に揺さぶられる。いたた・・・と痛いわけでは無いのだが、ついそう零しながらコンソールを確認する・・・
「そ・・・そんな、オーキスのメガビーム砲が!」
先程のイタチの最後っ屁は、見事デュートリオンビーム照射装置が備わっているメガビーム砲を爆砕させていた。
ユウジンはそれでも相棒に指示を出す。何もデュートリオンビームだけがエネルギーの補充手段じゃない!!
「リン、【XCシルエット】だ!試合前に伝えてあるな?ソッチから誘導して送ってくれ!」
「えっと・・・えっと・・・」
ポチポチとコンソールを弄り、記憶を頼りに準備を進めるリン。そんな彼女にユウジンは
「よく頑張ったな、リン・・・お前のおかげだ。この試合、まだ終わらせないぞ!」
満面の笑みで答えるユウジン、気丈に振る舞っているが、ひどく焦って来たのが隠せていない。
この人はいつもそうなのだ・・・心配性で、直感的なのにいつも不安で居て・・・人の弱さを知っているから優しい。
「はい♪頑張りましたよ、私!」 準備が終わったリン
「行きます、センパイ!ユグドラシル最後の秘策 【XCシルエット】 射出!!」
その合図にエインヘリヤルを180度回頭!追ってくるGフレームへと飛び出していく、エネルギーはもう数%しかない。それでも信じる!信じて戦う、俺が目指した星に向かって!!
「!?そんな状態で向かってくるのか・・・僕を、僕を侮ってるのか!ユウジン!」
一度解除した 【雷神・掌打】 を今一度発動し直し、S・Aもまたエインヘリヤルへと突っ込んでいく。
リンとユウジンは、赤雷を纏う戦神を前にも一歩も引かない・・・寸分の狂いもなく連携を取る。
「XCシルエット、エインヘリヤルのサイコフレームとの同調を確認!レーザー誘導開始・・・相対速度・・・よし!いっけぇーー♪センパイ!」
「レーザー誘導確認、両腰とミストルティンのワルキューレをパージ!・・・見せてやるぜ、コレが俺達の最後の武器だ!」
機首を上げて方向を変えるエインヘリヤル、ソレを追うべく同じく機首をあげるGフレーム。
S・Aはエインヘリヤルの後方から迫る飛行物体をレーダーに捉える、コアファイターのような戦闘機型、SEED好きなS・Aはすぐにソレがインパルスガンダムの 【シルエットフライヤー】 であると気づく。
「まだ、そんな手を!?狙えるか・・・!?」
背中にマウントされたΖ系のビームライフルを構え、撃つ!
しかし、その射撃は3枚のシールドファンネルに防がれる!
「悪いなS・A!対策はバッチリだ、コレがお前への最後の秘策だ・・・ 【XCシルエット】 !」
背中に追従したシルエットフライヤーに対して、ミストルティンと腰のアームをドッキング位置へ移動させる。前進したシルエットフライヤーがドッキングし、ボン!と分離ボルトが起爆、シルエットフライヤー本体と3つのユニットに別れ、それぞれのアームに備わった。
そして、役目を終えたシルエットフライヤー本体が明後日の方向へと飛んでいく。
ミストルティンと両腰にそれぞれ備わった、追加スラスター型のユニット・・・ミストルティンに備わっている大型のモノには、ユニコーンガンダム:フェネクスのアームドアーマーDEに備わっていた尾羽根のようなフレキシブルスラスターが大型化されて付いており、尻尾やたてがみのように見える。
エインヘリヤルはアームドアーマーXCに備わっている増設ジェネレーターにより、エネルギーが5割ほどまで回復した。スレイプニルの運用時間との兼ね合いでこの装備のエネルギーを節約したため、完全補給はできないが十分だ。
一方その事を知らせるコンソールでは、既に必殺技として登録される挙動を返すべく光り輝いている。NTーDと関係が深い為なのか、NTーDの文字を映すコンパネの色が緑から徐々に蒼へと変わり始めている。
S・Aは直感的に【ヤバイ】と感じた。阿頼耶識システムによりGフレームからフィードバックされる情報がそう思わせるのか、武人としての勘なのかは分からなかったが・・・ユウジンの言った【XCシルエット】 その名前からアレがなんのかを想像するのは容易かった。
「XC・・・!?アームドアーマーXC・・・まさか、n_i_t_r_o (ナイトロ)か・・・?」
その言葉を肯定する代わりと言わんばかりに、ガシャン!ガシャン!とユニットが展開し、一層光を増すサイコフレーム。常人がただ常人のまま・・・才人と戦うための、最後の抗いだ!
光は徐々に緑から蒼へと変わり、揺らめく力場と燐光はまるで蒼い炎の陽炎のようだった。
グラムやワルキューレも同様に色を変え、グラムに至っては強靭性を更に上げていく
凄まじい力と、情報量がユウジンの脳を駆け巡る。ゲームが再現できる仮想の限界を、遂に超えたのだろう・・・それでも大丈夫だと、ユウジンは少しも疑わなかった。
「信じてる、【俺達】 の歩いてきた道は、決して誰一人裏切ったりなんかしない!行くぞ!S・Aぇ!!」
サイコフィールドが宇宙を揺らす!空気のない世界で大気が震える!
「【NTーD:ヴァルハラゲート】!!」
蒼炎のような光の柱が、宇宙に瞬いた・・・追いかけ続けた