ガンダムビルドダイバーズ Re:スタート   作:aki@ガンプラ

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二章終わると言ったな?嘘になりました!ごめんなさい、なんでもはしません

とても大事な戦いだったので、まるまる一話取って~最後に次への伏線やら何やら書いて~ってイケるやろ♪ と思っていたちょっと前の自分を殴り飛ばしたいですね!

というわけで、初のFAW本線コレにて決着!

2/16 2章の最後の部分を加筆いたしました!コレにて2章は終了です!!お騒がせいたします!


第二章 「それぞれの想い」 6話目

FAW、Aブロック第3試合、初参加のユグドラシルと王者のソロモンの悪魔の戦いも、ついに最終局面を迎えた・・・コレを観戦していた全てのダイバーが、声一つ上げること無く息を呑んで今の光景を見ている。

 

その視線の先には、青く輝くユニコーンガンダムの姿・・・ソレはパワーアップする技なり装備なりを使っただけでは説明がつかない威圧感を放っていた、まるでアニメの世界から本当に飛び出してきたかのように・・・

 だがGBNは何処まで行ってもゲームである、機体のパラメータや装備の性能と言う物は、すべて運営によって設定されている範囲内でシステムによって再現される。

 この設定値の限界ですら人が扱うには困難であり、十分な受けを用意してあるゲームで在ったはずだ・・・しかし最近、この根底は大きく揺らいでいた。

 

一つは【チート】の存在だ。

過去にブレイクデカールというチートツールの横行により機体や装備の性能のデータが改ざんされ、その力はGBNそのものを破壊しかねないモノにまでなった。

パッチファイルの登場により、オリジナルのブレイクデカールは根絶されたが、今でも密かにこのツールを元に改造ツールを裏で流している闇の商人の噂も聞く。

 

そして、もう一つは【ELダイバー】の存在である。

先のブレイクデカールのパッチファイルを作成する経緯の中に、このELダイバーの少女が起こしてみせた奇跡に近い力は、ブレイクデカールによって壊されそうとしているGBNを救った。

 しかしてその力はいつしかこの世界では受け止めきれない程にまで膨れ上がり、救ったはずのGBNを終わらせかねない事態へと発展、遂には救済の乙女を消し去ろうとする事態が起こる。

その少女とGBN、双方の未来ををかけた戦いは、彼女を愛する者達の想いに依って双方を救う結末を迎えた・・・

 

コレラのように、このGBNでは制作した運営ですらコントール出来ない、予期できない現象をときおり発現させる【可能性】を秘めていた。

 一部のネットやFAWのSNSでは、こういった力は【イレギュラー】と呼ばれていた。

ゲームでありながら、機体性能やプレイヤースキルのバランスも度外視されている現環境の中で、チートに頼ること無く限界を突き破る存在。

 

イレギュラーには、ワールドチャンピオンの【クジョウ キョウヤ】のようなプレイヤースキルも、同等に扱われている。

彼や世界ランキングホルダー達のように、機体性能からは説明できないほどの実力を示すツワモノは得てして世界王者を競い合う高みに身を置いている。

 

だが今日(こんにち)までに於いて・・・機体性能だけがその領域に至るという例を、GBNのダイバー達は見たことがなかった、ダイバーが機体を超える事で得られる力とは全くの真逆であるからだ。

 

そもそもイレギュラーの領域に足を踏み込んだ機体を操作できる人間など、居るとは思えない。

そういうモノは世間一般的には【失敗作】と言われてしまうだろう、ただ早くするだけなら出来る、ただ力強くするだけなら出来る・・・と、どのビルダーも考えてきた事だ。

 

なら・・・このユニコーンは?

 

蒼く光を放つXCシルエット 【アームドアーマーXC:ヴァルハラ】 3機の追加スラスターユニットからなるこの装備は、本来のアームドアーマーXC同様にサイコフレーム機の力を飛躍的に増大させる。

そういった本来の機能をGBNのシステムが再現するだけのはずだった・・・しかし、ユウジンは今とてつもない頭痛に見舞われていた。

 電脳仮想空間であるGBNは、プレイヤーの脳に直接情報を送る形でダイバー達にこの世界を感じさせている。システムから流れてくる情報は常に安心安全なモノなのだが・・・今ユウジンの頭にはその安全を超えた情報量がやり取りされていると見ていいだろう。

 

「グッ・・・!!よく分かんねーけど、長くは無理だなこりゃ」

 

耐えろ・・・まだ何もやり遂げちゃいない、仲間たちの為に今は前だけを見て進め!

 見たところ、発生させているサイコフィールドの強さが大きすぎてエインヘリヤルが使えるビーム兵器はミストルティンやビームマグナムブルパップのような高出力のモノに限られる、今一番頼りになるのはこのグラムだけだと思われた。

故にユウジンはエインヘリヤルの身を屈めさせ、ガシャ!と展開したスラスターに蒼白い光が灯る・・・

 

ソレを見て構えるGフレーム、距離はまだ遠い・・・加速力特化スラスターのコチラはもう少し距離を縮めたい。

いつでも動ける隙きのない構え、武道家の家に生まれて10年以上叩き込まれたその動きは一つの芸術とも言える

 

「来るか・・・ユウジン」

 

逆にエインヘリヤルは、隙きは多いが決して素人丸出しではない。【モビルスーツ】というマシンを動かす上で最善とも言える姿勢で主の合図を待つ・・・

 

「頼むぞ・・・エインヘリヤル!」

 

ソレに応えるように、キュピーン!とカメラアイが蒼く光る、次の瞬間・・・・

 

 ズドォン!! と・・・力が弾けた!

 

とてもスラスターを吹かす音とは思えない爆発音にも近い音を置き去りにして、まだまだ距離のあったGフレームに瞬時に肉薄する!

 

次の瞬間には ガァアアアアン!! と鋼鉄同士がぶつかり合い、破壊される轟音が響く

 

S・Aは一瞬、何が起きたのかを理解できなかった・・・気がついた時には彼は、無意識に残機刀を二本抜き放ち気味に横薙ぎのグラムを受け、振動破砕でソレを叩き折られて吹き飛ばされている状況だった。

 

「な・・・・にが起きてるんだ?」

 

体が反射的に動いた、いや【動いてくれた】と言ったほうが正しい・・・鍛錬を付けてくれた師匠である父と祖父には感謝しかない。落ち着け・・・なんてことない、だいぶ距離はあったがソレがただ【相手の間合い】だっただけだ!

 

「まさかGフレームと同じ加速特化スラスターか!?なら・・・読みの勘を訂正するだけでいい!!」

 

僕への秘策と言った訳がようやく分かった、接近戦に於いて重要なのは最高速度より瞬時に切り返せる運動性と加速力だ。その2つに特化して造られたGフレームと接近戦で互角に戦うには、同じように加速力に特化した推進機構が必要不可欠・・・

 残機刀を投げ捨て、再び迫るエインヘリヤルのグラムを手甲のクローで弾いて流す・・・が!ピキピキとクローにヒビが入っていくではないか!?

 

「もう、コレでも受けきれないのか・・・ユウジン!」

 

なんとも歯がゆいことか、どうやって戦えばいい!?ついつい怒鳴りたくもなる。

 いくら読みが深くても受け流す技術はダメージが0になる魔法ではない、突破口を見出さなければ出力差だけで勝敗が決してしまう。

 

「むしろ、なんで止められるのか。俺が文句言いたいぞ!」

 

ユウジンもユウジンで、文句の一つも言いたい。

自分の想定以上の力を引き出しているエインヘリヤルの全力攻撃にすら親友は対処してみせた。

 ワルキューレの最高速度と加速力、その両方をバランス良く調整した汎用型スラスターを加速特化スラスターであるヴァルハラに変更するだけでも、本来なら機体バランスの調整に物凄い労力と技術が要るというのに・・・

 

まるで、ガンダムNTにでてきたフェネクスだ・・・もう人と戦っている認識は捨て去るしかない!

まるで、Gガンダムに登場するガンダムファイター達だ・・・もう性能差に頼るだけじゃどうにもならない!

 

互いにそう考え、瞬時に相手との戦い方を改める。

 

どれだけ早く懐に潜り込んでも初動から全て読まれてしまうエインヘリヤル・・・

 

どれだけ巧みに受け流そうとも相手の膂力とスピードが、コチラの防御力を超えてしまうGフレーム・・・

 

ならば!!

 

「一撃離脱じゃない、ゼロ距離で勝負だ!!」

「活路を見出すまで、あらゆる手段で受けるだけの事!!」

 

同時に叫び飛び出すユウジン、グラムを振り上げて斬りつける。

 ソレに対してレクスクローと腕をドッキングさせたGフレームは、エインヘリヤルのグラムを前に、持ち手であるマニピュレータを狙って弾くように防御する!

 

互いに一歩も引かない攻防、攻撃に少しでも隙きを与えれば即座にカウンターが飛んでくる以上エインヘリヤルは高速の切り返しで以て、技の低さを補い続ける。

完全に受け流せている訳ではない、少しずつでもダメージを重ねていけば・・・勝てる!

 

S・Aもソレは重々承知だった、少なからず掠った刃が装甲を弾き飛ばす感覚を感じつつも、そのダメージは全てルプスレクスのアームで受けている。本体へのダメージは今のところ無い・・・だがこのままでは!

S・Aはこの攻防の最中にオペレーターへと通信をおこなう

 

「オペレーター!・・・いや、主任!今すぐGフレームのトランスフェイズ装甲をそっちの操作で切ってください!あのサイコフレーム刀が相手じゃエネルギーを無駄にするだけだ!」

 

その指示に「まっかせんしゃい」と応えてくれるメインビルダーに感謝しつつ応戦を続ける。

横へ刃を流し、肩から当たりに行き、エインヘリヤルの腰を取って投げる!

 

「くっ・・・!まだだぁ!」

 

電流に身を焼かれながらエインヘリヤルは、投げられた瞬間に機体をひねって下からグラムを切り上げる!

 

「しまっ・・・!」

 

S・Aはその攻撃をとっさにレクスクローで掴むように防御してしまう、そのままレクスクローは深々と 【切込まれた!】 もはや、両腕のレクスクローは死に体だった。だが・・・?

 

「コレは!?」

 

S・Aは阿頼耶識システムから流れてくる感触に違和感を覚え、クローを見る。確かに深々と切り込まれてはいる・・・しかしどうしたことか 【破砕されていない】 ではないか!?

その動きにユウジンも戸惑ったのか、足を止める

 

「「何が違う?・・・肘とクローの何が?」」

 

そして二人は同時に気づいた、クローは今雷神・掌打によって赤雷を纏っているという事実にだ。

 二人は失念していた、沙耶はたしかに凄いウェポンスミスだが完璧な武器など作れるはずがない・・・アームドアーマーVNの振動破砕は、サイコフレームを超振動させて成立する装備である。

 

コレはサイコフレームに振動する性質が有る。と言う訳ではなく、あくまでもサイコフレームの強靭性を利用しているだけで、実際に振動させているのは・・・ 【タダの電子機械】 に過ぎない!!

 

「赤雷を食らって、一瞬とは言え回路がショートしたのか!?」

 

ユウジンはグラムの状態をコンソールで確認するが、現在異常は見られない・・・本当に接触した瞬間だけ機能が麻痺させられ、振動が止まっていたのだ。帯電した刃が接触している間だけ起きている現象なんて気にも止めていなかった!

その事実を確信したS・Aは俯いたまま静かに心を落ち着ける・・・

 

「つまり・・・だ。僕にもまだ、戦う術は有るということだな?Gフレーム」

 

常時の【雷神・掌打】の連続使用にはなるが、コレなら戦える。Gフレームはレクスクローをパージして、静かに流れるように背中にマウントされている 【雷切】 に手をかけた。再度の【雷神・掌打】

バチバチバチ!!と赤雷が刃を伝う、ソレを両手で握って構えた。

 

「高周波ブレードのグラムと、超電磁刀の雷切・・・奇しくもこの勝負を決めるのはサーニャの作った魔剣と妖刀、この二本と相成ったな・・・ユウジン!!」

 

「そういうことらしいなぁ、S・A!!」

 

その言葉を合図に今度はGフレームのカメラアイが朱く光る!

最高加速でぶつかり、宇宙を揺らす朱と蒼!互いに刃こぼれすること無くつばぜり合いになるグラムと雷切、GBN内でも屈指の絶剣が切り結ぶ!!

 互いに一刀一殺の刃を問答無用に振り下ろす、ソレを刃で受け、装甲で反らし、互いに身を削り続ける!

 

単純な膂力とグラムによって保たれきた均衡は遂に崩れる、今度はエインヘリヤルが防戦一方となるがシールドファンネルのワルキューレによる質量攻撃を挟みつつコレに対抗していく

 

「まだ・・・まだだ、エインヘリヤル!俺達はまだやれる筈だぁ!」

 

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

そんな光景を見ていた、観客席の一同は困惑してしまう

 

「な、なぁ・・・コレって決勝戦だっけか?」

 

「馬鹿言ってんじゃねーよ・・・一応、初戦第三試合だっつーの」

 

「なあなあ、アレって昔蔓延したブレイクデカールとかなんじゃないのか?」

 

「この大会、ギャンブル営業してっから運営が常にチェックしてんだぞ?チートならもうGMが止めに入ってるだろうよ」

 

と、FAWランキング30位以上から入室できるVIP観戦室では、そこかしこで似たようなやり取りが行われている。

其処では、サーニャとスノウドロップの二人も同じ様に感じながら二人の戦いを見届けていた

 

「すごい・・・サーニャ先輩、私達何を見ているんですか?」

 

「・・・分からない、エインヘリヤルがどうしてああなったのかも・・・S・Aがその力にすら対抗できてるのも・・・でも一つだけは分かるよ?」

 

「それは?」

 

「ユウジンが今、夢を一つ叶えたって事が・・・だよ」

 

ずっと憧れて、ずっと追いかけていたもんね。自分には不可能だって分かってたはずなのに・・・雄二自身そう思って諦めていた輝かしい星。

その星達が輝きを放つ宇宙に、いつか自分もたどり着けると。ようやく信じる事が出来たんだね・・・だから

 

「私も・・・行かないとね、あの宇宙(そら)へ」

 

隣でそう告げる先輩の目を見てスノウドロップは思う、兄はそんなふうに思われる程のことなどしている自覚は無いのだと・・・

兄自身も追いかけ続けたのだ、たった一人の親友を。でも兄がしてきた事は特別に見えてしまっている・・・ソレが誇らしく、すこし悲しかった

 

「頑張って・・・兄さん」

 

遠くに感じる男二人の健闘を祈る、どうか二人が納得できる結末が待っていますように・・・

 

もう、幾度と打ち合わせただろうか?10合から先は覚えていない・・・雷切を装備したGフレームは未だに倒れること無くエインヘリヤルと対峙している

いくら俺の動体視力が良く、見た瞬間から機体が動くエインヘリヤルでもS・Aの読みと比べた場合、行動を開始するスタート地点がそもそも違う。

 それに、俺には武道の術理?って奴はまるでわからない・・・どう構えてどう対処すれば効率が良くて、ソレを体に覚え込ませる。っていう漫画やアニメの架空武道な知識しか持ってないし、たぶん的はずれだ。

このままでは勝てないかもしれない・・・と不安がよぎる。

 

「駄目だ!コレは考えるな、考えちゃいけない!」

 

焦りは苛立ちを生み、苛立ちは微小ながらのミスを誘発する・・・武道の世界に身を置いてきたS・Aならばいざ知らず、ユウジンにはそういった此処ぞという時の勝負強さは持ち合わせていない・・・・だから気付いていなかった、自分の攻撃がいつの間にか2.3パターンをリピートしている事になど!

 

斬!!

 

などという音を真に文字で感じるほどの一閃、甘くなった攻撃の隙間を通すよう左手に握った雷切の【反り】に該当する部位を右手の甲で押し上げるように切り上げるGフレーム。何流のなんて言う技なのかすら知らないが、あまりに自然に行われた動きの美しさにユウジンは、その動体視力で見惚れるかのように見ていた・・・

 

すぐ左の視界の隅を飛んでいくエインヘリヤルの左腕・・・ソレを見送る先で既に上段に構えているGフレームに対して、我を取り戻すようにワルキューレを間に挟み込ませてグラムで打込み合う!

間に挟まれたワルキューレを互いに両断してつばぜり合いが起こる。

 

「あ・・・危なかった!ワルキューレの位置次第じゃ終わってた・・・」

 

ハァ・・ハァ・・・と肩で息をするほどにユウジンへの脳の負荷は限界に近づいていく。

 

「ユウジン、分かっただろう?最強の機体に乗り換えたって、最高の機体を駆る僕が負ける道理は無い・・・いや、在ってはならない!僕はこの機体に託されたモノ全てを裏切るわけにはいかないんだ・・・!お前が作ってくれたGフレームで、サーニャが作ってくれた雷切で、僕は【これ以上負ける】訳にはいかない!!」

 

たぁあああ!!と気迫と共に振り抜き、エインヘリヤルを真下へ弾く!

真下には廃棄されデブリと化した宇宙戦艦、その甲板だった。

 

「何を・・・言ってるんだ?」

 

お前は負けたことなんて無いだろう?フォース戦ならそうだけど、タイマンでお前は本当に常勝不敗だったじゃないか!?

 

「フォースでの勝敗とは、常に全てのメンバーが背負っている。弱い誰かのせいだなんて・・・そんな悲しい事が、本当に事実であってたまるか!

フォースが敗北したならば、僕の中では【僕の強さが足りなかった】からだ!お前の中で、お前が弱いせいだと思うのと同じようにな!!」

 

だから強くならなければならないのだ・・・この機体が本当に最強無敗のガンプラで在ると、かつて見た第14回ガンプラフォーストーナメントのアノ二人の言っていた通りに・・・この(こぶし)、宇宙高く突き上げて見せるために!!

 

今一度、【雷神・掌打】を発動する!!コレで四度目の必殺技・・・いくらエネルギーを取り戻したと言っても、おそらくコレが最後の一回。

 

「今度こそ、コレが最後だユウジン、此処には【地面】がある!僕が培ってきた武術の全てを行使できるこの場所ならば、僕は負けない!負けてはいけない!!」

 

「S・A・・・お前・・・」

 

ずっと・・・そうやって苦しんでたのか?俺達が、知らない間にお前から【楽しい】を奪い続けてきたのか?

お前に頼って、託して・・・いつの間にか祈りは呪いに変わっていったのか?

 だから強くなるための場所を求めた、強くなるには強い猛者と戦うしか無いから・・・戦うためにはユグドラシルは暖かすぎたから・・・だって

 

「俺が、そんなフォースを目指したから・・・・ッ」

 

みんなと一緒に楽しく・・・たったそれだけの願いすら、努力なくしては守れなかった。

守るため、取り戻すための戦いは智にとっては目の上のたんこぶだったのだろうか?結局、また俺は俺のワガママで誰かの声を黙らせたのか・・・それならもう、これ以上は・・・

 サイコフレームの蒼い光が、少しづつ消え失せようとしたその時だ

 

「違います!!!」

 

男二人の通信に、割って入ってくるはユグドラシルのオペレーター、リンであった。

 

「S・A先輩は色々合ってます!でもやっぱり違います!だって・・・だって!今の先輩のどこが!」

 

今一度大きく息を吸って叫ぶ

 

「かつてのユグドラシル最強のエースパイロット、『S・A』なんですかぁああ!?」

 

「なっ・・・なにを!?」

 

この言葉にはS・Aも度肝を抜かれたようでたじろいでしまう・・・リンはこんな娘だったろうか?いつも雄二の周りをちょこちょこしてるだけだったような娘の気迫に、圧倒されてしまうだなんて・・・

 

かつての・・・S・A?

俺が目指した最強のファイター、強さに奢らず履き違えず。仲間と共に勝利へと導く我らの切り札。GPD時代からずっと俺が後ろで作って、お前が前で戦ってきた。楽しい・・・本当に楽しい日々だった!そう!

 

初めて出逢った時からずっと・・・ずっとお前が! 【俺の憧れ】 だ!

 

勝利することは大事なことだ、なにせ目的そのものなんだ。でもソレは 【目指した場所】 へたどり着くための過程でもある!!フォースが目指したのは皆が楽しくガンプラバトルをする事。

 【楽しい】の中に、~しなければとか、~じゃなければ、なんて必要ない・・・【楽しい】へたどり着くために、俺は・・・俺が目指した最強に勝利する!

 

「もう一度・・・始めるために、今!此処から!!」

 

失いかけていた光が、今一度蘇る!ユウジンは、エインヘリヤルを動かす為にとあるイメージを強く!強くイメージする!

 

「そうだ・・・ずっと見てきた。ずっと信じ続けた、俺の【最強】の原点!」

 

来るか!?と八相の構えで応じるS・Aは信じられないモノを見る。グラムを肩くらいの高さに構え、切っ先をコチラに向ける。機体を右にねじって左肩をコチラに晒す・・・まさにソレは

 

「露の・・・構え?どういう、事だ?」

 

なんと、エインヘリヤルは左肩にブリュンヒルデを取り付け、マニピュレーターの代わりに使って剣術でいう【構え】をしてみせたのだ・・・これがダダの猿真似ならば驚きはしなかっただろう、だがエインヘリヤルは至極まっとうに露の構えをしてみせただ。

 

この動きには観戦席もざわついた、一番驚いていたのはスノウドロップだ。

 

「駄目です・・・ユウジンさん、形だけキレイに真似ても理解が出来てなければ意味がない!」

 

ついつい両者を共に応援し始めているのも気にせず話すが、隣りにいるサーニャは逆にとても落ち着いていた。

 

「大丈夫・・・ユウジンは分かってるよ。術理がどうとかじゃなくて、S・Aの強さを・・・ユウジンは完璧に分かってる」

 

3人での付き合いが一番長い彼女は拳を握り、祈るように胸に添える。

 

「でも!ソレだけじゃ・・・!」

 

食い下がるスノウドロップを制してサーニャは肩を抱き寄せる

 

「信じてあげて・・・この戦いでユウジンがS・Aを侮辱する結果にはならない、絶対ならない・・・S・Aも感じ取れてる筈だよ?本気なんだって」

 

サーニャの二人への信頼と絆の厚さに、スノウドロップは少し泣きそうになった・・・信じるという行為はとても力が必要な事だ。簡単になんてやってのけれない、リンさんと言いサーニャ先輩と言い、そういう方面の心が強すぎるよぉ・・・

 

 

 

甲板の上で互いに一歩も引かずに対峙する白と黒、2体のガンプラ・・・放つ蒼と朱の光は決して交わらない。

 

「本気なんだな?ユウジン・・・本気で僕と【剣術】で勝敗を決める気なんだな?」

 

「逆だS・A・・・お前と勝敗を決めるにはもう、コレしか残ってないんだよ。お前を超えるには俺だけじゃ駄目だ・・・俺とサーニャとリンでも駄目だった、だから足す。足りていなかった【お前とスノウちゃん】もエインヘリヤルに足さなきゃお前に勝てない!」

 

ガンプラが傷つくことを厭う気持ち・・・己が磨いた技をバトルに昇華する努力・・・コレが全部だ。ユグドラシルの全部をエインヘリヤルの乗せてやる。

 

一呼吸の間の静寂・・・全ての者が口をふさいでこの二人の勝負を見届ける

 

「「うぉおおおお!!!」」

 

全く同時に動く二機!エインヘリヤルが先ず頭部に向けて刃を横に向けての平突きをする!

その平突きをすんでのところで掠めながら躱したGフレーム、左頭部の装甲が弾けようともお構いなしに身を捻り上段に雷切を振り下ろす!ブリュンヒルデを盾ごと両断する剛剣だ。

 

「此処!」

 

ユウジンはすり足の要領で盾ごと左肩から相手にぶつかって行く!長い大太刀である雷切は懐に潜り込まれすぎると十分な振るスペースを確保出来ず盾に食い込むまでしか踏ん張れない、だがその瞬間から流れる赤雷の電流を避けるために即座にパージする!

 

「クッ・・!」

 

平突きから横薙ぎに振り込まれるグラム、Gフレームは即座に盾を蹴り飛ばして食い込んでいる雷切を抜きながら受けようとして左肩に雷切を添わせる様に構える。

 しかし、勢いの乗っているグラムは肩に深々と食い込む!赤雷が無ければ今ので終わっていた、だがまだ終わりじゃない!

 

「間違いない・・・ソレは【僕の動き】だ!」

 

今ので左腕が思うように動かない・・・!正真正銘自分の技と寸分違わない動きをするエインヘリヤル、でも読みは全然だ、読みの浅さをアノ膂力で無理やりどうにかしている!

 

「あと・・・少し。あと少しなんだ・・・エインヘリヤル」

 

もう、ユウジンの意識は痛みを超えて酩酊感に近い状態に陥っている。動けているのは純粋に彼の【最強】への思いが形を成しているだけに過ぎない・・・

 

「なん!でだ!?くっ!Gフレーム・・・!!」

 

打ち込み合いで、徐々に押され始めるGフレーム。S・Aは必死に身体を動かし、培った技を行使していく。それでも間に合わない!

エインヘリヤルの動きは読めている、何せ自分の動きなのだ・・・でも機体が、Gフレームが思ったとおりに動かない、最近気になって妹にも相談したりしていたが・・・どうしてこんなときにまで!

 

「頼む・・・頼むGフレーム!!もっと、もっと早く動いてくれぇええ!!」

 

攻撃に間に合わず、左手の手刀でもってグラムを弾くがマニピュレーターが砕け散る。

 S・A自身本当は気付いていた・・・でも信じたくなかったのだ、自分の実力が既に【ユウジンの作ったGフレーム】では受け止めきれない程になっているということを・・・

 

だって、雄二は自分にとって魔法使いのような存在だったのだ・・・プラスチックの山からどんなものでも作って見せてくれた。どうやっても上手く作れなくて、おもちゃ屋の前でいつもふてくされていた自分に・・・【ガンプラ】を魅せてくれたのだ。

 僕にとっては、唯一の趣味と言っていいモノを誰よりも輝かせてくれた・・・僕に、楽しく遊ぶ舞台をくれたお前が・・・お前こそが 【僕の憧れ】 なんだ!!

 

「ユウジン!!!」

 

足を相手の足の隙間に入れて、雷切をグラムに押し当てながら体を崩してスラスターを吹かして突撃する!

 

「S・・・・Aぇ!!」

 

グラムの柄周りの刃であるワイヤーブレードをインコムとして真下へ飛ばす!Gフレームの左足を貫き、切飛ばすもGフレームは止まらない!!

 最大加速でもって、艦橋へと突っ込もうとする二機だが・・・ガン!! と二機は急停止し、互いに反動に機体が軋み、ギシギシと各部関節が悲鳴を上げる!

 

インコムとして飛ばされた刃がハーケンとなり、ワイヤーの長さが限界を超えて止まったのだ。

最も負荷がかかるグラムとソレを握っていたブリュンヒルデ・・・ブリュンヒルデは遂にこの衝撃に耐えかね肘から先が崩れ落ちる・・・

 

「「カハッ・・・!?」」

仮想空間でのアバターでなければ、今ので死んでいたかもしれないが当然互いに意識ははっきりとしている。こうなることを予測してワイヤーブレードを飛ばしていたユウジンは、ほんの刹那のアドバンテージを手に入れた!

 

「いっ・・・・けぇー!!」

 

ワイヤーをパージしながらGフレームを真上に蹴り上げる!それと同時に上段に構えたグラムを振り下ろす!!

 

ザン!!

 

という音が聞こえてきそうな一閃を間違いなく雷切で受けたはずのGフレーム・・・しかし!

 

「そんな・・・バカな!?」

 

雷切はへし折れ、そのまま右腕が肘から先が切り落とされる・・・何事かとグラムを見れば、グラムの刃に粒子状の結晶体が列をなしているではないか。

 

「サイコ・・・シャード・・・?」

 

サイコシャードを再現したガンプラではない、サイコフレームで出来たパーツから【サイコシャード】が発現している・・・?原作通りなら奇跡そのものに近い力すら行使するモノさえ、遂に生み出してみせたというのか?

 

呆けるS・Aであったが、実際にこのサイコシャードは極々微粒子状に生成されており、粒子がチェーンソーのように加速して物体を両断したに過ぎない。奇跡的な産物だが、起こした現象はとても物理的であった・・・

 

隙きを逃さず、Gフレームの右脇腹から左肩へ切り上げるようにトドメの一刀を振り抜く!!

 

「ハッ!?まだ!まだだぁ!!」

 

咄嗟に右膝で光波シールドを展開して右肘とで真剣白刃取りをするGフレーム!

 

「いけぇええええ!!!」

 

ガガガガガガッ!!

 

粒子カッターと振動破砕で食い込んで来るグラム、コクピットにいるS・Aまで刃が到達しようとする!その時!

 

 

 

ウゥゥゥゥゥン・・・・・・

 

という音と共に、刃がS・Aのすぐ真横で止まる・・・

 

「ハァ・・・ハァ・・・何が起きた?」

 

S・Aは何が起きたのか理解できなかったが、ユウジンには分かっていた・・・コレほどの力を行使してきたのだ、代償は当然在る!

 

「ちくしょう・・・ちくしょぉおおお!!!」

 

コンソールに無慈悲に映る、エネルギー切れを示す表示・・・【NTーD:ヴァルハラゲート】は五割近く回復したエネルギーを、通常の二倍以上の速度で食いつぶしてしまったのだ・・・

 

「ちく・・・しょう・・・ぁ」

 

がっくりとコクピットで項垂れるユウジン、彼の脳は完全に限界だった。

 

バキバキとグラムを抜くGフレーム、コレでおしまいか。と少しがっかりしてしまう。でも、コレで良い・・・試合には勝てたけど、勝負に負けてスッキリしたかもしれないとS・Aは思っていた。

 

そう・・・コレがそんな甘いルールでさえなければ・・・そう思っていられたのだ。

 

 

いつまで立っても宣言されない、ソロモンの悪魔の勝利宣言・・・システムエラーかとS・Aはオペレーターに確認を取る

 

「すいません、オペレーター・・・試合が終わらないんですけど運営から何か連絡有りませんか?」

 

その言葉に誰も口を開こうとしない中、黒兵衛が淡々と告げた

 

[君に伝えるのは酷だとは思う・・・しかしコレはルールだ、伝えねばなるまい。攻勢同士の戦いはあまり無かった故、知らないのは恥ではない。心して聞いてくれアタッカー1]

 

???と頭にはてなを浮かべながら、S・Aは先を促す

 

[補給や修繕が可能なこの大会の攻勢同士の戦いは・・・【相手フォースのガンプラを全て撃破】する以外に勝敗は決定しない!分かるな?今キミの目の前にいるエインヘリヤルはまだ・・・撃墜判定を食らってはいないんだ!務めを果たすんだ・・・アタッカー1]

 

「え?・・・だって誰がどう見たって勝敗は決してるじゃ・・・無いですか!?え?・・・え!?」

 

無抵抗どころか、もう戦う方法すら無い相手を切れというのか・・・?僕が?

 

震える手で、斬機刀である童子切を抜き逆手に持ってエインヘリヤルに突き立てる・・・

 

「ハァ・・・ハァ・・・僕に?こんな状態のユウジンをさ、刺せって言うのか?」

 

通信の様子から見ても、ユウジンはとてもじゃないがギブアップを宣言出来る状態じゃなかった・・・僕がやらないと、試合が終わらない・・・終わってくれない!

 

武道の家に生まれ、礼に始まり礼に終わるという基本を徹底されてきた智にとって・・・この行為は自らの在り方を否定してしまう行為だ・・・ルールに則って勝敗を決する。そうでなければ参ったと言う勇気、ソレを正しく受け止め、礼を尽くす事こそが彼の強さだった。

 

ルールには違反していないが、相手は親友の雄二なのだ・・・この結末でどうやって僕は健闘を称え合えばいい?だって僕は・・・

 

「皆の、ためにって・・・・!」

 

ガチガチと歯を鳴らし、手が震える・・・モビルトレースシステムはこんな動きも再現してしまう。

その様子を見ていたリンは、必死にコンソールを叩いていた

 

「お願い!なんでも良いから動いてよ!!駄目だよ・・・コレじゃセンパイが良くても新谷先輩が納得しない!・・・また離れていっちゃう!バラバラになっちゃう!」

 

センパイのように思いを必死にぶつけても、スレイプニルはこれっぽっちも反応してはくれない・・・なにせオペレーターは機体を動かせる権限が無いし、そもそもスレイプニルはエインヘリヤルのサイコミュで遠隔操作出来るタダの装備に過ぎない。

 何度も何度もデュートリオンビーム送電システムの状態をチェック・・・大破して使えないという反応が返ってくる。そんなことを繰り返す・・・

 

観覧席でも、スノウドロップがサーニャの腕の中で震えていた・・・

 

「やめて・・・兄さん。ソレは駄目だよ、兄さんが兄さんでいられなくなっちゃうよ!」

 

本当は戻りたいんでしょ!?戻って皆と楽しくガンプラバトルをして、ついでに皆もまるっと守ろうとしたんでしょう!?・・・なのに

 

サーニャはそんなスノウドロップを落ちかせながら、心の中でユウジンに誤り続けていた・・・

 

「今・・・この場でS・Aの思いを本当の意味で分かってあげれるのが、私達しか居ないんだよね・・・(ごめん、ごめんねユウジン・・・その隣に、私が立てていたならこんな事にはッ・・・!)」

 

「あ・・・ぁあ・・・!」

 

葛藤しながら刀を動かせない様子に一同も騒ぎ出す・・・古巣の人間だからか?実は八百長だったのか? みたいな【良くない流れ】が蔓延しはじめてしまう・・・

そんな均衡を一人の女声が破る

 

[しっかりしなさい!!S・A君!]

 

それは、いつもの田舎者のフリを捨てた主任ことミサキであった

 

[今やらなければ、全てが無駄になってしまうのよ!?ソロモンの悪魔がじゃない、貴方がでも無い!貴方を大事に思ってる全ての人の努力が無駄になってしまう!どう辛いことなのか、私達には理解もしてあげられない・・・ソレでもやりなさい、傷つかないまま掴めない事を今目の前のその子は汚れてでも掴んだんじゃないの!?]

 

「主・・・任」

 

雄二は、ソロフォース(ぼっちフォース)という誹りを受けても此処まで来た・・・装備の質に頼った勝利をまぐれ勝ちだと後ろ指を刺されながら、それでも僕の眼の前まで来た。

そう・・・来たんだ、来てくれたんだよ。戦う者の辛さが分かる場所に!やるしか無い・・・自分に納得なんて出来なくても・・・やるしか無い!!

 

「S・・・・A・・・」

 

虚ろな視界の中、Gフレームを見やる。やっぱり・・・俺が作った最強の為の機体はやっぱり最高だったな・・・

そのまま目を閉じる。

 

「あ・・・あぁあああ!!ユウジーン!!」

 

振り下ろされる童子切がコクピットを抜き、動力炉まで突き刺さる。

 もはや爆発する様なエネルギーもないエインヘリヤルはそのまま静かに撃墜判定を食らった・・・

 

静かな敗北・・・控室に強制的に飛ばされたが意識が朦朧としてはっきりしない・・・遠くに聞こえてきたのは、ワンワンと泣きじゃくる頼れる後輩の泣き声と、ずっと謝り続ける幼馴染の押し殺した泣き声だった・・・

 

また、やっちまったな。二度とこんな目に合わせたくなくて頑張ってきたってのに・・・止めてくれ、泣かないでくれ・・・謝りたいのは俺なんだ・・・最後の最後で踏ん張れなくて、本当ゴメンな?皆ぁ・・・

 

Aブロック第三試合は、ソロモンの悪魔の勝利となった。

イレギュラーの力の一端を見せたエインヘリヤルと、ソレにすら打ち勝った智の戦いは後に、【幻の決勝戦】とまで言われるようになったのであった・・・・

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

その凄まじい戦いが終わり、大会運営者である 「ゲンスイ」 は和服を着込んだ白髪の長髪を綺麗にオールバックでまとめた威厳ある老人の姿をしたいつものアバターでほくそ笑んでいた。

 

「ふふふ・・・面白いものが見れたのぉ、良いぞ!実に良い・・・どうじゃ?お主らも少しはヤル気が出たのではないかぁ?ふははは♪」

 

後ろに振り返り、見やれば其処には4人のアバターがそれぞれ違った感情を顔に浮かべながらゲンスイに言い放つ

 

「あぁ!実に素晴らしい戦いだった!もはやこの大会で得るものなど無いと思っていたが・・・実に良いぃ!!」

 

と称賛し、考えを改めるといった感想を述べるメガネをかけた長身の男

 

「・・・解せん。戦いとは常にチームワークだ・・・こんなモノばかりが評価されるから、今のGBNは駄目なのだ」

 

と苦言を呈し、ゲーム性そのものにダメ出しをする大柄なヴァイキングのような格好をした男

 

「えぇえ!?アノ程度で其処まで評価が頂けるだなんて、驚きですねぇ!!どうせチートかなにかですよ。フフフ♪」

 

と場を茶化し、先程の試合に出ていたガンプラを批評するモノアイのハロ型のアバターの男?

 

「・・・うっさい連中」

 

とそもそも感想すら言わない黒と白のゴスロリ服に身を包んだ少女

 

4名とも個性が尖ってる連中であったが、何故この者達は此処に居るのか?

 それは、ゲンスイが自ら招待した客人であったからだ、彼らはかつてFAWで猛威を奮っていた強豪フォース達であり、終ぞ【敗北すること無く王者の座から降りた】者達だ。

 

「かつてのFAW王者達・・・付いたアダ名が 【アンクラウンズ】 冠を捨てた王者達、儂としては戻ってもう一度あの大会をハチャメチャにして欲しいんじゃがな・・・コレではお主達に火を付けれなかったかのぉ?

 というか・・・フォース【夜天】の。なんでお主のところだけリーダーじゃなくてお嬢ちゃんなんじゃ?」

 

【夜天】と呼ばれたフォースの代表であるゴスロリ少女は、ものすごく面倒くさく説明する。

 

「リーダーは今日オフだから・・・私は此処の豪華な屋敷をバックに写真取りたかったから・・・和風テイストも、悪くない」

 

ふふふと自撮りした写真を見ながらご満悦な様子であった。

 

「招待状を寄越せと言っておいて、来ないとは・・・ほんに自由人だのぉ」

 

やれやれと言いながら腰を落ち着ける、そんなゲンスイに逆にゴスロリ少女は問うた。実はキチンと試合は見ていたということなのだろう。

 

「でも・・・其処のハロも言ってたけど、アレは本当に 【ブレイクデカール】 の関係じゃないの?チートにしか見えないんだけど・・・?」

 

その時、バン。と後ろでドアを開ける音と共に

 

「その件については、私から断言させていただきましょう。アレにチートツールは関わっておりません」

 

と彼らの更に後ろ、出入り口の方から男の声がその問に答える。

其処には、SDガンダイバーのアバターをしたGBNの管理を行うGMである 「カツラギ」 という男が居た。

 コレには、一同もざわつく・・・なにせアレほどの性能をプレイヤースキルでもないのに発現させるモビルスーツが【チートではない】とGBNの運営が断言してみせたのだから。

 

「お前は確か・・・運営の!?」

 

ヴァイキング風な大男も、この一言に考えが変わりつつある。なにせ遂にイレギュラーへと至る可能性を秘めたガンプラが現れたのだ、プレイヤースキルによるモノではない・・・限界を突き破った機体がだ。

 

コレには、他の3名も目の色を変える・・・アレを手にしたい者、アレを超えたい者、様々な思惑が今この部屋にはうずまき始めていた。・・・一瞬の静寂

 

 

 

「コレは・・・決まりですかね?私は持ち帰って仲間と相談いたしましょう。もし、私のフォースと当たった時はよろしくお願いいたしますよ・・・アンクラウンズの皆様」

 

そんな静寂を破り、メガネをかけた長身の男は既に大会への復帰を決めていたので誰よりも早く行動に移し始めた。

 

ソレを合図に、他の3名もそれぞれ動く。

 

「爺・・・貴様の思惑は叶ったようだな・・・失礼する」 と大男

 

「グギギギギギギギギ・・・・・・・チートじゃないだと?チートじゃないぃイイイ!?だとぉ!!」 許せないと身を震わせるモノアイハロ

 

「・・・」 パシャリ! ともう一枚自撮りする少女

 

全てのアンクラウンズが退席していく・・・ゲンスイの思惑通り、本当に心に火が付いたのだろう、ゲンスイはご満悦であった。

 

「フォッフォッフォ♪良いタイミングじゃの、助かったわいカツラギ殿・・・しかし、断言してよいのか?鷲の眼から見てもかなり怪しいぞ?」

 

「ご心配には及びません、我々にも【信用に足る情報】が在りますので・・・ですが彼には会ってキチンと話さなければならないでしょう。残念ですが、せっかく手に入れた力・・・アレは危険と隣り合わせですから」

 

その言葉にゲンスイは目を細める。この爺の目利きは相当なモノだ、瞬時にどういう意図の言葉なのかを理解する。

 

「ほうほう・・・左様か。出来ればコレからもあの力で大会を湧かしてほしいもんじゃが・・・その信用に足る情報というのは、聞かせてもらえぬのだろうなぁ」

 

がっかりしながらも、何処かで確信めいたモノをほのめかす。

 

「相変わらず食えないお人だ、貴方は・・・では私も戻ります。大会監視は別の者が引き継ぎます、私はコレから戻ってすることが在りますので」

 

そう言うと、カツラギは運営用のサーバーへと転移していく。

 

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

「奇跡の力・・・か」

 

戻ったカツラギは、ため息をつく。前にもこんな風に子供の純粋な思いを捻じ曲げてでも正しさを貫いた・・・ソレは運営として、平等な立場の人間としてやらなくてはならない事だ。

 それを曲げていては、いつしか規律は崩壊して誰もが不幸になってしまう・・・そうならないために自分たちは在るのだと、自らを律する。

 

そんな彼に後ろから声をかけてくる者達が居た、それは銀髪の5人のアバターだった。

 

「惜しかったですね・・・あの子。もう少しでたどり着けたかもしれないのに」

 

「たどり着けるわけねーよ、人間っていうどうにもならないお荷物がある」

 

「まーたそういうことばっか言うのね、女の子に嫌われるわよ?貴方」

 

「け、けんかは・・・・や、止めましょう!?ね?・・・ね!?」

 

「・・・でも、キレイだった。あの子、きっと喜んでると思う」

 

やいやいと騒ぐ5人組に呆れながら、カツラギは振り返り答える。

 

「その言い分だと、あのエインヘリヤルは今の所【イレギュラーには到達していない】ということかね?先程の連絡では聞いていないぞ?」

 

言われた銀髪達は最後に喋った一人の少女を凝視する。ぽけーっとした少女はどことなく、誰かに似ていた。

 

「私は 【お姉ちゃん】 とは違うもん・・・はっきりなんて分からない。でもあの子はたぶんたどり着けるよ?乗ってたお兄ちゃん次第では在るけれど・・・」

 

「お姉ちゃん・・・か。君達がELダイバー「サラ」をそう呼ぶ事を今更不思議には思わないが・・・会ったことも無いのだろう?君達は我々運営に庇護を求め、我々は情報と力を求めた・・・より良い運営の為に。だから君達は此処から殆ど出ないで過ごしてる」

 

5人ともが頷く、情報に欠けていた部分があったことを重ねて謝罪する。

 

「会ったことが無いのと・・・私達がサラをお姉ちゃんと慕うことは、別だもーん」

 

コレには、逆にカツラギが面を食らう・・・リアルの世界だって同じような事はあるには在るのだらから・・・

 

「そうだな・・・失礼した。ならば、コレからもよろしくお願いする、君達の力を我々運営に貸して欲しい、そのかわり私達は君達のための器を用意し続けよう、この先何人生まれるか分からない・・・君達 【ELダイバー】 との共存の為に!!」

 

 

季節は春・・・まだ少し肌寒い中の、熱い熱い彼らのFAWは・・・終わったのだった。

 

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