ガンダムビルドダイバーズ Re:スタート   作:aki@ガンプラ

14 / 14
うぉおおおお!忙しすぎて辛い! とりあえず投稿して後から直すスタイルで行きます!

最近は音楽聞いてると書きたいという衝動にかられるのに、書いてると寝るっていう!座椅子で寝る時間が増えすぎて腰イッタイ!

という感じにばたつきながらの第3話!真実とは魅力的なほど、残酷なものなのかもしれませんね


第3章 「戦いのカタチ」 3話目

巡航形態から今一度可変したリトルバニーが真っ直ぐにGNアームズEWへと向かってくる・・・お互いに1機同士のタイマンである。砲戦型と汎用型の違いこそあれど、此処で敵を退けられないのではこの先戦い抜くことは出来ないだろう。

だからこそ、サーニャは一度深呼吸をする・・・大丈夫GPDでも何度もこういう場面はあった。そのときだって皆で乗り切ってみせたではないか・・・と

 先ずは先程の動きからビットの布陣を構築する・・・

 

「読み切るんだ・・・百手。ううん、千手先ですら!」

 

反射神経や無意識で体を動かすなんて芸当は私には出来ない・・・出来る長所で相手の長所を上回る。タクティクスの真髄を見せるのだ

 

GNミサイルをロックを外して宙にばらまく、そのまま上方向へと距離を取る。ライフルビットは残り20機、シールドビットはフルで残ってる。

シールドビットを2機づつ両肩に装備してリトルバニーを迎え撃つ!

 

「いけ・・・ライフルビット展開!」

 

オールレンジ攻撃に加え、今度はGNガトリングによる射撃で弾幕を張る!まだ距離があるからガトリングはホントにタダの牽制射撃だ、当たったとしても大したダメージにはならない。

 

「ソレはさっきも見たYO♪リリィには当たりまセーン!」

 

コンポジット・シールドブースターをライフルモードに変えて、撃ちながら確実に距離を詰めてくるリトルバニー。

 

・・・まだ、まだ・・・もう少し

 

「HEY!もう後がないYO」

 

遂に、近接戦の距離まで詰められる!リトルバニーは武装をクローモードに変形させて突撃してくる! そう、このタイミング!

 

「今!」

 

先程漂わせていたGNミサイルがピピピ!と起動してその場から発射され、両機の真下から飛んでくる!

狙いはリトルバニーとGNアームズEWとの間!突然のロックオン警報にリリィは咄嗟に突撃を停止してクローを盾のように構える。

 当然コレも計算通り、ミサイルが自分たちの間を抜けていく前にGNガトリングをとにかくばら撒くように斉射する!

通り抜けていくGNミサイルを打ち抜き、リトルバニーの眼の前に大量のGN粒子と衝撃が襲いかかる、コレだけのGN粒子の層!お互いに対面ではビーム兵器は通らない!

 

「コレで・・・チェックよ!」

 

全ミサイルハッチを開放!GNミサイルを正面へ、四方からはGNライフルビットの射撃。ミサイルによる牽制と距離の捻出、そのミサイルをそのまま使った攻撃とビームライフルの無力化、逃げ場のないオールレンジ攻撃!

コレを無傷に抑えれるダイバーなど居るはずか無い!正にサーニャの策略が完全にハマったのだ。

 だが、ソレで落とせるのは常に自分より実力が足りない相手に限るという事を、サーニャは再度身を持って知る事となる。

 

「Phew~♪なら、リリィもホンキだYO!!」

 

だがなんという事か、リトルバニーはクローモードからロングヒートブレードへとコンポジット・シールドブースターを可変させて突っ込んでくるではないか!?

 ミサイルが足に直撃して吹き飛んでいくが、彼女は止まらない!ブレードを下から切り上げるようにGNアームズEWの左腕を切り飛ばしてみせた!

 

「そんな・・・あの状況から突撃!?ッ・・・・・!!」

 

咄嗟に残った右腕でGNガトリングを撃ち込むも、ビームは粒子の層に阻まれリトルバニーにすら届かない!

戦略をたった一瞬の無謀とも言える勇気で塗り替える。

 だが、コレは決して無謀等ではない。リリィ自身がコレまで身につけてきた経験と実績、それらを合わせた戦術の真髄なのだ・・・それをマジマジと見せつけられたサーニャ。

 

策士の動揺は策という刃を鈍らへと変える・・・そして刃の備わっていない武器では相手にとって牽制、果ては脅威にすらならない!

 

どうする?GNドライブを一つ失った!

 

ライフルビットで牽制を・・・ダメだ!相手はまだ高濃度GN粒子の層の中にいる。

 

なら・・・なら・・・なら!?

 

考えが堂々巡りを始める。いつもなら、こんなピンチも皆で乗り越えてきた・・・でも今ここには私だけ・・・私ただ一人だけなのだ。

 

「考えてテモ、誰も待ってくれないYO!!」

 

今度はコクピット狙いで横薙ぎにヒートソードを振るう、その時!

 

「サーニャ先輩!目をつむってください!」

 

彼女達の機体の間に投げ込まれるスタングレネード!視界が真っ白に塗り替えられGN粒子を吹き飛ばす、その間にGNアームズEWを背中から羽交い締めにして牽引するAGEー08。

 

この時、ありったけの宇宙機雷をばら撒くことを忘れない・・・ダメージが入るタイプのトラップはまだ全部残しておいたのだ。

 

「Woah!思わぬ伏兵が出てきたよ。アキナ~聞いてナーイYO!」

 

「堪忍やぁ~♪でも、そんなGN粒子の濃いぃ中に居たら伝えようが無いと思わへん?」

 

ガンダムというアニメシリーズにはジャミングする性質を持つ物質が数多く存在する。

GBNではそれほど原作を再現してはいないが、アレほど濃度の濃い場所に居れば流石に十分な効果を発揮する。

 

「大丈夫ですか?サーニャ先輩!」

 

「ス、スノウちゃん・・・ごめんなさい、ありがとう大丈夫」

 

スノウドロップの機転はナイスと言わざる得ない、初めてのガンプラバトルだと言うのに彼女はろくに装備も持たずこうも巧みにモビルスーツを操ってみせている・・・しかも智同様にスノウドロップも殆ど反射的に操作をしているようであった。

 

 まるで、昔のようだった・・・こういう時に私達は互いを助け合っていた。雄二か智がその場その時を判断して前衛後衛を切り替えながら、どうにか雄二と二人で智を支えようとあがき続けた・・・そんな昔を思い出させる。

 

そんな様子を遠目に眺めていた明菜は、どこか難しい表情をしていた。

 

「これは、もしかしたら根ぇの深い問題かもしれんねぇ・・・」

 

そうやって考え込んでいたら、リリィがどうするのかとブーブー言い始めてしまう。そんな彼女を宥めながら、コチラも作戦を変えていかないとならない。

 

「さて、ウチらもそろそろ前に進まんとならんかなぁ?」

 

「わたくしは、コレを撃つ事を進言いたしますわぁ・・・おそらくマイさんは落ちてしまいますし、そうなると私達だけでエインヘリヤルとの接近戦になってしまいます・・・絶対勝てませんよ?」

 

せやなぁ~と相づちを打ちながら考える明菜、実際あのAGEー08とGNアームズEWは遅延戦闘は相当得意だと思う。

マイを落としてから私達を倒しに来るくらいまでは時間稼ぎ出来るだろう・・・そうなれば手負いのリトルバニーとエインヘリヤルの一騎打ちになる。

 

「明らかに不利やなぁ~、しゃーなしかなぁ?コレは」

 

「オオイ!!アタイが負ける前提で作戦組むんじゃねーよぉ!?まだ・・・やれるって!」

 

ギィィィィン!!という甲高い金属音を響かせ、たった今最後のヒートダートが両断されて宙を舞う。

ホント、別個で対策が居る魔剣であることは間違いない・・・スカーレットもまた、学ぶことの多い試合に大満足である。

 

「クソ!・・・此処までか!」

 

使える武器がもう何も残ってない!最大のピンチとなったマイ、コレは流石に決まりだ。

 

「クスクスクス♪・・・では、決まりですわね!さぁ、カマエル。やりますわよ!月を仰ぎ、破壊の天使の戦列に加わりなさぁい!」

 

アハハハ♪と上機嫌のミリヤをマイも明菜も 「程々にな」 と一応の釘を刺す。全力を見せびらかしすぎるのも自分たちの為にならないからである。

 

彼女の言葉を受け、遙か遠くに見える月からマイクロウェーブがカマエルのバックパックへと注がれる。

ユウジンも、その光に目を向ける・・・遂に使ってきた。 【防衛ベースアタック】 なんてモノに挑戦する以上、タダのツインサテライトキャノンじゃないはず!

 

「ッ・・・!サーニャ、スノウちゃん!サテライトキャノンが来るぞぉ!警戒しろ、絶対躱せ!」

 

一旦ジャガーノートから離れるエインヘリヤル、自爆覚悟で敵機にしがみついて味方ごと撃ち抜くなんて戦法は今やメジャーすぎて逆に引っかかる奴なんていない程だ!

 

注がれるマイクロウェーブ・・・ソレを受けて各部が光りだすカマエル。

 この状態のDXは近づくのも危険だ、周囲に放出してる熱だけで敵にダメージを与えてくる攻勢防御を展開しているのだ。

 

「あぁ・・・あああ♪流れ込んできますわ!もっと・・・もっと!」

 

月からの光を浴び続けるカマエル・・・だが流石に異常なことに気づく

 

「な・・・なんだ?いったいどんだけマイクロウェーブ照射されてんだ、アレ!?」

 

とっくにもう撃てるだけのマイクロウェーブは照射し終わってるはず・・・

 そう危惧していると、カマエルの翼から 【5門のサテライトキャノン】 が顔を出したではないか・・・

 

「おいおい・・・まさかあの機体、砲門を増やした分だけマイクロウェーブも5倍受け止める気なのか!?無茶だ、そんなことしたら機体のほうが先に逝っちまうぞ!」

 

ロマン砲という名のもとに、サテライトキャノンを増設する機体はGBNでもそこそこ見かけるが、マイクロウェーブを5倍吸収するなんて事をやろうなんて奴は始めて見たぞ!?

 

ヤバイヤバイヤバイ!!まさか一発限りで退場上等な特攻兵器なのかよ!撃たれる前にどうにかするしか無い!

ミストルティンを手に取り、構えるエインヘリヤル・・・収束砲 【レーヴァテイン】 ならここからでも届く!防御膜も 【ラピッドストーム・ドライツバークバスター】 なら抜ける!ただ・・・

 

「アタイが黙って撃たせるわけねーって訳だ!ついでだから羽交い締めにしてやんよぉ!」

 

「クソ!もう当たり前過ぎて誰も使わない手を此処ぞとばかりに!!」

 

ズルい!でも有効だからなー・・・と諦めながらジャガーノートから距離を取る。コレじゃ撃ちようがない!

5倍のマイクロウェーブを使ったサテライトキャノン・・・あの二人はたぶん躱せない。どうする!?

 

「(さて・・問題はこっからやなぁ、ウチの罠だけで止めれるやろか?)」

 

そうこうしている間に明菜は既にこの先の展開を考えていた、普通に考えたら後衛の二機はもう助からない・・・十中八九エインヘリヤルはサテライトキャノンを避けてコチラを叩きに来る。星読の戦闘力ではアレと真っ向から戦うのは厳しい。星読は高い索敵能力を利用した支援機なのだ。あんな全身兵器のモビルスーツの相手など想定していない。

 

味方を切ってからの支援機の排除・・・

そう、誰だって大局を見据えればそう判断するはずだ。苦肉の策ではあったがお互いまだ勝ち筋を残してはいる。

だが、明菜は一つ見誤っていた・・・ユウジンという男はこういう時

 

【一番、誰も考えない事】 をする男だということを!

 

「【ナインズ・ブラククト】 起動!!」

 

今は7枚だから実質セブンス・ブラクトと言ったほうが正しいが、そう登録してあるのだから仕方ない!今直ぐにでも二人を守らないと・・・!

 

技を発動させながら、有ろう事かユウジンは 【仲間を守る為に飛び出していった】 ではないか!?

 

!!??

 

スカーレット陣営全員がありえない事が起きたという事実に一瞬頭が真っ白になる。

仲間思いとはいえ限度がある、本物の戦争ならいざ知らずコレはゲームなのだから其処まで必死になることなど無い・・・だと言うのにこの男は勝ち筋を捨ててでも仲間が優先なのだ。

 

「ま、まさか・・・わたくしのカマエルを、この 【ペンタゴンサテライトキャノン】 を止めてみせるとおっしゃいますの?・・・ふふふ♪ そう、そうですの!貴方は、貴方はあああ!!」

 

わなわなと震えながら、ミリヤのタガが外れる・・・フォースメンバー全員が危惧していたことではあったがやはりこうなってしまった!

 

カマエルの各部から、炎のように吹き出し揺らめくエネルギー・・・そのエネルギーはまるで天使の翼のように広がり、大天使そのものを思わせる。

それが即座になんであるかを理解したユウジンは絶句する、まさか・・・

 

「ファントムライト・・・だと!?あんなモンまで搭載してまでロマン砲に挑戦するのか?」

 

余剰エネルギーすら光の翼へと変え、Iフィールドの嵐とまで称されるファントムガンダムのIフィールドで無理やり5倍のマイクロウェーブのエネルギーを収束させる!

レーヴァテインを見て真似た結果なのだろうけど・・・撃ったエネルギーを収束させるのと、撃つ前のエネルギー全てを機体内部で圧縮するとじゃ意味が違う!

 

「機体が保たないぞ!止めるんだ!」

 

仲間との間に立ちはだかるエインヘリヤル、AGEー08からもワルキューレを回収して全ての盾を正面に展開する。その様は花開いた花弁のようであった。

 

「ユウジン、ここはカバーするところじゃない。離れて!」

「ユウジンさん!?」

 

サーニャとスノウちゃんも、コレには驚いたらしい・・・でもダメだ。俺はソレだけは・・・【仲間の犠牲を許容する】 事だけは・・・出来ない!

 

「レーヴァテイン!ディフェンシブモード!!」

 

レーヴァテインに備わっているもう一つの顔。Iフィールドとサイコフィールドによるエネルギー収束は、逆に使えば拡散させることが出来る。

原作レベルなら3枚でコロニーレーザーすら減衰させるこのシールドファンネル!それを9枚使ったコレなら・・・どうだ!?

 

「クスクスクス♪ユウジンさん、わたくし少し怒っていますのよ?防衛ベースアタック・・・最初に成し遂げるのはわたくしと思っておりましたが、先を越されてしまいました・・・でもソレは仕方が在りません・・・ですが!!お止めになる?コレを?わたくしの 【愛】 を!?」

 

不気味な笑い声を上げながら、ミリヤは本音をぶちまけていく

 

「受け止める?・・・という発想は、わたくしの愛に対する侮辱に他ならない!・・・機体の限界?超えてみせましょう!わたくしの愛でならソレが成せる!カマエルの叫びは悲鳴などではない、コレは讃歌に他ならない!・・・あぁ、あぁ・・・わたくしの愛は!誰にも止められはしないのです!カマエぇええル!!」

 

発射されるペンタゴンサテライトキャノン!!その様を一言で表すならば・・・壁

 

そう、光の壁が迫ってくるのだ。ありとあらゆる生存が許されない熱と力場の奔流・・・収束しきれない程のエネルギーが、エインヘリヤルへと迫る!

 

「ぐぐ・・・ぉぉオオオオ!!!」

 

レーヴァテイン・ディフェンシブモードがその壁に壁を貼って立ちふさがる!収束出来さえすれば、間違いなく防衛ベースアタックも可能だろう・・・単純な火力の総量ならばミストルティンを超えている!

 

「でも・・・イケる!このまま耐えろ・・・!エインヘリヤル!」

 

それでもワルキューレ9枚ならどうにかなる!そう思わせる力に周りももはや空いた口が塞がらない

 

「マイ・・・コレどうすればイイ?」

 

「・・・ムゥ、どうにもこうにも・・・ミィに頭冷やさせるしかねーよ」

 

やれやれと言いながら、マイは視線をエインヘリヤルの後ろへと向ける。その先には自分たちと同じ様に呆けるしか無いユグドラシルの二人・・・軽く舌打ちをしながら頭を切り替える。

 

「明菜、どうにかなんねーか!?」

 

「堪忍やでぇ、マイ。ミィちゃんキレてもうて、星読もファントムライトに巻き込まれてなぁ・・・撃墜されてん」

 

はぁ!?と項垂れるマイ。ミィは時折こういうふうになる、そのせいで孤立することが多くて遂にはこのスカーレットに流れて来てしまった・・・アタイも仲間が大事だ。その仲間にはミィだって含まれる・・・

 

だからこの話を推し進めたのだ、ミィに必要なのは力じゃない・・・アイツの言う愛っていう妄執をぶん殴ってくれる奴が居るかもと期待したからだ。

そして、その願いはある意味叶ったのかも知れない、あのユウジンって奴。このままいけばミィの愛を本当に止めてしまえる?

 

「ふふふ・・・本当に、本当にお止めになるのですね?ユウジンさん・・・わたくしの愛がこの程度で屈するなど、在ってはならないというのに・・・クスクス・・・クスクス♪」

 

カマエルの胸部が開く・・・スカーレットの面々も何が起きようとしているのか、理解できていなかった。なにせ、この機構は誰も知らない・・・今日この日のために作ってきたのだから!

 

「ミィ!何だソレ?オメー何する気だ!?」

 

当然、その様子はユウジンにも見えている。動揺しているマイを見る限りフォース内部でもアクシデントな様子だ。

そんな様子を意に介さず、カマエルの胸部には天使の意匠?が描かれた紋章が浮かび、機体が神々しく輝くではないか!?

 

「ゴッドガンダムのエネルギーマルチプライヤーシステムか!?こっから更に火力なんて足したら共倒れになるぞ!」

 

「構いませんわ!わたくしの愛の前に立ちふさがるなんて・・・そんなくらいなら諸共に砕けた方がマシというもの!さぁ・・わたくしの愛を!愛を愛を愛を愛愛愛をぉ!受け取りなさい、カマエぇええル 【エロヒム・ギボール】 !!!」

 

光の壁の後方から追加で迫る赤みがかった金色の波動・・・自らの機体を犠牲に放つ一発限りの逆転の一撃。その必死さに、ユウジンはそこはかとなく親近感を覚えていた・・・

 

彼女は、スカーレットというフォースに必要な力が自分にしか無い事を自覚し、ソレを成そうと努力し続けたのだろう・・・

【愛】 であると彼女は言った、周りが見えなく成るほどのひたむきで、歪んでいて・・・なのに誰よりも本気の想い。なるほど彼女は一辺たりとも嘘偽りが無いのだ

 

「仲間の為に、自分にできることを全力でやる・・・互いに無茶ばかりみたいだな、ミィ!」

 

ミストルティンを構えるエインヘリヤル!俺には分かるぞ、その気持ち・・・勝たせてやりたいよな、大事な奴が居る。大事な場所に、一番格好良い看板をおっ立ててやりたいよな!だから!

 

「俺も受けて立つぜ、俺の出せる全力で・・・ラピッドストーム・ドライツバークバスターで!!」

 

火力は負けていても、貫通力はコチラが圧倒している、ただし今のレーヴァテインはディフェンシブモードであるためその貫通力は無いに等しい・・・

 だがこのまま何もしなければあの赤銅のような力の塊にただ蹂躙されるだけだ!

 

「保ってくれよ!ミストルティン!!」

 

発射されるラピッドストーム・ドライツバークバスター、レーヴァテインにより拡散して攻撃範囲が広がりカマエルの【エロヒム・ギボール】と激突する!!

 

宇宙に大型デブリに匹敵するほどのエネルギーの球体が生まれる、コレほどまでの力の衝突が想定されていないのか、ステージである宇宙空間のデータ領域にノイズが走る!

 

当然のように押し込まれ始めるエインヘリヤル、でも勝機はある!あちらは照射型の技じゃない・・・この押し合いも持って数十秒だ、3分間照射できるコチラにまだ分はある!

 

問題は、その数十秒以内にあのエネルギーの塊がコチラに届くかどうかだが!?

 

「ウォオオオオ!!」

「ハァアアアアア!!」

 

ユウジンとミィ、互いにフォースの【メイン火力】という役割を背負う者、戦術ではなく戦略において重要な役割を担う者同士として・・・コレが交流戦だろうがなんだろうが!負ける訳にはいかない!

 

バチバチと悲鳴を上げ、ぶつかり合う力に砕けていくエインヘリヤルとカマエル。各部が耐えきれず爆発していくが、それでも止めない!互いに自らを鼓舞せんと叫ぶ!

 

「「この勝負!!」」

 

「俺の!」

「わたくしの!」

 

其処まで言いかけ、レーヴァテインの手前で大爆発を起こすエネルギー!

周囲のデータに激しいノイズを撒き散らしたソレは、システムによって徐々に正常化していく・・・

一歩も動くことが出来なかった残りの4名・・・その内の一人であるマイがゴクリと喉を鳴らす

 

「どっちが・・・勝った!?」

 

一瞬の静寂・・・もうボロボロに成り果てた両機が、まだ尚光を失わず立っている。

 

全てのワルキューレを失い、融解したミストルティンを握りしめるエインヘリヤル

 

ファントムライトの翼もサテライトキャノンも全て吹き飛んだカマエル

 

「・・・わたくしの、愛が・・・止まった・・・ッ?」

 

主の敗北宣言とも取れる言葉が最後の一手となったかのように、カメラアイの光を失い崩れ去っていくカマエル・・・

 

「やっぱ、世の中スゲー奴ばっかだな・・・なぁ?エインヘリヤル」

 

撃墜こそされてはいないが、もうエインヘリヤルに戦う術はない・・・向こうも向こうで仲間内のトラブルでいっぱいいっぱいだろう・・・ここまでだな。

そう判断した両リーダーが同時に告げる

 

「「この勝負、一旦預けてくれないか?」」  と・・・

 

スカーレットとの戦い、学ぶことが多い戦いでは有ったがどうせならもっと大きい舞台で本当の決着にしたい。

ユウジンとマイの考えは奇しくも一致したのであった・・・

 

 

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

スカーレットとの交流試合も終わり、再びスカーレットのフォースネストへと帰ってきた我々一同・・・ユウジンはミィとは少し話しづらかったのか、あまり目を合わせれられなかった。今も部屋の隅で下を向いてなんか独り言を呟いている・・・

 

ゲームに本気になる。といえば聞こえは良いが、中身は殆ど喧嘩に近い内容だしな・・・

マイも察してくれたのか、ちょっとわざとっぽく気にしない体で話をしてくれる。

 

「いやー悪かったな、元々二人の実力調査だったってのについ熱くなっちまった♪でも、【次】の楽しみが増えたって事で!な?」

 

「いや、俺たちの方こそスゲー助かったよ。やっぱ対人戦でないと見えないことが沢山有った」

 

良いって良いって♪と気前よく返してくれるマイ、でもこの後少し様子が変わった・・・

 

「ただなぁ・・・ユウジン、二人についてはアンタ抜きで伝えようと思う。アタイ達が感じた・・・たぶんお前達じゃ気づけない事を・・・だ。コレは正直本人がどうにかするしかねぇ」

 

俺が聞くと返って良くない事・・・?どうにも想像がつかないが、女性だからこそ見えたモノがあるのだろう、今はソレを信じる事にした。

 

「分かった、三人共・・・俺はちょっと格納庫で機体を見てくるから」

 

そう言い、ユウジンは部屋を後にした。彼が聞かないほうが良い理由というのが、サーニャ達もピンと来ていない・・・腕前が足りないっていう話なら、別段聞かない方が良いなんて事はないだろうし・・・

 

「すまないな、お二人さん。でも間違いなくアイツは聞かないほうが良い・・・ある意味あの男のせい。って捉え方も出来るからな・・・嫌だろ?そういうので落ち込まれると」

 

え?・・・ と三人共目を丸くする。今日だってユウジンのおかげで引き分けていると言っても過言じゃないのに・・・

 

「ちょっとマイさん!センパイに落ち度が在るっておかしいじゃないですかぁ?今日だってセンパイが一番活躍してましたよ!贔屓目込みで!!」

 

「そこは込みなんやねぇ・・・でも皆は聞いたってな?きっととても大事な事やから」

 

少し悲しそうな目をしながら明菜はマイを見る、マイもソレに対して頷き話を続ける。

 

「先ずはスノウドロップだ・・・お前、サーニャを助ける時『なんでリトルバニーを撃たなかった?』十分狙える距離とタイミングだったろ、武器だって持ってた・・・お前さんがガンプラを壊したくないって事情は聞いてたけども牽制や威嚇目的ですら撃たないってんじゃ、この先どう戦うんだよ?初めてであんなに動かせるなんて殆ど天才って言っても良い、正直悔しいけどお前は才能がある」

 

ソレこそ、ユグドラシルというフォースを牽引していけるほどの才能がだ。智同様に基礎的な鍛錬は付けてもらっていた由紀もまた、戦う上での勘に優れていた・・・今回の試合でも最も軽傷で済んでいるのは彼女の駆るAGEー08だ。

 

「でも、支援に徹するのだって戦いだと思って・・・!明菜さんだってそういう戦いをしてる訳ですし」

 

戦うという事が全て敵を倒す事のみでは無い。他でもないスカーレット達はそうしている。それではダメなのかと・・・スノウドロップはつい反論してしまう。

 

「・・・それはなぁ、ウチがソレしか出来んからやねん・・・ウチもバトルのセンスが無くてなぁ、ソレで今此処でこうしてサポート専門で戦ってるんよ」

 

「でもぉ?SNOWは違うよぉ。スッゴク強い♪」

 

「そうだ、現時点ですらお前さんはアタイと並ぶか少し下くらいの操縦技術がある・・・『出来ないから出来ることを伸ばした』明菜と『出来るのにやらない』お前さんとは、全然事情が違うんだ。当然、ただ楽しむだけならソレで良い。でも、本当に勝ち上がりたいってんなら『勝つ見込みがあることをするべき』なんだ・・・アタイの言ってること、分かるな?」

 

「ですがッ・・・・!」

 

その言葉に食い気味にマイは続ける。

 

「だから、コレはあくまでもアタイ達の意見だ!アタイ達が勝とうとするなら、アンタをエースに据えて作戦を組む。そういう話だ・・・受け入れろって話じゃねーさ」

 

この言葉にはスノウドロップも黙るしか無かった、客観的に見て勝率が安定する方法として自分を中心に作戦を組む。ソレがスカーレット達が見出した結論だ、こうしろという指示でもなんでもない・・・

 

「そんで・・・サーニャの方なんだけどな。たぶんだけどお前・・・『弱くはなってねーよ』」

 

その言葉にユグドラレディース全員が固まる・・・言っている意味が良く分からなかったからだ。

 

「・・・え?まって、言い訳っぽく聞こえるかもしれないけど私・・・GPDではもっと上手くやれてたの。なのにどういう・・・?」

 

言いづらそうにしているマイの代わりに明菜が前に出て話を始める。

 

「せやなぁ、その前に少しウチの話を聞いてくれる?」

 

マイがちょっと!と止めようとするのを遮り、明菜は少し陰りのある笑みを浮かべてマイに頷く。

 何のことかは分からなかったが、サーニャ達はその話の先を促す。

 

「ウチは、というかウチらは元々別々のフォースに所属しててん。まぁ、各々肌に合わんでマイと二人でフォースをゼロから立ち上げたんよ。

 でな~・・・ウチらはこのフォースを『女性のみ』のフォースにしようって誓った、前のフォースで嫌なことが有ってなぁ・・・」

 

はぁ・・・とため息を付きながらマイも観念したのか口を開いていく。

 

「アタイはそうでも無かったんだがな、明菜はなんていうか・・・そう『姫』だったんだよ。前のフォースでは・・・勘違いしないでほしいのが、別に明菜自身が望んでそういう風になったわけじゃねーんだ。

 今でもオンラインゲームってのは得てしてリアルが女性ってだけで変に構ってきたり、よいしょする空気が何故か残り続けてる・・・男がバカばっか、だなんて言わないぜ?ほんとに親切に接してるだけってヤツもきっと居た・・・」

 

「でもなぁ・・・ウチはそこで間違えてしまってん。たぶんもっと強気な人間であるべきやったんやろなぁ。でもウチは単に親切に対して感謝していただけだったんや、でもソレがアカンかった・・・ソレが変な誤解だけを知らぬうちに加速させてしまった。

 誰もがウチを守ろうとした、誰もがウチに良いところを見せようとした、仲間内なのに何故か『ウチの評価を得る』事を競いだしたんよ・・・」

 

黙って聞いていたが、サーニャ達にも心当たりはある内容だった・・・学校の部活とか、イベント事など、何かを行う団体が生まれた時に女性という立場のおかげで楽ができたり、逆に気を使って疲れる事はしょっちゅうだ。

 

「アタイはこんなんだからよ、むしろ媚びてくるんじゃねー!って感じでどうにでもなったんだが・・・ミィや明菜はそうは行かなかった訳よ。勝手なもんで、そうやってフォースが壊れるとだいたい女が槍玉に上がっちまう・・・勝手に盛り上がったのは向こうだってのにな?

 だからアタイがこのフォースを作った。傾国の美女みてーな扱いを受けてた連中に片っ端から声かけてな♪・・・まぁそれでも引退するっていって断られて集まったのは結局ミィと明菜だけだったけど・・・そっからリリィがズカズカと入ってきてだいぶ面白いフォースにはなったんだけどな」

 

その発現にブーブーと頬を膨らませて不満をぶつけるリリィ、彼女はどうやらそういう経験とは無縁だったようだ

 

此処まで聞いて、彼女たちが『リアルが女性である』という事で様々に苦労をしてきたことは分かった・・・だがそれでも分からない

 

「ソレが・・・私達ユグドラシルにも関係がある話だという事なんですか?ユウジンはそんなこと!」

 

三人娘の目には明らかな『怒気』を放っている、リンに至っては噛み付いてきそうな程だ。

 たしかにユウジンは女性の仲間を守っている・・・でもソレは『仲間』を守っているだけだ、けっして不純な理由などではない!

 

「わーってる!わーってる!!アタイ達だってユウジンってのが底抜けたお人好しなのは流石に分かる!それでも起こる問題はあるんだよ」

 

「ソレってどういう問題なんですか!センパイはただ優しいだけですからね!」

 

プンスカ という擬音が聞こえそうな程リンは怒っているようだが、ガチにキレているわけでは無い。スカーレット達の人となりを知った上で、それでも抗議している

 

「仲間を守る・・・確かにコレって大事だけどよ。ソレが『当たり前』になったら、もうそれって対等じゃないんじゃねーか?って話だ・・・サーニャ、お前さ。ユウジンや・・・あともう一人、たしかS・Aだよな?アイツらがお前を援護に来てくれるってのが、もう完全にお前の中で『当たり前』になっちまってるよな?。

 決して悪いことじゃない、いざって時に直ぐに互いにサポートし合える事が体に染み付いてるって事だからな・・・でも、だからお前はGBNじゃー勝てねーんだよ。このGPDの何倍も広大なフィールドや戦況・・・お前の頭の中では把握しきれていても、二人はそうじゃなかった・・・悪い言い方をすればな」

 

言いにくそうに頭を掻きながら溜めて言う。

 

「『お前のお守りをするキャパを超えちまったんだよ』・・・だから勝てない、コレはある意味ユウジンのせいって言ったのはソレだ、ユグドラシルの男共はお前を絶対見捨てない。互いに何の自覚も無いけどお前はもう既に・・・フォースの『姫』になってるんだ!」

 

 

・・・私の『お守り』???

 

「そ、そんな・・・私は、チームの為に後方から援護を主体に・・・そう!決してお荷物にばかりなんてなってない!!」

 

GBNではそういう場面は多かったかもしれないけれど・・・私だって戦えてた!勝率こそ悪かったけど、皆で掴んだ勝利のはずだ!・・・筈だよね?

 

「そうです!サーニャ先輩だって結構活躍してる事あったんですからね!そんな筈無いです!」

 

「皆で掴む勝利・・・ソレがあの男二人が望んでいた勝利だったからじゃないのか?サーニャのファンネル操作は凄まじいよ・・・でもその分本体は隙だらけだしそもそも迫られた時の対処手段が無いに等しい」

 

「リリィもリトルバニーも、完全装備じゃないんだYO?サーニャ・・・」

 

そう・・・リリィは全然『本気』の状態では戦っていない。そのリリィにですらサーニャは一人ではほとんど無力だったのだ。

 

「そうして、当たり前~になってしもたユグドラシルはサーニャさんを援護するために走る・・・ユウジンさんもスノウちゃんもや」

 

「弱い誰かのせい・・・なんてのはアタイも気に入らない考え方ではある!でもな・・・今のユグドラシルは、ユグドラシルはッ!!!」

 

堪えてきたが、言ってしまって良いのか?と葛藤するマイ。彼女達が強くなりたいという意志は本物だと信じている・・・同じ女性だからこそ、今この瞬間にしか言ってあげることが出来ない・・・ソレでもマイは唇を噛むことしか出来ないでいると・・・

 

「お二人抜きでの・・・スレイプニルを装備なされた、エインヘリヤル1機の方がお強いですわ・・・フォースユグドラシルは」

 

バッと全員が一人の少女へと視線を向ける。

さっきまでブツブツと虚空に向かって独り言を喋っていたミリヤが真顔で、確かに告げたのだ・・・

 

『今の貴方達が居ると、返って弱くなる』・・・と

 

「サーニャさん・・・貴方は弱くなどなっておりませんわ。初めからずっと、何一つ変わること無く強くも弱くもなっていなかったのだと思います。ユウジンさんやもう一人の方の努力が貴方を支えてきた・・・本当に彼の為になりたいと願うなら、貴方は『ビルダーに徹する』べきだと進言いたしますわ!」

 

その言葉を聞いたリンの背筋が凍る・・・かつてユウジンの心をもへし折りかけた呪いにも似た言葉、ビルダーはビルダーでしか無いという諦めを促す破滅の言葉だ。

 

「サー・・!」 サーニャ先輩!と彼女を鼓舞しようとしたリンの行動は、もう既に遅かった・・・

 

ペタリ・・・・と膝からくずれるサーニャ

 

「私が・・・ユウジンを敗北させてきた?・・・私が、S・Aから『楽しい』を奪った元凶?・・・」

 

その瞳にはもう・・・ファイターとしての火は灯っていなかった。

 

白日の下に晒された、誰もが望まなかった真実・・・知りたいと願った魅力的なそれは、あまりにも残酷すぎたのだった・・・


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。