ガンダムビルドダイバーズ Re:スタート   作:aki@ガンプラ

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第一章 「可能性の証明」 3話目

あれから3日が経過し、沙耶が久しぶりに家に来た。家の玄関ではなく、模型店である店の方から来るのもいつもどおり。可愛らしい道具箱は高校生になっても変わらないようだ、お袋がニマニマしながら家に上げるのも・・・やっぱりいつもどおり。勘弁してほしいものだ

 

部屋につくなり、沙耶はすぐに異変に気づいた。女の勘というのは実際あなどれないのかも知れない・・・・あ、いや。やましい物を隠して気づかれた、とかではないぞ?

 

「ステイメン・・・・は?ステイメン:シグルドが無いよ?・・・どういうことなの、雄二?」

その目は感づいて怒っているな?俺だって幼馴染の感くらいある。

 

「沙耶の考えてるとおりだよ・・・マスカレードとの試合、俺はステイメンを差し出した。試合の勝敗には、このオーキスも賭けてある」まっすぐ返す。俺は沙耶にはぐらかすような言い方はしない。コレは俺たちの当たり前なのだ

 

「・・・そんな、でも・・・」沙耶はこうすれば分かってくれる。俺が短絡的に考えたわけじゃないのも、苦しんだことも、後悔してることも。全部

「だから、勝ってやるんだ!ステイメンは俺の戦いの中にずっと居る。寂しいけど、頑張る!」

 

その言葉に、沙耶は納得してくれたのか。この件で俺を追求することはしないでくれた。

それどころか、俄然やる気になってくれて、改造作業は順調に進んだ。

 

「これ・・・ユウジンの改造プランから作ってみた。どう?一度見たからサイズは完璧なはず・・・」

 一度見ただけでサイズを完璧に測れる奴はふつう居ないと思うが、そこは流石というべきか、沙耶が作ってきてくれたパーツのサイズは完璧だった。

作ってきてもらったのは2つ、一つはユニコーンガンダムのシールドファンネルを3枚、展開する際のサイコフレームの形状を変更してもらい、更にアームドアーマーDEの展開式スラスターを新造して、付ける位置を逆にしたモノ。なんか勢いが乗ったらしく、9枚も作ってきてくれた。せっかくなので全部戴くことにしよう・・・しかし9枚か。

 

「ふーむ、なら名前はまた北欧神話から取るか!」俺たちユグドラシルは、あのチャンピオンが居るフォース 「アヴァロン」 にあやかって同じ様に神話体系やら伝説のお話なんかから名前を取ろうと決め、フォース名や装備名、機体名に北欧神話から名前を取ってつけてる。智は最後まで日本神話に拘ってたから和風な名前ばっかりだけどな。

 

「9・・・それなら、ワルキューレがいい。だってこの子、エインヘリヤルなんでしょ?ヴァルキュリアに運ばれてヴァルハラへと逝く戦士・・・なら子を運ぶブースターシールドなんだから、9姉妹のワルキューレ・・・」

 なるほど「ワルキューレ」か・・・確かに推力を上げるための装備だしちょうど9枚有るしな。基本3枚付けるつもりだったけど、無理すれば9枚付けれないことも・・・・お、出来た!

 

「お、頑張れば9枚つけれるな♪」持ち運べるってだけで利点は薄そうだが、突貫するなら有りか?

 

「地上じゃまともに歩けないね・・・とくにスネの武装ラックに付けた盾が邪魔で歩きにくそう。あ!相変わらず好きだね~♪コレ」

 

クスクス笑う沙耶、ユニコーンガンダムの腕の装備、ビームトンファーにステイメンのフォールディングアームのアイディアを足したギミックを瞬時に見抜かれた。ステイメンのギミックの中でも個性的なギミックで俺は昔から好んで使ってた。そういうのをネタにフザケ合う悪乗りがお互い大好きなのだ。

 

「俺の機体だからな!当然付いてるに決まってる!あ、歩くのはこうすれば、アヴァランチエクシアダッシュみたいになんとかならんかね?」

スネのアームを動かしてゲタみたいに履かせてみる。あ、だめだアヴァランチエクシアダッシュも別にコレで歩いてる訳じゃなかったわ、自立だけはしたけど絶対無理だわ。

 そんな風にフザケ合いながらも、ワルキューレを少しだけ調整し、完成!

 

続いてもう一つは、ユニコーンガンダムのメイン装備であるビームマグナムの改造だ、そのままでも十分強いんだけど、俺が使いやすいように威力を落とさず精度を上げたいと沙耶に相談していた・・・一体どうなったんだろうか?

 

「ビームマグナムはブルパップ式にしてみたよ?・・・本来コレで銃の全長を短く出来るんだけど・・・雄二が求めてたのは精度を上げることだったから。 

 短く出来る分、砲身と基部の方を少し長くしてみた・・・ブルパップ式だから基部も手元の後ろにあるから反動で銃口の跳ね上がりも抑えれたはず」

 

これは、予想以上に注文以上のモノが出てきてびっくりだ。「ビームマグナムブルパップ」キットをベースにほぼスクラッチに近い出来。コレを数日でやってのけるのだから頼りになる武器職人である。

 

「持たせてみたけど、片手撃ちも両手撃ちも支障なさそうだな!Eパックのみのパーツも腰や肩、スネのアームで保持出来るように改造してあるから、最大でも35発は撃てるか・・・元の設定の倍以上って考えるとやべーな」

 

「でも、雄二。ビームマグナムブルパップのEパックだけ持つ訳にはいかないでしょう?ミストルティンだってEパック式なんだから・・・一応低出力射撃は内蔵ジェネレーターだけでも撃てるけど」ちょっとしゅんとする

 

「ああ~、ミストルティンが出てくる度に凹まないでくれよ。大丈夫だ、予備弾倉はこっちのオーキスにかなり搭載できる。あくまでも分離時に保持できる限界数の話しさ、ミストルティンのEパックだって、最大9発持って動けるってことだぞ!スゲーだろ」

 

「うん・・・改造コンセプトが一機で多勢と戦うこと。だったもんね、オーキスを実質リソースの保管庫として使う雄二の元々のアイディアは、間違ってないと思う」

 

「そ、そうか?いやー良かった、実は無謀だって怒鳴られるかと思ってたんだけどな」

「ううん?ソレは今もそう思ってるけど?」

 

アッハイ、失礼いたしました。 と、心の中で謝っておきながら押入れの奥からデザインナイフの替え刃を探す。えーと、確かこの辺に・・・

 

「お?・・・コレって確か」棚の奥に見覚えのある古いパーツ入れを見つける

 

「どうしたの?雄二?」沙耶も興味が湧いたのかすり寄って見てくる・・・なんだろう、今何故か、無性に緊張してきた。

 よくよく考えれば、美少女と肩くっつけ合いながら狭い押入れに身体を半ば収めている、なんかいい香りまでしてきた・・・脳が右肩と鼻に全神経を集中させまいとする無意識を、俺は自我でもって制覇して箱と替え刃をすばやく掴み、押し入れから脱出する! ハーハーと息を整え、平静を装う

 

「い、いやー・・・これこれ!なんだっけかー?確か色々作ってぶち込んだカオス箱だった気がするんダケドナー!」完璧だ!そう信じよう

 

「あぁ!中学の頃、皆で作ったね。それ・・・懐かしいねぇ深夜テンション?って言うのかな?皆自分の好きなガンダムシリーズの設定ばっかりつぎ込んでたから、もう誰のための何のガンプラの装備なのかすら分からなくなった装備じゃない♪」

流石わが校一の天才、よく覚えてらっしゃる・・・っていうかコイツは全然動じてないのな・・・ふーん

 

そう、コレは中学の頃に俺たちGPDチームでお泊まり会をして我が家に5人が揃った時に作ったものだ。誰が言い出したか忘れたが、とにかくなんか作りたくて皆で各々作って見せあいっこをしたのだ。

 智は作るのが得意じゃなかったから、沙耶が手伝う事にして作った9つの装備群だ。こうしてみてみると、本当に統一感ゼロだし、拙い技術が目に見て分かる。

 それでも基本はしっかりしてる、今の俺ならキチンと改修できる。そう思える出来だった・・・でも今はそんな事をしている場合じゃない。思い出はキレイに大切に取っておこう。沙耶もそう感じたのか、お互い顔を見合わせ作業に戻った

 

 それからの作業、俺達はもくもくと手元に集中し会話もアレとってとか、ソレなんだっけ?とか最小限。それでもなんにも苦にならないのが、二人共根っからのビルダーなんだな。と感じる、1年前はコレに加えて夏凜が居て、智が居て・・・そんで智の後ろをアヒルの子供みたく必ず由紀ちゃんがピョコピョコ付いて来てたんだよな。

 【あの頃が懐かしい】・・・で終わらせたくない。思い出は大事だけど、エンディングなんて無いはずだ。

雄二は今一度、自分が戦う意味を思い出せたような気がする。ステイメンの事で気持ちがガタついていた。エインヘリヤルを作りながら、その揺らぎまくった心も一緒に組み立て直していく・・・大丈夫だ。そうなぜか信じられたのだ

 

時間は過ぎていき、お袋が下から昼飯が出来たと大声を上げる。沙耶の分も作ってくれたらしいから一緒に降りる。降りる際に店内の方に行って塗料買っておこう、沙耶と二人で店内の方に入っていく・・・昼飯時はいつも客など誰も居ない。

だがそこに、珍しい客が来店してくる。

 

 模型店に来るのに道着を着込み、おそらく妹のモノだと信じたいファンシーな手提げ袋と買い物のメモ用紙を握りしめ、雄二たち二人を見つけるや否や口を金魚のようにパクパクさせて慌てふためく男。

 背は雄二より少し低いくらい、髪は黒く短く清潔感ある爽やかスタイル。汗をかいていない様子から、おそらく部屋着感覚で道着を着てるのだろうというのが容易に想像つく残念なイケメン。新谷 智が二人を見て驚いていた

 

「いや、まてまて智。俺んちに来て俺を見て驚くのは・・・流石におかしい。っていうか、お前!服くらいもっと高校生しろ!ある意味一部女子にはそっちの方が良いのかも知れないが、模型店でソレは意味が分からん!!」

 

「僕だって、好きでこの格好で来たんじゃない!由紀が、どうしても塗料足りないからダッシュで買ってきて下さいって頼んできたから、急を要するんだろうと本当に急いで来たんだ!・・・そうしたら、二人で一緒に居たから驚いたんだ」

最後の方は覇気が薄れていく、彼もどうやら、急ぎでも服くらいは着替えるべきだったと今更ながら感じたようだった。

 だが、彼はソレ以上に気になることがあったのだ・・・沙耶がまた、この店にいる事がだ

 

「沙耶・・・もしかして、もう戻れるようになったのかい?それなら、僕も嬉しい・・・嬉しいんだけども。その・・・・」智は、過去に沙耶がネット上で酷い晒し者にされたことに踏ん切りがついたのかが分からなかった。だからこそ、恐る恐る聞く

 

「ううん・・・まだ。今日は、雄二のガンプラ作りのお手伝いに来たの・・・」無鉄砲に踏み込まないでくれた智に感謝するように、沙耶はアハハ・・・と笑いながら返す。

 

「あぁ、今FAWに向けて新作を作ってる。今度こそ、キチンと勝つために沙耶の力を借りたんだ」

 

その言葉を皮切りに、智は仕切り直すように一歩踏見出し。雄二を睨む

「まってくれ、雄二・・・FAW。まだ諦めていなかったのか?お前の我儘や癇癪にまた人を巻き込むつもりか?夏凜は・・・まあ良いさ。あの娘は何を言ってもあっけらかんと雄二の近くで楽しくやるんだろう・・・

でも沙耶は違うだろう?沙耶は今、自分のことでアレコレ考えないとならない筈だろう、お前の面倒見させるなんて何をしてるんだ!」

 智の怒りは理解できる・・・俺たちが袂を分かつ事になったのは、俺の我儘と癇癪と辛抱のなさが原因だ。そんな時に一番ふさぎ込んでるであろう沙耶に、ガンプラの事を起因させるような事をする俺に、智は呆れているに違いない・・・

 

 沙耶が、「まって・・・私がお手伝いしたいと思ったの。雄二の話を聞いたから、きっと大事なことだって思ったから・・・」

誤解だと割って入る。が、ソレを手を突き出し静止する智

 

「今は、情けなく相談を持ちかける事を咎めてるんだ、仲間や友達とソレをするなと言うんじゃない。今、本当に時間が必要で、本当に助けが要るのは、お前か?雄二。

・・・男児たるもの、助けを乞うのと縋り付く事の違いは知るべきだ。

今日来たのはお使いも有るが、お前に事の全容を聞くためにも来た。・・・覚悟やタイミングを店内で図ろうとして入店直ぐに会って面食らったけども」 んん!とわざとらしく咳払いをして切り替える

 

「いや、だからFAWに出るために・・」また同じ説明するん!? そう話し始めたらかぶせるように智が怒鳴る

 

「違う!なんで28位のマスカレードが、ユグドラシルに予選を申し込んだ!?噂では、お前のガンプラをかけた決闘だと聞いたぞ!ダイバーとして、ガンプラを何だと思ってるんだ!」

 

「ッ・・・・!」一番痛い所を的確に突いてきた・・・どうあれ俺はガンプラを担保にした。ガンプラビルダーとして、作品を他人に渡す事はある。でも、ソレが自分のためのガンプラなら話は別。連れ添った友人を裏切るようなモノだ・・・でも

 

「ステイメンは俺の愛機だ・・・今だって、これからだってそうだ。新しい愛機ってのは、古い愛機を捨てるってことじゃねー・・・アイツとの経験や時間は一秒だって無駄にならずに俺と一緒にある」

 

「キレイ事を抜かすか!!」智が叫ぶ、まけるな!叫べ!

 

「キレイ事だよ!!じゃなけりゃ、失ったもんに足がすくんじまいそうなんだ!俺は立って前に進むって誓ったんだよ!勝ちたいって俺が望んで、勝ってくれてって言ってくれた奴が居た。

 今だって怖いのに、俺に力を貸してくれる奴も居てくれる!俺はもう、誰かのためだけでも、俺だけのためでも無いモンで今、此処に立って立ち向かってんだよ!アイツと一緒に強くなれればって思ってたけど、変えられなかったんだ!」

 

その叫びに智は、怒りながら・・・なのに悔しそうに、悲しそうな顔で出かかってる言葉を遂に溢れさせてしまう

「じゃあ!諦めれば良かったじゃないか!ギブアップしたって、誰もお前を・・・!お前を責める奴なんか居ない、気に留める奴すらっ・・・!」ソコまで言いかけ

 

パ ー ン !

 

と彼の頬を、涙目で引っ叩く沙耶が居た・・・

「違う・・・違う!今、癇癪起こしてるのは・・・智じゃない!」

 叩かれて目を丸くしている智は、線香花火の火が消えるかのように勢いを失い、黙り込む。

 

智自身、本当に言いたかった訳じゃなかったのだろう・・・沙耶の言う通り、智は癇癪を起こしたてしまったのだ・・・

 そうして、ソレ以上誰も何も言わないまま気まずい状況の中、店の奥から一人の女声が声を上げる

 

「ハイハイハイ!ソコまでにしなさい雄二!智くんも、誰も居ないからって店でケンカしないのぉ。お昼ご飯だって言ったでしょう?もう・・・」

 ソコに居たのは、雄二の母親にしてこの青城模型店の店主であり、地元のおっちゃん共曰く、高校のマドンナだったという自称美人ママこと

 「青城 真奈」(あおぎ まな)であった。

 

「お袋・・!」

「おばさん・・・」

「雄二のお母さん・・・」

 三者三様に真奈に返す俺たちをスルーし、うんうんと腕を組んで何も聞かずこの場を分析したらしい・・・母親ってのはニュータイプなのか?

 

「とにかーく!喧嘩は今度になさい、男二人揃って女の子の前でみっともない。よく分かんないけど雄二が悪いってことにしときなさい、良いわね?」

 全然分かってなかった!?じゃあ、なんださっきの!「あ・・いや・・・」と説明しようとする智の話も聞かず、話しを続ける我が母

 

「あ、智くん。いつものかい?なら、おばさんね?後で回覧板届けるのにそっちの近くまで行くし、届けてあげるから!ほらほら」と言いながら智からメモをふんだくる。

 智も流石に勢いに負けて流されるままに、ありがとうございます。と頭を下げていた

 

「じゃ・・・じゃあ、失礼します。代金はコレで・・・お釣りは」 と言い出す智にかぶせるように「良いって良いって♪レシートと一緒に持っててあげるからぁ」 と母は超力技でこの場を一瞬で収めてしまった。たじたじな智は店を出ようとして最後に俺に言ってくる

 

「雄二・・・済まなかった。でも、諦めたほうが良いって気持ちも本当だ。僕だってあの頃は楽しかったさ・・・でも皆変わらないままって訳にはいかないんだよ。

 状況を受け入れるために全てを諦めるんじゃない、状況と折り合いを付けるために・・・諦めるべき部分をもっとしっかり考えるんだ。お前はGBNに入り浸るより、リアルで誰かと一緒に居てやるべきだと・・・僕は思う」

 

智は、沙耶を心配しているから俺にこう言っているんだ。同じビルダーとして、痛みを理解できる存在として智は、俺に沙耶を任せたいと思ってて・・・任せられる人間だと信じれくれてる。

 素直に言えば、嬉しい。智はなんだかんだ俺を認めてくれているんだろう、だから俺がGBNで無駄に足掻いて空回りするような真似を咎めた、でも・・・

 

「俺は・・・あの頃に帰りたいんじゃない。あの頃に失ったもんを取り戻して、新しく始めるんだ。元に戻らなくたって良い・・・壊れたものを壊したままには出来ない。だって俺は。ビルダーだから・・・あのフォースのリーダーだから」

 

その言葉に智は何も返してはくれなかった。店から出る彼に、コレだけは聞かなければと声をかける

 

「智!・・・今、楽しいか?GBN・・・楽しんでるよな?お前」

振り返らず彼は応えてくれた

 

「あぁ・・・楽しいに決まってるじゃないか。強豪フォースに認められて、其処でエースを張って、遂には前回大会で優勝までしたんだ・・・楽しくないわけ、無いだろう?」

その声には、まったく楽しさが伝わってくる様子は無かった・・・沙耶だけじゃない、きっと皆どこかに傷を抱えたまま俺たちはバラバラになってしまったんだと思う。

 こうなると、由紀ちゃんの事も気にかけたほうが良いのかも知れない・・・と考えていたら後ろから小突かれる

 

「ったくもうー、この馬鹿息子は!せっかく三人顔合わせたってのに、ばっかだねぇ~」やれやれと言いメモを押し付ける

 

「あんた、ソレ揃えてカウンターに置いておいてちょうだいね。私、わかりにくい商品名じゃ全然わっかんないんだから

 さぁ♪沙耶ちゃ~ん、おばさんとごはん食べましょ♪ふふふ~ん♪」

 

よくソレで模型店の店主が務まるな!おい!・・・でも助かったのは事実だ、素直に従うとしよう

 

                          

お昼ご飯を終え、完成したユニコーンガンダム:エインヘリヤル・・・まだこれからも改良していかなければならないが、試合までに間に合うモノだけで戦うしか無い。だから、今はコレが俺たちの最大限の戦力になる。

 この後は試運転でGBNに行くために叔父の店に行く・・・のだが

 

「沙耶はどうする?その・・・一緒に来るか?試運転」

 

「・・・とりあえず、一緒にお店には行く。最近、ガンプラのパーツも全然見てなかったし、それに・・・実はもう一個作ってきたものが有るんだけど、完成させるのにあのお店の機材を使いたいの」

 

他にもエインヘリヤルの装備を考えてくれていたらしい。嬉しいサプライズだ

 

「そっか♪なら一緒に行こう!夏凜も先にインして待ってるから、急いでやらないとまた拗ねやがるからな」ハハハ♪と笑いながら

 

「・・・ふーん、夏凜が待ってるから行くんだ。ふーん・・・」 と逆に沙耶が拗ねる。どうしろっていうんだ?拗ねるぐらいなら二人共、リアルとGBNに別れないでほしい。

 

出発しようとして沙耶はある物に気づいて止める

「雄二・・・あれは良いの?作りかけだけども・・・アレもこの子の装備なんでしょ?」

 

そう言って指さしたのは、オーキスや00のGNアームズ、SEEDのミーティアなんかを参考に改造中の、エインヘリヤル用巨大アームドベース 「スレイプニル」 その作りかけだ。

 ずっと使ってきた 「オーキスカスタム」 のノウハウを全部突っ込んだロデオさながらの暴れ馬、完成すればエインヘリヤルの戦闘力は更に上る・・・だが時間がない。

 

「ああ、コレは本戦に間に合わす。どう頑張っても数日後のマスカレード戦には間に合わないしな、代わりにオーキスカスタムを装備していくよ。キチンと拡張性も考えて改造してた中学の頃の俺に、感謝だ」

 

「なら、コレも本戦で持って行って・・・きっと雄二の力になってくれる」そう言ってカバンを揺する。さっき言ってた作ってきたもう一個とやらの事だ。もちろん!と笑顔で返し、チャリの後ろに沙耶を乗せて店へと向かった。

 

 叔父が経営する大型店へとやってくる。この店は叔父が実家である我が家の模型店から独立して立ち上げたオモチャ屋だ。幼児の玩具からコアなモデラーの為のグッズまでなんでも揃ってる。

 ソレだけでなく、叔父が大のガンプラ好きの影響もあり、いらないパーツの買取販売をしたり、有料だけども一般の家庭ではなかなか使えないプロモデラーも使うような機材を使うビルドゾーンという個室を提供するサービスもやっている。

青城模型店にも、父と雄二が使うための工作部屋があるが此処の機材はソレよりも優秀だし、なによりキレイだ。

 

だから、沙耶のように近所や家族に迷惑がかかる工作活動をしにくい場合は学校の部室か、雄二の家、近所ということならこの店を利用することになる。

 

雄二は脇目も振らず従業員スペースに入り、事務室の奥のデスクに居る叔父に挨拶に向かう。

 

「叔父さん!こんにちわ!今日もお世話になります!」笑顔で挨拶を交わす。

 雄二は定期的に無償で、此処のビルドゾーンの機材のチェックやメンテナンスを手伝う代わりにGBNにログインするための機械があるダイバールームを無料で使わせてもらっている。

それだけでなく、叔父のガンプラ作りの手伝いもしたりするので叔父は彼には甘いのだ。

 

「おう~よーく来たなぁ、ユウ坊。今度モデラーのイベントが有るんだ。一緒に行こうな。沙耶ちゃんも久しぶりだぁ、最近はユウ坊の家で作ってたのかい?あんまり見ないもんだから心配してたよ」ハッハッハ♪と笑う叔父はいつも優しい

 

「はい、おじさん、お久しぶりです。今日は雄二がインしてる間にビルドゾーンをレンタルしようと思って」

沙耶だけじゃなくて、ウチのフォースメンバーは皆叔父さんと仲がいい、俺が頼まなくても気前よくタダ当然で部屋を貸してくれる。俺なんかはラッキーって借りるけど、皆は多少は払っていくみたいだ。偉いな~と関心してしまう

 

「じゃあ、叔父さん。いつもの0番ルーム使うぜー」

 おーうという叔父の返事を聞いたらそのまま隣の部屋へ・・・隣の部屋は壁一枚向こうを隔ててダイバールームの裏側にある。

 そう!この部屋は叔父と俺達が使う為に専用に取ってあるVIP席なのだ!ちなみに、数年前はGPDの筐体が置いてった。当然俺らフォースメンバーは毎日のように遊びに来ては遅くなって怒られたもんだ・・・・

 

「じゃあ、沙耶。行ってくる、そっちも頼んだ」グッと掌を相手に向ける。自然な動きで沙耶もその手を同じ様に掌で叩く。

 

「うん・・・雄二も頑張って、向こうに夏凜が居るの?」顔見せに行こうかな?と聞いてくる沙耶に雄二は

 

「いや、夏凜。遂に家にハードっていうか、まんまこの筐体を買い込んだらしい・・・羨ましいよなー」流石は金持ち、スケールが違うぜ・・・と羨ましがっていたら沙耶が頭を捻っていた

 

「・・・え?なんでそんな・・・?夏凜がそんな事するかな?本当に・・・・?」うーんうーんと唸るが答えなんて出ないので、とりあえず置いておくことにしたらしい。

 そんなに変なことか?・・・俺だって金有るなら家に置きたいぞ?

 

 いつもの席に座り、ヘッドギアを付ける。ダイバーギアをセットし起動する

 

『ID date convert』  

『pleas scan your GUNPLA』

いつものアナウンスに従い、ガンプラをギアの上へ・・・でも今日はいつもとは違う。いつも此処にはステイメンが居た、でも今は・・・!

 

「俺と一緒に、戦おうぜ!エインヘリヤル!!」

眼の前が光で包まれる。光でできた世界へと身体感覚や思考が最適化され、電脳世界へと降り立った。

 

GBNのメインロビーに着くやいなやコンソールを弄って自分のフォースネストへ飛ぶ、駆け足で格納庫に走れば、ソコでは今か今かとユウジンを待つリンが大声を上げて叫ぶ。

 

「センパーイ!やりましたね!すごいガンプラですよ、コレは!・・・あぁ、綺麗な白」

うひょー♪と叫ぶ彼女の横でユウジンもまた、完成した 「ユニコーンガンダム:エインヘリヤル」 の姿に興奮を隠し切れない。

 

「此処まで来た・・・遂に来た!俺達全員の為のガンプラ。ユグドラシルのガンプラだ!

色は、ユニコーンならやっぱコレだと思ってな。リン程の塗装技術は無いけど、一面丁寧に塗るくらいなら俺でも一人前さ」

 実際、美術部員で賞も取ったことが有る夏凜の塗装技術は芸術品に近い。どんな柄でも再現してくれる

 

「いえいえ、この子はコレが最高ですよ!私のは、すぐ難しいやり方ばっかりで複雑過ぎますから。

さあ!センパイ、いつものクエストは受けておきました!いつでも行けます!」

 

 俺達が試験運転に使ういつものクエスト。簡単なのに陸上、宇宙、水上全てのステージを回れるだけじゃなく、なんとこのクエストは外から人が見ることが出来ない場所に在るクエストなのだ。

敵情視察されるような実力じゃないと分かってはいるが、少しでも漏洩は避けたい、そんな俺達の都合を全部叶えてくれるクエストを、後輩はキチンと準備しておいてくれた

 

「ありがとうな、リン。早速行ってくる、ガイドとデータ収集よろしくな!」

はい!と元気な返答を聞き、乗り込む。この瞬間だけはいつもワクワクだ、なんせお決まりのアレだからな!

カタパルトへ機体が移動し、バシュー!と足が固定されて排気を行う。発進可能を表す表示が目の前に出され、後輩が気分を上げるために一声かけてくれる

 

「センパイ!発進準備完了です、いつでもどうぞ!」

 まったく、最高の後輩だ。後で褒めてやろう

 

「あぁ!ユウジン!ユニコーンガンダム:エインヘリヤル!出るぞ!!」赤いシグナルが青く点灯し、ものすごい速度で機体が加速して外へと射出される!

 体に感じる衝撃に心地よさを感じながらスロットルを開け、バーニアを吹かす。

ステイメンのときとは違う感覚・・・一瞬の操作で今まで以上の力が一気に溢れる!思わずびっくりしてスロットルを閉めようとして止めた。これからコレに慣れ無くてはならないのだ、なら思い切りやろう!

 

「行こうぜ!エインヘリヤル!」ゲートを超えてクエストが待つエリアへと!彼は飛び込んだ・・・・

 

                           

「今頃かな・・・雄二」

 

 一方、ビルドゾーンでクリアパーツの板を切り出していた沙耶は、ふと頑張っている彼のことを考えていた。彼が言っていた秘策、おそらくはインテンションオートマチックシステムのことだろう。

上手く使いこなせれば、操縦技術の低い彼でも戦える・・・それもあの機体の性能なら五角以上の戦いが・・・でもソレでも届くだろうか?トップランカー達の・・・それこそあのチャンピオンフォース 「ソロモンの悪魔」 のエースであり、私達ユグドラシル最強のダイバー「S・A」に・・・

 とそこまで考えて頭をフルフルと振る、私は応援すると決めた。余計な心配は誰のためにもならないと、自分を律する。

一度仕切り直そうと、沙耶はビルドゾーンを出て自販機までジュースを買いに行くことにした。自販機はこの先の曲がり角、ちょうどダイバーがログインする筐体が置いてある部屋とを繋ぐ場所にある。小銭を先に出して歩み寄ったとき、曲がり角で人とぶつかってしまい、小銭を落とす。

 

「あ・・・!すいません!」反射的に誤り、小銭を拾う沙耶。その小銭が転がった先でそれを拾い上げて渡してくる彼女に、沙耶と彼女は驚きに声を上げる

 

「・・・!由紀ちゃん!?」と最初に声を上げた沙耶、彼女は智の妹であり、今は智と一緒にソロモンの悪魔のサブビルダーを努めている。

GBN内でのアバターネーム 「スノウドロップ」 こと

 「新谷 由紀」(あらや ゆき)その人であった

 

「・・・!沙耶ねぇ・・!」と言いかけて何かを払拭するように首を振って言い直す

「お久しぶりです・・・塚本先輩」

 

昔はもっと活発で明るく、どちらかといえばヤンチャな子だったと思ったが・・・沙耶は昔の呼ばれ方「沙耶姉」と呼ばれなかった為か、少し戸惑っていた

 

「・・・・?」小銭を差し出しているのに受け取らない沙耶を見て、由紀はどうしました?といった顔で沙耶を見る。沙耶もソレに気づいてお礼を言いながら受け取る

 

「ありがとう・・・でも由紀ちゃん、此処からインしてたんだね・・・昔みたく」その事がすこし嬉しくてつい顔が緩んでしまったが、沙耶の予想に反して由紀が返した返答はひどく冷たいモノだった

 

「家から近いのが・・・此処だっただけです。私は兄と違って、ハードを持ってませんから・・・持ってれば、私も家からインしてます」

 

「そ、そう・・・」しょんぼりしてしまう沙耶

 

 智は中学の頃、町内会で開かれたガンプラバトルの大会で優勝し、景品であるGBNへのログイン可能な家庭用ハードを所持していた。それでも昔は家からインなどせず、皆で此処からインしていたのだが・・・

 

「では塚本先輩、失礼します・・・先輩もあまり遅くならないように」ペコリと頭を下げてそうそうに立ち去ろうとする由紀を、沙耶は思わず呼び止めた

 

「ま、まって・・・!由紀ちゃん。その・・・」でも何を話せば良いのか分からない、智のことを聞く?でも智の何を?・・・じゃあ由紀ちゃんのこと?それってつまりはGBNの事をだ・・・ソレを知って、私に何がどうなるというのか。あの世界から逃げた私が・・・

 

「なにか?・・・」一向に話しを続けない沙耶にしびれを切らして聞き返す由紀

 

「最近・・・どう?」

 考えがまとまらず、一番曖昧で中身のない質問をしてしまう沙耶。沙耶は話すとき、先にいろいろ考えてから話すタイプだ。こういう時の沙耶はあまりアドリブが効かないのだ。由紀も当然ソレは知っている、だから

 

「・・・最近?中学校では普通です。橘先輩が居た美術部に居ます、あの人の作品がまだ廊下に飾ってありますよ・・・GBNでの事なら、塚本先輩にはあまり関係が無い話だと思います」と先回りするように色々な事を喋ってくれる

 

「うん・・・そうなんだね。ありがとう・・・さっき雄二の店に智が来てたよ。由紀ちゃんのお使いがどうって道着のまま走ってきてた・・・」ソレを聞いて由紀は頭を抱える

 

「兄さん・・・急いでとは言ったけどソコまで急いでないのに。道着のままって・・・」とそこまで言ってから由紀も気づいたことが在るようだ

「塚本先輩・・・ガンプラ、また作ってるんですか?青城先輩の所で」

 由紀の目つきが少し鋭くなったのを感じる。由紀は昔からお兄ちゃん子で、私にはあまり懐いてくれてなかった気がする・・・智と雄二が会って何もないとは、由紀も思ってないのだろう。たぶん、その辺を聞きたいんだと思うけど・・・

 

「おばさんがバーン!って来て届けてあげるって言って智は帰っていったよ」

嘘はついてない、ただあまりあの二人の衝突をこの子に言って聞かせてあげたくなかったのだ。由紀もおばさんと聞いて納得したらしく、そうですかと言って引き下がった

 

「由紀ちゃん、フォースでのビルダー活動・・・大変?楽しんでる?」 さっきの智の様子を見た後だ、由紀ちゃんにも聞いておきたかった。由紀は少し黙ってから答えてくれる

 

「はい・・・色々と勉強になります。【勝つため】に、何が必要なのか・・・兄も色々学んだようです・・・必要なのは最適な設計と戦略、そしてダイバー個々の才能に合わせた努力なのだと」 その目が楽しそうには・・・どうしても見えなかった。

 

一体何があったのか、私には分からない。だけども

「何かアレば、いつでも雄二達や私に言ってね。きっと力になれるから・・・」

 

その言葉に由紀は何も返さず、再びペコリと頭を下げてその場を去っていった。

 

「雄二・・・皆、誰も笑ってないよ・・・どうすればいいの?雄二なら・・・雄二達なら、何か分かるのかな・・・なにか出来るのかな?」

 小銭を握りしめ、沙耶はジュースも買わずにビルダーゾーンへと駆け足で戻る。何かしなければならないと思ったのだ・・・なにか、仲間のために自分にできる何かを

 

 

ユウジンは、クエストを終えて確かな感触を感じていた・・・最初は機体に振り回されたけども、とっさにやばいと思った時にはエインヘリヤルが自分の思考を体現するかのように動く・・・その感覚を何度も行うことで、感は掴んだ。装備から考えていた技も試したが、キチンと機能し技としてシステムに登録された。

 

 NT―D発動時に使えるシールドファンネル。このシールドが発生させるIフィールドとサイコフィールドを使い、ビーム射撃を高度に圧縮して貫通力と弾速を飛躍的に上げる技 「高度圧縮砲:レーヴァテイン」 この技があるだけで相手に防御する、受け止めるという選択を削る。この機体が持つ強みとなった、今回はビームマグナムブルパップでのみ行ったが、きっとミストルティンでも可能だろう・・・

 

 ミストルティンの最大出力射撃の反動も、この機体は完全に制御してみせた。全身サイコフレームの強靭性は凄まじいものだ。感応波に反応して強靭性を変化させるサイコフレームの力がアレば・・・コレはもっと大きな事ができるかも知れない。コレばかりはぶっつけ本番になるが、試してみよう。コレがマスカレード戦での、切り札になる。

 

そう決意し、明日の試合に備えた最後のブリーフィングで後輩に作戦の変更を伝える。

 

「・・・・・・・・・・と、以上が明日の作戦だ!リン、完璧に頭に入ったな!!」

 

その作戦を聞いて、ポカーンと口を開けるリン

「え?・・・センパイ、いくらなんでもソレは無理なんじゃないです・・・だってソレって今まで色んなダイバーが試しにやってみた奴ですよね!?」

 途中までの作戦はわかったけど、最後のソレはどう考えても実行するだけ無駄に思えた・・・でもセンパイは何か確信してるっぽい

 

「大丈夫だ!ミストルティンとエインヘリヤルならやれる!根拠はないけど感じるんだよ、絶対できるって」

 

 あぁ・・・本当にこの二人は・・・

ずっと見てきたんだから、いまさらかな・・・。自慢げに語る先輩が遠くに見える。それでも側にいるのは、私がそうしようと決めたからだ・・・だから

「・・・オッケーです!私も全力でサポートしますよぉ!出来たらGBN史上初の快挙です!私達一躍時の人になっちゃいましょう♪オー!!」

 

「オォォ!」ユウジンは拳を天高く突き上げる。此処から始めるんだ・・・もう一度、あの場所まで!

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