ガンダムビルドダイバーズ Re:スタート   作:aki@ガンプラ

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第一章 「可能性の証明」 4話目

そして遂に、試合当日。誰もがそれぞれに決意を決めて此処、火星にあるスペースコロニーに設けられたFAW特設ロビーへとやって来た。

 

新たな力と共に試合に望む彼とその相棒

 

その二人と対峙する仮面の集団

 

仮面の集団を敵情視察しに、フォースのメンバーと一緒に来たかつての仲間とその妹

 

この戦いの行く末を見守らんと1年の歳月を超え、再びログインした少女

 

それぞれの思いが今、このバトルに集った。泣いても笑っても本戦前の最後の試合だ・・・コレに勝利したものが先へ進み、負けたものが地に墜ちる

 

試合開始までの時間、我らがフォースネストではちょっとしたお祭り騒ぎだ。サーニャが今、此処に居る。あまりの嬉しさにリンが泣いて喚いて抱きついて・・・サーニャもつい泣きそうになってて、なんか・・・良かった。まだ、これからなのになんか救われた気になっちまった・・・いけないいけないと自分を律する

 

「ごめんね・・・二人共。まだ、私・・・此処以外には出たくなくて。本当は、観戦席で応援したいけど・・・此処から中継を見ながら、応援してる」

 

後輩と声を合わせて「「構わない、ありがとう」」と返答して笑顔を返す。ぎこちなく笑顔を返してくれたサーニャに俺達の力を見せてやろうと、心からそう思った。

 

「よし・・・時間だ。行くぞ!リン!」

「あいあいさー!センパイ!じゃあ、行ってきます、サーニャ先輩!」

 

会場へと向かい、コンソールを弄る・・・飛ばされたのは攻勢側の移動用補充ベース、今回のデザインはSEEDの旗艦、アークエンジェルだ。ただし、このアークエンジェルは攻撃もしなければ操作すらできないハリボテみたいなものだが・・・

 

対して向こうの防衛側ベース、今回のデザインはジェネシスか・・・撃てる仕様だったら即試合終了だな。

 こういったデザインの変更と、出撃時のBGMなんかを設定できるのもこの大会の特徴だ。これもマナーの一環で、チャレンジャー側が自由に指定していいという暗黙の了解がある。

今回はラウさんが設定したんだろうな、とよく分かる。そうしていると、その件のリーダーから通信が入る

 

「やあ、ユウジン。遂にこの日が来たね・・・最後の扉の鍵は、今日開くのだ。お互いに悔いのない戦いをしよう」

 思わず笑ってしまう・・・この人はこの状況でもRPガチ勢だ

 

「もちろん、手ぬいてくれても構いませんよ?こっち一人ですし」

ニヤっと笑う。当然あいてもニヤっと返してくれる。さあ!俺達の、俺達だけの戦争を始めよう!!

 

試合開始まで残り15分、ついに始まる!

 お互いの陣営に10機分のリソースポイントが配られる。リンと手はず通りに分配を開始する・・・

 この15分は時間との勝負だ、思った以上に15分は短い。

試合前に入念にブリーフィングを行い、各自が分担してリソースを変換する。初心者は此処でよく躓くが、この試合以降の本戦でそんなヘマを見ることは無いだろう

 

「センパイ、こっち変換終わりました!積み込みも再確認も全部終了です!」

「おう!俺もだ、機体が少ないってのはこういう時は楽でいいな!」

当然強がりだ。楽なのは確かだが、相手のミスなど祈るだけ馬鹿らしい

 

 そうして、両陣営が準備を進める一方で、観戦席ではトップランカー達が詰め寄っていた。相手は28位とはいえ、本戦に上がってくる相手なのだから敵情視察は当たり前だ。此処に居るどのランカーも、ユグドラシルの勝利など想像すらしていない。

 そんな中、一際威厳在る集団のリーダー格であろう人物が、一人の男に意外な質問をする。このトップランカー達の中でそんな質問を・・・この男

「ソロモンの悪魔」 のフォースリーダー 「カイエン」 がするなど、誰が予想できただろうか?

 

「S・A、この試合・・・どっちが勝つと思う?」

その言葉にフォース内の空気が凍る・・・勝つかどうか?だって・・・?118位と28位の試合だぞ? 智はフォースのエース、S・Aとして答える

 

「・・・おそらく、マスカレードでしょうね。ユウジンのガンプラとマスカレードのガンプラ・・・性能差はユウジンが圧倒的ですが、ソレだけでは勝てないのがガンプラバトル。むしろ、人数というどうにもならない差があるのですから、マスカレードが負けることはないでしょう・・・苦戦をする可能性はありますが」

 

その言葉に耳を貸していたカイエンは、頬杖をついて考える

「だが、仮にだ・・・その差。埋めちまったらどうなる?俺が聞いてるのは賭けの予想じゃねー・・・未来のバトルの話だ。ユグドラシル・・・テメーの古巣だがよ、データ取っておく必要はあるのか?って事を聞いてんだ」

 

その言葉に、周囲のメンバーも気づいたようだ。

データを取るのは人力だ、ボタン一個で調べられるならこんな偵察は必要ない・・・試合内容の録画はシステムによって固くセキュリティがかかっている徹底っぷりなのだ

 

そして、偵察するには人手がいる。彼がこのタイミングで聞いているのは、その人手を割いて分担させるには今しかチャンスが無いからなのだと・・・S・Aは考える、今後の為を思うなら偵察するべきだ、だけどもソレは更に数ヶ月先の戦いの為。と言うことになる・・・

 マスカレードに力を割くべきか?念には念を入れるか?・・・と其処で声を上げたのは彼ではなく、後ろに居た女性陣だった。

 

「あんのー・・・・申し訳ねぇんだけんども団長さん、ユグドラシルのぉデータも取ってもらえんかね?」

「ちょ・・・ちょっと!主任!」

 

主任と呼ばれる女性、そしてソレを止めようとするのは由紀のアバターであるスノウドロップだ。蒼と白のグラデーションがかかったショートヘアに、雪のような真っ白な和服を着込んだアバター、そのスノウドロップが止めに入る主任と呼ばれる彼女は、田舎モノっぽい口調で団長と呼んだカイエンに進言する

 

「なんでだ?ミサキ・・・理由も言え。アホ」

団長になんて口の聞き方だ・・・!と騒ぎ始めるメンバーを手で黙らせながら聞く

 そんな団長の凄みすら暖簾に腕押しなミサキと呼ばれた彼女、このソロモンの悪魔のメインビルダーを務める彼女はヘラヘラと笑いながら答える

 

「そらぁ~、皆のガンプラさ、つっよくしてやる為だってぇ♪ビルダーだって色んな人の作品さ見て経験値ってもん手に入れるもんなんさぁ~」

 いつもニコニコしている田舎のお姉さんといった雰囲気のこの人、いつもエンジニアが付けるような大きなゴーグルをしているから目元は分からないけど、いつもニコニコしてるのだけは分かる。

 不思議な人だ・・・S・AのGフレームの改良も、彼女が施した。GBN上なので、武装の追加くらいしか出来なかったが、それでも彼女の腕も高い・・・なにせ、雄二や沙耶の改造に一切支障を出さずにGフレームの強化を成し遂げたのだから・・・

S・Aはその進言を受けて自分の考えを固めた

 

「団長、僕も主任に賛成します。ユウジンのガンプラの性能の高さ・・・Gフレームが証明出来ていると思ってます。主任がユウジンのガンプラから何かアイディアが湧いたなら、きっとフォースの為になるかと・・・」真っ直ぐにカイエンを見つめる

 

「・・・・分かった!おい、お前はユグドラシル担当だ、計器はコイツのを共有して使え、おい!そっちで話してるお前!前見ろ!試合まであと2分ねーぞ!?」

テキパキと指示を飛ばす団長。彼の最も強いのはこの指揮能力にある、フォース1強いS・Aでもこの作戦と指揮がなければ勝てなかった試合は多いのだ。

 

「・・・ユウジン、お前は何をやってるんだ?お前が、たった一人じゃなければきっと・・・」誰もが、お前を認めてくれただろうに・・・

 彼の表情には悔しさが滲んでいた、自分の親友は主任だって認めてくれる才能を持っている・・・なのにソレをキチンとしたステージで使わない。なんでなんだ?雄二・・・

 

「・・・・兄さん」そんな後ろ姿を、由紀は主任の横で静かに見守っていた

 

 

『試合開始10秒前・・・9・・・8』ついに試合開始の合図だ。艦艇に接続されたオーキスカスタムとドッキングしたエインヘリヤルの中でその瞬間を待つ

 

『3・・・2・・・1・・・バトルスタート』 ついにバトル開始だ!出撃となり、ラウさんが設定したBGMが流れ出す

 

 たどり着く~♪ 場所さえも分から~ない♪ 届くと信じて~♪ 今~♪ 思いを疾走らせるよ~♪ ~♪♪

 

「アハハ♪徹底して、SEED系だな!ラウさん。でも良いフレーズだ!俺も信じるぜ、何処かはわかんね―けど、行きたい場所まで行けるってなぁ!」スロットルを全開に開ける

 

「リン!エインヘリヤル!勝つぞ、俺達!」

「はい!センパイ!」

気合いを入れて、二人はたった一機で戦場へと飛び出していく

 

 

・・・しかし、勢いよく飛び出そうとも、FAWの試合の立ち上がりは静かなものだ、まず最初に両陣営が行うのは「索敵」である。

 このFAWでは、システム的にマップの機能というものが制限されている。自機のマップに映るのは、自分のガンプラの索敵能力によって得られた情報のみであり、その情報は仲間と共有しなければ戦いには勝てない。

 だが、得られた情報を定期的に味方全員に送信するために手作業をしていては、戦いの妨げになってしまう。

 そこで活躍するのが 「オペレーター」 達である

この、オペレーターの仕事は大きく分けて3つある。

1つは情報の統合と索敵包囲網の構築である。

全ての味方機の得た情報をオペレータ―側からの操作で読み込み、全ての機体の情報を統合して全ての味方機に送信する。

 情報には、索敵能力の違いのせいで、別のオブジェクトに見えても実は同じものを指している場合もあり、そういう情報の食い違いは人の目で確認するのが一番早いのだ。

 

2つはリソースの管理である。

戦いに集中している味方はいつの間にかリソースを使い込んでしまっている場合が多い、そういうパイロットに現状を伝え指揮を取るリーダーと共有することで、補充に戻る指示を出したり、補給する内容を最適化することで無駄を無くすのだ。

 

そして、3つ目は・・・

 

「センパイ!敵機補足しました。数は・・・8?2機見当たりません!」

ユウジンのガンプラの索敵範囲に見えた敵を、リンが正確に伝える

 

「元々こっちの索敵範囲一機分で狭いんだ、気にするな!見えたらすぐに言ってくれ!」

 

了解!という後輩の返事を聞くこと無く敵陣営に舵を切る。最初が肝心、俺達の戦法は時間を掛けるほど不利になるからだ

 

敵機8体に多重ロックをかける。

誘導弾による兵器を利用するにはロックオンする時間が必要なのだが、ユウジンの機体性能ではその時間はほぼ一瞬だ。

 

「何機かは落ちてくれよぉ!一斉発射!」

オーキスのコンテナが全て開き、一斉にミサイルを発射する。撃つのはマイクロミサイルコンテナと大型収束ミサイルを2発づつ、更に発射と同時に敵陣営を大きく旋回、爆導索を広げながら減速する。

 

相手もロックオンされ回避行動に移る。ラウは、前線でSEED系列のモビルスーツ 「プロヴィデンス」 を駆り指揮を執る

 

「各機!回避行動を優先しろ!良いか?いつもの倍早くて、倍誘導性がある、倍の火力があるミサイルだと思って躱せ!油断した者は即座に撃墜されるぞ!」

 

集団に到達したコンテナから発射される108発の誘導ミサイル。ソレが2つ、216発のミサイルと3つに分離した大型ミサイル6発を死ぬ気で躱すことになるマスカレード達

 

「な!なんて数だ!レーダーが真っ赤で何も見えねー!」

「躱せ躱せ!一発でも当たったら、そのせいで大破するまでもらい続けるぞ!」

「は、早い・・・・!ただのミサイルの性能じゃない!!グワー!!」

「まってろ!今助けに・・・クソ!もうダメだ!諦めるしか無い!」

 

それぞれが叫びながら初手の猛攻を凌ぐ、この攻撃だけで8機のうち2機が大破、4機が小破して推力を低下させる。

それを完全にしのいだラウがオペレーターに繋ぐ

 

「被害状況は?」

[ネオ機 ゼハート機 大破!他4機が小破して推力が75%まで低下、次の攻撃を回避できません]

 

と通信している間に、大型収束ミサイルに追われている小破した機体が、回避を諦めて、ビームサーベルをフレア代わりにしようと投擲するが、ラウがソレを静止する

「まて!回避しろ!それは誘導弾じゃない!」

 

ニヤリと笑うユウジン、気づいてももう遅い!!

「ファンネル・ミサイルは流石にとっさに読めないよな!」

 

ビームサーベルを無視して迫る大型ミサイル!気づいた仲間が助けるために割って入るが火力が凄まじく、まとめて2機が大破する!

 

「「うわぁぁああ!」」

 

爆散する味方を見て、何ということだ・・・と驚きを隠せないラウ

[いまので、マスク機 ウルベ機 大破! 残存戦力残り、7機です!]

 

一撃で敵集団の半数を仕留めた!行けるぞ!そう思って爆導索の準備に取り掛かっていたユウジンが大きな隕石を横切ろうとしたときだ!コクピットにアラートが鳴る

 

「センパイ!敵機反応です!数は2! どうして突然・・・?」

隕石の影から出てくる、「シャア専用ゲルググ」 と 「シナンジュ」 という赤い彗星コンビがビームライフルを撃ちながら向かってくる

 

「くそ!この場所でエンジン切って待ち構えたたのか!?流石トップランカー、こっちの手は研究済みかよ!」

90位も差がある相手の戦型も分析済みとか・・・ほんとに止めていただきたい!

 

「悪く思うないでくれたまえ、少年・・・ユニコーンガンダム。やはり、私の前に立ちはだかるか!ガンダム!!」

シナンジュに乗る副隊長の「†フル・フロンタル†」がシャアと一緒に迫る!

 

「くそ!爆導索は捨てる! リン!起爆を目くらましに使うぞ、リンの索敵が頼りだ!」 了解!の言葉も聞かずに行動に移す。相手はマスカレードのエースとその相棒、慎重すぎて困ることは一つもない!

 

爆導索が爆発し、近くに居た全モビルスーツが閃光と爆音で敵を見失う。情報を統括している向こうのオペレーターも、一瞬ぽっかり穴が空いた索敵包囲網の再構築に時間が掛かるようだが・・・

 

「センパイ!オッケーです!周囲の状況をレーダーで写します!」

 

こちらはオペレーターをオーキスカスタムに乗せてるから、情報獲得に生じるラグはほぼ0だ!この差が、九死に一生を得る!

 

「ナイスだ、リン!」

舵を敵集団に切る。立て直しをしてる今こそ強襲するチャンス!

 

 

「なに?フロンタルがしくじった?」オペレーターから情報を聞き作戦を立て直すラウ

 

[敵機はそちらに向かって移動してます]

 

「うむ・・・小破した2機は補給にもどれ、オペレーター・・・最悪足回りだけの修繕でいい、すぐに出てもらわねばならないかも知れない・・・フロンタルに伝えろ!【アレを取りに戻れ】とな」

了解! とうなずくパイロットとオペレーター、現場に残るは自分とブシドーのみ

 

「ブシドー、我々でアレを食い止める!彗星コンビ到着まで持ちこたえろよ?」

 

「無論だとも!刀折れ矢尽きはてようとも!私の愛はとめられはしない!トランザム!」

 

フォースの窮地に悪態一つ付かず、ブシドーはトランザム化したスサノオを駆り突撃する。それと同時に、ドラグーンを射出するプロヴィデンス

 

「くそ!遠近役割しっかりしてやがるなぁ、ホント!」ドラグーンの攻撃はIフィールドでどうにかする。当然スサノオの狙いもコレに違いない、なんとしても死守だ!

 

一気に間合いを詰めるスサノオ、その進行上には大破した敵機の武器が散乱する。

あれだ!とユウジンはスラスターを吹かして前へ進む

 

ビームトンファーとフォールディングアームの融合によって生まれたサブアーム「フォールディングトンファー」と自身の腕、それぞれに敵機が落としたバズーカとビームマシンガンにライフル。自前のビームマグナムブルパップとを持ち、4つの武器をまとめて進行上にバラけるように向ける

 

「リン!」

 

「はいはい!ライブラリ照合、敵装備のFCSとのリンク成功!使えます、センパイ!」

 

「よっしゃ!いっけー!」

デタラメに拾った武器を乱射しながら、ビームマグナムブルパップでのみ的確にスサノオを狙う。

 

「なんだと・・・!?こんな一瞬で我らの武器を・・・!」おどろくブシドー

 

これが、オペレーターの大きな仕事の一つ、ハッキングだ。このFAWでは、防衛拠点の巨大隔壁や敵の武装なんかを使用するためには手作業でハッキングというツールを使う動作が必要である。

 

 この作業はモビルスーツを介してオペレーターにもやってもらうことが出来るのだがオペレーターから離れていると情報が届くラグの分遅れてしまう。だが、オペレーター自身を機体に搭乗させている我らがユグドラシルは、その作業のラグがない。

 一人で複数のパイロットの面倒を見ないとならない通常のフォースと違い、リンは俺専属だ、だからこそできる戦い方なのだ!

 

「敵の武装の弾やエネルギーはいくら使っても損しないしな!オラオラオラ!」

隙間のない弾幕、その弾幕に隠れてビームマグナムが的確に飛んでくるのだ・・・トランザムしていてもコレはなかなか近づけない・・・それだけでなく

 

[ブシドーさん エネルギーが3割を切っています、トランザムしたまま激しく動き過ぎです!]

 

とオペレーターから注意が飛ぶ。そう、彼らのガンプラの出来は決して高くない・・・トランザムを使える水準でも、このFAWではガンプラの出来でトランザムのようなシステムを使う上でのエネルギー燃費も変わる!

 

「むしろ、誘われたということか・・・!見事だガンダム!!」

トランザムを解かざる得ない状況に仕方なくトランザムを解く。しかし、そうすれば的になるのは明らかだ

 隙きを逃さずオーキスのメガ・ビーム砲を叩き込む!

回避されたが、スサノオの下半身を綺麗に吹き飛ばす。アレでは近接戦はもう行えない

 

「だが!私の存在を無視しすぎたな!ユウジン!!」

仲間の献身を無駄にはしないとばかりに、大型ビームサーベルを展開して真下からオーキスのIフィールドジェネレータを切り裂くラウ、気づいたときにはもう遅いとジェネレーターをパージして距離を取る・・・・だが、ソレは失敗だった!

 

「しまった!・・ドラグーン!ぐおぉお!」

ドラグーンによるオールレンジ攻撃、ユニコーンの盾のIフィールドではエインヘリヤルへの被弾は抑えれてもオーキスへの被弾は止められない

 

「センパイ!オーキスの左メインブースターが大破しました!もう、足が・・・」

俺達にとって、戦場をかき回すための足は必須だ・・・・!たった今その足を奪われた!

 

「流石ラウさんですね!あの弾幕をぬけてくるなんて」

奪ったバズーカとライフルを捨てる。サブアームを使ってマグナムをリロードする。この使い方は改造してから気づいた。ビームマグナムブルパップの弾倉の位置ならば、片手でもリロードが出来るのだ

 

一度ドラグーンを戻してリチャージするプロヴィデンス

「当然だ・・・我々は君のガンプラを見たよ。このGBNではない、リアルで君のガンプラを見た・・・我々は甘かった。どんなガンプラだろうと我々は負けないと、思い上がっていたのだと思い知らされた!だからこそ、私達は勝つために意地を捨てる決意をしたのだ」

 

???どういうことだ?一体ラウさんはどんな隠し玉を用意してる?

 

「センパイ!さっきのシャアゲルググが来ました!囲まれます、早く!!」

 考えるのは後だ動け俺!頭や心まで動かなくなったらエインヘリヤルは戦えないんだ。

フォールディング・バズーカとビームライフルをコンテナから引き出し装備する。後方邀撃ミサイルをシャアゲルググに二発打ち込み、最後の大型収束ミサイルとミサイルコンテナも発射、スサノオを確実に落としながら2機と相対する。

 

「此処が正念場だ!行くぞエインヘリヤル!」

残ったブースターに火を入れ宇宙を翔ける!

再び飛んでくるドラグーンをすこしでも落とそうと、ずば抜けた動体視力がドラグーンに追従し、その意思を受けたエインヘリヤルが確実に一機ずつドラグーンを落とす。こちらの被弾も甚大なレベルに達してきたが、まずはドラグーンだ

 

そんな、ドラグーンに気を取られているユウジンを、ラウは放置しない。ビームサーベルを展開して迫る!

 

「あのガンプラを知れば、誰もが望むだろう!!」フォールディングシールドをとっさにコンテナから引き抜き、身代わりになってもらってサーベルを受け流す!

 

「君のようでありたいと!・・・君のようになりたいと!」すごい気迫だ!RPを通して、ラウさんは俺に何かを伝えようとしている!

 

「俺だって!皆と戦えるダイバーになりたかったさ!誰だって、自分の持ってないモンに憧れるものでしょう!?」

負けじとハイパーバズーカを撃つ。狙いはラウさんじゃない!ミサイルの回避に力を割いてるゲルググの進行上!

 

回避先に置きバズーカをされたゲルググが大破する。その光景をみながらラウは

 

「インテンションオートマチックシステムだけでは説明が付かん・・・!一体。一体君には何が【見えている】と言うんだ!?ユウジン!!」残ったドラグーンとともに接敵するプロヴィデンス。

 

「クッ・・!」 これ以上オーキスを攻撃されるのはまずい!オペレーターとオペレーターが操作するオペレーターブロックと呼ばれるコクピット大のマシンは、大会のバトル中は非破壊オブジェクトであるため、リンに被害が出ることはない。

 だが、リンだって攻撃が飛んでくれば怖い、それが間近にせまるのだから当然だ。だからこれ以上はやらせない!

 

「リン!一度ドッキングを解く!サポートよろしく!」

「え?センパイ!」

 後輩の静止も聞かずにドッキングを解いて前へ出る!牽制に撃たれるビームを盾のIフィールドで捻じ曲げ近接戦に持ち込む!つばぜり合いになるビームサーベルがバチバチと火花を上げながらラウは叫ぶ

 

「戦えなかった君だからこそ、知るべきだ!作れない者の闇を!作れない者の葛藤を!君は今、【戦えない者】では無くなったのだから!」

 今・・・なんと言った?俺が、戦えている?

今一度、周囲に気を張る・・・十名の対戦相手、撃墜した6機のモビルスーツ・・・今までだって、こういう戦績はあった。でも、今自分達のリソースには余裕がある・・・今までにない程上手く行っている・・・そうか、俺達。上手くやれてるんだ・・・強く、なったから!

 

「そうか!俺、戦えてるんだ!!戦えてるんだろう!ラウさん!!」

今まで気負っていた余裕のなかった自分が嘘のように、全身から無駄な力が抜けていく・・・そうか、コレが

 

「戦える皆が見てきた世界・・・!こんなに、こんなに凄かったんだ!スゲー・・・スゲーよ!俺、戦えてるんだ!!」その通信にラウは思わず微笑んでしまう

 

「そうだ・・・ユウジン。君は今、まごうことなきファイターだ!我らと同じく、バトルで白黒ツケたくてしょうがない馬鹿の仲間入り。おめでとう!」サーベルを引いて、誘い込み斬りかかる。

 

 バランスを崩したが、ユウジンには見える・・・時間が引き伸ばされたあの感覚、以前ならば身体はこれっぽっちも動かなかっただろう・・・実際今もちっとも動かない。

 でも、今は違う!俺が動けなくても!ガンプラが、エインヘリヤルが俺の代わりに動いてくれる

 

「まだだぁ!!」

 

崩した体制のまま身体をスラスターで無理やりひねりビームサーベルで受け止め自ら弾かれるように飛ぶ。ラウだけではなく、観客達もコレには驚かされた。コレほどの動きは機体性能が高いからというだけでは説明がつかないからだ、ユウジンというダイバーの操縦技術はとても低い・・・そう、低いから負け続けてきたのだ。

 ならば、今の状況はどうやって実現している・・・?観客席に居たソロモンの悪魔のリーダー、カイエンも同じく感じたのかS・Aに問う

 

「おい、S・A・・・ありゃどういう事だ?どう機体性能を弄ったらあんな反応を返せる?チートツールなんていう言い訳は聞かねーぞ?アレはそういう動きじゃない・・・!」

 

「わかりません・・・!アイツの反射神経じゃ、今のだって動けすらしてない筈なんです!ずっと一緒にやってきましたから、間違いありません・・・」

 

ソレを後ろで聞いてた主任がほげーっと声を出す

「そったら~・・・あとはもう、あのユウジンって子。見えてるのかも知れませんねぇ・・・あの刹那の攻防すら、私達の何倍もの動体視力でぇ・・・そんならインテンションオートマチックシステムと連動したらあぁなるかもなぁ~」

 

その言葉に、トップランカー達全員が固まった・・・皆心の何処かで思っていたのだ。ユウジンはガンプラ作りしか能がない。驚異にはなりえない。

 バトルというステージの上では自分たちが遥か上位の存在だと・・・一人が慌てて声を上げたらその後は大混乱だ。

なにせ、最初からデータを取っていたのはソロモンの悪魔だけなのだ・・・今からでも遅くないと、全てのフォースが慌てて駆け出す。 まさに盤上が今、ひっくり返った瞬間だった

 

ラウとの攻防を続け、ドラグーンも全て落とした頃。エインヘリヤルの状態を見てみれば未だエネルギーも残弾も5割弱、しかもどちらもオーキスとドッキングすれば補充できる。ユウジンは、勝利の可能性をコレまで以上に感じていた

 

「流石だ・・・私が是が非でも陣営に加えたかったビルダー、いや今はダイバーと呼ぼう、ユウジン!だが、まだ負けてはいない・・・此処からが本番だ!」

 

と意気込むラウを静止する通信が入る。その相手はあのフロンタルだった

 

「ラウよ!引け!・・・もう今のプロヴィデンスにそのユニコーン・・・いや、エインヘリヤルと戦う力は残っていまい!」 だが!と食い下がるラウにフロンタルは続けた

「今、優先すべきはフォースの勝利だろう?私が殿を務める!ラウは下がって防衛拠点を守ってくれ!もう30分たった・・・撃墜による勝利はこの際副目的に変更しよう!」

 

その提案に、ラウは乗るしかなかった。実際プロヴィデンスはもうボロボロ、メイン武装であるドラグーンは一機も残っていないのだから・・・ソレに来てくれたのはフロンタルだ。我らがマスカレードのエース 「†フル・フロンタル†」 なのだ!

 

「分かった、任せたぞ・・・フロンタル」撤退していくラウ。

 行かせるわけにはいかないとビームマグナムで追撃を行う!紫電を疾走らせた一撃がプロヴィデンスを捉えるも、その間に割り込んできた機体にビームマグナムが弾かれて防がれる

 

「嘘だろ!?アイツの作ったビームマグナムを弾く性能だと!?そんなバカな・・・!」

ユウジンは追撃せず一度距離をとった。沙耶の作ったビームマグナムを弾くだなんてIフィールドのようなバリア系、それもものすごく出来の良い装備を持っている。そう判断したからだ

そして、実際に防がれた。ビームの残光が消え、相手の機体が顕になる・・・

 

「そん・・・な。まさか、そう来るか・・・マスカレード!」

 ユウジンは今になって、一つだけ失念していたことに気づいた・・・そう、マスカレードの皆は見たのだ。彼のガンプラ、ステイメン:シグルドを・・・そして歓喜に震えると同時に恐怖したのだ、これから戦うガンプラはコレを超えるために作られたガンプラだという事実に・・・だから彼らは意地を捨てた。勝利するために、あらゆる手段を使うことにしたのだ・・・それが

 

【相手の作ったガンプラで戦うこと】

 

だったとしてもだ!

 

 肩に装備された、オーキスとお揃いの小型のIフィールドジェネレーター・・・合計4本のサブアームに可変する機構が付いたテールスタビライザー・・・まさに、俺が俺のために作った最高のガンプラが・・・俺の前に立ちはだかったのだ!

 おもわずリンが叫ぶ

 

「そんな!さっきは間違いなくシナンジュだったのに!?」 その問への答えは簡単だ

 

「機体だけを1体多く登録しておいたんだ!撃墜されなければパイロットだけを乗り換えるだけで戦線に復帰できる!トップランカーのいくつかは使ってる機体交換って手だ、帰還出来なきゃリソースを丸々1機分溝に捨てる事になるが、はまった時はめちゃくちゃ強い!」

 

どんなエースとて機体の損耗を0にしたまま戦い続けることは出来ない。

 補充を受ければ良いのだが、補充を受けている間にエースを持て余してしまう。

そういう考えの元、予備の機体をもう一体登録しておいて、その機体に乗り換える事でエースを常に戦場に投入する。

そういったテクニックを機体交換という・・・ただし撃墜されたパイロットがコレに搭乗することは出来ないため、エースが無事にベースに帰還することを前提としたテクニックであり、もし失敗すれば1機分のリソースを無駄にしてしまう・・・リスクも大きいテクニックだ。

 

「ラウは言っただろう?少年・・・意地を捨ててでも、私達は勝たなくてならない!君がそうであるように・・・我々にも背負っている物がある!ソレをも受けて進むならば、器となり。超えていってみせよ!ガンダムのパイロットよ!」

 

スロットルを全開にして突っ込んでくるステイメン!

 進路上に落ちている、味方の武器や盾を可変させたテールバインダーのサブアームで掴み、構え、そして撃つ!サブアームはこのステイメンの防御と攻撃、双方を同時に行える戦闘力の要だ!しかも相手はトップランカーの1エース・・・此処で引けば、補充を受けた味方と合流されてホントに勝ちの目はなくなる。そうユウジンは直感的に悟った

 

だから彼は引かない、エインヘリヤルはシグルドを超えるために作った機体。だから、此処で引いてしまったら、ユウジンはステイメンに一生顔向けできないのだ。

 

「エインヘリヤル!俺達が最初に超えなければならない相手が来たぞ!お前が俺の悲しみを分かってくれるなら、力を貸してくれ・・・ガンダム!!」

 ソレに応えるかのように、コクピットにあるコンソールは緑色の光を放ち、NT―Dの文字を浮かび上がらせる。

 【NT―D】 ユニコーンモードから、デストロイモードへと姿を変える。ユニコーンガンダムの最も特徴的なシステム。機体性能を大きく上昇させ、サイコジャックという遠隔操作兵器を支配する力を与えてくれる。

 緑の光を纏い・・・ガンダムの姿へと形を変えるエインヘリヤル、角の形状は元のユニコーンから可動が変わっており、全く違う印象の顔を見せた

 

「やはり・・・デストロイモードか。有るとは思っていたが、コレほどとは・・・」

フロンタルは素直にエインヘリヤルの出来を称賛する。ソレほとに美しい光だった・・・

 

変身が終わり、遂に2機の戦いが始まる!

 FAWでは、大破した機体は消滅せず残る。今、この戦闘領域には6機ものモビルスーツの残骸がデブリとなって宙を舞っている・・・その中には当然、彼らが使っていた武器が所狭しと散らばっており、ステイメン:シグルドにとっておあつらえ向きの戦場となっていた

 

「くそ!・・・サンダーボルトじゃあるまいし、あんなに厄介なのかよ。あのテールスタビライザー」

 悪態をつくも、ほとんど自画自賛になってしまっている状況だが、ユウジンはひどく焦っていた。戦場を飛び回り、手を変え品を替えてステイメンは攻撃をしてくる。バズーカだったかと思えばビームライフル、反撃に出れば盾に持ち替えていたりと・・・

 

「俺が・・・やりたかった戦型を、此処までやれるのか。エースってのは・・・!」

ステイメンを駆り、自分が目指したステイメンの在るべき姿に彼は、動揺を隠せない

 

「当然だ!私は皆の期待を背負っている・・・!最強を体現せんとする為、私は器とならねばならんのだ!たとえソレが・・・私の作ったガンプラで無かったとしても!」

仲間の武器を使うので、オペレーターにハッキング等をして貰う必要もないステイメンは武器にかかるリソースを気にせず戦える。

 なにせ、本来は大破した機体が抱えて退場してしまったリソースは、死にリソースになってしまっているのだ。リサイクルして使うダイバーは数居れど、此処まで使いこなすために最適化された機体はそうはない

 

エインヘリヤルも先程奪ったビームマシンガンで応戦するも、デブリに隠れたままアームを伸ばしてブライドファイヤでコレに応じるステイメン。

 

「センパイ!射撃戦はこっちが不利です!なんとか接近出来ませんか!?」

リンが外から見た私見を提案する。実は既に近接戦に持っていこうとしてはいる。最高速度も機動性もこっちが上だ、なのに捉えられない・・・!

 

「デブリを上手く使われて、接近できない!・・・そうだ、リン!近くにデカイデブリを探してくれ!そこまで誘い込む!」

 

なんでかなど、聞かずに即対応してくれるリン。まったく頼りになる後輩だ!

 

「何を狙っているかは知らないが、無駄だ!私の目的は初めから時間稼ぎなのだから・・・どうする?あと20分を切るぞ?」

 バズーカの連射でデブリを吹き飛ばされても同時のタイミングで飛び、被害を0にしたまま牽制射撃を交えて次のデブリに移動するフロンタル。

一際大きいデブリに身を隠しアーム左右に伸ばして、ビームライフルとギラ・ドーガの盾に備わっているシュツルム・ファウストを撃ってくる・・・

 

今だ!とユウジンは千載一遇のチャンスを掴むために行動する。エインヘリヤルの両腰と背中のミストルティンに装着されていたシールドファンネルを射出し、前方へと展開する。

アームド・アーマーDEの展開式スラスターが備わっているこのシールドファンネルは通常のシールドと違い、凄まじいスピードで前方へと移動してエインヘリヤルを攻撃から守る

 

シュツルム・ファウストが直撃して爆煙が視界を塞ぐ・・・コレで相手にも分からない!

 

「レーヴァテイン機動。Iフィールド、及びサイコフィールドの収束力場確認!」

両手でビームマグナムブルパップを構える!ホースから出る水が、先端を絞られて勢いを増すように・・・Iフィールドとサイコフィールドによって収束されたビームマグナムは、その貫通力と弾速を飛躍的に上昇させる!

 まだリンにしか見せていないこの機能・・・ただのビームマグナムなら躱せると思ってるフロンタルさんには悪いが!初見殺しは技術戦の華なんでね!

 

「いっけぇー!」

 

ズ ド ォ ォ オ  ン !

 

紫電を纏った光は、ビームマグナム本来の弾速を遥かに超え、閃光となって宙を切る!

 ステイメンが隠れているデブリをたやすく貫き、ステイメンの胴体ど真ん中を撃ち貫く!

 

バチバチ・・・と音をたてるステイメン、何が起こったのか?フロンタルはステイメンの頭を下げて腹部を見下ろす・・・

小さいがぽっかりと空いた穴、受けたであろう一撃がこの機体の動力炉を撃ち抜いている。ビーム照射の警告音と共に機体を回避させたはずだったのに・・・自分が動く前には既にビームは機体を貫いたのだ・・・目にも留まらぬなど安い・・・コレはまさに

 

「目にも映らぬ程とはな・・・完敗だ・・・だが、私達はまだ負けてはいないぞ・・・!【ユウジン君】!」

爆散して大破するステイメン:シグルド・・・

 

「ありがとう・・・フロンタルさん、ステイメン」 心の中で、愛機に敬礼をする。そしてその愛機を自分以上に使いこなし、戦場を翔けてくれた。俺に夢の一端を見せてくれたエースにも・・・

 

「センパイ!もう15分です、アークエンジェルが宇宙港に着いちゃいました!時間がありません!」

 

「あぁ!やっぱり作戦通りで良かった。この時間から籠城戦じゃ勝ち目は無かったからな」

オーキスカスタムへと戻る。あと少し移動すれば距離も十分・・・補充もオーキスから受けたから間に合う・・・

 

「この勝負、最後の頼みの綱は・・・コイツってわけだ!」

バックパックから伸びるアームに直接繋がっているミストルティンに手を当てる。必ず成功させてみせる・・・みてろよ沙耶!お前の最高傑作は、お前の想像すら超えてやる

 

「オーキスも限界です、センパイ。ミストルティンのEパックには余裕が在りますけど、実質チャンスは一回切りです!」

 

「分かってる、でも此処まで来たらなんかサクっと成功するって信じられるんだよ。あー、でもこうなるんならやっぱワルキューレは9枚運用できるようにしたほうが良いな・・・あとはー・・・」と色々改造案を思いつきウンウンうなり始めるユウジン

 

「あぁ!あぁ!センパイ、それはあとあと!終わった後にして下さーい!」

おっと!と気持ちを引き戻してオーキスを疾走らせる。オーキスもきっとコレが最後の仕事だ・・・今までありがとうな

 

一方その頃、防衛拠点ではラウの指示の下、籠城戦の為の準備が進められていた。フロンタルが敗北した・・・その事実がフォース全体の士気を下げ始めている

 

「ゼクス、モンターク・・・もはや我らしか残ってはいない。この籠城戦が最後の戦いだ、ユウジンのオーキスはこのジェネシス内部では機能しない。モビルスーツ単独で攻略するしか無いんだ、勝機はまだ我らに有る」

 

リーダーの言葉に黙ってうなずく二人、幸いフロンタルが稼いでくれた時間で機体の修復、装備の補充と増加が出来た。

 

「配置は此処と・・・此処と・・・」そう指示を出しているとオペレーターが緊急の知らせを送ってくる

 

[リーダー!敵機が止まりました!何かを準備している模様!]

 

「なんだと?外で一体何をするつもりだ?」

防衛拠点ベースは、通常のコロニーと比べて数倍頑丈に設定されている。でないとツインサテライトキャノンとか月光蝶とかで外側から簡単に攻略できてしまうからだ・・・

 

 それでも何度か外側から一点集中でのコア破壊を狙って日々切磋琢磨してるフォースは多い。彼らの大半も、出来ないだろうけど試したい。という好奇心を満たすことが目的であり、ほんとに出来ると思っている者は少ない・・・だが、我らが対戦相手は有ろう事か、まだそこそこの距離がある場所から 【ミストルティン】 を構えたではないか!

 

「正気か?ユウジン・・・!そんな事で最後の扉が開くとでも・・・ホントに思っているのか!?」

ありえない、そう思う反面【もしかしたら・・・】と思ってしまう自分が居る・・・!

 

ユグドラシルのフォースネストで観戦していたサーニャもコレには流石に驚き・・・恐怖に身が凍る・・・

 

「駄目・・・駄目だよユウジン!出来っこないよ・・・・ッ!」思わず駆け出した。なりふりかまっていられない、どうしたら良いのかも分からないまま、サーニャは観戦席のあるエリアへと走った

 

「やるぞ、リン! キチンとデータ取っておいてくれよ。後々改良に役立つかも知れないんだからな・・・レーヴァテイン、機動!」再び盾を3枚、前方に展開する。

 

「分かってますよ、センパイ!。Iフィールド、サイコフィールド、共に収束力場の生成を確認しました!」

 

ガシャン!と腰のサブアームをオーキスに固定する。反動はオーキスの推力でなんとか抑え込むしか無い・・・盾を3枚前方に展開すると、反動用のスラスター無くなるのは盲点だったな。帰ったら沙耶と相談しよう・・・だって、この一撃で全部終わらせるんだからな!

 

ミストルティンの一体型メッサーツバークが展開し、ドライツバークバスター形態へと移行する。ステイメンのときには使えなかったこの機構・・・今なら最大出力射撃すら余裕で耐える機体だ・・・でもソレだけじゃ足りない!俺は沙耶の期待に応えるだけじゃ足りないんだ!

 

 超えたいんだ!みんなと一緒に歩いていくために・・・皆を超えて、皆に超えられる。互いに高め合えるあの頃のように!

 

「さあ、見ててくれよ・・・観客一同様。お前たちが証人だ!俺達ユグドラシルの偉業を、瞬き禁止でとくと見やがれ!」コアの方角を確かめ、照準を調整する

 

観客席はもうお祭り騒ぎだった。

 この土壇場で防衛ベースアタックに挑戦するユウジンを笑う者、それを黙って見据えてデータを取る者、え?え?え?とまさか出来るのか?と戸惑う者。ソロモンの悪魔のメンバーもそれぞれ様々なりアクションを返す中、団長のカイエンは睨むような目つきでモニターを見る・・・

 

「もしコレが成功したら・・・FAWの歴史が変わる。コレまで定石だった防衛戦術の全てがユグドラシルには通用しね―ってことになる・・・」 その言葉を横で聞いていたS・Aもこの事態を理解した・・・ユウジンは今、此処に居る連中すべての【常識】をぶち壊そうとしているのだ・・・

 

「(雄二・・・!お前は・・・)何と戦うつもりなんだ・・?」

そんな時、バン!と観客席の扉を開いて入ってくる少女が居た。

 

 この席は上位30位以上の人間か、試合に参加しているフォースのメンバーしか入ってこれないVIP席。ソコに現れたのは、かつて武器職人として【世界樹のブラックスミス】と呼ばれた少女

黒い長髪に昔の軍服を女性らしく改造したスタイルのアバター、サーニャだった

 

「サーニャ!?なんで此処に・・・!」慌てて駆け寄るS・A。ソレに気づいてスノウドロップも一緒に駆け寄る

 

「先輩、今はまずいです!ユウジンさんがまたやらかす寸前なんですよ!?」

 

「駄目・・・止めないと。出来っこない・・・S・A!なんとか止めないと・・・作った私が分かってる、防衛ベースアタックなんて想定して作ってないんだもん!」今にも泣き出しそうな顔でかつての仲間にすがる

 

拳を握りしめて震えるS・A。馬鹿野郎・・・何やってんだよ雄二!

 

「とにかく、こっちへ・・・団長は陰口とか嫌いな人だから、彼処に居れば変な事は言われなくて済むはず・・・」

根本的な解決にはなっていない・・・どうしたらと考えていると、オープン回線でユウジンの声が観客席にも聞こえてきた

 

「見てるか―!野郎どもー!!」

キーン!とても大きな声に会場や中継映像を流していた全てのダイバーが耳を塞ぐ、ソレを気にもせずユウジンは続ける

 

「遂に完成した、俺達の最高傑作を特別に見せてやる!本戦であたるかも知れない連中には大サービスだ!」彼は今まで溜めてきた全てをぶちまける

 

「サーニャ!お前のミストルティンなんか、俺のガンプラにかかれば、ざっと1年アレば・・・簡単に超えてやったぜ!見ててくれ!俺達の作ったものは、決して・・・無意味でも無価値でも無かったって、今から証明してくる!」ブツん!と通信が切れる

 

「センパイ!かっこいい!ソレくらい馬鹿な方が好きですよー♪どんと行きましょう!サーニャ先輩のぉためッ!にッ!」

 あれ?褒めてます?貶してます? そんでなんか怒ってない?

砲身に光が収束する・・・照準は完璧。後はそうだな・・・技として登録されるだろうし、いっちょ名前くらい付けてやらないとな

 

「ゼロカスの技の代名詞っていえばローリングバスターライフル・・・だよな。じゃあ・・・」

ニカっと笑って構える。名前は決まったようだった

 

「さあ!行くぜ!これが、ローリングバスターライフルを捨てた代わりにミストルティンにしか出来ない、俺の・・・俺達の必殺技!その名も!」

コクピットのコンソールが、これから行う攻撃を必殺技として認証する動作を返す。大成功だ!喰らいやがれ!

 

「ラピッドストーム・ドライツバークバスター!!」

 

ツインサテライトキャノンを彷彿とさせる、光の奔流がレーヴァテインによって収束する。一条の光となったその一撃は、防衛ベースの外壁を貫いて内部ブロックへと貫通する・・・・!

防衛ベースに響く破壊音と振動、その規模の大きさから相当なダメージが入ったことが用意に想像できる・・・その被害状況を知らせるマスカレードのオペレーター

 

[ジェネシス、第1から第8隔壁までの貫通を確認!残り隔壁8枚です!]

 

心中穏やかじゃなかったラウはホッとして、指揮をとる

「攻撃が済み次第配置につけ!」 だが!オペレーターの報告は未だ終わらない!

 

[だ、第10隔壁までの貫通を確認!!敵機のビーム照射!止まりません!!]

 

「何だと!?ローリングバスターライフルでももう攻撃は終わっている頃だぞ!」

 

[わかりません!・・・ですが今だビーム照射が弱まる兆し、なし!このまま続けばコアまで到達する恐れが在ります!]

 

NT―Dにより、緑色に発光しているエインヘリヤルは今だミストルティンの最大出力照射をし続けたまま、その機体を保っていた

 

「す、すごいです!センパイ!エインヘリヤル、コンディション未だにオールグリーン!完全にミストルティンの反動に耐えきってます!これが・・・サイコフレームの力。想いを受けて応える、可能性の力!」

 

目を輝かすリン、今この力を引き出してる想いが・・・自分の願ったものでなかったとしても、自分が想う人が今、自分の夢を全力で叶えたのだ・・・

 

 その奇跡に対して、手をこまねいている訳にはいかないラウたちも行動する

「リーダー!我ら自ら礎とならん!ギリギリコアに届くように調整したならば、この体一つで防ぐのみ!御免!」

トールギスとガンダムバエルの2機が、ビームの射線軸に身を乗り出す。エイハブリアクターの対ビーム性能とトールギスの装備ではないが、プラネイトディフェンサーを以てコレを防ぎにかかる。が、しかし

 

「クッ・・・!なんという威力。殺人的な加速だ!」もはや言いたいだけである。ビーム兵器に強いはずの防御兵器を貫通し、2機のモビルスーツが大破する。

なおも続くビーム照射・・・コレにはラウも、覚悟を決めた

 

[バスターライフル。第15隔壁に到達!もう持ちません!!]

 

「同志諸君、ご苦労だった・・・我々は死力を尽くし、強敵と相まみえ!そして敗れる!・・・だがコレは終わりではないぞ、私達は此処から再出発だ。最後の扉の鍵は、我らの手中にあるのだから!」

 

最後の隔壁が真っ赤に赤熱する。コレが破られれば、後はコアまで直通だ。リーダーとして最後の仕事をしなくてはならない。コアの前に立ちふさがり、盾を構える。

 この行為に意味など無い・・・既に勝敗は決したのだ。それでも彼らは 【戦って】 負ける!静観したまま負けることだけは、断じて認められない!

 

「あぁ!扉が・・・・最後の扉がぁ!!」隔壁を突破し!迫る光・・・ソレを受けながらラウは、何処か吹っ切れたように笑っていた

コアの破壊が確認され、ジェネシスが崩壊する・・・

 

照射を止め、バシュー!!と排熱するミストルティン。排熱した空気が宇宙空間で凍りつき、キラキラとエインヘリヤルを飾り立てる。コクピットのコンソールには、間違いなく必殺技として【ラピッドストーム・ドライツバークバスター】という名が刻まれていた・・・

 

・・・・静寂。観客も戦場も、中継を見ていた全てのダイバーが言葉を失った・・・そんな静寂を破ったのは、システムのアナウンス

 

『BATTLE END』 『WINNER YGGDRASIL』

 

初めて、たった一機で戦い続けてから・・・初めて見た光景だった。

 

「「「オオォォォぉぉ!!!」」

 

GBN中で上がる、歓声!今、誰一人成し得なかった防衛ベースアタックを、たった一人のダイバーが成し遂げた瞬間だった!

 

「やったぞ―!!勝った。勝ったんだ!」バトルを終え、控えルームに戻るや否や、リンが飛びついてくる

 

「やりましたよセンパイ!私達、勝ちました!あのトップランカーに勝ちましたよ!それもたった一機で!」

後輩と小躍りしたい衝動を抑え、落ち着かせる。祝杯は帰った後だ

 

一方、観客席は大混乱である。なにせ、今度の本戦でコレに当たった時の事を考えなければならないのだ。一人のプレイヤーしか居ないフォース相手に攻勢側をもぎ取る術はなく、モビルアーマーを導入して互いに攻勢側になっても、モビルアーマーではあの攻撃を防げないし躱せない・・・

 

 大至急フォース全員でブリーフィングを必要とする事態なのに、データを取っている者はほとんど居なかったのだ。唯一データを取っていたソロモンの悪魔では、データを直ぐネストに持って帰るために撤収準備をしていた。

 

「・・・何分だった?」唐突にそう聞いたカイエンに主任ことミサキが答える

 

「2分28秒だぁ~・・・様子から見てまだ行けそうだったし、3分くらいでねーかな?最大照射時間はぁ・・・ほらEパック1個で1分、計算は合うさぁ~。アレだけの火力を3分維持して攻撃できるだけでもおっかねぇけんども、貫通力を増強できるあの盾も厄介だぁ」

そうか・・・と返してカイエンは踵を返す

 

「ユウジンって言ったか?あのユニコーンのパイロット・・・覚えたぜ、その名前」

カイエンはそう吐き捨てると、S・A達に無言で手招きをして帰る意志を見せる

 

「団長が呼んでる、行かないと・・・スノウドロップ」もう何も写っていない画面を凝視したまま固まっているサーニャに気を使い、去ろうとする。だがスノウドロップはサーニャの前に立つ

 

「先輩、先輩!」ペチペチ頬を叩く

 

「え?・・・え?・・・」キョトンとしたまま何が起きたのか、頭が混乱しているサーニャ

 

「やったんですよ。ユウジンさん・・・だから帰ってあげて下さい、二人がきっと待ってます」

 

はっ!?と気づいて駆け出す。おっとと・・・と止まって二人に振り返る。その顔は嬉しさのあまりに涙ぐんでいた

「ありがとう・・・二人共。私 【帰るね!】 」

 

その涙ぐんだ笑顔を見た二人は思う。きっとサーニャはもう大丈夫だ、ユウジンが全部すっ飛ばした・・・過去の失敗も、人のちょっとした出来心から来る悪意も。

 

「兄さん、戻りたくなりましたか?サーニャ先輩も戻りますよ―?」ツーンとした態度で呆けてる兄の尻を引っ叩く

 

「ば、馬鹿言うんじゃない!・・・今はむしろ、戻りたくない。だって・・・」顔を上げ、屈託ない笑顔で彼は続ける

 

「戦ってみたいじゃないか、あのユウジンと・・・!」拳を握りしめ、気合が入る。

 

いつ以来だろうか?兄のこんな笑顔を見たのは・・・思わず仕舞い込んでた希望に火が付きそうになる。

 

ねえ、ユウジンさん・・・

「貴方なら・・・本当に全部取り戻せますか?・・・本当に」

 

 私が失った、たった一つのかけがえのないモノも・・・

サーニャを見送ってから二人もまた、自分のフォースネストへと帰っていく

 

それぞれが、それぞれの想いを胸に・・・FAW予選選考期間が終了したのだ!

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