ガンダムビルドダイバーズ Re:スタート 作:aki@ガンプラ
ついに、試合当日だ。試合前日に送られてきたエントリー表によれば、今回の試合はこの様になる
ユグドラシル:プレイヤー1名、オペレーター1名
ソロモンの悪魔:プレイヤー6名、オペレーター3名
ユウジンは控室で、この数字とにらめっこをしていた・・・間違いなく、相手には巨大兵器がある、防衛ベースそのものを排除し、こちらを撃墜する事に特化した作戦を組んできた
「ふーむ・・・ミストルティンを見ておいてコレってーと、相手も補給することは最初から念頭に置いてないな。こりゃ」
唸るユウジンの横からニュっと顔をだしてユウジンのコンソールを覗き込むリン
「なんでです?5機のモビルスーツと1機のモビルアーマーなら、十分戻れると思うんですけど?」
ええい!狭いわい、自分のコンソールで見れるでしょう!とグイグイ顔を押して追いやりながら
「ええい!そりゃ、この機体数じゃ下がって背中を見せた奴はミストルティンの餌食になるからだよ、もっと多ければ撹乱できるけど少なすぎてどうにもならん」
「じゃあ、サクッとモビルアーマーをミストルティンでやっつければ、相手のリソースの半分は持ってけますね♪」
ラッキー♪と調子に乗る後輩、だがそういう訳にも行かない・・・
「相手も分かってるはずだ、だからきっとモビルアーマーは支援砲撃とデュートリオンビームを供給する係だとおもう・・・こうなると、今度は俺達がやり辛い。
なんせ、供給元を絶とうとすれば俺達が背中から撃たれる・・・囮役も兼ねてやってるんだとしたら、スゲー度胸だよ」
「え~?じゃあ、どうするんです?元々の作戦は防衛ベースアタックをチラつかせての、ベースへの突貫でしたよね?」
そう・・・俺達の作戦は、外に居座られると怖いミストルティンをチラつかせて防衛ベースの戦力を引きずり出し、スレイプニルのスピードでもって引き寄せた敵を強引に突破、少ない防衛戦力をNTーDを駆使して9枚のワルキューレをファンネル化して突貫することだった。
ワルキューレは火力、防御力、速度、どれをとっても並のファンネルの戦闘力を遥かに超えている・・・見方を変えればモビルスーツ並の戦力を一時的に従える事が可能だったのだが・・・
「こうなったら、こっちも総力戦だ。リン、変換リソースの一部変更だ・・・コイツは所持数だけ撃てればいい・・・コッチは~・・・」
と柔軟に変換リソースの変更を言い渡す、エインヘリヤルは9枚のワルキューレにそれぞれ備わった別個の装備を如何にチョイスし、弾薬を振り分けるかによって戦術を変更することが可能だ。
作戦を変更しながら、リンはユウジンの隣で指示を聞きながら、自分のコンソールで何やら数字の推移を見ていた。気になったユウジンはさっきのお返しとばかりにコンソールを覗き込む。
「何見てるんだ?リン」
スッと入ってきたユウジンにリンは驚き、コンソールを隠そうと身を乗り出すがコンソールは空中に浮いている為か完璧には隠せない
「ワー!駄目です、見ないで下さーい!!」
なになに・・・第3試合の現時点でのオッズ?うわ・・・スゲー高いなユグドラシル
両の人差し指をチョンチョンしながら、目を逸らしながらリンが弁明する
「いやー・・・ユグドラシルって今超大穴でして~、ここいらでビルドコインを大量にゲットしてやろうと思い立った訳でして~、ほら!前に言ってたじゃないですか?あのアフタヌーンのティーセット!アレ欲しいんですよぉ!そしたらオークションでしか売ってないし!しかもすごく高いし!」
やれやれ・・・まったくこの後輩は
「高いに決まってるだろう?あのティーセットはガンダムUCに出てきたフルフロンタルがバナージにお茶を振る舞ってたシーンで使ってた茶器だぞ?限定品でしかもレアドロップ品だったはずだ」
そこいらのファングッズとは違うファンが喉から手が出る程欲しいレア物だ。リアルが金持ちのリンだって手に入れるのは難しいだろう
「えぇ~!?そんなレア物だなんて聞いて無いですよぉ・・・あの紫陽花みたいな綺麗な紫に一目惚れでしたよぉ。アレで皆でお茶したりしたいのにぃ~!でも、諦めませんよ!もうちょっとオッズが高くなれば、手が届きそうなんですから!」
勝つことが前提だよな?、それ
そうこうして話してる間に相手のフォースリーダーから通信が入る
「よう・・・ソロフォース」
カイエンはわざとらしいガラの悪さを持っている、団長と言うからには舐められないようにしてるんだろうなと伺える。ただ、一つムッとしたので訂正する
「一応言っておくけどな?俺はソロでやりたいからやってる訳じゃないからな?ソコの所、勘違いしないでくれよ」
カイエンはこの言葉に逆にムッとしたようだ
「じゃあ、なんで戻ったっつー仲間が試合じゃなくて観戦席に居るんだ?なぁ?・・・俺らをなめてる訳じゃねーよな?」
「そいつは、コッチの作戦を引き出させる為の脅しか?コレが今、ユグドラシルが用意できる最大、最高戦力だ!・・・そっちこそ、数が少ないからって舐めてかかると痛い目みるぞ?」
互いに一歩も引かないメンチの切り合い・・・コイツなんで俺にこんな突っかかってくるんだ?
その横から、別の参加メンバーが通信に入ってくる
「ユウジン・・・また一人か。そんな事をされれば、コッチがそう思うのも無理ないだろ?フォース戦はチームワークで勝利するものだ。勝てて嬉しいのは分かるが、何事も大概にするんだ」
相手エースであるS・Aは、そういってユグドラシルの姿勢を指摘する
「いーや、一人じゃないぜS・A!俺達は皆でお前たちに勝つ!勝機もないのに胸なんか張るかよ」
またそんな綺麗事や感情論で・・・!
S・Aは自分でもイライラしている事に気づいて頭を振って心を落ち着かせる
「まあいい・・・S・A、俺らを舐めてないってんなら見せてもらおうじゃねーか?たった一機で何が出来るのかをな!」
S・Aを抑え、カイエンはユウジンに睨みを利かせる
そんな風に、お互いの視線が交差する中、リンは呆れた顔で話に割って入る
「でも、あと2分でリソース分配が始まりますけど?大丈夫ですか~?センパイとお二人さん?」
!?ガバっと三人ともリンを見やり時計を見る!あっ・・!って顔をして全員が通信を一斉に切る。ヤレヤレ、男ってやつは・・・と呆れ顔のリンを引っ掴んで後ろに座らせるユウジン
「リン!準備はいいな!やるぞ」
「イエッサー♪がんばりますよぉ!」
互いに配られたリソースを変換しおわり、後は開始の合図を待つばかり・・・グリップを強く握りしめる。今回からはチャレンジャーとかは居ないので、出撃BGMもないし運営サイドが決めたベースのデザインで全て固定である。
6・・・5・・・4・・・試合開始・・・3秒前!
「センパイ!出撃、どうぞ!」
「ユウジン!!ユニコーンガンダム:エインヘリヤル!出るぞぉ!」
1・・・0!と同時にスロットルを全開に出撃する!相手が最強だろうと、気合だけは負けずに突っ走る!
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
遂に始まった本戦。互いに、補給ベースが周回軌道でぐるぐる廻る中を戦う攻勢側同士の戦い。
最初ユウジンは相手のベースの初期位置を目指して進む、どのように敵が展開しているかは分からないが、少しでも相手に自由に動ける間を与えてはならない!
そして、攻勢同士の戦いは通常とは異なり立ち上がりは早い・・・
「センパイ、敵機反応3です!モビルアーマーは無し、どれも・・・近接型のようです!」
「なら、残りは射撃型だろうさ!リン、レーダーを常に見張ってくれ。おそらく遠距離からの攻撃が来る!S・Aは・・・居た!」
Gフレームを中心に両翼に展開するアタッカーチーム、カイエンの指揮の元に彼も動く
「アタッカー2!左翼から攻めろ、一撃入れなくても良いから攻撃したら範囲外へ撤退!3は前面から突っ込め!アタッカー1、お前は遊撃だ!思う存分暴れろ!
ガンナー1!隙きがあればドンドン撃て!お前はバレても良い、2はアタッカー1の指示で狙撃支援!エインヘリヤルのレーダー範囲は常に注意しろ、お前の位置はバレるんじゃねーぞ!」
「「「「了解!!」」」」
全機が動く!一つの意志によって完璧に動くその様はまさに究極のフォースだ!だが、こっちも黙ってそのままにはさせない!
「マルチプルフェンサー機動!1番と4番のスピンアップ開始!・・・リン!オーバーヒート寸前に声かけてくれ!」
いつもどおり、了解!の返答も聞かずに行動する!オーキスの大型Iフィールドジェネレーターがあった位置はスレイプニルの場合、多目的武装ラックアームが付いており、作戦に合わせて様々な武器を4つまで懸架、そのまま使用することが出来る大型アームが付いている。
弾が切れれば使い捨て、相手から奪った武器をマウントして使う。コレまでやってきたユウジンの戦型の集大成だ。
今回の作戦で付けてきた武器は、弾倉と砲が一体型となったガトリング砲、通称ガンポッドと呼ばれる武器だ。それも計4つ!
ソレをGフレームに向けて斉射する!当たらなくても良い!とにかく弾幕を張って近づけさせない、その一点のために付けてきた武器だ!
「やっぱり!先ずは僕の足止めか、ユウジン!」
Gフレームは即座に反転!距離を取りながらエインヘリヤルの周りを回る様に逃げ続ける・・・だが
「僕ばかり見ていて良いのか!?」
人の目は2つだけだ!しかも2つで一つを見るんだから死角からの攻撃はどうする?
「センパイ!左翼からデスティニー!実態剣装備!」
その言葉に対して、ほんの一瞬だけ視線を切る!時間が引き伸ばされる感触、たとえ一瞬であろうとも、頭で理解した映像に対して、最適な動きを強く、強くイメージする!
その意志に応えて動く、インテンションオートマチックシステム、迫りくるデスティニーにピピピ!とロックオンがかかる。
イメージした動きを体現してエインヘリヤルはスレイプニル左端にあるバインダー状のミサイルコンテナと旋回範囲の広いビーム砲塔の複合装備を起動させる。
ビーム砲塔の砲身が3つに展開し、ビームバルカンモードに変形、ミサイルと同時発射してデスティニーを迎え撃つ!
「なにぃ!こっちも見えてるのか!?突撃は無理だ、一端引く!」
光波シールドを展開しながら後ろへ下がるデスティニー、見えない死角はリンが見てくれる・・・ユウジンはいつだって一人ぼっちで戦った事など無い。頼れるオペレーターと皆の為に作ったガンプラが、常に彼と一緒なのだ。
「見ていて良いに決まってるだろ!コッチの目は4つだ!」
デスティニーがレーダーの範囲外に抜けていく、それと同時に複数の熱源反応がエインヘリヤルへと向かってくる
「センパイ!ミサイルが複数、コッチに向かってきます!あ、あと前方にキマリス!うそぉ?味方ごと撃ってきた!?」
正面から、低速でキマリスヴィダールが突っ込んでくる!背中のダインスレイヴが大型シールドスラスターに改造されているようで、兎にも角にも頑丈そうであることが分かる。
「頑丈なのが売りみたいだな。回避させる気は無いらしい!」
S・Aへの弾幕を切る訳にはいかない以上、キマリスとミサイル両方を迎撃する!
幸い、キマリスもGフレームも視界の範囲内だ、さっそくワルキューレ達に活躍してもらうとしよう
「ヴァルトラウテ!シュヴェルトラウテ!いくぞぉ!」
シリンダー式シールドラックの中に収まっている2枚の盾が少し前にスライドして攻撃可能状態になる。
一つは 【ヴァルトラウテ】 へービーアームズカスタムのホーミングミサイルコンテナであり、コンテナ自体が左右に展開し、発射可能状態を取る
一つは 【シュヴェルトラウテ】 00クアンタのGNシールドを改造したGNソードビットラックであり、ラック自体が左右に展開し、射出可能状態をとる
ソードビットの刃にサイコフレームの基部を持つGNソードビットが8機飛び出しリング状に展開、バリアを貼ってエインヘリヤルを守りつつ、片側13発の合計26発のミサイルがミサイルを撃墜するために発射される。
シュヴェルトラウテはビットを射出後、更にラックを回転させて180度向きを変える。装備自体にGNコンデンサーを搭載しているこの兵器には、ラックそのものにGNビームガンが搭載されている。このGNビームガンに加え、先程の両端の複合砲塔を起動してミサイルを防御する。
いくつものミサイルが撃墜されて周囲が爆発で明るく輝く中を、キマリスヴィダールは我関せずと盾とドリルランスを構えて突貫する!
「小賢しく多種多様な装備に頼った戦いなんぞ!漢は黙って突貫あるのみぃ!」
やたらと汗臭そうなキマリスのパイロットは周囲から飛来するミサイルの破片も気にせず槍を突く!
「なんでも一つに固執するのも女々しいと思うがなぁ!」
ユウジンも負けじ右のシールドラックから一枚の盾を飛び出させ、ソレを右腕にそのまま装備する!装備したワルキューレは 【オルトリンデ】 ステイメン・トライアルプランのツインビームキャノンを参考に作った装備で、二連装ビーム砲で有りながらビーム刃を形成できる遠近両用のビーム兵器だ。
オルトリンデでSEEDのミーティアの様な大型ビームソードを形成し、ドリルランスを下から払い上げる!
「ヌゥううう!やりおる!」
暑苦しいキマリスのパイロットが唸る。
だが、ただ防ぐだけではない。即座にビーム刃を切り、至近距離からのビーム砲を食らわせる!
オルトリンデはビーム刃を形成するために砲身自体にスリットが入っており、射撃の距離が伸びるほどビームが広がって威力が墜ちる、しかし至近距離での威力はその分普通のビーム砲より高い!
「食らいやがれぇ!!」
至近距離から放たれるオルトリンデの二連装ビーム砲、鉄血系のモビルスーツが如何にビームに対して強い装甲を持っていようと、ゲームであるこのGBNにおいて、まったくの無傷と言うわけにはいかない。確実に入るタイミングと距離だ・・・いや【だった!】
キマリスヴィダールは背面の大型シールドを前面に向け、手持ちの盾を構えて更に突っ込んでくる!融解を続ける盾の装甲が溶け切る前に、肉薄するキマリス。
コレには流石にたまらずビーム照射を止めて盾で相手とぶつかり合う!
ユウジンは留まることをセず全力で相手を蹴って後ろに引く、この一瞬の間にも砲撃が飛んでくる恐れがあるからだ
「チィ!最後まで勝負せんか、S・A!コレで良いな!?」
「勿論!ガンナー2、僕が接敵する瞬間に合わせて狙撃してくれ!」
こちらも了解!を聞く間もなく突っ込む!肩に付いているバルバドルプスレクスの腕を前でクロスし、膝の光波シールドを展開。相手のガトリング砲が如何に優れていようとも、オーバーヒートは必ず起こる。
そして、此処までの射撃時間からソレはもう直ぐまで迫ってる筈!
ガガガガガガッ!!!と装甲を実体弾が削りに来る。TP装甲が起動してソレをほぼ無傷で抑え込むが、エネルギーは目に見えて減り続ける。
ソレでも止まらないGフレーム、リソースを気にしなければこの機体の突破力はGBN内でも上位に来ることだろう・・・しかし!
「センパイ!1番4番ガンポッド、間もなくオーバーヒート!」
機体の状態と装備の状態を常に監視しているリンが、ユウジンに現状を伝える
「2番3番スピンアップ開始!近づけさせてたまるかぁ!!」
オーバーヒート直前で今度はもう2門のガンポッドから銃弾の雨が降る!
S・A、も当然コレは想定していた。タイマンだったなら引くしか無かっただろう・・・でもコレはチーム戦なんだ!ユウジン!
「今!」
合図と同時にバチリ!と紫電が走ったかと思うと、マルチプルフェンサーが横から何かに撃たれて大きく横へ弾かれる!
「狙撃!?センパイ!」
ロックオンを使用しない、正真正銘の【手動による狙撃】を食らう。コレが・・・トップランカーのメンバーの実力!?
幸いにも、マルチプルフェンサーは壊れてはいない。だけども、S・Aを止める手段を一瞬奪われた!
隙きを見逃さず、カイエンは指揮を取る
「アタッカー3!援護!!突っ込めぇ!」
右からはGフレーム、前には盾をパージして突貫するキマリス!
「ユウジン、貰ったぞ!」
斬機刀の童子切と千人切を抜き放ち最高速度で迫る!
「まだだぁ!エインヘリヤル、俺に力を貸せ!」
スレイプニルに搭載されているミサイルハッチというハッチから全ミサイルがGフレームに向かって発射される。それと同時にユウジンは左のシリンダー式シールドラックから 【グリムゲルデ】 を左腕に装備する。
グリムゲルデは、08小隊のウェポンコンテナを参考に作られた盾になる予備弾倉保管庫である、コンテナを開いた状態にすると、上から被せてあるシールドの両脇と下部に更に装甲が広がって、大型のタワーシールドになる。物理的防御力がとても高い装備だ。
オルトリンデでビーム刃を形成して構え、互いに盾同士を正面に向けてキマリスと激突する!
「オォォオ!!」
「フンヌゥううう!」
S・Aがミサイルを躱して間合いに届くまでの刹那の時間、ぶつかり合う質量と質量!巨大アームドベースを装備しているコッチに有利な筈のぶつかり合いに、真っ向から拮抗しようとするキマリス。
なんという気迫・・・おそらく巨大な力に対して、ロスの少ない操縦技術で補った結果なのだろうが・・・いくらなんでも出鱈目だ。
互いに振り下ろしたドリルランスとオルトリンデが鍔迫り合いを起こして火花を散らす!
「やっぱり、真正面から来たな!コレで詰みだ!」
周囲にまだ待機状態だったシュヴェルトラウテのGNソードビットがある。ソレがキマリスの関節部を狙ってブレードを突き立てる!
動きが一瞬止まったキマリスを左のグリムゲルデを使ってGフレームが迫る右側へと押し込むように振り抜き、弾き飛ばす!
「オラァ!」
弾き飛ばすや否や、ちょうど頭上に有るミストルティンのメッサーツバークを展開する!
「なんとぉ!ワシのキマリスを弾き飛ばすだとぉ!!」
ミサイルを躱していたGフレームにぶつかるキマリス。S・Aも一瞬驚き足を止めてしまう
「しまっ・・・!」
慌ててミサイルからキマリスを守ろうと動き始めるGフレームを、逆にキマリスが制して護りに入る
「よせ、S・A!ワシの機体はこの程度・・・!?」
「だけど!キマリスの方がダメージが大きい!」
心配してくれるアサルトのリーダーを尻目に、エインヘリヤルに視線を切る暑苦しい男は目を見開き絶句する・・・男は見た、あの光がこちらを向いている。
自分でも防ぎようがない、あの神をも殺したヤドリギの名を冠したビーム兵器の光を・・・!
「S・A!!!」
力いっぱいにドリルランスの横っ腹でGフレームを殴り飛ばすキマリス!何を!?と叫ぶS・Aが目線をキマリスに戻したその時、一条の光がキマリスを飲み込み消し飛ばしていく・・・
「すまぬ!団長・・・しくじったわい!」
エイハブリアクターとナノラミネート装甲の対ビーム性能をまるで無視するかのように、ミストルティンから発射された最大出力のビームがキマリスを大破し、爆散する。同時にアタッカー3との通信がロストする・・・
「そんな・・・アタッカー3が・・・」
S・Aは自分が彼に助けられたこと、そして一瞬とはいえユウジンから目を離した事が頭でグルグルと回り、混乱してしまう
そんな彼にカイエンの怒声が飛ぶ
「アタッカー1ボサッとすんな!。全機支援しろ、アタッカー2は撹乱、ガンナー1は当たらなくても良い、弾幕だ!ガンナー2、この際バレたって良い。ロックオンして狙撃支援!」
「「「了解!」」」
と3機がエースを守らんと動く!S・Aも我に返り、刀を握り直す。今しかない!接近戦を・・・自分の独壇場に戦場を持っていくには、この犠牲を最大限活かすのだ!
「行くぞぉ!Gフレーム!!」
そう叫び、意気込むS・Aだが、ユウジンはその打ち合いには乗る訳にはいかない。
「リン!離脱する、スナイパーのロック照準は!?」
「レーダーに一番遅れてロックしてきた方角を示しました!レーダーに敵機の反応ありません、たぶんコレです!」
ロックされたのにその先に敵が居ない・・・つまりこちらのレーダーの範囲の更に向こうからロックしてきたと言うことになる。ビンゴだ!
「悪いな、S・A!まだお前の相手は重すぎるんでな!」
スレイプニルのスロットルを最大に吹かしてGフレームから離れる、向かってくるミサイルやらの弾幕をこちらも同等以上の弾幕で迎撃しする!休むことなく、グリムゲルデ以外のワルキューレを格納して行動を開始する。
暗い宇宙空間を、グシオンとスレイプニルの弾幕同士のぶつかり合いで明るく照らす中をスナイパーに向かって進むエインヘリヤル。
正面から撃ち込まれる大型スナイバーレールキャノンを正面に構えたグリムゲルデで防ぎながらの突貫である。
この盾はエネルギーパック満載なため、特に頑丈だ。この程度で抜ける性能はしていない、グリムゲルデの内側に格納されているミストルティンのEパックを一つ取り、背中のミストルティンにリロードする。
「センパイ、さっきのミストルティンの射撃でシュヴェルトラウテのGNソードビットを全機失いました。粒子残量はまだ少し有りますけど、ビームガンしか残ってません・・・
あとGフレームの予想エネルギー残量はおそらく4割くらいだったと思うんですけど?あのまま放っておいて良いんですか?」
「あぁ、相手の支援モビルアーマーの位置を割り出す、でないと戦闘中に補充されて詰むからな。リン、デュートリオンビームが飛んだら直ぐ知らせてくれ、俺も目を光らせておく。あとは、シュヴェルトラウテをパージ・・・ありがとよ」
そう言ってシュヴェルトラウテをワルキューレのみ残してパージする。
シュヴェルトラウテはソードビットとビームガンの連結でGNビームライフルやGNブレードにモードチェンジして戦う事ができる装備なのだが、装備を待機状態で維持するのにも、ほんの少しだがエネルギーを使ってしまうのと、単純にデッドウェイトになるので仕方がない。
おまけにこの装備はGN粒子を使用する為、スレイプニルやエインヘリヤルの動力炉では補充する事ができない装備でもある。
それにあのまま戦っていても、連携されて負けていただろう・・・この試合、一番の壁はGフレームだが、一番厄介なのはスナイパーと支援モビルアーマーなのだ。
なにせこの2機はこちらのレーダー網に引っかからないように動いてる、スナイパーの方は手動で狙撃ができる程の実力者だ。
相手もソレは分かっている、だから直ぐに・・・
ピーピー!となるアラート、ユウジンの予想通りだった。
「センパイ!さっきのデスティニーが後ろから追ってきます・・・ものすごく速いです!」
やっぱり、スナイパーの援護に一番足の早い奴が駆けつけた。おまけにレーダーに捉えづらくなっていやがる、おそらくデスティニーガンダムの光の翼を使っているんだろう・・・アレは視覚的、電子的に補足しにくい。だが、想定の範囲でもある!
「追いつかれる前に帰ってもらう!ヘルムヴィーゲ、機動!」
左のシールドラックに収まっていたヘルムヴィーゲがシリンダー式のラックを回って左の腰のアームの横まで来る。
アームに盾をドッキングさせて機動する。 【ヘルムヴィーゲ】 は盾に装着するために展開機構を変更したアームド・アーマーBSである、高精度なサイコミュセンサーを積んでおり武器として使用していない間であっても、機動状態であればエインヘリヤルのレーダー性能を飛躍的に向上させる。
しかも、このセンサーは通常のセンサーとは違い、サイコミュを使用しているため電子戦用の装備の影響を受けにくいという利点がある・・・つまり、ミラージュコロイドを使用しているデスティニーガンダムの光の翼ですら、はっきりとレーダーで捉えることが出来るのだ。
腰のアームを後ろから迫るデスティニーに向け、ヘルムヴィーゲを射撃状態に変形させる。
ビームの偏向器と感応波でもって高い命中精度を誇るこの、雷撃のようなうねるビームを照射する兵器。
コレとユウジンの動体視力、視たモノに対して当てるイメージを体現するシステム。全てが合わさりヘルムヴィーゲの命中精度は恐ろしく高い、ビームを飛ばす誘導兵器と言っても良い。
「集中しろ・・・どれだけ速くたって、ミラージュコロイドは移動先には展開出来ない。常に先頭に居る影が本体だ!」
ビームスマートガンが照射される!デスティニーガンダムもすぐさまランダムに高速機動をして撹乱しながらの接近を試みる、だがビームは自分の動く先を分かっているかのように曲がり、うねり、確実に当ててくるではないか!
「そんなバカな、いくらなんでもメチャクチャだろう?このスピードで躱せないのかよ!団長、どうしたら良い、近づく前に焼かれちまう!」
アタッカー2は光波シールドで身を守りながらカイエンに指示を乞う
カイエンは、必死に考える。自分の知識だけでは足りない、オペレーターに繋ぎ敵の装備についてミサキに解析を頼む。
「今、ソレを解析中だ!おそらくアームド・アーマーBSだと思うが、とにかく一度距離を取れ。ガンナー2は空域を離脱!予定通りデブリ帯を抜けて俺に合流しろ。予測レーダー範囲には常に気を配れよ。アタッカー1、デュートリオンビームを準備するからその場で待て」
得体が知れない装備が有るのは想定していたが、此処までとは・・・カイエンは自分でも焦っているのを感じていた。
確実にユウジンのリソースは減っている。スレイプニルのミサイルも半分以上使い込んで、ガンポッドも2門は弾は残ってない筈・・・ソードビットの装備はさっき投棄していたし、同じ装備は積んでなかった・・・判明した盾の装備は全部で5つ、そのどれもが一つとして同じ装備は無かった。
「全く別々な装備を9種類追加してきた、最初の4つは単純だったが強力だった・・・が、コレはどうにもカラクリが読めねー。威力は通常のスマートガンなのに、命中精度がおかしい」
考えながらデュートリオンビームを準備しているとオペレーターの黒兵衛から通信が入る
[団長、某だ。ミサキに解析してもらっているが、遠目では可変機構が変わったアームド・アーマーBSと変わりなく見えるそうだ、通常ならデスティニーの光の翼の機動に対処する手段にはなりえない。というのがあの者の見解だ、ひとまずガンナー2がデブリに入れば安心だろう、デスティニーも補給が要る・・・一度立て直すべきと提言させてもらおう]
カイエンもソレに賛成だ。レーダーの範囲に目を向ける、ガンナー2はキチンとオペレーターから送られてくる相手の予想レーダー範囲に入らないようにギリギリ離れて進んでいる・・・
「???・・・・まて、【ギリギリ離れてる】 だと?」
ハッ!?とカイエンはアームド・アーマーBSの特性を一つ思い出す。サイコミュセンサーにより、機体の【レーダー性能を向上させる】特性が、あの兵器には元々在るのだ
「黒兵衛!レーダー予測網は広げてあるのか!?」
頭に???を浮かべながら黒兵衛は答える
[いや、特に何もしてはいないが、何故に広げる必要が・・・!?]
ソコまで言ってから彼も気がついたようだ、今レーダーに補足されていないというのは所詮・・・【彼らの予測に過ぎない!】
彼らがそんな話しをするほんの少し前
「センパイ!敵機は未だにコッチが補足してる事には気づいてないみたいです。下手にロックオンしなくて良かったですね♪」
「ホントにな、なにせ穴蔵に引っ込んで顔を出さない相手に一度警戒されたら二度目はない!デスティニーも離れていくみたいだし、チャンスはこの一度だけだ、ロスヴァイセを使うぞ!」
そう言うと、右のラックに格納されているロスヴァイセがシリンダーを回り腰のアームとドッキングする。
アームを前方へと向け、ロスヴァイセを正面に向ける。 【ロスヴァイセ】 はSEEDに登場したレールキャノンを大型化させた。中折式のレールを設けられた大型スナイパーレールキャノンだ。
他の装備に比べて、威力はそれほどでもないがこの装備の最大の特徴は、実体弾兵器でありながら弾速と射程距離が段違いに高い装備である点だ。ワルキューレの中で最も安定した射撃装備であり、先程のヘルムヴィーゲよりは低いがそれでも高い命中精度を誇り、ヘルムヴィーゲより何倍も速く、遠くへ飛ぶ。
「あいにくと、俺は手動狙撃なんて無理だけどな・・・それでも、ロックオンから射撃、着弾までの速度!単純な武器の性能の高さだけなら誰にも負けねー!!」
ピ!とロックオンされた瞬間に引き金を引く!
レーダーの範囲外だと思っていたジムスナイパーカスタムは突然のアラートにも即座に対応し、スラスターを吹かす!だが、狙撃用にカスタマイズされたこの機体の機動力はお世辞にも高いとは言えない、右肩に装備していたスナイパーレールキャノンの重さが災いし、背中にロスヴァイセが被弾する。
「うわぁぁ!」
被弾し、その衝撃で大きく吹き飛ぶジムスナイパーカスタム、機体のバックパックが丸ごと吹き飛んでしまっている
「嘘でしょ・・・?メインブースターが!」
スナイパーの女性ダイバーが、この広い宇宙空間で移動する手段を失い絶望する。大破でなくともこの損傷では、味方に回収して貰わなければ満足に撃つことすら出来ない
「よし!止まった、もう一発!」
ユウジンは再びロスヴァイセを構える、もう回避できない相手を狙うのはどうかと思うかも知れないが、このFAWでは補給や修繕が可能な大会だ。放っておけばまた戦場に戻ってきてコチラを攻撃してくる以上、倒せるときには倒さないとならない!
狙いをつけて、引き金を引く。その瞬間だ!
「センパイ!!後ろからデスティニー!」
「やらせるかよぉ!!!ソロフォース!!」
有ろう事か、メインウェポンであるはずのアロンダイトをスレイプニルに向けて投槍のように投擲する!
即座に機体を旋回し、左の複合砲塔で迎撃するも
ビービー!となるアラート
「嘘!?ごめんなさい、センパイ!左砲塔のミサイル、残弾0!」
リンの集中力もそろそろ限界が近い!ビーム砲塔をバルカンモードではなくビーム砲として撃つも、外れてしまう。アロンダイトがスレイプニルの左ミサイルコンテナブースターに突き刺さる!
まだ、それなりに残弾が残っているブースターだ。急いでパージ!
至近距離で爆発するブースター!衝撃で大きく揺れるスレイプニル
「きゃぁあああ!」
リンが恐怖のあまり絶叫する。オペーレーターブロックは非破壊オブジェクトだ、リンの安全は確保されていても目の前で起こる爆発や揺れる衝撃はキチンと感じる。
そんな絶叫マシンさながらの衝撃に、リンが恐怖で身を凍らせればサポートは困難になる。誰もが戦いを好き好むダイバーとは限らないのだ。
「リン!落ち着け。大丈夫だ、俺に任せろ!」
リンが落ち着くまでは俺が支える!サポート無しでも相手は一機、スナイパーもアレじゃ、こっちを狙うのは不可能だ。
どの武器にどれだけ残弾が在るのか、そんな事に気を払う余裕はない!相手を近接戦でいなしてスナイパーを直接叩く。
「いくぞ、エインヘリヤル!」
エインヘリヤルの装甲がスライドして展開していく、剥き出しになったサイコフレームが緑色に光り輝く、NTーDを発動してスレイプニルとのドッキングを解く、全てのシールドファンネルをファンネル化し自分に追従させる。
腰にヘルムヴィーゲとロスヴァイセ、ミストルティンにブリュンヒルデを付けた状態で敵機へと迫る
デスティニーもまた、ジムスナイパーカスタムとエインヘリヤルとの間を陣取り、もう一本のアロンダイトを装備して、光の翼を展開して高機動で迫る!
だが、その速度にはヘルムヴィーゲが通用する、必死に動きを目で追ってビームを照射する。それだけでデスティニーの速度という武器を封殺できる。
ただ、一つ問題が在る。ヘルムヴィーゲは起動させた状態であった場合、待機状態であろうと無かろうともサイコミュセンサーを使用する為エネルギーを食い続けるという弱点が在る。
その弱点を補うため、ヘルムヴィーゲはEパック式の装備に改造した。スレイプニルのシリンダー式シールドラックにマウントすれば自動で補充してくれるのだが、今のように分離状態では使用できる時間に制限がある。センサーとしてだけ使えばかなり長く使えるが、こうして撃ち続ける場合の時間は極端に短い。だから
「俺も近づくしか無いんだよなー!」
ビームトンファーを両腕とも展開して接近戦を仕掛ける、スピードを殺している間ならばトップランカーともやり合える。それにこちらの目標はスナイパーだ、どのみち距離を取る戦いは向こうに都合がいいだけになってしまう。
アタッカー2もソレを感じ取った、相手の狙いはガンナー2で間違いない。なぜなら距離をとってスマートガンで攻撃するという有利を捨ててきたからだ。
「なら、負けてはやれないな!接近戦は特に機体性能より操縦技術が物を言う!」
アロンダイトという長大な剣を振り回しているにも関わらず、ビームトンファー二刀のエインヘリヤルと五角以上に渡り合うデスティニー。
間合いを常に計り、踏み込ませず、少しでも引けば途端に詰めてくる!ユウジンが眼で見て判断するのとは違って彼はソレを直感的にやってのける。
長い長い時間をかけてモビルスーツ同士の接近戦をこなし、それに勝ってきた経験が力となってエインヘリヤルを押し返していく
接近戦においても、機体の性能の差はエインヘリヤルに分があった。加速力と最高速度に特化したカスタマイズを施したこのデスティニーは、その反面防御力や運動性をやや殺している。全ての性能をトータルで見れば、エインヘリヤルの性能の方が高いのだが彼はその勝っているスピードをフルに活用してエインヘリヤルを追い込んでいる。
機体性能で負けていようとも、突出した得意分野を操縦技術で高め、劣っている分野を補う。そうすることで、勝利という栄光を手にする事ができるのだ。機体性能だけでは足りず、操縦技術だけでもコレまた足りない。
そして、現状のGBNでは操縦技術に少しだけだが重きを置く風潮が在る。実際その風潮が正しいものであるかのように、ユウジンは敗北を重ね続けた。
「どうだ!コレが研鑽を続けた者だけが持ち得る実力だ!お前みたいに装備や機体性能の高さで得る勝利なんて、まぐれ勝ちと大差ないんだよ!今、お前が撃ったスナイパーだってそうさ、アイツが宇宙空間であったとしても、ロックオンに頼らず手動で狙撃する技術を身につけるまでにどれだけの努力が要るか・・・分かるかぁ!?」
アロンダイトをクロスさせたビームトンファーで受け止め横に反らして前蹴りで距離を取る!相手も同じ考えだったのか、前蹴り同士がぶつかり予想以上に離される。そうやって確実にスナイパーとの距離を離されていく
だがこうして実際にぶつかってもらって、分かることが在る・・・操縦技術の高さを称賛する中、何故か機体性能の高さをこうも詰る事が多いのか・・・
嫉妬といえば聞こえが悪いが、そういう感情に根ざしてるモノなのかも知れない、強い機体を使っているのだから相手より有利なのは当たり前で・・・そういったものをズルいと感じたり、認められないと感じる人がいる。
でも・・・・違うんだ。
彼らは、悔しかったり妬ましかったりするのも事実だけどそうじゃないんだ・・・
俺と一緒なんだ、彼らもまた
「努力が・・・積み重ねてきたモノが無意味や無価値に思えてしまう。他の誰でもない、自分自身でそう思ってしまう事に・・・俺達は耐えられない!」
腰のアームにマウントした剣に手をかける
「はぁ!?何のことだ!そんな話じゃねーんだよ」
アタッカー2はアロンダイトを前に突き出し、腰だめに構えて突きの姿勢で突っ込む
「まぐれ勝ちで天狗になってる餓鬼が!気に入らねーって話なだけだぁ!」
突き出されるアロンダイト、それが突き刺さるその刹那!
「だからこそ、俺はこのステージに立った!ファイターの意地と教示だけでダイバーを視てくれる、ただ純粋に勝敗を決める為のこの場所にだぁあ!!」
半身を引いて、腰にマウントされた 【グラム】 を抜く!斜め下からの逆袈裟斬りで、アロンダイトを両断し、そのままデスティニーの左腕を裂くように切り裂き、表面の装甲を弾き飛ばす!
強力なサイコフィールドを放つこの刀身は、ビームソードのビームすら歪曲させて実態剣の部分を高周波ブレードで切り裂く。
表面を裂くように浅い傷であったとしても、振動破砕を伴うこの斬撃はフェイズシフト装甲であろうとも弾き飛ばす!
「なんっ・・・だそりゃ!?フザケやがって、そんな武器見せびらかして楽しいか?この野郎!」
パルマフィオキーナを使用し、手にエネルギーを溜めながら突っ込んでくるデスティニー。
その動きをグラムを突きつけて威嚇して止める。
「だから、何度だって戦い続けてやる。十回か?百回か?何度だって勝ってみせる!ファイター達の心から、【まぐれ負け】ってのが無くなるまで俺が相手になってやる。
何度勝てるか分からねー、何度負けるか分からねー・・・それでも、納得いくまでぶつかった後にまぐれだなんて言わせねー!コレが・・・俺達ビルダーの力だと、拳高く突き上げて証明してみせる!」
「グッ・・・!そ、そんな事言われたからって!」
ユウジンのあまりに堂々とした宣言にたじろぐアタッカー2、仲間内で通信がやり取りされている事にすら気づけ無いほどだ。
今まで彼が目にしてきたビルダーという生き物は、戦えもしないくせに強いモビルスーツを乗り回し、負けても機体性能は勝ってたんだけどなと言い訳がましく周囲に吹聴する嫌味でお高く止まった連中という認識だった。
だが、いま自分の目の前に居るビルダーはファイターである自分にこう言ってきたのだ・・・【俺に文句があるなら勝負しろ】と
有ろう事かファイターである自分の土俵で、自分を納得させるまで戦ってやると言ってきたのだ・・・ファイターとしての技量が低いことを自覚したまま、ビルダーだからこそ持てる力とやらでファイターとしての勝敗を決めようというのだ
こう言われてまで、相手を詰れるほどアタッカー2は恥知らずでは無かった。
ユウジンの言葉を否定するということは、ファイターとして勝負から降りると宣言することと同義だったからだ。
あ・・・あ・・・と声を震わせながら、彼はこの勝負をしたいと思った。どれだけ相手の機体性能が高かろうが、操縦技術がアレば勝てる!とは自分の言い分そのものだ。受けてやると言おうとしたその時、怒声を含んだ通信が二人の間を割り込む。相手は後ろにいるガンナー2だった
「2・・・アタッカー2、聞いてるなら返事しなさい!聞いてないでしょ?今直ぐ補給と修繕に戻って!団長の指示よ」
なんだと?ガンナー2はどうするんだ?
「それだと、お前はどうするんだよ!?」
「私は・・・此処までよ。作戦は帰還しながら聞いて、私は最後の抵抗をしてから退場するわ」
そのタイミングでカイエンからも通信が入る
「そうだ、ガンナー2とお前、どっちかはくれてやるしか無いトコまで追い込まれた。エインヘリヤルの予想レーダー網は現状1.5倍で予測してる。ガンナー2の狙撃可能限界距離も収まる範囲だ・・・だから今は高機動の近接用の機体の方が大事だ、だから戻れ!これからデュートリオンビームをGフレームに照射する、俺の位置もバレるから援護は送れない。分かったな?」
「そんな・・・俺が時間をかけすぎたってのか?」
エインヘリヤルを倒すことより、救出を優先すればどうにかなったかも知れない・・・でも手負いの今ではソレは叶わない、援護も無いなら逃げるしか無いのか?
ファイターじゃない、ビルダーのユウジンから?俺が?
「行きなさい、アタッカー2!フォースを勝利させる。ソレが一番大事なことよ!必ずまた戦えるんだから、今は引きなさいよ!私はもう無理なんだから・・・!」
ユウジンには今の通信は聞こえていないが、動きを見せない相手を待っていた。ユウジンが目指す勝利は勝って屈服させる為のものじゃない、分かり合うためにぶつかり合う戦いなのだ
「なんで、攻撃しない・・・ユグドラシル?」
「まぐれ勝ちしたくないからだよ、ソレにアンタは離れた後リンを、スレイプニル狙わなかった・・・そのお返しだ」
「後悔するぞ?・・・今はお前の勝ちだ、でも試合は俺達が勝つ!首を洗って待ってろ!ユウジン!」
光の翼を広げ、高速で補給ベース方向へ飛び去っていくデスティニー
ソレを確認して、ユウジンはビームマグナムブルパップをジムスナイパーカスタムに向ける
「残念だけど、タダではやられてあげないわ、私も同じよ・・・今回は負けたけど今度は勝つ!」
そう言うと彼女は盾にもなりはしない、全ての装備を抱きかかえて身を護る・・・ユウジンに武器を奪わせない為だ。
「あぁ、今度も絶対勝ってみせる!その前には先ず、この試合が先だけどな♪」
互いにいい笑顔で返礼しあい、次の戦いの勝利を誓う。
引き金が引かれ、ジムスナイパーカスタムは静かに大破した・・・