【合同企画】 三題噺集 【正月企画】   作:倉月夜光

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 はい、投稿主の倉月の作品です。

 前書きで語ることは特にないので、どうぞどうぞ


【作者:倉月夜光】 「世界の片隅で」

「はぁ……はぁ……」

 

 

 

 自分の息が少し上がり、少々荒い息を続けているのが耳に届く。

 周囲の明かりは存在せず、自分の身長より少し高いくらいの天井が自分に大きな閉塞感を与えてくる。

 

 コツ、コツ、コツ

 

 自分の足音さえも大きく聞こえるこの遺跡の中では、周囲にいやというほど音が存在せず、使い続けている暗視ポーションが無ければ視界さえも閉ざされてしまうだろう。

 

 

 

「ふう……」

 

 

 

 小さく独り言としてため息をつぶやく。

 ずっと無音の世界にいるのは精神的に辛いものがある。ずいぶんと長い時を一人で生きて来たとはいえ、周囲に音が存在しない環境がここまで影響を与えてくるとは想定も出来ていなかった。

 

 

 

 ここは《始まりの遺跡》。

 

 文字通り、()()()()()()()()()》、『テオラト・スパギリスト』の始まりの場所であり、その伝説の現存する伝承地であり、聖地とも言われている。

 

 その伝説の足跡を追いかける人は多く、これまでにも多くの探検家や技術、遺産を求めて国家の軍が侵入していったという話だが無事に帰って来れたものが存在しなかったと言われている。

 ちなみに、この言われているという不確定の言い方なのは国などはこの事実を隠すために実際の被害を隠蔽しているからだ。これが小国家程度ならばその程度も計り知れたり実際の規模を知ることが出来るのだが、大陸有数レベルの国家が一つではなくいくつかの大国家が挑戦し、失敗している事実が問題を探れなくしている要因だ。

 どの国家も自国の失態など他国に知られたくはなく、それが大国家で複数やってしまっていることから、この問題はノータッチでいるという暗黙の了解が発生した。

 

 そのため、今でもその一縷の希望をかけて小国家が人を送り込んでいるという噂まで存在するし、実際に潜り込むのを確認もした。

 

 

 

 自分はこの遺跡に入って1週間を過ぎたくらいだが、今までにも()()()()()がないと乗り越えられないようなトラップや危険なモンスターが多く仕掛けられていた。

 

 

 

 三つ首の地獄の番犬

 

 部屋の両端に植えてある謎の木に擬態した食人植物

 

 錬成しないと通った瞬間に致死毒が体内に送り込まれる仕掛け床

 

 毒の水が湧き出る噴水

 

 

 

 正直光の届かず、《始まりの錬金術師》が外に出てから誰の手も入っていないはずのに様々なものがまだ現存している状況に驚くが、()()()()()()()()()()()()が多かったのも事実だ。

 

 

 

 三頭犬は錬成動物を特異的な成長させたものであり、製作者側でかけた保険として一定の周波数の笛の音で眠るようになっていた

 

 食人植物は匂いで人を感知していたので消臭剤を用意すればそれで突破できた

 

 仕掛け床はそのまま、錬金術の知識があれば見抜いて対応出来る

 

 毒の水は錬金で毒を抜くか、対応した毒抜きの果実があればいい

 

 

 

 このように、この遺跡は()()()()()()()()のではなく、()()()()()()()()()()()()()ように感じられる。

 上記の他のトラップも、正しい知識が存在しなければ凶悪なものがわんさかと溢れてたが、解除できる方法は残されていた。

 

 

 錬金術の産物を人は求めるのに、その知識が無い人々は錬金術師を恐れ、国家は宗教を恐れて諸手を挙げて錬金術師を求められない。

 

 そのため、これまでここに挑戦した人の中に錬金術に浅い知識があっても深い造詣がある人物が存在しなかったのだろう。

 ここまで来たのは自分が初めてではないが、この辺りまで来たのはこれまででも数人といったところだろう。

 

 単純に大人数が移動した痕跡がもう存在しない上、塵などの自然と溜まるモノの上にうっすらと足跡が残っている。

 

 そのような痕跡も、()()()()》を使えば見逃すことは無い。

 錬金術師ならば、普通の目では見えない限界が存在するので、その代替手段を手に入れるのは当然のことである。

 眼に暗視の機能を付けておくことも考えたが、物には付与できるキャパシティが存在するので暗視ポーションが存在する分、その機能を付けることは躊躇われた。

 

 

 

 更に足を進めると、小さめの部屋に出た。

 

 周囲を見渡してもここまでのように、通路が存在することはないようだ。

 《鑑識眼》を利用して見渡しても細かな差異が存在しない。

 

 

 

 ―――いや、あった。

 

 丁度、目の前に文字らしきものが印字されている。

 

 そこには古代文字でこう書かれていた。

 

 

 

 後継者となる者、この扉をひらかん

 

 さすればこの世界の一端を手に入れよう

 

 後継者足らん者、この扉をひらかず

 

 開けば厄、降り注ぐことにならん

 

 

 

 その文字は異様に強調され、それが朽ちることの無いように錬金術で《停滞》の概念が刻み込まれている。

 この文字盤だけが壁からくり抜かれており、おそらく、この部分を押すことで何かが起こるのだろう。

 

 

 

「―――はっ」

 

 

 

 ()()()()()()()、遺跡に挑む前から完了している。

 

 

 

 その石板を軽く押す

 

 

 

 ―――ガコンッ

 

 

 

 石板の動く音がした次の瞬間

 

 

 

   貴方の生に、祝福を

 

 

 

 何かの声が聞こえ、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 ☆

 

 

 

 かつて、世界には神々とその尖兵しか存在しなかった。

 

 神々は自神を最高神とするため、絶えず争いを続けていた。

 

 だが、神とは概念存在にして不滅の現象の象徴。

 

 無意味な争いが続くのかと、如何なる神もそう考えていた。

 

 

 

 だが、破壊の神が全てを壊した。

 

 ()()()()を破壊したその破壊神は、他世界の摂理を取り入れた。

 

 そう、不滅の存在を打ち消すための摂理をだ。

 

 

 

 その摂理に対抗すべく、命の神が創り出したのが《錬金術》。

 

 万物創成の力を込められたその概念を利用し、破壊の神は封印された。

 

 そして、神々がその錬金術を用いて創り出したのが人。

 

 

 

 神々は人を用いて自分たちの代理として争わせ始めた。

 

 自分たちが争うことで、第二の破壊の神が表れることを危惧したからだ。

 

 人は、神々に従属する存在であった。

 

 

 

 だが、《始まりの錬金術師》は違った。

 

 彼は、()()()()()()()()()()()()()()であった。

 

 彼は神々の拘束にかからなかった。

 

 

 

 彼が主体となり、錬金生物たちを主戦力として人間の反逆は始まった。

 

 人は長く生きているうちに、神々に克己心を抱きはじめていたのだ。

 

 

 

 そうして、《始まりの錬金術師》は戦いを憂いていた命の女神の助力を得た。

 

 

 

 神々を地上に干渉できない《上位存在》として、封じ込めることに成功した。

 

 

 

 ここで得られるものは、ただその情報だけだ。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「……っち」

 

 

 

 イライラする。

 

 おそらく、情報が流れ込んできたときに感情も一緒に流れ込んできたからだろう。

 自分の記憶の中に、存在するはずの無いものが存在しているのが分かる。

 

 ああ、()()()()()()()()()

 

 

 

 それは、自分の中に自分の物でない記憶が存在している影響であり、

 

 

 

 また、()()()()()()()()()()()()()()()()()からなのだろう。

 

 

 

 

 そうしているうちに少しぼうっとしていると、外から液体状の何かが入ってくる光景が見えた。

 

 ―――スライムだ。

 

 おそらく、ここで記憶の流入で廃人になった人を処理しているのだろう。

 

 

 

 だが、自分は生き残ったので、少し彼らを避けなければならない。

 

 

 

貼り付け

 

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 目下を大量のスライムが埋め尽くし、その流動する群体は部屋の高さ50cmほどまでを埋め尽くし、その流体の身体を震わせ、流れていく。

 

 スライムは十数分蠢き続けたが、それで満足したのかスライムたちはどこかへと消えていった。

 

 

 

「……うん?」

 

 

 

 《観察眼》を使用したときには全く分からなかったが、押した文字盤の2メートル平方くらいの大きさの通路への入り口が発生している。

 自分では全く分からなかった。流石、《始まりの錬金術師》と言うべきか。

 その技術力は自分のそれをはるかに上回っているようだ。

 

 その道に入り、とりあえず進むことにした。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 その帰り道は特に何が仕掛けられている訳でもなく、普通に続く通路を歩くことになった。

 かなり行きにかかっただけあり、帰りも1日ちょっとはかかったが普通に帰ってくることが出来た。

 

 手持ちの不眠ポーション(飴状)の残りも少しだけ不安になってきたので、早く帰ってこられたのはうれしい。

 

 

 

 代り映えのない通路を進み、飽きて、惰性で歩き続けた先に、階段が存在した。

 

 

 

「よし……」

 

 

 

 やっと出口に着くらしい。

 

 階段を上ると、光が差し込む出口らしき場所が見えて来た。

 

 遺跡の周囲は確信し、穴らしい場所は存在しないと思っていたのだが、錬金術的なハイセキュリティな隠蔽がかけられていたらしい。

 

 そこを何もせずに通り抜けると、遺跡の入り口から数メートルほどの位置に存在したらしい。

 

 自分が出て来た地面を見ても、相変わらず良く分からない。

 いや、()()()()()()()()()()の中では把握できる。やはり自分よりも自由に錬成を使いこなしている。

 

 今までの知識と合わせ、更に自由に錬金を出来るようになりそうだ。

 

 

 

 とりあえず脱出できたところで、遺跡前に残していた()()を呼ぶことにする。

 

 

 

いでよ我が下僕、我が半身

 

 

 

「ご主人様ーーー!!!」

 

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()のタックルをかわす。

 

 

 かわしたと思ったところで()()()()()()こちらに向かってきた。

 

 

 

「げふぅ……!」

 

 

 

 なぜか足から来た彼女の靴が自分の顔に突き刺さる。

 

 その勢いを全て受けた自分は倒れ、彼女が真上にマウントをとる形になる。

 

 

 

「ご主人様ご主人様ご無事でしたか!?私ここずーーーとご主人様が心配で寝てもいられなくてあ寝る必要は無いんですけどやっぱりご主人様と一緒に寝るのが私のタノシミといいますか私の生きがいというかご主人さまがいないと私生きていけないんでほうんとうに心配で心配でずっとずっとずっと気になってて…………」

 

「分かったから離れろ……!アルシー!!」

 

 

 

 彼女は自分が創った助手型アンドロイドだったのだが、《始まりの錬金術師》関連の他の遺跡を発掘している時に発見した人工頭脳を付けたところ、このようなポンコツになった。

 

 思考速度や柔軟な思考は驚くべきレベルであり廃棄するのももったいなかったのでそのままにしてあるが、正直廃棄処分でよかったとも感じる。

 

 

 

「だ、大丈夫ですかご主人様!」

 

「お前のせいで死にそうだよ……」

 

 

 

 足跡のついた頬をさすりながら立ち上がる。

 

 とりあえず、ここでやることは既に無い。

 

 手に入れたものは問題もあるが、あって役に立つものであるのは事実だ。

 

 

 

「帰るぞ、ポンコツ」

 

「あっ、待ってくださいよご主人様ー!!」

 

 

 

 

 

 

 ―――とりあえず、こんな世界でも日は流れる

 

 

 

 ―――その中で、自分は自分のやりたいように生きる

 

 

 

 ―――それが、自分の師匠の願いだったから




《主人公》:師匠に残された才能ある錬金術師。師匠は正直非才であったが、その全てを受け継ぎ、孤児の自分を拾ってもらったことを感謝している

《アルシー》:ポンコツメイド。かわいいやったー!多分最近読んだ作品に影響受けてる



連載だと多分命の女神さまがメインヒロインになってる。

まぁ短編だしこれ以上書かないぞ!本当だからな!!
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