仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
―警視庁・未確認生命体対策会議室―
一方その頃、優矢と別れて署に戻った綾瀬は未確認の対策会議に出席し、今回の事件を他の対策メンバーと共に洗い直していた。議題は勿論、先程殺害された女性警官についてである。
綾瀬「被害者はまた女性警察官でした。これまでと同様、職務中の女性警察官ばかりです」
「これで三人目か……しかし綾瀬よ、未確認が出現すればすぐ警官が出動する。被害者が警官なのはむしろ当然なんじゃないか?」
被害者が女性警官である事を注視する綾瀬の話に、彼女と共に会議に参加する刑事の一人が最もらしい意見を口にする。実際のところ、ホワイトボードにも書き記されている今までの事件の流れで被害者となったのはどれも女性警官ばかりではあるものの、一般市民に被害が出たという報告はされていない。
ならば彼女達が殺害されたのはその市民を守ろうとして代わりに殺されたのではないかと推察する刑事に対し、綾瀬は首を横に振って否定する。
綾瀬「いいえ、未確認生命体はこれまでも一定の手順に従って殺人を行い、被害者にも共通点がありました。なのに今回だけその例に漏れると言うのは、奴らの今までの習性を考えて有り得ないと思います」
「……グロンギゲーム殺人説か……奴らにそんな知性があるってのか……?」
未確認生命体がまるでゲームのように一定のルールの上で人を殺害している。これまでの会議でも度々議題になる事が多かったその定説が濃厚になりつつある事に他の対策班のメンバーも信じ難い様子を浮かべる中、一人の警察官がヤカンを手に会議室へ入り、そのまま淡々と対策班の空になった湯呑に麦茶を注ぎ足していく。
「では本当に女性警官ばかりが狙われているとして、女性警察官全員に護衛をつけろってのか?無理だろ!」
綾瀬「それは……」
署内だけで数えてもかなりの数の女性警官がいる。対策を練るにしてもそんな方法は確かに現実的ではないし、そもそもそれだけの数の護衛の為に人員を裂ける程の余裕もない。ならば一体どうするべきかと綾瀬も頭を悩ませると、湯呑に麦茶を注いでいた警官がホワイトボードの内容を一通り眺め、静かに口を開いた。
「規則を守って殺す……確かにまるでゲームのようだが、今回の場合はそれだけって訳でもなさそうだな……」
綾瀬「……え?」
ボソッと、何やら意味深な事を呟く警官の言葉を耳にして綾瀬が思わず振り返ると、彼の首から何故か警官服に似つかわしくないピンクの二眼のレフカメラが掛けられているのが目に入った。その見覚えのあるカメラを見て慌てて顔を上げると、綾瀬は漸く其処でその警察官が先程の事件現場で出くわした零である事に気付く。
綾瀬「貴方っ、確かさっきの……?!」
何故こんなところに?!、と椅子から勢いよく立ち上がろうとする綾瀬だが、その時、突然署内に無線が鳴り響いた。
『緊急通報。先程とは別の未確認生命体が警ら中のパトカーと接触した模様。繰り返す、先程とは別の未確認生命体が警ら中のパトカーと接触した模様』
綾瀬「ッ!9号……?」
零「…………」
署内に響くあまりに早すぎる次のグロンギの出現の報せに綾瀬も戸惑う中、対策班も慌ただしく会議室を飛び出していく。そして綾瀬もヤカンを手に佇む零を一瞥すると、彼等の後を追って会議室を飛び出しながら携帯で何処かに連絡を取り始めていき、そんな綾瀬の後ろ姿を見送りながら零もヤカンを台の上に置いて溜め息を一つこぼす。
零「流石に警察も手を焼いているか。しかしこのまま奴らの後手に回るってのも面白味がない……警官らしく証言を取るとするか──」
◇◆◇
―灯溶山付近・河原―
「あ……あっ……ああッ……」
グロンギ出現の報せが届いてから二十分後、現場では再び現れたグロンギが警ら中のミニパトを襲撃し二人の女性警官の内の一人を襲っていた。そしてグロンギは女性警官の息の根を止めた事を確認すると、そのまま奥のトンネルに逃げ込んで逃走を測るが、其処へ……
―ブオォォォォォォッ!!―
『……?!クウガバ?!』
トンネルの向こうからライトを照らしながら現れた一台のバイクに阻まれ、足を止めたグロンギはクウガかと警戒し槍のような武器を取り出して身構えていく。しかし……
ディケイド『──クウガ?違うな』
マシンから降りてそう告げたのはクウガではなく、警視庁から駆け付けた零が変身するディケイドだったのだ。自身の知らない未知の戦士を目の当たりにしたグロンギも動揺し、思わず後退りして驚愕を浮かべた。
『リントビ ガザダバゲンギブギダボバ!』
ディケイド『グギグギうるせぇよ。ちょっと話を聞かせて欲しいだけだ』
そう言いながら悠然とした足取りでグロンギに近付こうとするディケイド。しかし既にディケイドを敵と認識したグロンギは構わず槍のような武器を振りかざして容赦なくディケイドへと襲い掛かり、それに対しディケイドも咄嗟に両腕で槍の攻撃を受け止めながらカウンターの拳でグロンギに反撃し、戦闘を開始していくのであった。
◆◇◇
トンネル内でそんな戦闘が行われる中、女性警官達が襲われた現場にパトカーに乗った綾瀬と、彼女から連絡を受け取った優矢、そしてたまたま彼と一緒に陵桜に向かう途中だったやまとが駆け付け、半壊されたパトカーと襲われた女性警官の下へ駆け寄り三人は目を開いた。
綾瀬「四人目の犠牲者……!」
優矢「っ、9号はッ?!」
殺された女性警官の痛ましい姿を見て険しげな表情になりながらもやまとに見せないように体で隠し、グロンギの居場所をもう一人の女性警官から聞き出そうとする優矢だが、その時……
―ドガアァンッ!―
『グォオオオオオッ?!』
「「「ッ?!」」」
突然トンネルからグロンギが吹っ飛ばされるように現れ、それを見て三人が驚きと共に振り返る中、更にトンネルの奥からディケイドがゆっくりと歩きながら現れた。
優矢「な、なんだアイツ……?」
綾瀬「未確認……10号?」
優矢と綾瀬は現れたディケイドを呆然と見つめ、やまとは怯える女性警官の肩を抱いて優矢達の後ろに急ぎ下がらせていく。そしてディケイドはグロンギの攻撃を上手く捌きつつ素早いパンチの応酬で殴り飛ばすと、腰に巻いたバックルのサイドハンドルを開き、左腰のライドブッカーから一枚のカードを抜き取った。
ディケイド『情報提供の礼だ、受け取れ』
そう言いながらカードをバックルに装填し、両手でサイドハンドルを閉じるようにスライドさせていった。
『FINALATTACKRIDE:DE·DE·DE·DECADE!』
電子音声が響き渡ると共に、ディケイドとグロンギの間にファイナルアタックライドのカードの形状をした十枚のビジョンが出現していく。それを確認したディケイドは空高く跳躍して右足を突き出すと、飛び蹴りの態勢のままグロンギに向けてカードを突き破るようにフィールドを次々と潜り抜けていき、そして……
ディケイド『ハアァァァァァァァァアッ!!』
―ドゴオォォンッ!!―
『グ、グオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーッ?!!!』
ディケイドの必殺技の一つ、ディメンションキックがグロンギに炸裂し、グロンギは断末魔の悲鳴を上げながら吹っ飛ばされ爆散していったのであった。
優矢「アイツ……自分の仲間を……?!」
同じ未確認を倒したディケイドを見て優矢達が驚愕を隠せないでいると、ディケイドは深い溜め息を吐きながら両手を叩くように払って身を起こし、トンネルの中に止めたディケイダーの下へ歩き出していく。
優矢「ッ!待てお前ッ!何で同じ未確認を倒したッ?!」
ディケイド『俺をグロンギと一緒にするな!』
優矢からの問いに簡潔にそう返したディケイドはディケイダーに跨りエンジンを掛け、マシンをUターンさせてその場を去ろうとする。
優矢「答えになってねぇぞっ!おい待てっ!」
綾瀬「優矢ッ!」
優矢は去っていくディケイドに向けて叫びながら追い掛けようとするが、綾瀬は深追いしようとする彼の腕を掴んで慌てて引き止め、二人がゴタついてる間にディケイドはディケイダーを駆りその場から走り去っていくのであった。