仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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第二章/クウガ×らき☆すたの世界④

 

―光写真館―

 

 

零「──成る程。で、お前らもお前らでその陵桜って学校に何かあるんじゃないかと思い立って、情報収集に向かった訳か」

 

 

なのは「うん……取りあえず聞けた話だと、女性警察官が狙われてばかりいるっていうのは一般の人達の間でも知れ渡ってるみたい……」

 

 

スバル「あと、あの辺りじゃ未確認生命体の事件とかあんまり起こってはいない、とか……」

 

 

その日の夜。写真館の受付では今日の出来事や情報を交換して話し合う零達の姿があり、グロンギとの戦いからそのまま写真館に戻ってきた零は陵桜学園での二人の話を聞いて顎に手を添え思考に浸っていく。

 

 

零「あの周辺で事件は起きていないか……となると、奴の話も口からのデマカセって訳でもなさそうだ……」

 

 

なのは「?何の話……?」

 

 

零「……いや、こっちの話だ。まぁ取りあえずそっちも情報収集お疲れさん、と言いたい所だが……お前ら、何でそんな揃ってグッタリしてるんだ……?」

 

 

そう、先程から会話してる間ずっと気になっていたのだが、何故かなのはもスバルも受付カウンターに突っ伏していたり、壁に力無く寄り掛かってたりとやたら疲れ切った様子でグッタリしているのだ。

 

 

何かあったのだろうか?と、そんな純粋な疑問から訝しげに二人にそう問い掛ける零に対し、カウンターに突っ伏していたなのはが徐に顔を上げて何処か言い辛そうに視線を逸らす。

 

 

なのは「べ、別に対した事は何もなかったよっ……?ただその……その学園の情報収集に行った時、ちょっと変わった女の子に絡まれたぐらいで……」

 

 

零「……変わった女の子?」

 

 

何だそりゃ?と頭の上に浮かべる疑問符の数を増やして零が首を傾げると、なのはの隣の席に座って壁にもたれ掛かるスバルが苦笑いと共に口を開いた。

 

 

スバル「えと、私達もよく分かんないんですけど……何かその女の子曰く、私となのはさんがアニメ?のキャラクターにそっくりだとか大騒ぎになったんですよ……。それでその後、女の子から色々質問攻めにあって──」

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

『ねえねえねえねえ、二人はどうやってこっちに来たの?!っていうか何で?どっから来たの?!やっぱテレビの中から?取りあえずスバルがいるって事は『StrikerS』からってのは間違いないよね!あ、でももしかしてサウンドステージXの辺りとか?見た目の年齢的に『ViVid』や『Force』って事はないだろうけど……いやでも映画とかもあるしなぁー。もしかするとTV版準拠じゃないって事もありだそうだし、そうなるとマテリアル娘達もいたりとか──』

 

 

なのは『ちょ、ちょちょちょちょっとっ、待って待って待ってっ!!さっきから一体何の話をしてるのかサッパリ──?!』

 

 

『ああもうっ、いい加減にしときなさいよアンタはっ?!初対面の人間相手にまでオタクムーブ全力で絡むんじゃないわよっ!』

 

 

『あひっ、あひゃひゃひゃひゃっ!ひょ、ひょっろひはいっへばかがひーん!ほっへはひっはら……って、あーッ!ちょっと待ってよ二人共っ!まだ聞きたい事が沢山──!』

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

スバル「──みたいな感じで、女の子からの質問の勢いとか、名前とか魔法の事まで言い当てられた事にビックリしちゃってつい慌てて逃げてしまった……っていうのが今日の出来事でしてっ……」

 

 

零「……成る程……つまり、ふっ……この世界じゃお前らに似たキャラクターがアニメになってる上に、しかも、魔法少女とか呼ば……クッ!」

 

 

なのは「顔逸らしてるけど今絶対笑ってるよねッ?!ほらもおスバルゥーッ!!零君に話したらこういう反応されるから絶対言わないでってあれほど口止めしたでしょおーッ?!」

 

 

スバル「あ、す、すみませんっ!ぼーっとしてたからついポロッと……!」

 

 

零「ん、んん……!まあ落ち着け、そう怒ってやるなよ。いや、俺は悪くないと思うぞ?違う世界でも形は違えど、お前達の名が知れ渡っているのは幼馴染や教官としても鼻が高いからなぁ。だから寧ろ堂々と胸を張ってもいいだろう魔法少女リリカルなのはさん―ガァアンッ!―イッタァッ?!おまっ、いきなり足踏む事はないだろォッ?!」

 

 

なのは「そっちがあからさまに悪意しかない言い方するからでしょっ?!大体私、自分からそんな風に名乗った覚えなんかないもんっ!」

 

 

零「だからって手ぇ出すのは違うだろうがっ!魔法少女のクセに大人気ない真似なんかしてんじゃねぇよっ!」

 

 

なのは「にゃああああ!また言ったッ!もう今日という今日は絶対に許さないんだからァーッ!!」

 

 

スバル「ちょ、ちょっと二人ともっ?!落ち着いっ、ちょ、喧嘩は駄目ですってばーッ!!」

 

 

零の魔法少女弄りから勃発した姉弟喧嘩を始める零となのはを止めようと泣きそうになりながらも仲裁に入るスバル。だが二人はその声も聞こえていないのか聞く耳を持たず、近くの物をとにかく投げ合ったり、遂には椅子を持ち上げて武器に使ったりとドンドン悪化していく状況に頭を抱えそうになった。その時……

 

 

―ガチャッ―

 

 

優矢「こんばんわー……って、アレ?此処って喫茶店じゃなかったっけ?」

 

 

綾瀬「……どう見ても違うわよね」

 

 

不意に写真館の扉が開かれ、優矢と綾瀬が中に入ってきたのだ。二人が写真館の中を物珍しげに見渡す中、零となのはの喧嘩を仲裁しようとしていたスバルが二人に気付いて慌てふためく。

 

 

スバル「あ、い、いらっしゃいませー!ほらお二人もっ、お客さんが来ちゃいましたしもうその辺でっ……!」

 

 

なのは「ぜぇっ、ぜぇっ……だって、先に始めたのは零君の方っ……って、アレ……?その制服って、確か陵桜の……?」

 

 

優矢「え?」

 

 

二人が喧嘩で投げ合った物を慌てて床から拾い集めるスバルに止められて渋々引き下がると、なのなは優矢が着ている見覚えのある制服を見てそう呟き、一方で綾瀬は椅子に潰されて床に突っ伏す零の姿に気付き最初はギョッとするものの、良く見ると見覚えのある顔だと気付いて更に驚きを浮かべた。

 

 

綾瀬「も、もしかして貴方、黒月巡査?!どうして此処に……?」

 

 

零「グゥッ……どうして、と言われてもね……一応居候先なんですよ、この写真館……」

 

 

にしてもコレはないだろうッ……とぼやきながら零が頭の上の椅子を退けて徐に身を起こす中、来客の声を聞き付けたのか、奥の方から栄次郎が顔を出した。

 

 

栄次郎「あれ、零君達のお客さんかい?それならどうぞどうぞ!珈琲なら自信ありますんでね!」

 

 

零「……何か知らんが勘違いされてるな……」

 

 

スバル「えと……う、うちの館主さんもああ言ってますし、良かったらどうでしょう?あ、勿論サービスとかしますよ!」

 

 

優矢「えっと……じゃあ、姐さん。せっかくだからご馳走になりましょうよ」

 

 

綾瀬「……そうね。なら、お言葉に甘えて……」

 

 

いきなりの誘いに若干戸惑いながらも、栄次郎からの好意を無下には出来ないと素直に受け入れる優矢と綾瀬。それを見てスバルもこれで零もなのはが喧嘩を続行する事はないと踏み、内心「YES!」とガッツポーズを取っていくのであった。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

撮影スタジオ内に通され、奥から栄次郎の容れる珈琲の香ばしい匂いが漂う中、優矢と綾瀬は席に着いて先程彼等が遭遇した未確認生命体10号……ディケイドについて話し合っていた。

 

 

綾瀬「未確認を倒した彼……貴方は何者だと思う、優矢?」

 

 

優矢「何って、未確認10号だろ?次は倒してやるっ」

 

 

バシィッ!と、自身の掌に拳を打ち付けてディケイドへの対抗心を燃やす優矢。しかし一方で綾瀬の方はディケイドを其処まで敵視していないのか、落ち着いた口調で先程の現場での戦いを思い返し冷静な分析を口にする。

 

 

綾瀬「でも私には、彼はグロンギよりも貴方に近い存在に見えたわ」

 

 

優矢「?俺に、近い……?」

 

 

綾瀬「そう。……仮にもし、彼もグロンギと戦う存在なのだとしたら、彼の話を聞いてみたいと思うの」

 

 

優矢「聞いてみたいって……何だよそれッ!俺の代わりに戦わせようって事かッ?!」

 

 

ディケイドに肩入れする綾瀬に感情を剥き出しにし、思わずテーブルを叩いてしまう優矢。その大きな音に奥のなのはと栄次郎、珈琲を運ぼうとしたスバルも驚き肩をビクつかせる中、綾瀬はそんな彼女達に申し訳なさそうに会釈しながら小声で優矢を宥めた。

 

 

綾瀬「勝手に早とちりしないでっ。彼もグロンギと戦う者なら、貴方の力になってくれるかもと思っただけよっ」

 

 

優矢「え……あ……そっか……」

 

 

確かにディケイドがグロンギだけと戦う存在なら、今まで一人で戦ってきたクウガである自分にとっても大きな助けになる。綾瀬がそう言ったのも自分を心配しての事だと理解して優矢も安堵と嬉しさから思わず笑みを浮かべる中、其処へ零がカメラを手に二人の顔を撮りながら話に割って入った。

 

 

零「何やら大分親しげですね、綾瀬刑事。そちらの少年は?」

 

 

綾瀬「あ……彼は桜川優矢。ちょっと捜査に協力してもらってるのよ」

 

 

零「ほう……ちょっと、ですか……」

 

 

クウガの事を伏せ、あくまでも一般の捜査協力者である体で優矢を紹介する綾瀬。一方で零は何処か意味深な眼差しで優矢の顔を見つめていき、その嫌な視線に優矢も迷惑げに眉間に皺を寄せていく。

 

 

優矢「な、何だよ……」

 

 

零「……いいや、何も。それより綾瀬刑事、未確認の事件の件で一つ気付いた事があるのですが、良ければ少し時間を頂いても大丈夫でしょうか?」

 

 

綾瀬「え?」

 

 

優矢「いきなり出てきて図々しい奴だな……素人に何が分かるんだよっ」

 

 

零「少なくとも、あの4号とか言う訳の分からん奴よりもマシな事は言えると自負は出来るさ。何せ同業者だしな」

 

 

優矢「はあ?!」

 

 

わざわざ煽るような口ぶりをする零に優矢もカッとなって椅子から立ち上がるが、零はそれを無視して綾瀬の方を向いたまま話を続ける。

 

 

零「どうします、綾瀬刑事?話を聞くだけならタダな上、何よりこの解決法は4号の力を借りなくとも警察の力だけで行える……それなりに価値はあるとお約束出来ますが?」

 

 

綾瀬「…………詳しく聞かせてもらえるかしら?」

 

 

優矢「なっ……姐さんっ?!」

 

 

自分の力を必要としない零の話に耳を傾けようとする綾瀬に驚く優矢。そして零と綾瀬が事件の話を進めていく中、優矢はその様子を面白くなさそうに一瞥してそのまま写真館を出て行ってしまった。

 

 

 

 

◇◆◆

 

 

 

 

綾瀬を置いて写真館を飛び出した優矢は、表に停めてあるバイクに跨りエンジンを掛けようとするが、其処へ優矢を追い掛けてスバルが写真館から出てきた。

 

 

優矢「……コーヒー代か?」

 

 

スバル「あ、いえ、そういう訳じゃないんですけど……」

 

 

両手を振って否定し、スバルは両手の指を絡めながら少し言い難そうに優矢に問う。

 

 

スバル「あの、一つ聞きたいんですけど……優矢さんってもしかして、4号……ですか?」

 

 

優矢「……何でそう思う」

 

 

スバル「えっと……さっき零さんが話してた時、4号の事で優矢さんが急に怒り出したから、もしかしたらそうなんじゃないかと思って……」

 

 

優矢「……もしそうだったらどうする?怖いか?」

 

 

スバル「いえ、そんな……!ただ、凄いなって……誰かを守る為にあんな怪物と戦えるなんて……」

 

 

自分も前線で戦う身であった為に分かるが、自らの意志で拳を握り締めて戦いの場に身を投じるなど余程の勇気がなければ出来ない筈。それなのに普通の学生の身でありながらグロンギと戦う優矢を凄いと褒めるスバルだが……

 

 

優矢「……別に、誰かの為に戦ってる訳じゃない」

 

 

スバル「……え?」

 

 

優矢「俺はただ、自分の為に戦ってるだけだ。そうじゃなきゃ、俺は……」

 

 

クウガとして自分がグロンギ達と戦うのも、全ては自分の為でしかない。そう言って今度こそバイクのエンジンを掛け走り去ろうとする優矢だが、スバルは僅かに逡巡する素振りを見せた後、優矢の背中に向けて口を開いた。

 

スバル「でも……!あの綾瀬さんって人、優矢さんの事とても心配してると思うんです……!だから零さんの話を聞こうとしてるのも、きっと優矢さんの負担を少しでも軽くしたい一心からなんじゃないかって……」

 

 

優矢「っ……何でそんな事が分かんだよっ」

 

 

まるで綾瀬の気持ちが分かるような口ぶりのスバルに優矢は思わず語気を強くして振り返ると、何処か複雑げな様子で俯くスバルの表情から何かただならぬ事情を悟り、もしやと思い問い掛ける。

 

 

優矢「もしかして……お前も誰かを心配してるから、か?」

 

 

スバル「……今の私達、前みたいに直接力になる事が出来ないから……警察官の綾瀬さんと違って、無事に帰って来て欲しいって祈る事ぐらいしか出来ませんけどねっ」

 

 

たははっ、と頭を掻いて何処か空元気に笑うと、スバルは優矢に頭を下げて一礼しそのまま写真館の中に戻っていく。そして優矢もそんなスバルの後ろ姿を見送ると、綾瀬が残る写真館を見上げながらスバルに言われた言葉を思い出し、複雑げに眉を顰め無言のまま俯いてしまうのであった。

 

 

 

 

 


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