仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
何もない白い世界…
辺り一面真っ白な空間…
その空間の中心に彼―――黒月零は其処にいた。
零「……ここは……」
此処が何処だか分からない。
だが、何故かその光景には見覚えはあった。
そんな妙な違和感を感じながら辺りを見回していると急に景色がガラリと変わり、今度は深い霧に包まれた海が見える丘へと景色が変わった。
零「?何だ………ん?」
突然変わった景色に戸惑って辺りを見回していると、そこであるモノの存在に気付いた。霧に包まれた丘の一番向こうにある一本の大きな大樹、そしてその大樹の下にある石……いや、石で作られた小さな墓石だ。
零「……墓…?」
疑問を口にしながらゆっくりと歩き出し、大樹の下にある墓石の前にまで来て屈み込む。墓石は全体に汚れを被っており、誰の墓なのか確認出来ない。取りあえず被った汚れを手で払ってみると、汚れの下に名前らしきモノが刻まれており、それを見て自然とその名を口にする。
零「――――リィル…アルテスタ…?」
所々文字が削られていて読みづらいが、墓には確かにそう刻まられていた。名前からして女性のモノだと思うが、そこで一つの疑問が覚えた。
零「……なんで…こんな所に墓があるんだ…?」
ここら辺一帯に人の気配など感じられないし、見渡す限り近くに町があるようには見えない。何故こんな人気のない場所にこんな墓が立てられているのか、そんな疑問を考えていると……
―…ザザザァ…ザザザザザザザザザザァッ!!!―
零「…ッ!?グッ!?な、何っ…!?」
突如何の前触れもなく襲い掛かってきた激しい頭痛と脳裏に流れるノイズ。突然のそれに零は頭を抱えその場に膝を付いて苦しみ出した。そして……
―ザザザァ…ザザザザザザザザザザァッ!!―
『もう!いきなりぶつかっておいてその態度はないんじゃない!?』
零「っ?!な…に…?」
激しく掻き乱れるノイズと共に流れた妙な光景。突然のそれに零は思わず頭を抱えながら顔を上げるが、そこにあるのはリィル・アルテスタと名が刻まれた墓石しかない。
―ザザザァ…ザザザザザザザザザザァッ!!―
『へぇ~零も剣術とか出来るんだ…実は私もちょっとカジってるんだよ?まぁ、腕前とかは全然なんだけどね�』
零「くっ…な…ん……」
そうしてる間にも頭に流れる映像は止まる事なく流れ続ける。ノイズと共に流れる映像に映るのは、銀髪の長髪をした十代位だと思われる少女。だが、ノイズに邪魔されて顔までは分からずその少女が誰なのか確認できない。
―ザザザァ…ザザザザザザザザザザァッ!!―
『もぉ~またそんな言い方して……ちょっとは人を思いやる気持ちも学ばないとダメだよ?』
零「アッ…ガッ…!」
―ザザザァ…ザザザザザザザザザザァッ!!―
『え?零って料理出来ないの?しょーがないなぁ……じゃあ、私が特別に教えてあげる♪』
零「グッ…クッ…!」
―ザザザァ…ザザザザザザザザザザァッ!!―
『村の皆に神子だとか聖女だとか色々言われてるけど……私だって普通の女の子なんだよ?皆みたいに笑ったり泣いたりだってするし、村の女の子達みたいにお買い物したり美味しい物を食べに行ったり…恋だってしたいし…//』
零「ッ…止めろ…止めっ……」
頭にのしかかる頭痛に苦しむ中、次々と脳裏に流れる少女の映像。
この映像が何なのか分からない、この少女が誰なのか分からない、ワカラナイ。
なのに……
―ザザザァ…ザザザザザザザザザザァッ!!―
『私?私はリィル・アルテスタ。よろしくね、零♪』
零「止めろっ…止めろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!!」
なのに何故…こんなにも…胸が張り裂けそうになるのだろうか……
◆◇◆
零「ウアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!!ッ……ハァ…ハァ…ハァ………え…?」
飛び起きるようにベッドから起き上がり、最初に目にしたのは光が差し込む見慣れない窓。荒れた息を整えながら呆然と辺りを見回していくと、どうやら此処は何処かの病院の病室のようだ。
零「…?病室…?なんで…こんなところに…」
頭上に疑問符を浮かべながら辺りを見回していると、ベッドの隣に置いてある机の上の鏡に目が止まった。そこに写るのは頭から左目に掛けて包帯を巻き付け、身体中にも痛々しく包帯を巻いた自分の姿だった。
零「……そうか……俺は……あの時……」
左目に巻いた包帯に触れながら小さく呟き、徐々に今までの事を思い出していく。望を誘拐したドーパントを追っていたこと、ロストとの戦いのこと、ロストの正体のこと、そして……
零「……そうだ……負けたんだな……俺は……」
自分の姿を鏡で見つめながらポツリと呟き、窓の方へと視線を移していくと様々な疑問が生まれてくる。望は無事に取り戻せたのか、ロストは一体どうなったのか、自分が倒れた後、皆はどうなったのか。そして…
零「…リィル…アルテスタ…何なんだあれは…」
先程自分が見た夢、その中に出て来た少女の名が自分の心を掴んで離さなかった。
あの少女は一体何者なのか……
あの映像は何なのか……
何故あの少女は自分の名を知っていたのか……
そしてあの場所と墓石は何なのか……
そんな疑問が次々と絶える事なく浮かんでくる。そんな時……
「…………パパ…?」
零「……ん…?」
不意に聞こえた声。それを耳にした零は意識を戻して病室の入り口の方へと振り向くと、そこにいたのは何かに驚いたように目を見開き両手に花束を持った自分の愛娘。
零「…ヴィヴィ…オ…?」
ヴィヴィオ「……パパ……グスッ……パパァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
零「え?ちょ?!―ガバァ!―ガハアァッ!?」
突然両手の花束から手を離して零の胸元に泣きながら飛び込んできたヴィヴィオ。零はいきなりの行動に驚きながらも何とかヴィヴィオを受け止めるがその衝撃が傷付いた身体に響き、思わず涙目になってしまう。
ヴィヴィオ「ヒグッ、うっ…パパ…パパァ…!」
零「ゴフッ、クッ…ヴィ、ヴィヴィオ…ちょっと待て…!傷っ!傷がぁ!!�」
ギュゥゥゥ!と抱き着いたまま胸元で泣き出したヴィヴィオだが流石に今の状態ではそれがかなり効いてるらしく、零は青い表情をしながら必死にヴィヴィオにタップを掛ける。そんな時……
―ガラガラガラッ―
なのは「もう、ヴィヴィオ~?病院じゃ静かにしないと駄目だっ……よ…」
フェイト「まあまあ。ヴィヴィオだって零に早く会いたかったんだから、そんなに怒らなっ………」
すずか「?どうしたの二人とっ……も…」
零「………あっ…」
不意に入り口の扉をくぐって現れたのは三人の幼なじみ。だが零の姿を見た途端何故か硬直してしまうが、それに気付く余裕がない零は慌てて三人に呼び掛けた。
零「ちょ、丁度良かった!三人とも!悪いがヴィヴィオをベッドから下ろし――――」
フェイト「…れ…い?………うっ……零ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!」
すずか「零君…目が覚めっ……ヒクッ……うえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇんっ!!!!」
零「…へ?」
なのは「…目が…目が覚めたんだね……グスッ……良かったよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
零「Σちょ?!ちょっと待て!?止まれ!?来るな!?ストップっ!!これ以上は本当にま―ガバアァッ!!!―ΣΣオアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!?」
零の必死な制止も振り切り突然泣き出したかと思えば先程のヴィヴィオのように抱き着いてきた三人。その直後、青年の悲痛な悲鳴と共にメキバキボキィッ!!と言う何かが折れるような音が病室から響き渡ったらしい。
◆◇◆
数十分後……
零「……………」
フェイト「あ…あの…えーっと…�」
すずか「ご、ごめんね零君?嬉しくて…つい…�」
零「…心配してくれるのは嬉しいが…もう少し自重してくれないか?じゃないと…流石に俺でも死ぬ…」
なのは「ご、ごめんなさい…�」
ベッドの上に横たわりながらジト目でなのは達を睨みつける零。先程のは流石にまずかった、何せ三人が気付いた時にはもう意識はなかったし。二度目に目が覚めた時に『沈丁花が綺麗に咲き乱れる道を歩いていた』と告げて正に危険な状態だったらしい。因みにヴィヴィオは先程病院の一階にある売店に飲み物を買いに行って今はいない。
零「…ところで…本当なのか?俺が丸一日眠ってたっていうのは?」
なのは「あ、うん……翔子ちゃんと優矢君が病院に運んでからすぐに緊急手術をしたんだけど……それからはずっと……」
零「……そうだったのか…じゃあ…俺の左目は…」
フェイト「うん………外部から侵入した異物が眼球を完全に潰しちゃってるから…それにその異物も眼球の奥まで入り込んで取り出すのは難しいみたいで…多分…もう左目は二度と機能しないだろうって……」
零「……そうか……」
まぁ、左目の感覚がないから薄々気付いてはいたが…実際に言葉にして聞かされると少しショックだ。だがまぁ、右目が残ってれば特に問題はないか。
すずか「あ…で、でも安心して?昨日大輝さんって人が、零君の左目を治せる方法を知ってる人を紹介してくれるって言ってたから�」
零「…?海道だと?」
すずか「うん、詳しい事は聞かされてないけど…その人に任せておけば心配ないから安心していいって…」
零(……海道の奴が……どういうことだ?)
何故大輝が自分の左目を直せる人物を知ってるのか…いやそれ以前に、何故あの大輝が自分の左目を治してくれるのに協力してくれるのか。零はその不可解な点がどうしても引っ掛かっていた。
零「…まあ、詳しい話しは海道の奴から直接聞くとして…取りあえず、昨日何が起きたのか教えてくれないか?出来る限り詳しく」
なのは「え?あ…う、うん」
とにかく今は昨日何が起きたのか、そして自分が眠っている間に何がどうなったのか、現状を知る為に説明を要求したのであった。
◆◇◆
零「―――いきなり現れた黒いライダーに…翔子とは別のダブル…そして、ヴィヴィッド…か」
フェイト「うん……あと望さんもこの病院に搬送されて別の病室にいるけど、特に目立った外傷はないから明日辺りにでも退院出来るかもって」
零「まあ、誘拐されたってだけなら特に問題はないだろうが…やっぱり会社の方じゃかなり騒がれてるみたいだな」
なのは「それと、今日の夜あの御曹司さんが来るみたいだよ?昨日のことで話があるとか言って」
零「あぁ、あの社長がか。ハァ、また面倒な事になりそうだ……」
そう言いながら溜め息を吐くと、零は先程すずかから貰った新聞の見出しに目を向ける。そこには、先日の結婚式で起きた事件のことや二人の父親である会社の社長からのコメントなどが大きく書かれていた。
零「成る程…大体のことは分かったが、そのもう一人のダブルとヴィヴィッドはその後どうしたんだ?」
フェイト「それが…私達も優矢や翔子から聞かされただけで詳しくは知らないの…だからその後の行方とかまでは…」
零「…そう、か……ハァ…またアイツに借りを作ってしまったな……」
魔界城の世界といいfirstの世界といい、一体何処まで借りを作らなくてはならないのか。複雑そうな表情を浮かべて溜め息を吐く零だが、そこでふとある事を思い出した。
零「――なぁ、そういえばフェイト達の方にもライダーが現れたんだろう?聞いたところだと龍騎系統のライダーみたいだが……一体どんな奴なんだ?」
先程なのは達から聞かされた黒いライダー…ガリュウの話を思い出し、その事が気になった零はなのは達にそう問い掛けた。だが…
『……………』
零「…?おい、どうした?」
何故かガリュウの事を聞いた途端なのは達は気まずそうに顔を俯かせ、零はそれに疑問そうに首を傾げた。するとなのはは俯かせていた顔を少し上げ…
なのは「…あ…あのね…?そのライダーのことなんだけど……落ち着いて聞いて欲しいの……」
零「?どうしたんだ…?」
重苦しい表情で何処か言い難そうに話すなのはに零は更に疑問符を浮かべ、そこへフェイトが代わりに話し始めた。
フェイト「その、ツカサとカノンが言ってたんだ……そのライダーが大輝に倒されそうになった時…ガリューが現れたんだって…」
零「ッ?!ガリュー…だと?!」
フェイトの口から告げられた事実に零は驚愕し耳を疑った。ガリューと言えば、あのルーテシア・アルピーノの召喚獣だったはずだ。そのガリューが何故この世界に、それも敵であるライダーを助けたりしたのか。それが理解出来ない零は少しだけ困惑するが、その時一つの可能性に辿り着いた。
零「まさか……」
なのは「うん、もしかしたら多分そのライダーは……ルーテシア……かもしれないって……」
零「っ!!」
告げられた名前に零は目を見開き驚愕した。ガリューがこの世界にいる理由やガリュウを助けた理由などそれしか考えられない。そして彼女がライダーとなって、自分達の前に敵として現れた理由は……
零(クッ…クアットロめ…あの二人だけじゃなくあの子までっ…!)
彼女がライダーとなってこの世界にいたのは、恐らくクアットロが絡んでいるのだろう。現にロストの事もあるし、それに智大からの情報でも以前零達が戦ったダークライダーのベルトもクアットロが所持していると言っていた。
多分ルーテシアが使っていたベルトもそれが関係しているのかもしれない。そこまで考えると零は顔を俯かせてベッドのシーツを力の限り握り締めた。
フェイト「…零?大丈夫?何か、顔色が悪いよ…?」
零「…っ!い、嫌…何でもない…ちょっと左目が疼いただけだ…」
フェイト「…?」
不意に覗き込んできたフェイトの顔を見て零は思わず顔を背け、そんな零の反応にフェイトは首を傾げた。
零(…言えるわけがない…ルーテシアの事だってあるのに…コイツ等に…フェイトにロストのことを話すなんて…)
ルーテシアが敵になったという事実だけでもショックなのに、あの二人までが敵になって現れたなど言えるはずがない。そんなことを話せば…フェイトがどんな顔をするか。それがとても恐ろしく、零は本当の事を話せずにいた。
なのは「…やっぱり…ショックだよね…ルーテシアがまたスカリエッティと一緒にいるだなんて…信じられないもん…」
零「…いや…ルーテシアは多分アイツ等に操られてるだけだろう。じゃなきゃ、ルーテシアがアイツ等と一緒にいる理由なんて考えられないさ…」
フェイト「そう…だよね。なら早くアイツ等の本拠地を見つけて…今度こそ捕まえないと…今度こそ…」
フェイトは難しげな表情を浮かべながら拳に力を込めてそう告げる。自分が長い間追っていて漸く捕まえたスカリエッティがまた何かを企んでいると言うのだ。その事にフェイトも思う所があるのだろう。それを隣で見ていたなのははフェイトの拳に自分の手を重ね、フェイトはそれに少し驚いた表情を見せながらなのはに視線を向けた。
フェイト「なのは…?」
なのは「大丈夫。フェイトちゃんの気持ちもちゃんと分かってるよ。今度は私達も一緒に戦うから、だから絶対にスカリエッティ達の居場所を見付けて、今度こそ決着を付けよう?そしてルーテシアも絶対助け出す……ね?」
フェイト「……うん!」
零「…………」
なのはの言葉にフェイトは微笑みながら頷き、すずかもそんな二人を見守るように微笑んでいた。そんな中、零はなのは達から視線を反らして一人考え込む。
零(……今は…今は黙っておこう…せめてはやて達が全員見付かるまで…それまでは…)
正直に言えば、どうやってあの二人のことを伝えたらいいのか分からない、それに無闇に事実を伝えて彼女達を悲しませるような真似はしたくない。
だから今は黙っておこう。時が来ればその時に話そうと、零は自分が知る真実を胸の内に仕舞い込んだのであった。