仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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第二章/クウガ×らき☆すたの世界⑩

 

 

その頃、未だ混乱に包まれる病院の一室ではベッドの上に横たわる綾瀬が弱々しく瞼を開いて意識を取り戻し、その傍らにはやまとと、綾瀬の手を握り締める優矢の姿もあった。

 

 

綾瀬「優矢……?」

 

 

優矢「綾瀬さん……」

 

 

傍らにいる優矢の顔を見て、一瞬だけ僅かに驚いた様子を見せる綾瀬。しかし直後に今の自分の姿、そして病室の外から聞こえてくる人々の混乱の声で今までの事を思い出し、優矢に目を向けていく。

 

 

綾瀬「優矢……此処で何をしてるの……?」

 

 

優矢「ッ……俺は……俺はただ、あんたに誉めてもらいたかった……あんたに……笑って欲しくて、今まで戦ってただけだ……今の俺じゃ……戦えないよっ……」

 

 

ただの高校生でしかなかった自分がクウガなどという超常の力でグロンギと戦って来られたのも、全ては目の前の唯一人の笑顔の為だった。

 

 

なのにその戦う理由を無くしてしまえば、ちっぽけな自分にこの力をどう使えばいいのかなんて分からない。

 

 

唯一の理由であった目の前の大切な人を失えば自分はもう戦う事は出来ないと、綾瀬の手を握りながら優矢は悔しそうに俯き、やまともなのはもそんな優矢の姿をただ黙って見ている事しか出来なかった。

 

 

綾瀬「……私はもうすぐ死ぬ……そうすれば、この体もグロンギに変わるわ……そうなったら……貴方は私を殺せる……?」

 

 

優矢「ッ?!で、出来ない!出来る筈ないっ……!」

 

 

自分が尊敬する人を殺せる筈がない。首を横に振って強く否定する優矢に対し、綾瀬は力無く微笑む。

 

 

綾瀬「私の笑顔の為に、あんなに強いなら……世界中の人の笑顔の為なら、貴方はもっと強くなれる……」

 

 

綾瀬は弱々しい声を必死に振り絞りながら、優矢の手を強く握り返す。

 

 

綾瀬「私に見せて……優矢……あなたの力を……」

 

 

優矢「ッ……命令かよ、綾瀬刑事……?」

 

 

綾瀬「……えぇ……命令よ……」

 

 

綾瀬が振り絞って出した声を聞いて、優矢は一瞬だけ悲痛な顔になる。しかし、彼女の言葉の中にある確かな願いを感じ取り、ゆっくりと綾瀬に頷き返すと、自分が今すべき事の為に、握っていた綾瀬の手を離し病室から飛び出していった。

 

 

なのは「……綾瀬さん」

 

 

優矢が出ていくのを見届けた綾瀬の表情は、笑っていた。その笑顔を見たなのはが思わず綾瀬の名を呟くと、綾瀬は何処か罪悪感の入り交じった声音で優矢が握り締めていた自分の手を見下ろしていく。

 

 

綾瀬「ずっと、あの子が心配だった……無茶ばかりして……まるで弟みたいで……でも、そんなあの子の心を利用した……これは、罰ね……」

 

 

なのは「違う……違います!そんな……!」

 

 

これが今まで優矢を利用してきた自分への報いだと、後悔するように自嘲する綾瀬の言葉をなのはが否定して必死に首を横に振る中、やまとは僅かに逡巡する素振りを見せた後、綾瀬に向き直って静かに口を開く。

 

 

やまと「例えそうだったとしても、あの人は多分それでもいいと笑ってたと思うわ……ある日突然、人間でなくなった自分がこれからどうすればいいか、道に迷っていたあの人の標となってくれた貴女の為になるなら、って……」

 

 

綾瀬「……永森さん……」

 

 

やまと「……正直、そんな貴女がずっと羨ましかった……あの人を普通の人間でいられなくなるきっかけを与えてしまったのは私なのに、何もしてあげられない自分が嫌だったから……」

 

 

なのは(……何もしてあげられない、自分……)

 

 

今まで自分が抱えていた鬱屈した気持ちを始めて告白するやまとのその言葉に、なのはも今の自分の姿を重ねて無言のまま俯いてしまう。

 

 

そんな時、病室の扉からグロンギ達から逃げ切ったスバルとティアナが息も絶え絶えの状態で現れ、そのまま床に倒れてしまった。

 

 

スバル「ハァッ……ハァッ……つ、疲れたァああああっ……!」

 

 

ティアナ「た、弾も切れたしっ、あと少し遠かったから危なかったわねっ……取り敢えずあの二人も医者に任せた事だし、もう大丈夫でしょうっ……」

 

 

なのは「ス、スバル?!それにティアナも?!大丈夫?!」

 

 

病室に入ってくると同時にいきなり倒れてしまったスバルとティアナを見て、なのはも動揺しつつも慌てて二人に近付いて肩を貸し、取り敢えず近くにある椅子に二人を座らせて休ませていく。

 

 

スバル「だ、大丈夫です……ちょっと、休めば……って、あれ……?優矢さんは……?」

 

 

なのは「あ、優矢君なら今さっき出ていったけど……多分入れ違いになったんだと思うよ……」

 

 

取り敢えず、なのはは先程までの事をスバルに、これまでの経緯をティアナに説明していくのであった。

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

ビルが立ち並ぶ繁華街。其処には今なおグロンギ達が人々を襲い、死に絶えた人がグロンギとなってまた人を襲うという地獄絵図が続いており、そんな凄惨な光景を一際大きい高層ビルの屋上から眺めるガミオの姿もあった。

 

 

『リントは全てグロンギと化し、戦いを求め続ける。そしてこの世を究極の闇が覆い尽くす!』

 

 

―ブォオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!―

 

 

『……ん?』

 

 

人々の骸をグロンギ化させるガミオの咆哮を掻き消すかのように何処からかエンジン音が鳴り響いた。

 

 

それを聞いたガミオが視線を下ろすと、其処には高層ビルの貨物用エレベーターから現れたディケイダーがグロンギを次々と跳ね飛ばしていく姿があり、ディケイダーに乗る青年……零はマシンを停めてヘルメットを徐に外していく。

 

 

『お前はクウガでもリントでもない』

 

 

零「……知るか」

 

 

ガミオの言葉を短く一蹴し、ディケイダーから降りた零は腰に巻いたままのドライバーのバックルを開くも、そんな零を見下ろしたままガミオは構わず言葉を続ける。

 

 

『どうやらお互い、この世界にはいてはならない存在らしいな』

 

 

零は黙ってガミオの言葉を聞きながら、ライドブッカーを開いてディケイドのカードを抜き取った。

 

 

『消えよ。リントは全て殺し合うグロンギとなる……それが宿命だったのだ』

 

 

零「……俺も嘗て、アンタと同じ事を考えていた気がするよ。人間とは所詮、戦い合う事しか出来ない。全てを破壊する、そんな存在だと……変身!」

 

 

『KAMENRIDE:DECADE!』

 

 

バックルにカードを装填し、零は電子音声と共にディケイドに変身しながらガミオに目掛けて高らかに飛び上がり、ガミオの頭上を一息で飛び越えた。そしてガミオの背後に着地すると共にディケイドはガミオに突っ込み殴り掛かるが、ガミオは僅かに身を逸らして拳を避けながら逆にディケイドを殴り飛ばしてしまった。

 

 

ディケイド『ぐうっ?!うぁああああああああああッ!!』

 

 

ガミオの攻撃を受けたディケイドは高層ビルの屋上から落とされ、そのまま地上へと叩き付けられてしまう。

 

 

ディケイドに変身しているとは言えダメージは流石に半端ではないが、其処へ追い討ちを掛けるかのように地上に落ちたと同時に、ディケイドの周囲にいたグロンギ達がディケイドの姿を見つけてまるでゾンビのように迫って来ていた。

 

 

ディケイド『グッ……クソッ……一体どれだけの人間がグロンギに変わったんだっ……!』

 

 

『ガァアアアアアアッ!!』

 

 

『シャアアアアアアッ!!』

 

 

四方から続々と迫るグロンギの大群を見回しながら思わず毒づくと、ふらつく身体を起こしたディケイドは両手を叩くように払って襲い掛かるグロンギ達を迎え撃っていき、ガミオも近くまで降り、その光景を眺めていた。

 

 

そしてディケイドは最初に飛び掛ってきたグロンギの突撃をかわしながら脇腹を蹴り付けて退け、次に背後から羽交い締めして身動きを封じようとしたグロンギを強引に払い除けながら殴り飛ばし、左腰のライドブッカーをソードモードに切り替え周囲のグロンギ達を払うように剣を振るっていくが、それでもグロンギ達の猛攻は止まらず、寧ろ戦闘音を聞き付けて更にグロンギの数が増え、逃げ道を完全に塞いでいってしまう。

 

 

ディケイド『チィッ!邪魔をするなぁああああッ!!』

 

 

―ガギィイイイイインッ!!ザシュウゥッ!!ズバアァッ!!―

 

 

『ギャアッ?!』

 

 

『グァアアッ!』

 

 

それでもディケイドは抵抗を続けてグロンギ達を次々と斬り捨てていくが、やはり数が違い過ぎるグロンギ達に苦戦を強いられて徐々に戦い方も荒々しくなりつつあった。

 

 

倒しても倒しても、次から次に襲い来るグロンギ達の数を前に体力も徐々に限界に近付き、半ばヤケクソでライドブッカーを振り回していくも、グロンギの一体が死角からディケイドに突進して吹っ飛ばしてしまい、そのまま壁に叩き付けられた衝撃で変身が強制解除されボロボロの姿の零に戻ってしまった。

 

 

零「ガハァッ!ぅッ……ッ……クソッたれっ、めッ……!」

 

 

『アァアアアアアアアアアッ!!』

 

 

『グルァアアアアアアアアッ!!』

 

 

血塗れの手で壁に手を付きながら戦いを続けようとする零だが、そんな零にグロンギの大群が一斉に群がっていき、疲労困憊でまともに動けない零を四方から容赦なく殴り飛ばしていってしまう。

 

 

零「グゥッ?!この世界が、俺の死に場所っ……?」

 

 

グロンギ達の凄まじい力で絶え間なく殴られ続け、意識が朦朧とする中で一瞬自分の死を悟る零だが、その時ふと、破滅に向かう自分達の世界、そしてなのは達や他の仲間達の顔が頭を過ぎった。

 

 

零「ッ……!ふざけるなぁああああああッ!!」

 

 

―バキィイイッ!―

 

 

『ブァアアッ?!』

 

 

光を失い掛けていた瞳に力が戻り、零は闇雲にグロンギ達を殴り続けていく。だが生身の人間がグロンギ達に適う筈もなく、抵抗も虚しく返り討ちにあってしまう。

 

 

零「グッ、ァアッ……ウワァアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!」

 

 

遂にはグロンギ達に囲まれ、零の身体をバラバラにしようと無数の醜い手が伸びて零の腕や足、首を掴んで嫌な音を立てていく。

 

 

そのあまりの激痛に零も最早悲痛な悲鳴を上げる事しか出来ず、完全に追い詰められて絶体絶命の危機に陥っていた。その時……

 

 

 

 

 

 

―ブウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーオオオォンッ!!!!―

 

 

 

 

 

──何処からともなく、青空にまで響き渡る轟音のようなエンジン音が鳴り響いた。

 

 

それを耳にした零が振り返ると、其処にはクウガに変身した優矢がバイクを駆って踊り場の階段を駆け下りて来る姿があり、そのまま猛スピードのウィリーでグロンギ達を薙ぎ払っていったのだった。

 

 

そしてその隙に零もクウガの乱入により数が減った他のグロンギ達を力づくで払い除けていき、クウガを見据えて僅かに笑みを浮かべていく。

 

 

零「ハァッ……ハァッ……来たか……」

 

 

クウガ『……ああ』

 

 

零の目をまっすぐ見つめ返して頷き、クウガはバイクから降りてグロンギ達と戦闘を開始していく。

 

 

クウガ『俺は、戦う!』

 

 

零「……あの人の為か?」

 

 

クウガ『あんた一人に戦わせたら、あの人は笑ってくれない!』

 

 

グロンギ達の攻撃を掻い潜りながら突き進み、クウガは拳を振りかざして必死に戦い続けていく。しかし……

 

 

『ヌゥウウウウウウォオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!』

 

 

―バチィイイイイイイッ!!ドッガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーアアアァァンッッ!!!!!―

 

 

零「ッ?!ぐっ、うぐぁああああッ!!」

 

 

クウガ『ガハァアアッ?!』

 

 

上空に浮遊するガミオが巨大なエネルギー波を地上へ打ち込み、他のグロンギ達も巻き込みながら零とクウガを吹っ飛ばてしまい、そのあまりの威力にクウガも変身が解けて優矢に戻ってしまう。

 

 

『見たか!人間は強さを求め、戦いを求める!グロンギになるのも運命だ!』

 

 

倒れて悶え苦しむ優矢を指し、人間の本性が闘争を求めるグロンギに等しき存在であると自信に満ちた声で語るガミオ。

 

 

だが、零はボロボロの身体をふらつきながら起こして立ち上がり、ガミオを睨み付けた。

 

 

零「違うなっ……この男が戦うのは、誰も戦わなくていいようにする為だッ!」

 

 

『……何?』

 

 

零「例え自分一人が闇に墜ちたとしても、誰かを笑顔にしたいッ!そう信じてるッ!」

 

 

力強くそう言い切る零の言葉を聞き、傷付いた身体を起き上がらせた優矢は呆然と零を見つめていく中、そんな優矢を指差し、零はガミオに向けて告げる。

 

 

零「コイツが人の笑顔を守るなら……俺は、コイツの笑顔を守るッ!」

 

 

優矢「……お前……」

 

 

零「……知ってるか?コイツの笑顔、悪くない」

 

 

零のその言葉を聞いた瞬間、優矢の中で一つの強い決意が生まれ、優矢の表情も力強い表情に変わっていく。その変化を目にしたガミオも戸惑いを露わにし、動揺を浮かべて零を睨み付けた。

 

 

『貴様は、一体何者だ?!』

 

 

そう問い掛けるガミオに対し、零は不敵な笑みを浮かべて取り出したディケイドライバーを腰に装着し、左腰に出現したライドブッカーから抜き取ったディケイドのカードをガミオに見せるように掲げていく。

 

 

零「通りすがりの仮面ライダーだ……」

 

 

『ッ?!』

 

 

零「憶えておけッ!変身ッ!」

 

 

『KAMENRIDE:DECADE!』

 

 

零はカードをバックルに装填し、鳴り響く電子音声と共にディケイドに変身していく。そして変身を完了すると同時にライドブッカーが独りでに開かれ、中から絵柄の消えたクウガのカードを含む三枚のカードが飛び出していき、ディケイドがそれらを手に取った瞬間、絵柄のなかった三枚のカードに絵柄が浮き出ていった。

 

 

ディケイド『……優矢、いくぞ』

 

 

優矢「……ああッ!」

 

 

ディケイドの呼び掛けに力強く答えて頷き、優矢は腹部に両手を翳してアークルを出現させ、変身の構えを取った。

 

 

優矢「変身ッ!」

 

 

高らかに叫び、優矢はクウガに変身してガミオに向けて拳を構えていく。だが左右から再び大群のグロンギが現れたのを目にし、先ずはグロンギの大群を倒す為に二人はそれぞれ左右に別れグロンギ達と戦闘を開始していくのだった。

 

 

 

 

 

 


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