仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
―喫茶店・Green Cafe―
その後、Green Cafeでバイトを始めた零達はそれぞれの仕事を受け持って自分達の作業を行っていき、客足の絶えない喫茶店の仕事を数時間熟した。そして休憩時間、作業を一通り終えた零は店内のテーブルの一つに座って休んでいた。
零「ふぅ……思ったより疲れたな……」
テーブルの上に顔を俯せ伏せながら疲れた声を漏らす零。因みに現在なのは達はケーキ作りの為に必要な材料を切らしたという事で、ミナとウェンディ(祐輔)と共に商店街へと買い出しに行ってる。その間に少しでも体力を回復させておこうと零はこうして休んでいるのだが、なんだか客のいない店内にポツンと一人で居ても妙に寂しい気がする。そんな事を思っていると、店の奥から祐輔が現れ零の座るテーブルの向かいに腰を下ろした。
零「ん?お…よぉ、祐輔。お疲れさん」
祐輔「お疲れ様、どうでした?仕事の方は?」
零「むぅ…やっぱり、久々の喫茶店の仕事は少し骨に来るな……俺ももう年か?」
祐輔「いや、零さんもまだ十代でしょ」
肩を軽く叩きながらそう呟いた零に祐輔は思わず苦笑を漏らしてしまう。そして零は今度は片腕を軽く回しながら何と無しに店内を見回すと、カウンターの近くの壁に張り付けられた写真に気付いた。
零「…?あれは……」
祐輔「え?……あぁ、あの写真ですか?あれは随分前に撮った家族写真ですよ」
零「ほぉ?そういえば皆で話している時にもああいうのが視界の端に映ってた気がするが……成る程、家族写真か」
そう言いながら零はテーブルからゆっくり立ち上がるとカウンターの近くの壁に張り付けられた写真に近付き間近で眺めていく。幼い祐輔と佐知とこの世界のなのはが一緒に笑って撮った写真や、祐輔と佐知と佐知の妹である"真知"が一緒に写った写真、そして六歳の頃の祐輔が父親である"阿南和彦"に肩車される写真など様々な物がある。
零「………いい写真だな。家族の良さとか、暖かみとか…そういうのを感じる」
祐輔「んな大袈裟なっ。そういう零さんにだって、家族写真の一枚や二枚は持ってるでしょ?」
零「…家族…あぁ、高町家の皆で撮った写真とか色々あるな―――――何枚かは破り捨ててしまいたい物があったが…」
祐輔(と、遠い目をしてる…何かあったのかな…)
何処か遠くを見るような目でフッと笑う零を見て祐輔は思わず苦笑してしまい、零はすぐに気を取り直して再び写真へと目を向ける。
零「まあ俺の方はともかく……こういう写真はいい物だな……みんな良い顔している」
祐輔「そんなまじまじと見られながら言われると照れるけどねっ。……まぁでも、確かにコレは全部大切な思い出だよ。こういう家族や仲間との思い出が沢山出来て積み重なっていったから、今の僕がある訳だし」
零「成る程…(家族や仲間の思い出が積み重なって……か」
零は祐輔の言葉に耳を傾けながら自分が高町家に拾われた時のこと、そしてそれからなのは達と共に作ってきた思い出を思い出し少し苦笑を漏らす。が、そこで零はある疑問を思い浮かべていく。
零「(……そういえば……俺の家族ってどんな人達なんだ?母親…父親…兄弟…そんなのが俺にもいたのか?)」
もしそうなら、自分の家族は今どうしているんだろうか?阿南家の家族が写った写真を見ながらそんな疑問が生まれ、零は少し複雑な心境になってしまう。するとそんな時、祐輔は何かを思い出したかのように店の奥へと戻っていき、暫くした後何やら古めかしそうなカメラを持って零の下へと戻ってきた。
零「?何だ、そのカメラ?」
祐輔「これ、父さんが昔使ってたカメラなんですよ。父さん……零さんみたいに写真撮るの好きでしたからね。良くこのカメラで僕や母さんを撮ってくれてたんです」
零「ほぉ…阿南家の思い出のカメラ、って事か」
ならこの写真のほとんども祐輔の父親が撮った写真ということなのだろう。零はそう思いながら祐輔の手からカメラを受け取ってそれを眺めていき、感心の声を漏らしていく。
零「ほう、良いカメラだな…しかもかなりの年代物のようだし、お前の親父さんも中々やるじゃないか?」
祐輔「いやいや、別にそんな凄かったってわけじゃないですよ?ただ人並みに写真を撮るのが上手かったってだけですから」
零「それでもだ。こんな年代物のカメラを使ってお前達の写真をずっと撮っていたんだから、お前の親父さんも中々凄いぞ?さすがの俺でもコレを扱え切れるかどうか……」
そう言って零は興味深そうにまじまじとカメラを眺めていき、そんな零の姿を見た祐輔はホントに写真とかカメラが好きなんだと苦笑いを浮かべた後、何か思い付いたように口を開いた。
祐輔「…もし良かったら、ちょっとそのカメラ使ってみます?」
零「…ッ!いいのか?このカメラ、大事なものなんだろう?」
祐輔「構いませんよ。正直父さんが死んでからあまり使っていなかったし、このまま使わないで放って埃塗れにするのもなんだか悪いですから。それに零さんならカメラの扱いとか大丈夫そうだし、問題ないかなって」
腰に手を当てながら明るげに言う祐輔に零はカメラを見つめながらむーっ、と唸り声を上げている。そして暫く考えた末……
零「………なら、ちょっとだけその辺の風景を撮って来てもいいか?」
祐輔「えぇ、いいですよ」
零「すまない…直ぐに終えて帰ってくる!」
零はそう言うと意気揚々と店を出て此処から一番近い海鳴臨海公園へと向かって走っていった。そんな零を見送った祐輔は苦笑すると、時間潰しにテーブルでも吹こうかと椅子から立ち上がりふきんを取りに行こうとする。が、祐輔はそこである事を思い出しピタリと止まってしまった。
祐輔「……そういえば、母さん遅いなぁ?朝出ていった時には昼前に戻ってくるとか行ってたのに…?」
ふと自分の母親である佐知が朝早く出ていった時の事を思い出して祐輔が時間を確認すると、時計は1時半を刺しており既に昼を迎えてしまっている。こんなに遅いとなると何か仕事関係に関する事件でも起きたか……それとももしや……母の身に何か起きたとか?
祐輔「―――って、母さんに限ってそれは流石にないか。んー、でも一体何処で何してるんだろ?……まだ時間はあるんだし、たまには探しにでもいきますかな」
仕事関係の事ならばそれを確認してから邪魔をしないように帰ればいいし、別に何もないならそれはそれでいいだろう。などと考えながら祐輔はエプロンを外して畳みカウンターに置くと皆が帰ってきた時に心配させないようにとメモを書いていく。そしてメモを書き残すと店の外へと出て準備中の看板を置き、街へと足を向けて歩き出していった。そしてその陰では……
恭平「…テステステ~ス。こちらNo.8、今度はターゲットが店の外へと出てきたみたいでーす」
真也『よし…ならそのままターゲットを追え。零の方はヴェクタスに任せてあるから、俺達はこのまま作戦通りに動くぞ』
恭平「りょ~か~い」
Green Cafeの向かいにあるビルの影で祐輔が店から出たのを確認した恭平が真也と通信を交わし、そのままビルの影から飛び出し気配を消しながら祐輔を追跡していく。
恭平「……ところでさぁ?あんま任務とは関係ないんだけど…ヴェクタスの奴はこのままほっといても良いのか?」
真也『?何だよいきなり?てかどういう意味だ…?』
恭平「んー…なんつーか、ビミョーに嫌な予感がするんだよねぇ~。良く分かんないだけどさ~」
祐輔を見失わないよう一定の距離を保ちながら緊張感のない調子で話す恭平だが、真也は恭平のその言葉に電話越しに険しい表情を浮かべていた。
恭平「アイツって時々何しでかすか分かんねぇ時あんじゃん?だから、このままほっといてもいいのかなぁ~ってさ」
真也『……確かに俺もアイツのことは信用はしてねぇけど、アイツにだって何か考えがあるんだろ。俺等みたいな凡人には分かんねぇ考えが』
目の前を歩く祐輔が曲がり角を曲がる。恭平もそれを追って曲がり角を曲がり、再び一定の距離を保ちながら真也の声に耳を傾ける。
真也『ターゲットの母親を狙うのは多分…因子を覚醒させた零と対等にやり合うためとかじゃないか?もし奴が力を使って暴走でもすれば洒落になんねぇし……それを止める為にあの女が持つ『戦神』の力が必要なだけかもしんねぇだろ』
恭平「うーん……ホントにそうなのかねぇ~?」
真也『そうだよきっと……アイツだって一応は俺等の仲間なんだし、俺等の世界の住人じゃない部外者に任務以外の事で関わるわけにはいかねぇって分かってんだろ』
恭平「ううむ……けどそれ言うならさ?お前と麻衣とあの変態医者が戦ったケイオスとか爆裂者はどうなるワケ?あの二人も一応他の世界の部外者になんだろ?」
真也『あれは必然的にそうなっただけだっての…ケイオスは零と一緒にいたからどうしてもアイツの敵である俺達と戦う事になるし、爆裂者は俺らの邪魔をしたから戦う事になった。要は任務の邪魔になる奴は問答無用で排除する……たったそれだけの話だ』
説明するのもめんどくさいと溜め息を吐く真也の言葉に、恭平は祐輔の姿を見失わないように後を付けながら成る程ねぇ、と納得したように答える。
真也『とにかくだ。アイツだってあの女の事使い捨てとか言ってたし、任務を終えれば直ぐあの女は解放される筈だろ。そうなればターゲットを捕獲する絶好のチャンスが消える。だからその間にこっちはこっちの任務を終わらせる、いらん心配はするな。いいな?』
恭平「……りょ~かい」
真也の言葉に軽い調子で答えると恭平は通信を切って祐輔の後を追っていくが、その顔は先程までとは違い真面目な顔付きとなっていた。
恭平「……やっぱヴェクタスの事は警戒しておいた方が良さそうだな……あんだけの力を持った奴が終夜の下にいるのも怪しいし……取りあえず今は、奴に怪しまれないように動くしかねえか……」
真剣な口調でそう呟くと、恭平は一度祐輔から視線を逸らして青空を仰ぎ、すぐにまた祐輔へと目を戻して歩き出していった。
◆◇◆
―海鳴市・高層ビル屋上―
佐知「…………………」
同時刻。海鳴市内にあるとある高層ビルの屋上では、真剣な表情で海鳴市の空を見上げる阿南 佐知の姿があった。
佐知「……やっぱり妙ね……零達がこの世界に来る前に強い気配がしたと思えば、すぐに消えた。しかもその内の一つは危険な感じがしたし……何だか今日は雲行きが怪しいわね……」
空を仰ぎながら真剣な口調で呟く佐知。そして今度は自身の身体を見下ろすと、拳を握って開くと同じ動作を繰り返していく。
佐知「取りあえず……何があっても祐輔達だけは守らないとね。もし祐輔達の身に危害を加えるような奴が現れたら……ソイツは絶対に生かして帰さない。死よりも苦しい地獄を味わせて―――」
『――へぇ、随分頼もしいじゃないか?さすがはあの無効化の神の母親ってところかぁ』
佐知「……ッ?!」
背後から聞こえてきた嘲笑が交じった声。それを聞いた佐知はすぐさま背後へと振り返りながら懐に忍ばせておいた刀を取り出し構えていく。その刀が向けられる先には一人の仮面の戦士……先程真也と麻衣と別れたヴェクタスがいつの間にか悠然と立っていた。
ヴェクタス『おぉー、怖い怖い。初対面の人間にいきなり刀を突き付けるなんてとんだ挨拶だなぁ?』
佐知「………貴方、何者?その仮面と姿から察するに………貴方も仮面ライダーかしら?」
わざとらしく怖がった態度を見せるヴェクタスだが、佐知は警戒を解かずに刀を突き付けたままヴェクタスにそう問い掛け、その問いを受けたヴェクタスはわざとらしい態度を止めて怪しげな笑みを浮かべていく。
ヴェクタス『クククッ……大した洞察力じゃないか?ごっ察しの通り俺もライダーだ……まぁ、気軽にヴェクタスとでも呼んでくれ』
佐知「ヴェクタス……ね。それで、そのライダーさんが私に何の用?こっちは今忙しいんだけど?」
刀を突き付けたままめんどくさそうに言う佐知だが、ヴェクタスはそれに答えずただ佐知の身体を足元から頭の部分まで舐めずるように眺めていく。
ヴェクタス『やはりな…思った通り素晴らしい身体をしてる。その強靭な肉体と巨大な力……ククッ……『器』を手に入れるまでの代わりとしては充分だ……』
佐知「代わり?……何の話か知らないけど、用がないなら帰らせてもらうわよ?こっちだって暇じゃないんだから」
不気味に笑うヴェクタスに向けてそう言うと佐知は苛立った表情を浮かべながら刀を下ろして歩き出し、ヴェクタスの横を通り屋上を後にしようとする。だが…
ヴェクタス『…それは困るな……まだこっちの用件は終わってないんだから』
―ブオォォォォォォォオンッ!!―
佐知「…ッ!」
ヴェクタスの呟きと共に突如佐知の目の前に黒い歪みの壁が出現し、更に二人の周りを歪みが包囲して逃げ道をなくしてしまった。
佐知「…何の真似かしら、コレは?」
ヴェクタス『言っただろ?まだこっちの用件は終わっていない。勝手に帰ってもらわれたら困るんだよ』
佐知「…ハァ…私も言ったはずよ?こっちは今忙しいってね。これ以上邪魔するなら、いい加減私も怒るわよ…」
少し声音を低くさせながら怒気を感じさせる佐知だが、それを見たヴェクタスは怯える様子もなく不気味な笑みを浮かべたまま言葉を紡ぐ。
ヴェクタス『そんなに帰りたいなら帰らせてやってもいいぞ。……まぁ、お前の息子である阿南 祐輔がどうなっても良いならな?』
佐知「……ッ!」
不意に出された祐輔の名を聞いた佐知は一瞬息を呑み、そんな佐知の様子に気付いたヴェクタスは予想通りと口元を歪ませながら更に続ける。
ヴェクタス『このまま去るならそれでもいい、俺も今度はお前の息子を狙うだけだからな。奴の力はお前のその力に劣るが、それでも神の力を秘めている……品としては少し下がるが、この際どちらでもいいだろ。息子がどうなってもいいと言うなら、俺は別に構わんぞ…?』
佐知「………………」
クツクツと笑い声を漏らしながら佐知の背中を見つめて語るヴェクタス。そしてその一方で、佐知はとてつもない殺気のオーラを放ちながらゆっくりと振り返り、懐から二振りの刀を取り出しヴェクタスを睨みつけてきた。
佐知「……気が変わったわ。貴方みたいな害虫はこのまま生かしておくのは間違いのようね……私の前に現れた事、後悔させてあげるわ……」
凍りつく、それこそ正に凍えるような殺意を秘めた瞳をしながら佐知は二振りの刀をヴェクタスに向けて構えていく。そんな佐知の姿を見たヴェクタスは―――
ヴェクタス『……そうだ……もっとだ……もっと怒れ……もっと憎め……そうすれば……クククッ……』
――ただ不気味に、不気味な笑みを浮かべながら誰にも聞こえない声でそう呟き、佐知を見据えていたのであった……