仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
その頃……
祐輔「うーん……一体何処行ったんだろ、母さん…」
佐知を探しに街に出た祐輔は辺りを見回しながら佐知が行きそうな場所を手当たり次第に歩き回っていた。だがどれだけ探しても佐知は見つからず、次は何処を探したらいいのか分からず困り果てていた。
祐輔「知ってそうな人達にも全員聞いて回ったけど誰も見てないって言うし……ハァ、一体何処ほっつき回ってるんだろ?」
佐知が行きそうな場所は自分が知ってる限り全て見て回った筈だ。それでも見つからないとなると次は何処を探すべきかと頭を悩ませていると、祐輔はそこである事を思い浮かべる。
祐輔「もしかして……もう店に帰って来てるのかな?」
これだけ探し回ってもいないとなると、もうそれしか考え付かない。なら一度店に戻って確かめた方がいいかもしれないと思った祐輔はその場で踵を返し、店に戻ろうと先程来た道を戻ろうとする。だが……
祐輔「…………あれ?」
大通りを歩いてる中、祐輔は其処である違和感に気が付いた。自分が歩いているこの大通りは普段人が多く通り、いつも絶える事なく賑わっている。だが、何故か今は自分以外人っ子一人いない。まるで自分だけがこの世界に取り残されたような、そんな奇怪な雰囲気が漂っていた。
祐輔「これって……まさか人払いの結界……?」
その異様な空間の本質に気が付いた祐輔は疑問げに首を傾げながら呟き、辺りを見渡していく。そんな時…
―……ザッ―
祐輔「……え?」
誰もいない筈のない空間の中で祐輔の前に黒いスーツを着込んだ青年……恭平が現れ、祐輔の行く先に立ち塞がったのである。そして恭平は身につけていたサングラスを外し、ヘラヘラとした笑みを祐輔に向けながら口を開く。
恭平「こんちわ~♪あんたが阿南祐輔……だよね?」
祐輔「へ?え、えぇ…そうですけど、何か?」
恭平「なはは♪別に大した用事はねぇよ?たださ……黙って俺達についてきて欲しいんだよね~♪」
祐輔「…は?」
いきなり訳の分からない事を言われて唖然とした表情を浮かべてしまう祐輔。だがそんなやり取りをしてる間に、祐輔の背後から二人の男女…真也と麻衣が現れ祐輔を挟み撃ちにしてしまう。
祐輔「…ッ!…何ですか…貴方達は…?」
二人に気付いた祐輔は背後に振り返り真也達に向けて身構えていき、真也と麻衣はサングラスを外して祐輔と対峙していく。
真也「阿南祐輔……成る程、確かに神としては大した力を持ってるようだな……終夜が欲しがるのも納得できる」
祐輔「?何を言ってるんですか?貴方達は一体…」
真也「お前に説明する義理なんてねぇよ。お前はただ黙って俺達についてくればいいんだ……さぁ、さっさと一緒に来てもらうか?」
黙って自分達についてこい。それだけ言いながら真也は祐輔に向けて手を差し延べながら歩み寄っていく。だが、祐輔がそんなことに頷く筈もなく……
祐輔「お断りします。貴方達についていく理由なんてないし、それこそ僕に義理なんてない……だからお断りします」
真也「……そうかよ…なら仕方ねぇ」
誘いを断られた真也は一度溜め息を吐くと、鋭い視線を祐輔に向けながらスーツを翻し腰に装着したベルトを露出させ、懐からオーガフォンを取り出して番号を入力していく。
真也「そっちがその気なら……こっちも力付くでお前を連れてくまでだ……変身ッ!」
『Complete!』
オーガフォンをバックルに装填すると真也は電子音声と共にオーガへと変身し、更に自身の背後に歪みの壁を発生させ其処からライオトルーパーの軍隊を呼び出し、それを見た祐輔は驚愕したように後退りをしていく。そして麻衣はポケットから取り出したデッキを目の前に突き出してベルトを装着し、恭平も構えを取ると腰に銀色のベルトを出現させていく。そして……
『変身!』
麻衣はデッキをバックルにセットするとファムに変身していき、恭平は変身の構えを取りながら叫ぶと波紋が広がり、波紋が収まると恭平は赤い瞳に緑色の身体をしたライダー…『アナザーアギト』へと変身したのであった。
祐輔「ッ!誰かは知らないけど……やるって言うなら仕方ないね……変身ッ!」
『GATE UP!CANCELER!』
変身した真也達を見た祐輔は腕に装着した腕時計を回してキャンセラーへと変身し、腰に収めた刀を抜いてオーガ達に向けて身構えていく。それを見たオーガも剣を構えるとファムとアナザーアギトに目を向け念話を送る。
オーガ(麻衣、恭平、今回は最初から"あの力"を使うぞ…魔力や気を無効化する奴にはアレしかない。いいな?)
ファム(分かった……)
アナザーアギト(了~解。まぁ神様相手に何処まで通じるかは分かんねぇけど、取りあえずやってみますかねぇ…)
ファムとアナザーアギトはオーガにそう答えるとそれぞれ身構えていく。そしてライオトルーパーの軍隊が一斉に動き出したと同時にキャンセラーも刀を握って走り出し、正面からぶつかり合っていった。
◇◆◇
―海鳴市・臨海公園―
―カシャッ!―
零「…ふむ…やはりいいな。年代物となると色々と変わってくるし、何より写真にも味が出る……」
一方その頃、Green Cafeを出て海鳴市の臨海公園へとやって来た零は、祐輔から借りたカメラを使い周りの風景を撮影しているところであった。そして零は祐輔から借りたカメラを眺めた後、今度は此処から見える海を撮ろうとカメラのファインダーを覗いていく。とその時……
「……あれ?零?」
零「ん?」
後ろから聞こえてきた聞き慣れた声を聞いて零はファインダーから顔を離し、後ろに振り返っていく。其処には公園の入り口から両腕に包みを抱えてこちらに駆け寄ってくる女性……先程なのはやミナ達と共に買い出しに行ったフェイトの姿があったのである。
零「フェイト…?何してるんだこんなところで?確かなのは達と一緒に買い出しに行ってたんじゃ…」
フェイト「あ、うん。そうなんだけど……実は買い物帰りの途中で買い忘れてたモノがあったのを思い出して、こっちまで来てたんだ」
零「買い忘れ?また珍しい…仕事慣れしたミナやウェンディが一緒に居たのに誰も気付かなかったのか?」
フェイト「うん…買い物しながら皆と色々話してたからね、多分盛り上がってたせいで気付けなかったんだと思う。それでなのは達には先に帰っててもらって、今ちょうど買い物が終わって帰ろうとしたら零を見つけて声掛けたんだけど……そういう零はこんな所で何してるの?お店は?」
零「あぁ…俺はちょっとコイツを弄ってみたくなったから、店の方は祐輔に任せてきたんだ」
フェイトの質問に対し零は手に持つカメラをフェイトに見せ、それを見たフェイトはカメラをまじまじと眺めながら小首を傾げる。
フェイト「何そのカメラ?どうしたの?」
零「祐輔から借りたカメラだ。何でも祐輔の親父さんが生前使っていた思い出のカメラらしい」
フェイト「へぇ~……ってえぇ?!だ、駄目だよそんな大事な物使ったりしちゃ?!」
零「その点なら心配ない。祐輔には許可は取ってあるし、扱いにもちゃんと気を付けてる。それに大事な物だってことは分かってるんだが…やはりこういう稀少なカメラを手に取る機会なんてそうそうないし、つい興味本位の方が強く出てしまうんだよな……困った事に…」
うむうむと頷きながら零はフィルターを覗いてフェイトを撮影していき、そんな零にフェイトは思わず苦笑を浮かべてしまう。そして暫くフェイトを撮影していた零は近くにある花壇に気付いてそちらに目を向け、それに気付いたフェイトも花壇に近付き身を屈める。
フェイト「わぁ~…綺麗…」
零「ん…確かこの時期だとこの辺りの花が満開になる頃だったな。俺達の世界と同じなら…」
フェイト「え?そうなの?私全然知らなかった…」
零「知らない方が多分当然だと思うぞ?俺も小さい頃に何度かこの辺りを散歩して、それで漸く気付いたんだし」
そう言いながら零はフェイトの隣に屈んで花壇に咲く花をカメラで撮っていき、フェイトもそんな零を見ると花壇の花に指先を近付けて花に軽く触れていく。
フェイト「フフッ……でも何だか、この場所に来ると色んな事を思い出すよね」
零「……そうだな。小さい頃この場所で、お前と戦ったり、なのはと一緒にお前との再会を約束したり……本当に色々あった。お前も昔に比べて随分変わったしな…」
フェイト「うん……でも私的には、今の零の変わり様に驚きかな?昔の零って…何だか冷たかっていうか、子供っぽくなかったから。今みたいになったのはちょっと意外♪」
零「む……悪かったな……どうせ昔の俺は冷たくて子供っぽくない小学生だったよ」
そのぐらい自分だって自覚している、と若干不機嫌になりながら零は花の撮影を再開し、フェイトもそんな零を見て可笑しそうに笑いながら花へと視線を戻していく。
フェイト「でも……そんな零やなのはに出会えたから、私も救われたのかもしれないな……」
零「む?」
フェイトの小さな呟きに零は首を傾げながら思わず聞き返し、フェイトはそんな零に苦笑しながらも言葉を続ける。
フェイト「昔わたしに言ってくれたよね?今度は誰かからの命令ではなく、自分の意思で、自分を信じて生きてみろって。その言葉を聞いて…私はもう一度自分の意思で生きてみようって思ったの。だからなのはが何度も私に呼び掛けてくれたことや、零のその言葉があったお陰で……私は今もこうして皆といられるんだなって」
零「…なのははともかく、俺は別に何もしていない。ただ言いたい事だけ言っただけだ……だから今のお前があるのは、お前が自分の意思を貫き通した結果だ」
フェイト「そんな事ないよ?零やなのはがいたから、私はもう一度生きようって思えたんだから……私一人の力じゃ……ここまで来る事なんて出来なかった」
そう言ってフェイトはおもむろに立ち上がり、金色の髪を風で靡かせながら此処から見える海を眺めていく。
フェイト「…だから尚更、私達の世界を救いたいって強く思うの。今の私がこうして変われたのはあの世界があったから。あの世界で感じてきた思いや時間は、何処の世界にもない……私や零やなのは達が積み上げてきた思い出は……あそこにしかないから」
零「…………」
確かに自分達と似た世界は幾つも存在する。だがその世界で作り上げられた思い出や時間は決して同じものではない、他では絶対に手に入らないものだ。それはこの祐輔の世界も、自分達の世界も然りである。零はそう思いながらファインダーを覗き、海を背にしたフェイトの写真を撮っていく。
零「そう思っているのは俺達も同じだ……だからその為に、俺達はこうして旅をしてるんだろう?あの世界はお前達や俺にとっても……失ってはならない大事な物なんだから」
フェイト「うん、だね…」
フェイトは零の言葉に頷きながら微笑し蒼い空を仰いでいく。とその時、空を見上げていたフェイトは何か思い付いたような表情を浮かべ、零へと視線を向けていく。
フェイト「……ねぇ零?その、ちょっとお願い聞いてもらってもいいかな…?」
零「…?お願い?」
お願いを聞いて欲しいと告げてきたフェイトの言葉に零は疑問そうに聞き返し、フェイトは何処か気恥ずかしそうに頷きながら言葉を紡ぐ。
フェイト「えっと……もし……もしもだよ?もし私達の世界を救って帰ってこれたら……その……もう一度この場所で写真撮ってくれる…?」
零「?写真って…お前のをか?」
フェイト「う、うん……出来ればでいいんだけど……ダメ……かな?」
頬を紅く染めながら顔を俯かせて呟くフェイトだが、零はそれに気付かず顎に手を添えながら考える仕草を見せると……
零「……別にいいぞ?そういう事なら問題ない」
フェイト「!ホ、ホントに!?」
零のその言葉にフェイトは思わずズイッと零へと詰め寄り、その気迫に圧されて少し後退る零。
零「あ、あぁ…しかし、俺の撮る写真はお前も知ってる通りピンぼけばかりだぞっ?」
フェイト「それでもいいよ!零が撮ってくれるなら、どんな写真だって…じゃあ約束!指切り!」
零「は…?いや、別に其処までしなくても……」
フェイト「いいから!はい!」
そう言いながらフェイトは小指を出し、それを見た零は何を言っても無駄だろうと諦め溜め息を吐きながら小指を絡める。
フェイト「ふふっ♪ちゃんと約束したからね?嘘ついたらダメだよ?」
零「分かっている……全く、本当に心配性だなお前は……」
フェイト「だってこうでもしないと、零はすぐに忘れちゃうでしょ?」
いや、だからってそこまでする必要あるか?と思いながら溜め息を吐く零だが、嬉しそうに微笑みながら指を絡めた手を包むフェイトを見て思わず微笑を漏らしていく。だが……
『そんな約束したところで意味なんてない……お前はどうせ、此処で消えるんだからなぁ……』
『…ッ?!』
不意にその場に響いた不気味な声。それが聞こえたと同時に周囲の景色が色が抜けたように灰色に変わり、自分達以外の人の気配が完全に消え去ったのである。
フェイト「これは…?!」
零「結界…?……ッ?!」
突然の事態に驚愕して辺りを見渡す二人だが、その時何かに気が付いた零はフェイトを自身の背後に下がらせある方向を睨みつける。
フェイト「れ、零?どうしたの?……ッ?!」
フェイトは零の突然の行動に戸惑うが、零が睨みつける方向を目で追いかけ再び驚愕した。其処には、この灰色の世界をものともせずこちらへと歩み寄ってくる黒いライダー……ヴェクタスの姿があったのである。
零「…お前、誰だ…?」
ヴェクタス『……フンッ…随分と弱々しい姿になったものだな……どうだ?少しはそんなでも力を使いこなせるようになったか?』
零「ッ!なんだと…?」
問い掛けには何も答えず、零の身体を眺めながら呟いたヴェクタスの言葉に零は一瞬驚愕しながらも警戒心を強めてヴェクタスを睨みつけるが、ヴェクタスは悠々と零達へと近付いていく。
ヴェクタス『感謝しろよ?お前を鍛えてやる為にこうして来てやったんだ。だから、少しでもあの力を使いこなしてもらわないと困る』
零「ッ…!」
フェイト「?あの力…?」
ヴェクタスの言葉に険しい表情を浮かべる零だが、会話を聞いていたフェイトは話の内容が理解出来ず疑問符を浮かべる。そしてヴェクタスは歩みを止めると、自身の右手に剣を出現させながら再び語り出す。
ヴェクタス『だがその前に、必要のないゴミを片付けないといけない……まず……そこの出来損ないのクローンからだ』
フェイト「…ッ?!」
ヴェクタスは冷たい口調で言いながら剣の切っ先を零の背後にいるフェイトへと向け、それを見た零はフェイトを庇うように身構えてヴェクタスと対峙する。
零「お前が誰かは知らないが……お前の目的は俺なんだろ!ならコイツは関係ないはずだ!」
ヴェクタス『いいや、関係ならあるさ……そいつ等はお前が力を使わない原因の一つだ。だから邪魔な要素は全て消すんだよ……お前の大事な大事な仲間も……居場所も……そして、お前の本性をせき止める物もな』
零「クッ!」
フェイトに切っ先を向けたまま不気味に微笑むヴェクタス。零はすぐにコートの中からディケイドライバーを取り出して腰に装着し、ライドブッカーからカードを取り出していく。
ヴェクタス『無駄なことを……その女は此処で死ぬ。そしてそれを見たお前は、自分の無力さを悔やみ自らの力に溺れる事となる……お前は誰も守れやしないのさ』
零「ッ…黙れっ…これ以上、お前の戯れ事を聞く気はない!変身ッ!」
『KAMENRIDE:DECADE!』
カードをバックルにセットすると零はディケイドへと変身した。そして変身を終えたディケイドはフェイトをある程度下がらせると、ライドブッカーをSモードに切り替えてヴェクタスと対峙していく。
ヴェクタス『いいだろう。新しい身体の力……見せてやるよ……』
そんなディケイドに対してヴェクタスは不気味に笑いながら剣を構え、双方同時に駆け出し公園の中心で剣と剣をぶつけ合っていったのだった。