仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
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―――其処は、何処にでもあるような何の変哲もない花畑に囲まれた丘の上。
白い雲が流れる青い空の下で、広々とした海が見える綺麗な丘。
そんな丘の上に立つ一本の大樹の前で、一組の男女がその場所から見える海原を眺めていた。
一人は腰まで伸ばした銀色の髪を靡かせる少女。
一人は漆黒の髪を目元まで伸ばした青年。
銀髪の少女は楽しげに柵に身を乗り出しながら海原を眺め、そんな少女の様子に青年は呆れたような表情を浮かべていた。
『……分からんな……ただの海なんか見て何がそんなに楽しいんだ?』
『――フフ♪楽しいに決まってるよ。この場所で――と一緒に海が見られる……それだけで嬉しくて、つい笑っちゃうんだから♪』
『……なんで俺と一緒で嬉しく感じるんだ?それこそ理解出来ん……』
『その内分かるようになりますよ♪』
怪訝な表情を浮かべる青年の隣で銀髪の少女は上機嫌に微笑みながらそう返し、青年はそんな少女の言葉に若干ムッとした表情を浮かべていく。
そして少女はそんな青年の反応にクスッと笑みを漏らしながら再び海原へと視線を向け、柔らかげな表情を浮かべながら口を開いた。
『……ねぇ、何だか本当に面白いな~って思わない?私達が住む世界って』
『……?何だいきなり?』
少女の唐突な質問に青年は疑問げに小首を傾げ、少女は何処か遠くを見つめながら語り続ける。
『当たり前の事なんだけど…世の中には色んな人達が沢山いるでしょ?例えば、私みたいな神子や――みたいな"外の世界"から来た人とかもそう。私達が住んでる世界には、まだまだ想像も出来ないような凄い人達が沢山いるかもしれない。もしかしたら、そんな人達とこの先出会えるかもしれない……って思うとさ、何だか感動しない?世界の壁を超えて、色んな人と出会っていけるんだもん♪』
銀髪の髪を潮風で靡かせながら、子供のような笑みを浮かべて楽しげに話す少女。
青年はそんな少女に半ば呆れたような表情で溜め息を吐いた。
『本当にお気楽な奴だな……どうしてそんな子供染みた事が平然と言えるんだ、お前は?』
『フフフ…だってそれが、私だからね♪』
『……またそれか……』
いつもの台詞を口にして微笑む少女に青年は肩を竦めながら深い溜め息を吐き、少女は腰に両手を回しながらそんな青年と向き合っていく。
『………ねぇ――?――もいつかは此処を出て、自分が生まれ育った世界に帰っちゃうの……?』
『?俺が生まれ育った……世界……?』
『うん………だってほら、――が村に来てから随分経つでしょ?だからいつか……――も自分の世界に帰っちゃうのかな、って……』
『…………』
何処か不安げな顔で恐る恐る質問してくる少女。
その質問を受けた青年は一度間を置いて口を閉ざした後、ゆっくりと口を開いていく。
『……俺が此処に来たのはある用事があったからだ。それを果たせば、俺は俺の意思とは関係なく帰らなければいけない』
『……そっか……そうだよね……――にだってきっと、家族がいるもんね……』
淡々と感情の篭っていない口調で告げた青年の言葉に少女は暗い表情を浮かべて青年から背を向けてしまい、青年はそんな少女の背中を見つめたまま黙り込んでしまう。
そんな状態が長く続き、もうどのくらい時間が経ったか分からなくなった頃に、突然少女は『うん…決めた!』と力強く叫びながら、子供のような笑みを浮かべて青年の方へと振り返った。
『だったら私、いつかこの世界を出て旅に出る!』
『……旅?』
『うん、旅!沢山の世界を回って、沢山の人達と出会って仲間を作っていくの♪そうすれば、いつか――の世界にだって行けるでしょ?……だから……』
少女はそう言いながら青年に向けておもむろに手を差し出し、優しげな笑みを浮かべながら言葉を紡ぐ。
『―――もしまたその時に会えたら……私と一緒に、旅をしてくれないかな?』
『…………』
期待と不安が篭められた瞳で手を伸ばし、少女は青年の答えを待つ。
そして青年はそんな少女の手をジッと見つめながら何かを考えた後……
『……別にいいぞ……お前が本当に俺の世界に来られたらな』
『ッ!ホントに?!』
『あぁ……だがその前に―――』
青年の答えに喜びを露わにする少女だが、青年は無表情のまま少女へと歩み寄り少女の頭から足元までを見下ろしていく。
『な、なに?』
『―――取りあえず、最近その腹に増えた余計な肉を落として来るんだな……話はそれからだ』
『へ?…………ッ?!』
青年の言葉に一瞬キョトンとする少女だが、その意味に気付いて顔を真っ赤にし咄嗟に腹を両手で隠した。青年はそんな少女の反応に意地悪な笑みを浮かべながら歩き出し、少女の横を通り過ぎる際にポンッと軽く肩を叩いた。
『……悪いな、逆だった。寧ろもう少し肉を付けろ。そんなひ弱な身体じゃ、旅に出てもすぐに倒れるぞ』
『え?…………って、またからかったの?!もぉ!何でこんな時にそんなデリカシーのない事言うのかなッ?!』
『フッ……だってそれが、俺だからな?』
『それは私の台詞でしょ?!いつもこういう事があると私の真似ばっかりするんだからぁぁぁぁーーーーー!!』
完全にからかわれたことに気が付いた少女は顔を紅く染めながらポカポカと青年の胸を叩き、青年はそれを受けつつも意地悪な笑みを浮かべ続けていたのだった。
―――そう、これが遠い日の記憶。あの頃の俺が……俺達が……本当に幸せだった頃の記憶だ……