仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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番外編小説/復讐へと墜ちた破壊者。その名は―――

 

 

 

深い霧に支配されたとある平行世界。その世界に唯一存在する無数の墓達。その墓達の中にある一つの墓石の前に、黒いコートを全身に覆った一人の青年の姿があった。

 

 

「………………」

 

 

黒いコートの青年は墓石の前に立ったまま何もせず、ただジッと静かに目の前に建てられた墓を見つめていた。すると、そんな青年の背後から一人の老人が現れ、老人は青年に向けて話し掛けていく。

 

 

「―――まだこんなところにおったのか……」

 

 

「……ジンか。何の用だ」

 

 

「なに。珍しくお前さんが長いこと其処におるから、少し気になっただけじゃよ」

 

 

ジンと呼ばれた老人はそう言うと左手に持ったランプで辺りを照らしながら歩き出し、青年の隣に立って同じように墓を見下ろしていく。

 

 

ジン「……はてさて。お前さんがこの世界を破壊してから、一体どれだけの年月が経ったのかの……」

 

 

「……さあ……もう覚えていない……その時の事も……アイツ等と過ごした記憶も……アイツ等の顔も……もう朧げにしか思い出せないよ……」

 

 

青年は何処か寂しげに言いながら墓に刻まれた名前を見つめ、そんな青年を見たジンは深い溜め息を吐きながら再び語り出した。

 

 

ジン「そんなに辛いのなら、ライダー達への復讐など止めればいい……きっとこのお嬢さんも、お前さんにそんなことして欲しいとは願っておらんだろう」

 

 

「――だろうな。コイツは本当に人が良すぎる……きっと今の俺を見たら、身を呈してでも俺を止めようとしただろう……俺がやってる事は、決して正しいことじゃない……」

 

 

ジン「其処まで分かっておるなら―――」

 

 

何故続けようとする?ジンは青年にそう告げようとするも、黒いコートの隙間から見えた青年の表情を見て口を閉ざしてしまう。そんなジンの様子を横目で見た青年は悲しげな表情で笑みを浮かべ、何処からか零のデバイスであるアルティに酷似した一本の剣を取り出しそれを眺めていく。

 

 

「――もう遅いんだよ……俺は戻れない……俺が帰る場所は何処にもない……今の俺に残されたのはライダー達への復讐心と、全ての世界を破壊するという使命だけ……昔の俺は、もう死んだんだ……」

 

 

ジン「だから墜ちると…?因子の力を得て神となり、数え切れない命を奪ってその手を鮮血に染め上げ……其処までして、お前さんは何を望むのだ?」

 

 

「…………」

 

 

ジンの問い掛けに青年は口を閉ざしてなにも答えず、ただ無言のままコートの懐から赤い宝玉のようなものが付いたネックレスを取り出した。

 

 

「…俺の望みはただ一つ。因子の真の力を覚醒させ、ライダー達が存在する世界をなくし新たな世界を創造する……それだけだ」

 

 

ジン「因子の最終進化形態……か。あんな禁忌の力にまで手を出そうとするとは……本気なのか……?」

 

 

「…………」

 

 

青年は何処か悲しげに聞き返してくるジンの言葉を黙って受け止め、墓から視線を外し霧に覆われた空を見上げていく。

 

 

「自己満足だってことは分かってるさ……だがどんなに理屈で分かっていても、心を支配するこの憎しみから逃れる事が出来ない……可笑しいだろう?もう暑いのも寒いのも感じなくなって、何も食べる必要も眠る必要もなくなって、涙を流すことも出来ない身体になったのに……この憎みだけは消えない……消えてくれないんだ……」

 

 

ジン「……そうか……」

 

 

ポツリポツリと言葉を紡ぐ青年に、ジンはただそれだけしか言えなかった。今のこの青年の心の淵には深い悲しみと憎しみしか存在しない。今にも泣きたいはずなのに、涙を流すことさえ出来ない。そんな青年にどんな言葉を掛けるべきなのか、この老人には何も思い付けなかったのだ。そんな時……

 

 

 

 

 

 

―ザアァァァァァァァァァァァァアッ……!!―

 

 

ジン「……ッ!」

 

 

突如青年とジンの周りを歪みが包み込み、ジンは突然のそれに驚愕して後退りをし、青年は全く動じた様子を見せず冷静な態度で別の方向へと振り向いていく。其処には歪みの中から次々と姿を現していく、無数のライダー達の姿があったのだった。

 

 

ジン「……また来おったか……命知らずのライダー達が……」

 

 

「…………」

 

 

ジンは悲しむように言いながら顔を俯かせ、隣に立つ青年は憎しみの篭った瞳でライダー達を睨みつけながらネックレスを仕舞い、ジンの目の前に立ち構えると懐から一枚のカードを取り出していく。

 

 

「……ジン、俺はもう迷ったりはしない……」

 

 

ジン「…………」

 

 

「例えアイツ等が望まなくても……この生き地獄から永遠に抜け出せなくても……アイツ等の無念を晴らす為なら、何処までも墜ちてやる……奴らを全て、破壊してやる……」

 

 

青年は背後にいるジンに向けてそう言いながらカードを右手に持つ剣へと装填し、スライドさせていった。

 

 

『KAMENRIDE:DIREED!』

 

 

電子音声が鳴り響くと同時に青年の周りに無数のシルエットが出現し、シルエットは青年に重なると灰色のライダースーツに変化し、更に剣から十枚のプレートが飛び出し青年が身に付ける仮面へと収り、それと共に灰色のライダースーツは禍々しい赤黒色へと変化していった。すべての変身を終えたその姿はディケイドに何処となく酷似したマスクと薄緑に輝く瞳に赤黒い刺々しい鎧、そして右手には不気味なオーラを漂わせる剣を持った姿……そう、そのライダーとは以前魔界城の世界でツカサ達に襲い掛かってきた謎のライダーだったのだ。

 

 

『――サあ、来ルならコい……ヒトり残らズハカイしテやル……』

 

 

『ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーッッ!!!!』

 

 

謎のライダーがそう言うとライダー達はそれぞれが持つ武器やマシンを繰り出して謎のライダーへと突っ込んでいき、謎のライダーは一瞬でその場から消え去りライダー達へと向かっていった。一人目のライダーは首を跳ね、二人目は心臓を突き刺し、三人目は背中を踏み付けて砕くなど、なんの容赦もないダーティーな戦法で次々とライダー達を倒していくその姿は、正に悪魔と呼ぶに相応しかった。

 

 

ジン「……わしではもう、お前さんを救う事は出来んようだな……ディレイド」

 

 

ジンは悲しげな表情を浮かべながら次々とライダー達を倒していく謎のライダー……『ディレイド』を見つめ、背後にある墓の方へと振り向いていく。

 

 

ジン「……神よ……貴方はどうして、こんなにも残酷な運命をあの子に与えるのです……嘗ての自分を失い……幸せを感じる事も……誰かの温もりを感じる事も出来なくなったあの子から……今度は何を奪うつもりですか……」

 

 

歎き悲しむようにジンがそう呟いた瞬間、不意に墓石から一滴の雫が流れ落ちた。まるで憎悪を叩き付けるようにライダー達を倒していくディレイドを見て悲しむ様に…………その墓――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――"高町なのは、此処に眠る"と刻まれた墓は、今でも涙を流すかのように雫を流していた――――

 

 

 

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