仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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番外編集⑥
番外編/幼き日の約束


 

 

 

 

―――あれは十年前……

 

 

まだPT事件の真っ最中だった頃……

 

 

忘れたくても忘れる事が出来ない……なのはとフェイトも知らない……あの闇の中での偶然の出会い……

 

 

俺は―――一人の少女との出会いを果たしていた……

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

―???―

 

 

 

零「ッ……………此処…………は……?」

 

 

瞳を開けた先にあったのは、何処までも暗闇が続く真っ暗な空間。

 

 

一筋縄の光も射さない暗闇の中で、黒月零は目を覚ました。

 

 

零「……此処は一体……俺は確か……海上で高町とテスタロッサとJSを同時封印していて……」

 

 

そうだ……確かその直後、上空からの紫色の雷光を受けて海へと落ちてしまって……それから?

 

 

零「……思い出せない……もしかして……あの後気を失ったのか……?」

 

 

思わずそう口にし、現状を理解した所で軽く舌打ちをしてしまう。

 

 

そんな自分の情けない姿を高町達の前で曝したという自分に対しての苛立ちだ。

 

 

だが取りあえず今はそんな事はどうでもいいと頭を左右に振って思考を切り替えると、顔を動かして辺りを見回していく。

 

 

零「それにしても……此処は一体何処だ?何故こんな何もない場所に……」

 

 

現状を理解したのはいい、しかしだとすればこの場所は何なのだろうか?

 

 

あの後回収されたにしても此処がアースラの艦内という感じには思えないし、何より雰囲気が違い過ぎる。

 

 

まさかアースラに回収される直前にまた何らかの異常が発生し異空間にでも飛ばされたか?などと我ながら阿呆らしい展開を想像してみたりして思考を働かせていくが、やはりこの場所の正体は掴めない。

 

 

ならば此処は無駄に考えるよりも行動で確かめた方が早いだろうと判断して薄い溜め息を吐き、零が足を一歩踏み出した、その時……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ダメ!其処から先に進んじゃダメ!!』

 

 

 

 

 

零「――ッ?!」

 

 

 

 

突如空間全体に悲痛な叫び声が鳴り響き、零はその声に驚愕しつつも思わず声に従うように足を戻し、辺りを警戒して見渡していく。

 

 

零「ッ!誰だ?!誰かいるのか?!」

 

 

『……あれ?もしかして、わたしの声聞こえた?……良かったぁ~!もう、何度叫んでも全然聞こえてないみたいだったからちょっと焦っちゃったよー�』

 

 

零「何一人でブツブツ言ってる?!質問に答えろ!!お前は誰だ?!」

 

 

『ちょ、そんな怒鳴らなくてもいいでしょう?!せっかく助けてあげたんだから感謝してよねー?!』

 

 

ブーブーとブーイングして来る少女の声に若干イラッとしながらも警戒を解かずに身構える零だが、其処で一つある疑問に気付き頭上に疑問符を浮かべた。

 

 

零「……おい、取りあえずお前の事は後ででいい……今俺を助けたと言ったな?それはどういう意味だ?」

 

 

『んー?言葉通りの意味だよ?このままわたしが止めてなかったら、君間違いなく死んでたよ?』

 

 

零「死んで……いた?どういう事だ?この先になにかあるのか…?」

 

 

少女の声が言い放った言葉に戸惑いながら暗闇の先を見据えると、少女の声は声のトーンを少し落としながら語り出す。

 

 

『やっぱり知らなかったんだ……此処はね?生と死の狭間とも呼べる場所なの』

 

 

零「……生と死の……狭間?」

 

 

『そう。簡単にいえば……現実の世界で巻き込まれた事故かなにかのショックで一時的に身体から意識が離れてしまった人がごくたまーに迷い込む場所……って言えば大体分かるかな?』

 

 

零「意識が迷い込む場所?」

 

 

少女の声から話を聞いて更に疑問符を並べながら首を傾げていく零だが、ふと目の前へと視線を向ければ、暗闇の向こうから悍ましいうめき声のような物がとぎれとぎれに聞こえてくる。

 

 

零「……意味は良く分からないが……今までの話から察するに……まさかこの先にあるのは……」

 

 

『うん……この先に進んでしまえば二度と現実の世界に戻って来れない『死』が待ってる……だからわたしが止めなかったら、君は何も知らないまま先に進んで死んでいたってわけ』

 

 

サラサラとした口調で告げられた事実に零は背中に嫌な汗が流れるのを感じた。

 

 

この声が止めてくれなければ、自分はなにも知らずにあの世へと逝っていた。

 

 

それを漸く頭で理解した所で額からも冷たい汗が流れていき、それを手の甲でおもむろに拭っていく。

 

 

零「そういう事か……なら一応感謝はしておかないとな……助かった……」

 

 

『どういたしましてー♪』

 

 

零「……随分と元気が良い奴だな……まあいい。それで、お前は一体誰なんだ?出来れば名前を聞かせて欲しいんだが……」

 

 

『わたし?わたしはアリシアっていうの。そーいう君は?』

 

 

零「……黒月零……ただのしがない小学生だ……」

 

 

アリシア『プッ、何それ?なんかおじさんみたーい♪』

 

 

零「うるさい!」

 

 

可笑しそうに笑うアリシアの声に我も忘れて怒鳴ってしまい、それで我を取り戻した零は一つ咳払いをして心を落ち着かせる。

 

 

零「…それで?お前はどうしてこんな所にいるんだ?お前も俺みたいに、此処に迷い込んだのか?」

 

 

アリシア『んー……ちょっと違う……かな?現実のわたしはもう四年くらい前に死んじゃってるんだけど、あっちの世界にまだわたしの身体があるからこっち側に逝けない……って感じなのかな?』

 

 

零「身体が?…じゃあお前は、自分の身体が消えないと完全あの世に逝くことも出来ないのか?だから此処にいるっていうのか?」

 

 

アリシア『うーん……どうだろ?本当にそうなのかもちょっとあやふやで分かんないし、難しい話もわたしには分かんないけど……でもわたしが此処にいるのは、何か特別な意味があるからじゃないかな?多分だけど』

 

 

零「特別な……意味…?」

 

 

アリシア『そっ!たとえば…………えーっと…………んーっと…………』

 

 

声だけしか聞こえないが、もし身体も見えてれば腕を組んで子供のように悩んでるのではないだろうか?

 

 

そんなくだらない事を考えながら暫く彼女の返答を待っていると……

 

 

アリシア『――あっ!そうそう!零とわたしが出会う為とか♪』

 

 

零「……馬鹿かお前……何で今日知り合ったばかりの男と出会う為に此処に四年も縛られてるんだ……」

 

 

アリシア『えー?だめぇ~?だってこれしか考えつかなかったんだもん……』

 

 

呆れたように肩を竦める零にアリシアも不満の声を上げてシュンッとなってしまい、そんなアリシアの様子に零は頭を抱えながら溜め息を吐いて答えた。

 

 

零「ハァ……分かった……そういう事にしておこう……もし本当にそうだというなら、お前と引き合わせてくれた運命の女神とやらに感謝感激だな……」

 

 

アリシア『そーそー♪零とわたしの出会いは女神様が引き合わせてくれた運命なんだよー♪』

 

 

自分が素直に認めたことで気分を良くしたのか、アリシアはそれこそ子供のような微笑みを漏らして喜び、そんなアリシアを能天気な奴だと思いながら零も自然と微笑を浮かべていく。

 

 

アリシア『……あ、やっと笑った♪』

 

 

零「…………え?」

 

 

アリシア『零、此処に来てからずーっとブスッとした顔ばっかなんだもん。でも今やっと笑った……そっちの方がずっと良いと思うよ?わたしは』

 

 

零「……………」

 

 

アリシアに言われてソッと口端に手を当て、それで漸く自分が笑っているのだと気付く零。

 

 

久しぶりに笑った……最後に笑ったのは一体何時だったか……そんな事を一々考えるのも馬鹿らしくなり、零は目を伏せて再び微笑を浮かべていく。

 

 

零「……なんだか……お前には色々と借りを作られてばかりだな……」

 

 

アリシア『ほぇ?』

 

 

アリシアはポツリと呟いた零の言葉に不思議そうに間抜けな声を漏らし、そんなアリシアの様子に零は思わず噴き出しそうになり笑いを押し殺していく。

 

 

零「……そうだ……助けてくれた礼と言うのもなんだが、何か叶えて欲しい願いとかないか?」

 

 

アリシア『え?わたしの……願い?』

 

 

零「あぁ、このまま借りを作られたままというのも何だか癪だからな……なにかお前の願いを叶えてやる。俺に出来る範囲ならなんでもするぞ?」

 

 

アリシア『………………』

 

 

突然の零の提案に一瞬呆然として言葉を詰まらせてしまうアリシアだが、一度口を閉ざして黙り込むと……

 

 

アリシア『…………おかあさん…………』

 

 

零「ん?」

 

 

アリシア『………わたしのおかあさんを………助けてあげてほしいの………』

 

 

切なげな、それでも切実な願いをアリシアはソッと口にしたのだった。

 

 

零「お前の……母親?」

 

 

アリシア『うん……わたしのおかあさんはね……わたしが死んでしまったせいで可笑しくなって……わたしを生き返らせようと苦しんでるの……そして今も沢山の人達を傷つけて……自分まで傷つけてる……』

 

 

零「………………」

 

 

アリシア『だから零……お願い……もし……もし本当にわたしの願いをなんでも聞いてくれるなら……おかあさんを助けてあげて……これ以上……わたしのせいでおかあさんを苦しませたくないの……お願い……』

 

 

先程までの明るい印象とは打って変わり、悲しげに、涙声になりながら願いを告げたアリシア。

 

 

それを聞いた零は一度顔を俯かせて暫く口を閉ざすと、力強い表情で虚空を見上げた。

 

 

零「……了解だ……それがお前の願いだというなら、俺がそれを叶えよう」

 

 

アリシア『ッ!え……ホ、ホントに…?』

 

 

零「あぁ、助けてもらった恩は返さないといけないからな……で、お前の母親の名はなんていうんだ?」

 

 

アリシア『え……えーっと……プレシア……』

 

 

零「プレシア…か。了解した、お前の母親は必ず俺が救ってみせる。これで文句ないだろう?」

 

 

アリシア『………うん……うん!ありがとう!ホントにありがとう!』

 

 

いや、願いはまだ叶えていないんだから礼を言うのは早いだろう?と心の中でそう思い口にしようとするが、こんなにも喜んでくれているのだから別にいいかと言葉を飲み込む零。

 

 

零「……さて、それじゃあさっさと現実の世界に戻らないとな……」

 

 

アリシア『……え?もう…行っちゃうの?』

 

 

零「あぁ、お前の願いを叶えてやらないといけないからな。現実世界に戻らないと話にならんだろう?」

 

 

アリシア『……うん……そう、だよね……』

 

 

零が現実の世界に戻ると告げるとアリシアは途端と寂しげな声を漏らし、そんなアリシアにどうしたのかと首を傾げた零はあることに気付く。

 

 

此処で自分がいなくなれば、アリシアはこの暗闇しかない世界でひとりぼっちになってしまう。

 

 

原因はわからないが彼女は何らかの理由でこの狭間の世界に縛られており、それを究明しなければ此処から抜け出せないのだ。

 

 

つまりこの世界でまた……彼女は一人になってしまう。

 

 

そこまで考えた零は一度どうするべきかと悩んで顔を俯かせると、右手で頭を軽く掻きながら……

 

 

零「……………あれだ……帰る前にもう一つ、お前に約束してやる……」

 

 

アリシア『……え?』

 

 

言いにくそうに呟いた零の言葉にアリシアも疑問げな声で聞き返し、零は背後に振り返りながら再び口を開いた。

 

 

零「…………だからあれだ…………ついでにこの世界がお前を縛りつける原因を俺が探し出して…………この暗闇しかない世界からお前を解放してやる…………だから此処で大人しく待っていろ…………俺がお前を…………その…………助け出してやるから…………そんな気を落とすな……」

 

 

アリシア『…………』

 

 

プイッと顔を逸らしながら淡々とした口調でそう言い放った零。そんな零の言葉が予想外だったのか、アリシアは一瞬息を呑みながら唖然となってしまうも直ぐに可笑しそうにクスクスと笑い出した。

 

 

零「な…何だ?何を笑ってるんだ……?」

 

 

アリシア『ふふ♪ううん、ありがとね零?あまり期待しないで待ってる♪』

 

 

零「ッ…………チッ………ならもう行かせてもらうぞ……あっちが死に繋がっているっていうなら、逆方向に行けば現実世界に戻れるんだろう?」

 

 

アリシア『あ、うん。そのまま真っすぐ行けば光が見えてくるから、それを潜れば外に出られるよー♪』

 

 

らしくない事をしたと自己嫌悪する零は一度アリシアに確認を取ると、そのまま何も語らず先程自分が向かおうとした死の道とは逆方向へと早足で歩いていく。そうして暫く闇の中を歩いていると、暗闇の向こうからまばゆい光が溢れ出し、漸くこれで出られると零が光の中に足を踏み込んだ、その時……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリシア『零っー!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零「ッ…!今度は何だ…?先に言っておくがこれ以上約束とかはし―――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しない、と苛立ちを込めて叫ぼうと背後へと勢いよく振り返った。その時……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―………フワァッ…―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零「(――――は…?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一瞬だけ肌に感じた優しい風と、唇に重なった暖かで柔らかい何かの感触。

 

 

それが何なのか分からないまま呆然と光の中で瞬きをしていると、目の前の視界に移ったのは白い光に包まれた一人の少女――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリシア「――――いってらっしゃい♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

意識が光に包まれて消えていく中、最後に垣間見たのは頬を紅く染めて子供のように笑う金髪の少女の笑顔だった――――

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

――そうして俺はあの世界から抜け出し、次に目覚めたのはアースラの医務室のベッドの上だった。

 

 

それから今まで俺に付き添っていた高町が泣きじゃくりながら抱き着いてきたり、リンディ・ハラオウンに説教されたりなど面倒な事が続いた……

 

 

しかし事件が終盤を迎えた直後……俺は信じられない事実を知ってしまった。

 

 

この事件の大元でフェイト・テスタロッサの母親であるプレシア・テスタロッサ……彼女が夢の中で出会ったアリシア・テスタロッサの母親であること……

 

 

アリシア・テスタロッサの遺体が時の庭園にあること……

 

 

そして……フェイト・テスタロッサがアリシア・テスタロッサのクローンであることを……

 

 

 

 

 

 

 

そして事件の終盤……時の庭園が崩壊し始めた時……

 

 

俺はある二つの選択肢を迫られてしまった……

 

 

虚数空間に落ちていくプレシア・テスタロッサとアリシア・テスタロッサが入ったポット……

 

 

無数の瓦礫の下敷きになり掛けているフェイト・テスタロッサ……

 

 

どちらかを救うには、どちらかを切り捨てなければいけない……

 

 

アリシアとの約束か、新たな決意を決めたフェイトか……

 

 

九歳の子供に迫られたその選択肢は……あまりにも酷過ぎるものだった……

 

 

時は一刻を争い、悩んでる時間など到底なかった……

 

 

そんな俺が苦渋して選んで助け出したのは……新たな決意をしたフェイトだった……

 

 

アイツはまだ、誰かと笑い合って生きるということを知らない。

 

 

アイツの未来は、これから始まるんだと。

 

 

だから俺は……フェイトを救う事を選んだ……

 

 

……アリシアとの約束を……切り捨ててしまったんだ……

 

 

PT事件が解決した後も、俺はそのことに対し罪悪感を拭う事が出来なかった……

 

 

部屋に一人篭っては何度もそれに押し潰されそうになり、自分を責めては思わず泣きそうにもなった……

 

 

別にフェイトを助けた事を後悔してる訳じゃない……

 

 

ただ……ただ自分の無力さに嫌気がさしたのだ……

 

 

魔法が使えても、戦える力を持っていても……

 

 

誰かを切り捨てる事でしか誰かを救えない……自分はこんなにも弱い人間なんだと……

 

 

悔しくて……情けなくて……

 

 

事件が解決した後も、俺はなのは達の前ではいつも通りの自分を保ちながら自分を痛め付けるように鍛練に励んだ……

 

 

もう……誰も救えない自分が嫌だから……

 

 

だからこれからも……俺は剣を握り続けると誓った……

 

 

果たす事の出来なかった約束を胸に……誰かを守る為に戦い続ける事を――――

 

 

 

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