仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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第十六章/???の世界①

 

 

―クラナガン・カフェ―

 

 

数十分後、取りあえず零はハイパークロックアップの暴走によって現れた少女が目覚めるのを待って街中のベンチに少女を寝かせて待機し、一時間ほどしてようやく目覚めた少女から事情を聞こうと近くのカフェへと訪れていた。

 

因みに零はアイスコーヒー、少女……自己紹介した時に名乗った"アズサ"はオレンジジュースを頼みながら話しをしている。

 

 

零「―――つまり、お前は自分の名前以外の事は何も覚えていない……という事か?」

 

 

アズサ「うん……名前だけはなんとか思い出せた……けど、それ以外の事が何も思い出せない……」

 

 

零「じゃあ、自分が今まで何処にいたのかも、家族のこととかも?」

 

 

アズサ「……ん」

 

 

最初目覚め時には半ば混乱していたようだが、今の所は落ち着いているようだ。コクン、とストローを加えながら零に小さく頷き返すアズサを見ながらそう思うが、アズサから事情を聞いた零はガクンと肩を落としながら深い溜め息を吐いていく。

 

 

零(はぁ……何処から来たのか分からない……家族はいるのかも分からない……住んでた場所も分からない……となると……これはやはり、アレで決まりか……)

 

 

詳しい事情を聞いたところ、どうやら目の前の彼女は何らかの原因で記憶を失ってしまった人間……所謂、記憶喪失という奴らしい。分かりやすく言えば自分と同じ人間、という訳である。

 

 

零(……くそっ……何かしらの面倒事に巻き込まれるのは覚悟していたつもりだが……まさかいきなりこんな厄介事に遭遇する事になるとは……皆とははぐれ、何処かも分からない世界に飛ばされた挙げ句――)

 

 

アズサ「ちゅー……ちゅー……」

 

 

零(――こんな変なの拾うハメになるとは……)

 

 

チラッとアズサの方を盗み見れば、アズサは無表情の無言のままストローでオレンジジュースを飲んでる。そんなアズサの様子に零はまた深い溜め息を吐いた。

 

 

零(こういう明らかに口数少なそうな奴は扱いに困るんだが……さて、どうするか……)

 

 

アズサ「ちゅー……ちゅー……」

 

 

此処はやはり、相手が困らない程度の質問をして事情を聞くのが一番であろう。しかし、こういう明らかに無口系というような少女にはどんな質問が最適か良く分からない。何かこのような状況に関して参考になりそうな知識は…………自分が高町家に拾わされた日、高町士郎と高町桃子にされた質問ぐらいだろうか。

 

 

零(むぅ……あの時と今では状況が違い過ぎるような気がするが……だが他には考えられないしな……)

 

 

アズサ「…?どうかした?」

 

 

零「……別に……俺のことは気にしなくていいから、さっさとソイツを飲み干せ」

 

 

アズサ「ん……分かった」

 

 

零「…………」

 

 

どうも自分は相手のことを思いやるという事に関してはさっぱりなようだ。その辺りの事は幼なじみであるなのは達から散々言われて来ている事だが、どうにも定着してしまってるせいか自分ではそれを治せそうにないし治そうとも思った事がない。だから自分が疑問に思った事は相手の心境も考えずバンバン聞いていくのだが……

 

 

零(……こういうタイプの奴にはなんかそういうのしずらいというか……調子が狂うというか……それに何より……)

 

 

アズサ「……?」

 

 

零(―――自分と同じ目に合っている人間だと考えると、どうもな……)

 

 

自分も彼女と同じ境遇に合っているから、どんな心境か分かってるからつい同情が生まれてしまう。勿論、自分が思っていた事と彼女が今思っている事は全然違うかもしれないと分かってはいるが、それでもなにかしら共感してしまうというか……

 

 

零(――バカバカしい……幾ら似ていると言っても、何で会ったばかりの人間にそんな感情抱かないといけないんだ。しっかりしろ、黒月零……)

 

 

アズサ「……?どうかしたの?」

 

 

零「……いや、何でもない、気にするな……それよりお前に聞きたい事があるんだが、構わないか?」

 

 

アズサ「?構わないけど、聞きたい事って……?」

 

 

いつもの調子に戻ろうと口を開いた零の言葉にアズサは不思議そうに小首を傾げながら聞き返し、零は軽く息を吐いた後アズサに問い掛けていく。

 

 

零「なら聞くが……お前は俺に拾われる前の事を他に覚えていないか?」

 

 

アズサ「他って……例えばどんな?」

 

 

零「例えば……そう、こんな街中を歩いていたようなとか、ああいうビルを見たことあるような気がするとか……朧げでもいいから、何かそういう景色とかでも思い出せないか?その朧げな記憶を頼りにそれっぽいところとか探して歩き回れば、なにか思い出す可能性があるかもしれないだろう?」

 

 

アズサ「…………」

 

 

もしもアズサがミッド出身ならば、このミッドチルダを見て回れば見覚えのある景色を見て記憶を取り戻す可能性がある。それならば自分がいなくても、管理局に彼女を預けて後を任せれば勝手に記憶探しを手伝ってくれるだろう………この世界の管理局が鷹や煉の所のように余り歪んでいなければの話だが。しかし……

 

 

アズサ「…………光り」

 

 

零「…?光り?」

 

 

アズサ「うん、光り……他に何か覚えていないかと聞かれたら……それしか思い付かない」

 

 

零「…………」

 

 

……どんなリアクションを取ったらいいのかサッパリ分からない。何か覚えてることはないのかと質問して返ってきた答えが光り……なんて返されても、ハ?としか思えないだろう。全く意味が分からない。

 

 

零「……ハァ……ならそれでいいか。じゃあ他に、その光りに関して特別な特徴とかないのか?何色に輝いてたぁーとか……」

 

 

アズサ「何色……そういえば朧げにだけど、緑色に輝いていたような気がする」

 

 

零「緑色ね……………………………緑色の光り?記憶を失う前にそれを見たのか?」

 

 

アズサ「多分……それに何だか、それに引っ張られるような感覚も覚えてる……何か強い力に引っ張られて光りに飲み込まれたような感じは覚えているんだけど……それ以外のことは殆ど覚えていないの」

 

 

零「……………………」

 

 

何と無しに聞いたその質問で、零は頭にある可能性を思い浮かべていく。そして零はゆっくりとアズサから目を逸らし、テーブルの隅に置かれたハイパーゼクターに視線を向ける。

 

 

零(…………確かハイパークロックアップが暴走した時に放っていた光りは緑色だったような…………それに強い力で引っ張られる様な感じって…………)

 

 

確か自分がハイパークロックアップに巻き込まれた時も、そんな感じがしたような気がする。何か強い力で引っ張られるようなそんな感覚が確かに……

 

 

零(ということは……いや、あの時の状況から見ればコイツがハイパークロックアップで飛ばされてきたっていうのは分かってる。けどコイツが記憶を無くす前にハイパークロックアップに巻き込まれるのを覚えていて、俺のところに飛ばされてきた時には既に記憶を全部失っていたという事を考えたら――――)

 

 

と其処まで考えたところで、零の頭にあの時の場面が鮮明に蘇っていく……先程、ハイパーゼクターをあれよこれよと弄りくり回してハイパークロックアップが暴走してしまった事を。

 

 

零(…………えっと…………なんだ…………つまり…………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハイパーゼクターを勝手に弄り回した黒月零。

そのせい?でハイパーゼクターが暴走しハイパークロックアップが強制発動。

零のせいで発動してしまったハイパークロックアップにアズサが巻き込まれ零の下へと強制転移。

強制的に飛ばされたショックでアズサが記憶喪失。

つまり、アズサを記憶喪失にしてしまった張本人というのは――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零「……………………………………………………………………………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ヤバい……いやホントに冗談抜きでヤバい……

 

 

アズサ「―――?大丈夫?スゴい汗よ?」

 

 

零「……へ?ああいや……うん、問題ない……元々汗をかきやすい体質なんだよ俺はうん、という訳で心配は全く無用だ……」

 

 

アズサ「?」

 

 

目を泳がせながらアズサから視線を逸らす零に不思議そうな表情をするアズサ。そんなアズサから視線を逸らした零はガラス越しに外の景色を眺めながら考えていく。

 

 

零(―――ヤバい……もし本当にそうなら完全に俺のせいじゃないかっ……例えこの世界の管理局にコイツを預けても、もしコイツの記憶がどうやっても見つからなかったら……いやそれ以前に……)

 

 

アズサ「……?」

 

 

零(俺のせいで記憶喪失になったのかもしれないのに他人に任せるなんて出来る訳ないじゃないかっ……)

 

 

目の前の少女が記憶喪失になった原因が自分かもしれないという可能性が浮き上がってしまった以上、このままアズサを管理局に預けて自分ははい、サヨウナラなんて出来る筈がない。

 

 

零(ッ……なんて馬鹿な事をしたんだ俺はっ……見ず知らずの他人を巻き込んだ上に記憶喪失?ぜんっぜん笑えんぞこの展開っ…!)

 

 

アズサを管理局に預けるという選択肢は早くも消えてしまった。となれば、後は必然的に自分が彼女を保護しなければいけないという流れになる訳だが……

 

 

零「――――一応聞くが、お前はこれからどうするつもりなんだ?」

 

 

アズサ「どうするって……何が?」

 

 

零「いや何って……記憶がない以上、お前は行く場所がないだろう?だからお前はこれから一体どうするのかって一応聞いておきたいんだが……」

 

 

アズサ「…………」

 

 

保護するしないより先に、先ずはアズサの意見を聞かなければいけない。もしも彼女にこれからどうしたいという意見があるのなら、彼女の意思を尊重しなければいけないだろうから。零がその意味を込めて真剣に質問すると、アズサは少し顔を俯かせながらポツリと呟き出す。

 

 

アズサ「私……私は、自分の記憶を探したい……自分が誰なのかを知りたいの」

 

 

零「……まぁ、確かにそう思うのが普通だな。だが、どうやって探すつもりなんだ?」

 

 

アズサ「……わからない。だけど探してみる。さっき貴方が言っていたように、この街を歩き回って記憶の手掛かりになるようなモノを探してみる」

 

 

零「……もし、手掛かりが見付からなかったら?」

 

 

アズサ「…………」

 

 

もし手掛かりが見付からず記憶が戻らなかった場合はどうするのか。当事者からすれば余り聞きたくはないが、それでも一応聞いておかなければいけない。その質問を受けたアズサは表情を曇らせながらゆっくりと口を開いていく。

 

 

アズサ「……もし手掛かりが見つからなかったら……その時はもう諦める」

 

 

零「諦めるって……じゃあその後はどうする気なんだ?記憶が戻らないまま一人で生きていくつもりか?」

 

 

アズサ「そうなっても仕方ないと思う……記憶を無くしたのも、きっと私の運が悪かったせいだと思うから……だからもし記憶が戻らなかったとしても、それは仕方ないわ……だから私を知っている誰かが探しに来てくれる事を信じて、それまで一人で生きていくしか―ガタンッ!!―……?」

 

 

アズサが最後まで言い切る前に、何やら鈍い音と共にアズサが座っているテーブルが僅かに揺れてアズサの言葉を遮ってしまった。そして思わず目の前へと視線を向ければ、何故か向かいの席に座る零がテーブルの上におでこを打ち付けてうなだれていた。

 

 

アズサ「どうしたの?」

 

 

零「……いいやっ……ただお前のその健気さを見せられて自分がどんな間違いを犯したのか改めて再確認されただけだっ……」

 

 

アズサ「?」

 

 

言っている意味が良く分からないのかアズサは頭上に無数の疑問符が並んでいくが、零はそんなアズサに気付かずおでこをテーブルに付けたまま思う。

 

 

零(駄目だ……余計にコイツを一人に出来なくなってきてしまった……あぁ……これはもう何時帰れるか分からなくなってきたなぁ……)

 

 

もし記憶を取り戻せなかったら、本当にいるのかさえ分からない知り合いが来てくれる事を祈って一人で生きていく。そんな健気な事を告げるこの少女を放って写真館に帰る事など、どう考えても出来る筈がない。彼女を巻き込んでしまった張本人としても、今自分がすべき事はやはり一つだけだろう。

 

 

零「――あぁ……分かった……なら、俺もお前に付き合うとしよう」

 

 

アズサ「?何を?」

 

 

零「何って……お前の記憶探しに決まってるだろう?此処まで事情を知ってしまった以上、このままお前を放っておく訳にはいかないからな」

 

 

アズサ「……でも貴方、私と初対面でしょう?なのになんで……」

 

 

零「乗り掛かった船という奴だ……それに……俺にも責任はないとは言えんからな……」

 

 

アズサ「…?」

 

 

最後の部分だけ何やら言いにくそうに呟きながら顔を逸らした零にアズサは小首を傾げるが、取りあえず彼が自分の記憶探しを手伝ってくれるのだと理解したのだろう。アズサは零を見つめたまま少し不器用そうに微笑みながら……

 

 

アズサ「良く分からないけど……手伝ってくれるならすごく助かる。正直一人だけじゃ不安だったから……ありがとう」

 

 

零「…ッ!」

 

 

事実を知らない純粋無垢な笑顔と瞳を向けながら零に向けてお礼の言葉を口にしたアズサ。それを告げられた本人は……

 

 

零(や、止めろっ……そんな純粋な笑顔と瞳を向けて礼なんか言うんじゃないっ……今の俺はお前が思っているような良い人間なんかじゃないんだぁっ!!)

 

 

照れる……というよりは、寧ろ罪悪感という無数の針が彼の良心をこれでもかと言うようにザックザックと突き刺し、心の中で頭を抱えながら悶え苦しんでいたのだった……

 

 

 

 

 

 

とまあこんな一連のことがありつつも、アズサの記憶を探しながらこの世界について調べようと二人が外に出たのはそれから一時間後ぐらいだった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―クラナガン・高速ビル屋上―

 

 

 

零とアズサがカフェを出てクラナガンを歩き回る頃、とある高速ビルの屋上では二人の奇妙な格好の女性が街を見下ろす姿があった。一人は右耳にピアスをつけた黒いローブの女性。もう一人は左耳に同じピアスをつけ、足の周りのスカートを縦に引き裂き白い太股を露出させた女性であった。

 

 

「―――駄目ね。この辺りにも気配はないわ」

 

 

「えぇー?また空振りぃ?これでもう七回目よ姉さ~ん」

 

 

水平に手の平を構える黒いローブの女性の言葉に太股を露出させた女性はくたびれたように言いながら屈み込み、黒いローブの女性はそんな女性に呆れたような溜め息を吐きながら女性と向き合っていく。

 

 

「しょうがないでしょう?あの預言者が放った人造人間が突然行方不明になったっていうんだから」

 

 

「だからって、なんで私達が動かないといけないの?あの方と終夜様の命令だから仕方なくやってるけど、こんなの下っ端にでもやらせておけばいいじゃない。あんな胡散臭い預言者の為に動いたってなんのメリットもないでしょう?」

 

 

黒いローブの女性を見上げながらめんどくさそうに呟き返す女性だが、黒いローブの女性は腕を組みながら口を開く。

 

 

「そういうワケにはいかないのよ。どうやら例の人造人間には破壊者を倒す為の切り札を積んでいるらしいわ。だからもしもの為に、私達が駆り出されたのよ。貴方だってそう聞かされたでしょ?」

 

 

「そりゃ聞かされたけど…切り札ねぇ?あの預言者、破壊者の抹殺に何度も失敗してるんでしょう?どうせまた使えないモノでも積んでるんじゃない?」

 

 

「そうかもしれないけど、もしホントに破壊者を倒せる程の物ならほっとけないわ。今はまだ破壊者を消される訳にはいかないもの。だからあの預言者の目を盗んで例の人造人間を密かに回収する……それが今回、あの方と終夜様から与えられた任務なんだから」

 

 

「因子を覚醒させた破壊者捕獲の為の切り札にするってワケでしょ……ホントにその人造人間が使えるのかあまり期待出来ないけど、地道に捜すのも飽きて来たしね……そろそろ真面目にお仕事しますか」

 

 

「……そうね……余り時間は掛けられないし、やり方を変えましょうか」

 

 

黒いローブの女性がそう言うと、屈み込んでいた女性はおもむろに立ち上がって指を鳴らしていく。すると二人の背後の空間が捻れるように歪み、其処から無数の異形達が現れあっという間に二人の背後を埋め尽くしていった。

 

 

「先ずは、適当に騒ぎを起こして破壊者からあぶり出すわよ」

 

 

「騒ぎを起こせばこの世界に飛んだ破壊者が出てくるだろうし、そうすれば破壊者を抹殺しようと例の人造人間も出て来るはずだろうしねぇ」

 

 

「そういうこと……さぁ、行きなさい」

 

 

『シャアァァァァァァァァァァァァァァアッ!!』

 

 

黒いローブの女性がビルの下を顎で軽く指すと、二人の背後に立っていた異形達はそれに応えるように一斉にビルから飛び出し、遥か地上へと落下していった。そしてそれを確認した二人の女性は互いに顔を見合わせて頷くと、別のビルへと飛び移って何かを捜すように街の様子を観察していくのだった。

 

 

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