仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
―機動六課・食堂―
あれから数時間後、アズサの協力もあって何とか誤解を解く事に成功した零は、カブトとガタックの変身者……天道光と輝神勇司の提案でこの世界の機動六課へと訪れ、食堂に場所を移し事情を説明していた。
光「………つまり、お前はカブトの世界での役目を終えて次の世界に向かおうとした時にハイパーゼクターの暴走で強制的に飛ばされ、この世界に迷い込んだという事か?」
零「あぁ、簡単に言えばそんなところだな」
今まで受けた説明を纏めて聞いてきた光に零がカメラの手入れをしながら答え、テーブルに置いてある珈琲を手に取って口の中に流し込んでいく。
なのは(別)「でもちょっと実感ないな…異世界の私達が色んなライダーの世界を旅してるなんてυυ」
零「ま、そう思うのも無理はないだろう。俺達も最初は戸惑った物だからな…」
はやて(別)「んー…まぁ、光君が平行世界の私等に会ったっていう話しもある訳やしなぁ……なら、あの子も零君の連れなんか?」
そう言いながらはやて(別)は別のテーブルでこの世界のスバル達と三人の少年達……ライルとリオンとアッシュに黒猫を触らせているアズサに目を向けるが、零は「いいや」と首を左右に振って否定した。
零「アレはちょっと事情があって拾っただけだ…どうやら記憶喪失という奴で、自分の名前以外は思い出せないらしい」
フェイト(別)「記憶喪失?あの子、事故にでもあったの?それとも何か精神的なショックを受けたとか?」
零「…まぁ、イロイロあってな…だからアイツの記憶を探しに街中を歩き回っていたんだが……残念な事に収穫は無しだ」
はやて(別)「そっかぁ……そんなら、シャマルに見せてもらったらどうや?一度検査してもらえば、記憶を取り戻す治療法とかもなんか掴めるかもしれへんし」
シャマル(別)「そうですね…良かったら私の方であの子を診察しますけど、どうします?」
零「……そうだな……出来たらそうしてもらえると助かる……正直、俺だけじゃ限界があるし」
ホントならアズサを巻き込んだ本人である自分がやらなければいけない事だが、自分の力だけではアズサの記憶を確実に取り戻せそうにない。ならば此処は専門家に任せるべきだろうと考えて首を縦に振ると、今度は勇司が苦笑いを浮かべながら零を見つめてきた。
勇司「にしても、お前も口下手だよな?さっきのは光にも原因はあるけど、お前もあんな言い方すれば誤解だってされるぜ?υυ」
零「それについてはちゃんと謝っただろう?それに、先に疑いを掛けてきたのはそっちなんだ……だから俺もそれ相応の態度を取っただけに過ぎん。文句を言うなら、ちゃんと説明してなかった滝に言え」
光「……確かにな、帰る前に滝からちゃんと話を聞くべきだった。そう言われても仕方ないが……お前にも原因はあるぞ?何故怪我のことも、滝が誤解してお前と戦うことになったと言わなかった?」
門矢士ではないディケイドが、本当にこの世界を破壊する悪魔ではないかと警戒していた光にも原因はあるが、誤解されるような言い方をした零にもその原因はある。光が何故あの時弁解しなかったのかと質問すると、零は深い溜め息を吐きながら告げる。
零「……生憎今までの経験のせいか、破壊者と疑われたら弁解は無駄だと認知してるんでね。違うと言っても意味はないと思った……それだけだ」
なのは(別)「今までの経験って、そんなに今まで誤解されてたの?破壊者って」
零「あぁ…何度違うと言ってもどいつもこいつも悪魔だとか破壊者だとか言って問答無用で殴り掛かってくるし、変な中年おやじには刺客を送られて何度も殺されそうになるし、ワケの分からないライダー達には狙われるし、なのは達には半殺しにされる毎日だし……軽く人間不信になり掛けてるんだよ……」
フェイト(別)「あ、あはは……苦労してるんだねυυ」
光(成る程、色んな意味で滝に似てるな……いや……寧ろ滝より酷いかυυ)
聞いただけでもかなり凄そうな生活を送っている零の話に若干引いてしまうフェイト(別)となのは(別)達。そんな一同から同情の視線を送られて気まずくなったのか、零は思わず一同から顔を逸らしてしまう。
勇司「え、えっと……そうだ!確か零は色んなライダーの世界を回って旅してるんだろ?今までどんな世界を巡ってきたんだ?」
なのは(別)「あ、それ私もちょっと聞きたいかも」
零「ん?今まで回ってきた世界か……取りあえず今巡った世界はこれだけだな」
零はそう言ってテーブルにクウガ、アギト、龍騎、ファイズ、ブレイド、カブト、電王、キバのカードや、先程変身して見せたfirstやエクスにキャンセラー、七柱神のカードなど外史のライダー達のカードを並べていき、光達はそれを手に取りまじまじと眺める。
はやて(別)「ほえぇ…仮面ライダーってこんなに沢山おるんやな?」
フェイト(別)「カブトもあるし、こっちのfirstってさっきも零が変身してた奴だよね?」
シグナム(別)「ブレイド、剣のライダーか……これは少し興味があるな」
勇司「キャンセラーにベルクロスにホルスか……俺らの知らないライダーも結構あるんだな」
光「それもそうだが………このCLIMAX FORMとはなんだ?」
零「?あぁ、それはディケイドのクライマックスフォームになれるフォームライドカードだ。簡単に言えば電王のてんこ盛りみたいな奴」
勇司「ディケイドのクライマックスフォームっ?!」
光「……なら、このサモンライドとやらは?」
零「ライダーの変身者をそのまま強制的に呼び出せるカード。もちろん幻影じゃなく本物をだが」
光「……人権無視というか、軽くチートじゃないか?それ」
零「俺に言うな、作った奴(幸助)に言え」
あのチートオブチートが作るものはどれも目茶苦茶過ぎるんだ、と内心冷や汗を流しながら珈琲を啜る零。がその時、零はテーブルに並べた絵柄の消えた一枚のカードを見付けて険しげに眉を寄せた。
零(…?何だこれ?こんなカード、前に整理した時にあったか?)
零は疑問げにそう思いながらテーブルに並べられた見覚えのないシルエットだけのカード……『PRIEST』と書かれたライダーカードを手に取って眺めていくが、やはりこんなカードに見覚えはない。いつの間に紛れ込んでいたんだ?と、零は不思議そうに首を傾げながらカードをジッと見つめていた。そんな時……
―トントンッ―
アズサ「零、零…」
零「…?アズサ?どうした、何かあったの―――」
不意に背後からアズサに肩を叩かれ、カードから視線を逸らして思わず背後へと振り返る零。しかし、何故か零は背後に立つアズサを見た途端固まってしまい、カードを眺めていた光達もアズサを見て固まってしまった。何故なら……
零「――――おい……頭についてるそれは何だ?」
アズサ「?……耳」
零「……何の耳?」
アズサ「猫の耳、通称ネコミミ」
シロ『にゃー!』
その言葉を肯定するかのように、少女の胸に抱かれた黒猫が鳴いた。零の目の前に立っていたのはアズサ、アズサなのだが……何故かその頭には黒猫と同じフサフサとした黒い耳、世間ではネコミミと呼ばれる耳が付けられていた。なんですかそれは?的な目で零と光達がアズサを見つめる中、先程までアズサと話をしていたスバル達がアズサの両肩を叩いた。
スバル(別)「どうですか皆さん!アズサさん、かなりカワイイでしょ~♪」
勇司「……いや、あの……っていうかそれどうしたの?υυ」
アズサ「…スバル達と一緒に作った。シロとお揃い」
シロ『うにゃー』
リオン「えぇっと……実はさっきアズサさんの猫の話題で盛り上がってた時に、アズサさんがいきなり『シロとのお揃いが欲しい』って言い出したんですよυυ」
ギンガ(別)「それでちょっと流れ的に作ってようか?みたいな感じになっちゃって…υυ」
零「…お前な、少しは他の人の迷惑とか考えろ…」
アズサ「?……変?」
なのは(別)「あ、ううん、そんなことないよ?全然似合ってるよ♪」
はやて(別)「せやな♪その子とお揃いっちゅう事は、アズサちゃんのそれも黒猫の?」
アズサ「うん……発情期のネコ」
『…………へ?///』
一同硬直。アズサの言葉の意味が分からず一瞬固まってしまうなのは(別)達だが、直ぐにその意味に気付き思わず顔を赤くしてしまう。
零「それを言うなら"成長期"だろうっ…!」
アズサ「?………そーとも言う」
零「そうとしか言わん!」
アズサ「……シロ、お前とお揃いだよ。にゃあ」
シロ『にゃー』
零「……無視?無視か?人にツッコミさせといて無視かお前」
アズサ「にゃー」
シロ『うにゃ~』
零「……なぁ、知ってるかアズサ?テレビで言っていたが、無視って虐めに繋がるんだぞ?」
アズサ「シロ、お腹空いてる?何か食べる?」
シロ『にゃー!』
零「………………………………すまん……珈琲のお代わりもらっていいか…?」
『ア、アハハハ…υυ』
アズサに話を聞いてもらえず、変わりに珈琲のお代わりを求める零。そんな零とアズサのやり取りに勇司達は思わず苦笑いを浮かべていたのだった。
◆◇◆
―機動六課・屋上―
数時間後、あの後食堂での会話はお開きになり、零は六課の屋上へと訪れ爛々と星が輝く夜空を見上げていた。因みにアズサはシャマル(別)の診察を受ける為に医務室に足を運んでおり、今此処にはいない。
零「……そういえば、こうして六課の屋上から夜空を眺めるのも久しぶりだな……」
少しばかり自分の世界が恋しくなりながらそう呟き、零はポケットからハイパーゼクターを取り出し金色に輝く月に翳すようにそれを眺める。
零「……アズサの記憶探しもいいが、どうやって帰るかな……コイツを使おうにも役に立ちそうにないし」
今すぐとまでは言わないが、アズサの記憶を見付けた後の事を考えたら少し焦ってしまう。この世界に海道がいるなら、アイツを締め上げて光写真館まで連れていってもらうという方法もあるにはあるが、アイツがこの世界にいるという確証もない。考えれば考えるほど方法が見つからなくなってしまい、零は暗くなる考えは止めようと頭を左右に振ってハイパーゼクターをポケットに押し込んだ。そんな時……
「……此処にいたのか」
零「ん?」
後ろから声を掛けられ、零は思わず背後へと振り返った。すると其処には屋上の扉を開けてこちらへと歩み寄ってくる青年……光の姿があった。
零「何だ?俺に何か用か?」
光「いいや、ただお前の姿が見えないのが気になって探してただけだ」
零「恋人を放ってか?以外と暇な奴だな、お前」
光「フェイトには後で嫌と言うほど構ってやるさ……其処の所に抜け目はない」
零「……そうかい、甲斐性がある奴で安心したよ。別世界の幼なじみとして」
そう言うと零は再び夜空を見上げていき、光も零の隣にまで歩み寄り夜空を見上げていく。
光「……やはり似ているな、お前と滝は」
零「…?何がだ?」
光「俺がfirstの世界に飛ばされた先でも、滝はこうやって六課の屋上から夜空を見上げて、俺はアイツを探して此処にやって来た。此処に来るまで、アイツとお前は考えてる事が似てるんじゃないか?と思った」
零「……いや、俺とアイツは似てなんかないさ……」
光「…?何故だ?」
首を左右に振って否定した零に光が疑問げに聞くと、零は星空を見上げたまま呟いた。
零「決まってる。アイツは馬鹿みたいに優しくて誰かとの約束を守る奴だが……俺は他人に優しくはなれないし、約束を守れない……そしてアイツは自分が守りたいと思うものを必ず守るが、俺は守りたいと思うものを守れた試しがない…」
光「…………」
零「……アイツと戦って、アイツが人造人間になってからの生き方を聞いて思ったよ……『あぁ、このままじゃコイツ、絶対後悔するな』って。昔の自分を見てるようだった……自分の命を投げ出す覚悟で戦って、周りの人間が悲しんでいるのにも関わらず戦い続けている……その結果、どんな悲劇が待っているのか……嫌と言うほど簡単に予想出来た」
光「…………昔のお前も、滝のような生き方をしていたのか?」
零「…………」
険しげに聞かれた問いに、零は口を閉ざした。そして暫く二人の間に沈黙が流れると、零は漸くゆっくりと口を開いた。
零「…………助けたかった二人がいた……だけど、俺はその二人を救えず見殺しにした……そして今度は、目の前でなのはが討たれたのを黙って見てるしか出来なかった……」
光「…………」
零「…悔しくて……自分の無力さを何度も呪った……力がある癖に、守ると誓った癖に……ただ見てるしか出来なかった。そんな無力な自分が嫌で、何も守れない自分が嫌で、死ぬ思いで強くなろうと努力した…」
それが正しいのだと信じていた。力さえあれば、強くなれば誰かを守れる。もう誰も失わない、もう誰も涙を流す事なんてないと。
零「無理しないでくれと、アイツ等にも何度も止められた。だが俺がもっと強くなればコイツ等をちゃんと守れる、もう涙を流させる事はないんだと信じて……そう自分に言い聞かせて……俺はアイツ等の手を振り払った……」
光「…………」
零「アイツ等は必死に俺を止めようとしたのに、俺はそれを聞かず無理を続けて……その結果……逆にアイツ等に深い悲しみを与え、ただ自分が後悔するだけの結果が残ってしまっただけだった」
守る事と、無茶をする事は全くの別物だ。守るというのは、相手や自分をも守れて初めてそう言えるのだ。無茶をして誰かを守ったとしても、誰も喜んだりはしない。ただ自分が守れたと思って自己満足するだけの独善にしか過ぎない。滝と出会った時、自分を顧みず無茶して誰かを守ろうとする滝を見て、嘗ての自分もこうだったんだと初めて思えた。
零「……俺は後悔ばかりの人生を歩んできた……だがアイツはまだ間に合うし、そんな馬鹿な真似はしないと信じてる。俺みたいに道を踏み外す事はないと……大事な人を泣かせる馬鹿なんて、俺だけで充分だからな」
光「…………」
まるで自分を自嘲するように笑う零に、光は何も言わない。
あの時の少年も、ただ純粋に大事な人達を守りたいが為に走り続けただけだった。だが行き過ぎたのだ。
周りを見ないで走り続け、何時しか道を踏み外し、踏み外した事にすら気付かず走り続け、辿り着いた先で後悔し、自滅した。
誰も救われない、自分すらも救われない結末で終わってしまった。
だからそんな生き方を滝に……いや、誰にもしないで欲しいと零は願っている。今でも……
零「…………辛気臭い話をしたな……忘れてくれ」
我ながら馬鹿な話をしてしまったと内心後悔しながらそう言うと、零はそのまま屋上から出て行こうと早足で歩き出した。が……
光「…………確かに……」
零「……?」
その歩みを止めたのは光の呟きだった。零は扉の前で立ち止まったまま振り返ろうとせず、光も夜空を見上げながら続ける。
光「……確かにお前は……間違えたのかもしれない。だが、お前が誰かを守りたいと願った思いまでは……間違っていなかった筈だ」
零「…………」
光「やり方はどうだったにしても、お前がなのは達を思う気持ちに嘘偽りはない。それを分かっているから、お前の世界のなのは達も……アズサもお前を慕っているんだろう」
零「……アズサ?」
光の口から出た名前に零は思わず首を傾げながら聞き返し、光は零の方へと振り向きながら語る。
光「お前を破壊者だと誤解した時、アズサは必死にお前を庇っていたんだ。『零は悪魔じゃない』、『零は良い人』とかな……」
零「……アイツが……そんなことを……」
光「此処まで慕われているんだから、お前もアズサを大事にしてやれ……今のアイツの居場所は、お前しかいないんだから」
零「…?俺が……アイツの居場所?」
光「記憶喪失という事は、アズサの居場所は何処にもないということだ。何処に行けばいいのか、これからどうしたらいいのか分からない。そんな今のアズサの居場所になってやれるのは……お前しかいないだろう?」
零「…………」
そうだ。記憶がない今、アズサはきっとこれからの事で不安になっているに違いない。何時も無表情でいるせいで少々分かり難いが、アズサからすれば見るもの全てが始めてなのだ。そんな彼女の支えになれるのは、アズサを最初に拾い、記憶失ってから初めて親しくなった自分しかいない。
零「……そうだな……分かった……記憶を見つけるまでの間、出来る限りアイツから離れないようにする」
光「そうしてやれ、アズサもきっと喜ぶだろう」
零「……フッ……こんな俺でもそう思ってくれるなら、俺も少しは気が楽になるんだがな」
零が何処か寂しげな笑みを浮かべてそう言うと、光は真剣な表情で背中を見せる零を見据えながら語る。
光「零…こんなこと俺には言えた立場ではないだろうが、一つだけ言っておく」
零「…………」
光「お前は誰も守れないと言ったが、それはお前の思い違いだ。お前はちゃんと誰かを守れている……現にアズサも、俺や勇司もお前に助けられた。お前は……お前自身が思っているより強いと、俺はそう思っている」
零「…………」
一度も振り返らないまま、ただ光の言葉に耳を傾ける零。そして零は一度溜め息を吐くと、屋上の扉のドアノブに手を掛けながら口を開いた。
零「それは買い被り過ぎだ………俺は別に強くなんてない、弱い人間だ。俺より強い人間なんか他にいるぐらい、お前だって知ってるだろう?」
光「…………」
零「俺はただ、自分が後悔するような生き方は二度としないと、そう誓った……弱い自分なりに、俺は俺のやり方でアイツ等を守ると……今までの自分とは違うやり方で守り抜くと、そう決めたんだ…」
何処か力強い決心が込められた口調でそう告げると、零は扉を開き屋上を後にしたのだった。そして屋上に一人残された光は零が出ていった扉から視線を外し、零が見ていた金色の月を見上げていく。
光「……いいや……お前は充分強いよ、零……」
誰かに向けられたモノなのか、或いは単なる独り言なのか。その呟きは夜空へと吸い込まれように消えていき、星は今も尚爛々と輝いていたのだった。