仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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第三章/キバの世界③

 

街中の広場。其処には零達が耳にした悲鳴の主と思われる女性が必死の形相で街ゆく人の肩とぶつかりながら脇目も振らず逃げる姿があり、その背後からはライオン型の白いファンガイア、ライオンファンガイアが追ってきていた。

 

 

―ドサァッ!―

 

 

「うあッ?!た、助けて……!お願いっ、お願いしますッ!」

 

 

『いいや、貴様は掟を破った。その重罪は命を持って償え!』

 

 

背後から追ってくるライオンファンガイアに気を取られ過ぎて転んでしまい、尻もちを着きながら後退りし必死にライオンファンガイアに命乞いをするも聞く耳を持たれず、ライオンファンガイアは拳を振り上げて女性に襲い掛かろうとするが……

 

 

「止せ!」

 

 

『……?!』

 

 

ライオンファンガイアの拳が振り下ろされようとした直前、悲鳴を聞き付けた零が漸くその場に到着し、女性は隙を見て急いで零の後ろへと隠れていった。

 

 

『貴様、一体何の真似だ?』

 

 

零「何だはこっちのセリフだ。これの何処が人間とファンガイアが仲良くだよ?」

 

 

『その女は掟を破ったのだ。掟を破った者を生かす訳にはいかない』

 

 

いいから其処を退けと、女性を引き渡すように威圧的に警告するライオンファンガイア。だが零は怯えた様子で自分の陰に隠れる女性を見て険しげに眉を顰め、ライオンファンガイアを見据えながら懐から取り出したディケイドライバーを腹部に当てて装着する。

 

 

零「生憎、殺されると分かってる人間を素直に引き渡すほど俺も人でなしじゃない……変身ッ!」

 

 

『KAMENRIDE:DECADE!』

 

 

左腰に現れたライドブッカーから抜き取ったカードをドライバーに装填し、電子音声と共に零の姿がディケイドへと一瞬で姿を変えていった。

 

 

『な、何だとッ?!』

 

 

ディケイド『あまり騒ぎを大きくしたくはないんでな、すぐに終わらせる!』

 

 

そう言って両手を叩くように払い、変身した零を見て困惑するライオンファンガイアに拳を振るって戦闘を開始するディケイド。

 

 

「……あれは……?」

 

 

その様子を近くの木の影から、先程廃墟のような家で零となのはが出会った少年が怪訝な眼差しでディケイドの戦いを見つめる姿があるが、それに気付かぬままディケイドはライオンファンガイアの拳を上手く捌きながら左腰に装着するライドブッカーをソードモードに切り替え、更に一枚のカードを取り出しバックルに装填してスライドさせた。

 

 

『ATTACKRIDE:SLASH!』

 

 

鳴り響く電子音声と共に刃が分身するライドブッカーを振るい、ライオファンガイアに斜め下、横一閃に斬撃を放ち、思わぬ攻撃にライオンファンガイアも対処出来ず全ての斬撃を刻み込まれた。

 

 

『グウゥッ?!キ、サマッ……何者ぉッ……?!』

 

 

ディケイド『仮面ライダーディケイド……通りすがりの仮面ライダーだ』

 

 

淡々とディケイドが名乗ると共に、ライオンファンガイアは断末魔の悲鳴を上げて硝子のように粉々に砕け散った。すると、その様子を陰から見ていた少年がディケイドの名を聞いた瞬間、何やら顔色を変えディケイドへと近づいていく。

 

 

「ディケイド……?ディケイドだと?!」

 

 

ディケイド『?お前、さっきの……』

 

 

木の影から姿を現した少年を見て構えを解くディケイド。だが、ディケイドを見つめる少年の顔は何故か険しく敵意を剥き出しにしており、そんな少年の下に何処からともなく金色の奇妙なコウモリが羽ばたいて現れた。

 

 

『ワタル!コイツ、キバーラが警告していた……!』

 

 

ディケイドの名を聞いて敵意を露わにする少年、"ワタル"の下に飛来した金色のコウモリが真剣な口調で呼び掛けると、ワタルは無言のまま右手を頭上に掲げる。

 

 

ワタル「キバット!」

 

 

『おう!キバっていくぜぇ!』

 

 

ワタルからの呼び掛けに陽気に応じ、キバットと呼ばれた金色のコウモリはワタルの手に捕まると、ワタルはそのまま自身の左手にキバットを近付けていき……

 

 

キバット『ガブッ!』

 

 

なんと、キバットはワタルの手に躊躇なく噛み付いたのである。しかしキバットに噛み付かれたワタル自身は動じる様子もなく、その顔にステンドグラスのような模様が浮き出て腰に何重もの鎖が巻き付いていき、赤いベルトへと変化していった。そして……

 

 

ワタル「変身ッ!」

 

 

高らかに叫び、腰に出現したバックルの止まり木にキバットをセットしたワタルの身体が徐々に変化を始めていき、小さかった背丈もディケイド並に変わっていく。

 

 

全ての変身を終えたその姿はコウモリを彷彿とさせる赤と黒の仮面と黄色い瞳、真紅の鎧を纏った異形の姿……この世界のライダーである『仮面ライダーキバ』へと変身したのだった。

 

 

「王子……!」

 

 

「王子だ!」

 

 

「キバの鎧、初めて見た!」

 

 

ディケイドと対峙するワタルが変身したキバを見て、周りの群衆がざわめていく。その中には、クウガの世界にも現れた謎の男と、優矢を誘った白いコウモリの姿もあった。

 

 

『ほ~らね?優矢ってのを連れてくれば、きっとディケイドも現れる。言ったとおりでしょ?』

 

 

「ディケイド……ここがお前の最後の場所だ」

 

 

そう言いながら謎の男が不敵な笑みを浮かべる中、ディケイドは群衆から聞こえてくるキバの名前から目の前の戦士がそうであると確信し、ライドブッカーの刃で軽く指す。

 

 

ディケイド『成る程……お前がキバ、この世界のライダーだったのか?』

 

 

ワタルがこの世界のライダーだった事に内心驚くも、それならそれで話が早いとキバにそう尋ねるディケイドだが、それに対しキバは何も答えずいきなりディケイドへと襲い掛かりハイキックを放った。

 

 

ディケイド『ッ?!何すんだいきなり?!』

 

 

キバ『お前の事は聞いているっ!悪魔っ!』

 

 

ディケイド『なっ……チッ、またそれかっ……いい加減、なのはの奴の気持ちが分かってきた気がするぞ……』

 

 

どうやらキバは前回の優矢の時と同様、何者かにディケイドが悪魔だと吹き込まれてるらしい。

 

 

身に覚えのない中傷にいよいよ管理局の白い悪魔だなんだのと呼ばれ続けてたなのはの気持ちに共感を覚えつつも、ディケイドはキバが繰り出す素早い拳をライドブッカーで弾いて何とか拮抗し、隙を突いてライドブッカーの柄頭でキバの顔を殴り付け怯ませた。

 

 

キバ『ぐっ!クソッ!』

 

 

キバット『おいワタル!少し落ち着けって!』

 

 

気を逸らせるキバを落ち着けようとベルトの止まり木に止まるキバットが宥めるが、キバはそれを無視してベルトの左腰に備え付けられた三色の笛型のアイテム……フエッスルの中から緑のフエッスルを取り出す。

 

 

キバ『来い!バッシャー!』

 

 

キバット『あー、しょうがねえ……!バッシャーマグナム!』

 

 

キバは緑のフエッスルをキバットに吹かせると、キバットの掛け声と共に奇妙なメロディーが流れ、辺りに鳴り響いていく。

 

 

 

 

 

◇◇◆

 

 

 

 

 

同時刻、キャッスルドラン内では王の側近である三体のアームズモンスター、ガルル、バッシャー、ドッガがある人物を探して城内を忙しなく走り回っていた。

 

 

『王子、やっぱり城の中にいないよ!』

 

 

『まただ……王に即位する件を持ち出すとすぐに逃げだされる……!』

 

 

『城にいないのなら我々だけで探すのは無理だ……すぐに出動中の親衛隊に連絡するぞ!』

 

 

城内を隈無く探しても見つからないこの城の主である王子が外に出ていったのかもしれないと推測し、三体は街でパトロール中の親衛隊にも連絡を入れようとするが、その時……

 

 

―♪♪~♪~―

 

 

キバットが吹いた笛のメロディーがキャッスルドラン城内に響き渡った。

 

 

『え、呼ばれた?!』

 

 

三体の内の一体、バッシャーは一瞬困惑を露わに他の二体と顔を見合わせるも、すぐにその姿を緑の彫像へと変えて城の外に飛び出していった。

 

 

 

 

 

◆◇◇

 

 

 

 

 

そしてキャッスルドランから飛んで来たバッシャーの彫像をキバが手に取ると、彫像は銃のように形状が変化し、キバの右腕と胴体に鎖が何重にも巻き付いて魚人を彷彿とさせる緑色の装甲に変わっていく。

 

 

最後にキバとキバットの瞳の色が緑へ変化していき、キバはバッシャーの力をその身に宿した遠距離射撃に優れた形態、『仮面ライダーキバ・バッシャーフォーム』にフォームチェンジしたのだった。

 

 

キバB『ハアッ!』

 

 

―ダンッダンッダンッダンッ!!―

 

 

ディケイド『クッ?!ガハァッ!』

 

 

姿を変えたキバが放つ水弾を咄嗟に身を翻して回避しつつライドブッカーソードモードを振るって何とか水弾を切り払うディケイド。しかし相手の連射速度が上回って次第に対処し切れなくなり、立て続けに水弾を食らって全身から火花を撒き散らし吹き飛ばされてしまった。

 

 

ディケイド『ッ……ガキンチョが、大人への礼儀ってのが分かってないようだな……!』

 

 

流石に子供相手ならなるべく穏便にと思ったが、向こうがその気なら最早加減はしない。水弾が直撃して激痛の走る肩を抑えて起き上がり、ディケイドは左腰に戻したライドブッカーからカードを一枚取り出す。そして……

 

 

ディケイド『変身ッ!』

 

 

『KAMENRIDE:KUUGA!』

 

 

ディケイドライバーにカードを装填しスライドさせた瞬間、電子音声と共にディケイドの身体が徐々に赤い鎧を纏うクワガタムシの仮面の戦士に変化していき、其処へ零と別れて悲鳴の主を探していたなのはが騒ぎを聞き付けて駆け付け、ディケイドの姿を見て驚愕した。

 

 

なのは「あれは……優矢君と同じクウガ?!」

 

 

そう、ディケイドが姿を変えたのは前の世界で優矢が変身したのと同じクウガであり、キバも他のライダーの姿に変わったディケイドを見て動揺を浮かべた。

 

 

キバB『姿が変わった……?!』

 

 

Dクウガ『本職でなら戦術や戦い方しか教えないが、今回は特別に礼儀作法も追加で仕込んでやる!』

 

 

キバB『クッ!』

 

 

そう言って勢いよく飛び出すDクウガを近付けまいと咄嗟にバッシャーマグナムを連射するキバ。だが、Dクウガは水弾を掻い潜ってキバに肉薄すると共にその手からバッシャーマグナムを叩き落とし、そのままキバに組み付いて膝蹴りを打ち込んで怯ませ投げ飛ばした。

 

 

キバB『グゥッ!クッ……ドッガ、お前だ!』

 

 

キバット『ドッガハンマー!』

 

 

何とか態勢を立て直したキバは今度は紫のフエッスルを取り出し、バックルのキバットに吹かせて重厚なメロディを鳴らせる。

 

 

直後、キャッスルドランから今度は紫の彫像がキバの下へ飛来し、キバがその彫像を手に取ると、彫像は拳のような鉄槌、ドッガハンマーへ形状を変えていく。

 

 

そしてキバの身体を再び鎖が巻き付いて両腕と胴体が紫の頑丈な鎧のような装甲へと変わり、最後にキバとキバットの瞳の色が紫に変化した姿……怪力自慢のドッガの力をその身に宿したパワータイプの形態、『仮面ライダーキバ・ドッガフォーム』にフォームチェンジしたのである。

 

 

キバD『ハアアアァッ!!』

 

 

―ブォオオオッ!!ドゴォオオオンッ!!―

 

 

Dクウガ『クッ……?!ゴハァアアッ!!』

 

 

巨大な鉄槌を軽々と振り回すキバの攻撃を咄嗟に回避するDクウガだが、続けて振り下ろされた一撃が肩を掠めただけでとてつもないパワーで身体がよろめき、直後にその隙を突いたキバの連撃をモロに受けて吹き飛んでしまい、壁に思い切り叩き付けられてしまう。

 

 

Dクウガ『っ、ぐッ……この野郎っ!』

 

 

『FORMRIDE:KUUGA!TITAN!』

 

 

いい加減頭にきたと、ライドブッカーから新たに取り出したカードを荒々しくバックルに装填し、電子音声と共にDクウガの姿が赤い鎧から白金の鎧姿……タイタンフォームに姿を変えていく。

 

 

しかしキバは臆すること無くドッガハンマーを構え直してDクウガに突っ込み再度全力で振るった打撃を叩き込もうとするが、Dクウガはタイタンフォームの防御力でドッガハンマーを正面から受け止めつつ、ドッガハンマーを掴みながらキバの身体を持ち上げ宙に投げ飛ばした。

 

 

キバD『うああッ?!』

 

 

DクウガT『この槌、借りるぞッ!』

 

 

そう言って投げ飛ばしたキバから奪ったドッガハンマーをクウガの能力であるモーフィングパワーでタイタンソードに変化させ、Dクウガは先程のお返しとばかりに起き上がろうとするキバをタイタンソードで斬り飛ばした。

 

 

そして地面を何度も転がり、何とか身を起こしたキバは苦々しげにDクウガを睨みながら左腰に残った青いフエッスルを手に取る。

 

 

キバD『ガルル、来い!』

 

 

キバット『ガルルセイバー!』

 

 

最後のフエッスルをキバットに吹かせると、キャッスルドランから飛来した青い彫像がキバの下に渡り、キバが手にした青い彫像は金色の刀身が輝くガルルセイバーへと変化する。

 

 

そしてキバの身体を鎖が巻き付いて左腕と胴体が狼男の毛皮と腕を模した青い鎧となり、瞳の色も青く変化した形態……スピードと脚力、剣技に特化した『仮面ライダーキバ・ガルルフォーム』にフォームチェンジし、ガルルセイバーを手にDクウガの剣と切り結んでいく。

 

 

―ガギィイッ!!ガァンッ、ガギィイインッ!!―

 

 

DクウガT『ッ!ほう、いい剣筋してるじゃないか……!精進すれば将来は俺やシグナムに匹敵するかもなっ!』

 

 

キバG『うるさい!』

 

 

狼の如く荒々しくも、しかしワタル自身の技量の良さが浮き出る太刀筋に感心を覚えるDクウガだが、キバは聞く耳を持たずタイタンソードを弾き、ガルルセイバーの柄頭部分でDクウガを殴り飛ばした。

 

 

DクウガT『痛ぅッ!このっ、少しぐらい話を聞けよっ!』

 

 

キバに殴られた顔を拭いつつ、Dクウガはライドブッカーから新たにカードを取り出しドライバーに装填してスライドさせた。

 

 

『FOMARIDE:KUUGA! DAAGON!』

 

 

電子音声と共に、Dクウガは徐々にその姿を変えてドラゴンフォームへと姿を変える。そして手に持つタイタンソードもドラゴンロッドに変えながら、Dクウガはキバと間合いを測りつつ語り掛けた。

 

 

DクウガD『一応断っておくが、俺は人間が襲われてる所を助けただけだし、悪魔ってのもただのデマだ。それでもまだ俺と戦う気か?』

 

 

キバ『ッ……黙れぇええッ!』

 

 

経緯を説明しても信用されず、キバは再びガルルセイバーを手にDクウガに斬り掛かる。

 

 

対するDクウガもキバの斬撃をドラゴンロッドで受け流しながら、横薙ぎに振るわれたガルルセイバーの一刀を身を翻して避けながら屈んで逆に足払いでキバを倒し、追撃でキバにドラゴンロッドを振りかぶるも、キバも負けじとまるでブレイクダンスのような足さばきでドラゴンロッドを弾き、その勢いを利用して獣の如く軽い身のこなしで軽々と起き上がった。

 

 

DクウガD『チィッ……!思いの外ッ──!』

 

 

キバG『ハァアアアアアアッ!!』

 

 

エリオやキャロとそう歳も変わらない子供とは思えぬ卓越したバトルセンスに内心驚きを禁じ得ないDクウガだが、狼のように飛び掛かりガルルセイバーを振りかざすキバを見てすぐさまシャンッと音を鳴らすドラゴンロッドを手の中で回転させながら後ろ腰に引き、キバに目掛けて一気に振り抜いた。その勝敗は……

 

 

―ガギィイイイイイイイイイイイイイイインッ!!!―

 

 

キバ『──うわぁああッ!!』

 

 

ディケイド『──グォオオッ!!』

 

 

──結果は相打ち。互いの肩と鳩尾に炸裂した一撃を前に二人は火花を撒き散らしながら吹き飛び、ダメージのあまり通常形態にまで戻ってしまったのだった。そのまま倒れて互いにダメージで顔を歪めるが、キバは一人ふらつきながら起き上がっていく。

 

 

ディケイド『ッ……おいおい、まだやる気かよっ?こっちとしてはもうそろそろ止めにしときたいんだが……』

 

 

キバ『うるさいっ!僕は……まだ戦えるっ!』

 

 

ディケイド側としてこの辺で切り上げたい所だが、キバは戦いを続けるつもりらしく徐に構えを取っていく。それを見てディケイドもやるしかなさそうだと諦めたように溜め息を吐きながら身を起こし、両者が再び激突しようとした、その時……

 

 

 

 

「──待て待て待て待てッ!!二人ともストォオオオーーーーーップッ!!」

 

 

 

 

『『……ッ?!』』

 

 

ディケイドとキバが再び衝突しようとした寸前、突然一人の少年が大声を上げながら二人の間に割り込んできたのだ。いきなりの乱入者にキバも驚愕して思わず構えを解くが、ディケイドと交戦中の二人を追ってきたなのははその少年の顔を見て別の意味で驚いてしまう。何故なら……

 

 

ディケイド『お前……!』

 

 

なのは「ゆ、優矢君っ?!」

 

 

そう、二人の間に割り込んだ少年の正体とは、前の世界で零と共に戦った仮面ライダークウガである桜川優矢だったのだ。

 

 

クウガの世界で別れたハズの彼が何故ここに?と、ディケイドとなのはも困惑した様子で優矢を見るが、優矢はまーまーとディケイドを宥めつつ、まるで忠臣のようにキバの前で跪き頭を垂れた。

 

 

優矢「王子、コイツは俺の知り合いです。悪魔などではありませんのでご安心ください」

 

 

キバ『……優矢、か……』

 

 

キバを落ち着かせようと笑い掛ける優矢を見て気が抜けたのか、キバは闘争心を鎮めて変身を解除しワタルに戻っていくと、ディケイドも零に戻りながら隣に駆け寄ってきたなのはに目を向けた。

 

 

零「なあ、これ一体どういう状況なんだ……?」

 

 

なのは「わ、私も分かんない……そもそも、何で優矢君がこの世界にっ?」

 

 

あまりに唐突過ぎる予想外な状況を前に二人もただただ困惑して立ち尽くす事しか出来ない中、其処へ騒ぎを聞き付けた別働隊のスバルとティアナ、そしてヴィータが零達の下に駆け付けた。

 

 

ティアナ「零さん!なのはさん!大丈夫ですか?!」

 

 

零「?ああ、お前達か。丁度良かった……って、お前ヴィータか?!」

 

 

なのは「ヴィータちゃんっ!良かったっ、ヴィータちゃんもこの世界に飛ばされてたんだねっ!」

 

 

ヴィータ「おう。お前らも無事だったみてぇだな。大体の事情はコイツらから聞いてるぜ」

 

 

へへっと、ヴィータの無事な姿を見て安堵するなのはに得意げに笑い返すと、ヴィータは優矢の下に近付いていく。

 

 

ヴィータ「おい優矢。何があったんだよ?街中が騒ぎでパニクってたぞ」

 

 

優矢「ああ、ちょっと色々あってね……ほら零!あんたがこの騒ぎを起こしたんだから謝れって!」

 

 

零「はぁっ?!何でだよ?!俺はただ人間がファンガイアに襲われてる所を助けただけで──!」

 

 

『人間ではない』

 

 

何故か騒ぎの原因にされて零が理由を話そうとしたその時、何処からか声が聞こえ全員がその方向を向くと、其処にはアゲハチョウを彷彿とさせる一体のファンガイア……スワローテイルファンガイアが先程零が助けた女性を捕まえて歩み寄ってくる姿があった。

 

 

『貴様が助けたこの女はファンガイアだ。そして、この女は人間のライフエナジーを吸うという最大の禁忌を犯した』

 

 

「ぐっ!うぅっ……!」

 

 

スワローテイルファンガイアが女性の首を掴む腕の力を強めると、女性の顔にステンドグラスのような模様が浮かび上がっていく。その模様こそ、彼女がファンガイアである証拠だった。

 

 

優矢「あのファンガイアは掟に背いて人間のライフエナジーを吸っていた。既に何人もの人が被害にあってるんだ」

 

 

「な、何が悪いのよッ!これがファンガイアの本能でしょうッ?!それを抑えて生きていける訳がないじゃないッ!何が掟よッ!何が禁忌よぉッ!!」

 

 

ワタル「……ッ……」

 

 

自分の行いを省みる所か、それが当たり前の事だと開き直る女性の言葉にワタルの表情が徐々に歪んでいく。そしてスワローテイルファンガイアは女性を自分の方に身体を向けさせると、片手を振り上げて女性の身体を引き裂いた。

 

 

「キャアァアアアアアアアアアアアアアアアッ!!?」

 

 

―ガシャアァァァァァァァァァァァァァァァアンッ!!―

 

 

ワタル「ッ!」

 

 

引き裂かれた女性は断末魔の悲鳴を上げながら硝子のように砕け散っていき、ワタルはその光景を直視出来ずに顔を背けてしまう。

 

 

優矢「ああいう風に掟を破るファンガイアを罰するのが、俺たち親衛隊の役目って訳さ。な、ワタル王子!」

 

 

ワタル「………」

 

 

零「…………」

 

 

優矢が親衛隊の事を熱く語りながらワタルに呼び掛けるが、ワタルは俯いたまま何も答えず、零達は無惨にも砕け散った女性の硝子の破片を見て何も言えず口を閉ざすしかなかった。

 

 

 

 

 


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