仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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第十六章/NXカブトの世界⑨(後編)

 

 

Dプリースト『………………………………………』

 

 

シュロウガ『…………………………………………』

 

 

粉塵が周囲を覆い隠す中、二人はその中でイチミリも動かなかった。互いに必殺の一撃を放った態勢のまま呼吸をする音も響かせず、ただただ沈黙で有り続けていた。そんな時……

 

 

 

 

 

 

―…………ピキッ……ピシピシィッ……バリィンッ!―

 

 

 

 

 

 

粉塵の中で、何かが壊れる音がした。空気中の粉塵が雨水で流れて視界が徐々に戻っていくと、その正体がすぐに分かった。

 

 

Dプリーストと向き合うシュロウガの首元にはDプリーストの拳が僅かに触れ、その足元には真っ二つに割れた機械の首輪が転がっていたのだ。

 

 

つまりそれが意味するのは……………成功したのだ。黒月 零が賭けた、たった一つの秘策が。

 

 

シュロウガ『……………………………………っ…………………?此処…………は…………』

 

 

そんな中、最初に声を出したのはシュロウガだった。朝目覚めたばかりのようにシュロウガが呆然と意識を取り戻すと同時に、Dプリーストがディケイドの姿へと戻っていった。

 

 

シュロウガ『ッ!……れ……い……?』

 

 

ディケイド『…………』

 

 

元の姿に戻ったディケイドを見て完全に正気に戻り、呆然と零の名を呟くシュロウガ。だがディケイドは顔を俯かせたまま何も答えず、シュロウガの首に突き出していた拳を開きゆっくりとシュロウガの頭の上へと乗せていく。

 

 

ディケイド『……約束……ちゃんと守ったぞ……これでもう……お前が消える必要なんてなくなった……』

 

 

シュロウガ『え………………………………あ……』

 

 

ディケイドの言葉を聞いて一瞬呆然としてしまうシュロウガだが、その時自分を今まで苦しめていた首輪がなくなっている事に気付き、ディケイドを見つめる。

 

 

シュロウガ『助けて……くれたの?私を……?』

 

 

ディケイド『……言った筈だ……お前を消させないし……死なせないと……守ると……約束もしたし……な……』

 

 

シュロウガ『っ…!』

 

 

苦笑いを浮かべながらそう告げたディケイドに、シュロウガは両目を僅かに見開き思わず息を呑んだ。

 

 

絶対不可能だと思っていたことを可能にしてくれた。

 

 

生きたいという自分の願いを叶えてくれた。

 

 

あの時の約束を守る為に、全部を諦めずに此処までしてくれたのだと。

 

 

シュロウガはそんなディケイドの思いに、堪らなく嬉しく思えていた。

 

 

シュロウガ『っ……零……ありが―――』

 

 

だからシュロウガは、泣きそうになるのを堪えてディケイドにお礼を言おうと口を開いた。が……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ディケイド『――くっ……ぅ……ガハァッ?!』

 

 

―ビシャアァッ!!―

 

 

シュロウガ『――え…?』

 

 

 

 

ディケイドは仮面の下から血の塊を吐き出し、吐き出された血液はシュロウガの胸元に飛び散り血の色に染まっていったのであった。突然のことにシュロウガが呆然と固まる中、ディケイドは変身が解除されて零へと戻り、そのまま止まる事なく血を吐き出し続ける。

 

 

零「ゲホッゲホッ!!ぁ……がっ……ガハァ!!」

 

 

シュロウガ『?!れ、零?どうし………ッ?!!!』

 

 

血液を流し続ける零を見て漸く正気に戻ったシュロウガは慌てて零を支えながらどうしたのか聞こうとするが、その時あるモノを見て驚愕に染まり、血の気が引いた。何故なら……

 

 

 

 

 

先程シュロウガが突き立てた紅い剣が零の腹を深々と貫き、完全に貫通していたのだから……

 

 

 

 

シュロウガ『あ……ぁ……れ……れ、い…?』

 

 

零「ゲホッガハッ!!はぁっ……はぁっ……何を……そんな間抜けな声を……出してんだっ……」

 

 

そう言って零はゆっくりと顔を上げて笑うが、その顔も既に血で染まり切っていた。

 

 

禍々しい光を放つ左目から頬を伝うおびただしい量の赤い液体……

 

 

吐血したせいで口元から流れる血液……

 

 

更に加えれば、剣が貫通した腹部からも止まる事なく大量の血が溢れている。

 

 

出血多量。明らかに血を流し過ぎているが、それも当然と言えば当然だ。

 

 

プリーストと破壊の因子の拒絶反応で体がボロボロになっていくのを無視し続け、最後の一撃も回避と防御を捨てて放った一か八かの捨て身技だったのだ。

 

 

それがこのような結果を招いたとしても、仕方がないことだろう。

 

 

零はそんな事を思いながら腹に刺さった剣の柄を掴んでゆっくりと引き抜き剣を投げ捨てるが、剣を抜いたせいで腹部から流れる血の量が更に増した。

 

 

シュロウガ『っ?!!れ、零っ……』

 

 

零「っ……だから……そんな声出すな……って言ってるだろうっ……漸くお前は……救われたん……だから……もっと喜べ……」

 

 

震える声で呆然と呟くシュロウガにそう言うと、零は血が溢れ出る腹の傷を抑えながらシュロウガから離れていく。視界がぐらついて身体のバランスが保てず足がふらつくが、零はそれに構わず口を開いた。

 

 

零「…………もう…………お前は…………誰かを殺す為にだけ…………生きなくていい…………お前はもう…………自由…………だ…………」

 

 

シュロウガ『………ぁ……ぁぁ……』

 

 

零「…………だからもう…………泣く必要も…………ない…………これからは…………笑って生きろ…………何処かのバカみたいに…………な…………」

 

 

腹部からおびただしい量の赤い液体が流れ出し、雨に濡れた路面に新たな赤い色が散っていく。零は赤い液体が溢れる腹を片手で抑えながら後退り、青白くなった顔で薄く微笑んだ。

 

 

零「……これからは宿命の……為なんかじゃ…………なく………自分の為………に………お前が生きたいように………生きろ………お前を縛るもの………なんて………もう……ないん……だから………」

 

 

そう言った零の瞳から徐々に光が失われていき、後ろに下がっていた零の足に何かが引っ掛かり後ろへと倒れていく。その先には……

 

 

 

 

………手摺りを越えた先、其処には遥か下にごうごうと音を立てて流れる黒い川が存在していた。

 

 

 

 

シュロウガ『?!れっ――!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零「ハハッ……これじゃあ俺も……人の事は言えない……………な………」

 

 

 

 

視界の向こうで、手を伸ばして走り寄ってくるシュロウガの姿が見えた。だがそれも一瞬で見えなくなり、身体が宙に浮くような感覚が襲った。それが何なのか理解する前に……

 

 

 

 

 

 

 

 

―ザパアァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッ!!―

 

 

 

 

 

……黒月零は、鉄橋の遥か下の黒い川の中へと姿を消していったのだった。

 

 

シュロウガ『――?!!!い…嫌ああああああああああああああああああああああああああッッ!!!!!』

 

 

鉄橋から落ちていった零。それを見たシュロウガは悲痛な悲鳴を上げながら雨が降る上空へと飛び上がっていった。

 

 

シュロウガ『零!零っ!!零ィッ!!!』

 

 

黒い川の上空を飛び回り、零の姿を捜して必死に名前を叫び続けるシュロウガ。だが川は雨のせいでかなり増水しており、其処から人ひとりを見つける事なんて到底出来る筈もなかった。

 

 

シュロウガ『ぁ……あぁ……ぁあ……!』

 

 

零が消えた黒い川の上空で、シュロウガは呆然と雨に打たれながら自分の手を眺めた。其処にはベッタリと血まみれになった手の平……黒月零の血がこびりついていた。

 

 

シュロウガ『…わ、私……私が……零を……』

 

 

――殺した。そう口にして全てを理解した瞬間、シュロウガの精神は限界超え、そして……

 

 

 

 

 

 

シュロウガ『あ…あぁ……うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!!!!!』

 

 

 

 

 

 

轟雨が降り注ぎ、荒れ狂う黒い川の上で少女の悲痛な悲鳴が響き渡ったのであった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、騒ぎを聞き付けて鉄橋へとやって来た光達が零のカメラを抱えて錯乱していたアズサを発見したのは、それから数十分程経った後だった。

 

 

そして天候が回復した後、保護したアズサの証言を元に零の捜索を開始した機動六課だったが……黒月零が川から発見されることはなかった――――

 

 

 

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