仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
零が消息不明となってから翌日。六課のとある一室では光と勇司、そして部屋の中心には片手を広げて瞳を閉じながら立つジェノスの姿があった。因みに、光達以外の六課メンバーは零の捜索の為に川へと向かってるため隊舎にはいない。
ジェノス「検索世界設定NXカブト……零の行方を調べる……キーワードは『ディケイド』『黒月零』『ストライクのカード』……そして『鈍感』と『朴念仁』……」
勇司「おいおい、そんなんでいいのかよ……」
光「勇司、静かにしろ……それで、どうだ?」
光は勇司に一言告げると、険しい表情で検索モードに入ったジェノスに質問していく。だが、暫く瞳を閉ざしていたジェノスはゆっくりと瞳を開き、その問いに首を左右に振った。
ジェノス「ダメだ……どのキーワードにも全く引っ掛からない……」
勇司「マ、マジかよ……!ジェノスでも分からないのか?!」
ジェノス「すまん……マテリアルサーチなら平行世界の全てを検索出来る筈なのに、それでも見付からないなんて……」
光「そうか……ジェノスのマテリアルサーチでも零の居場所が分からないとなると……やはり、人海戦術で捜すしかないか」
ジェノスの検索でも見つけられないなら、やはり足を使って零を探すしかないかと顎に手を添えて呟く光。しかし……
勇司「……だけど、それで本当に見付かるのか?昨日だって零の気を辿って川を探したけど零の気は感じられなかったし、ジェノスの検索でもアイツの居場所が分からないなら……なら、アイツは一体何処に行っちまったんだよ?」
『…………』
そう、勇司の言う通り昨日の捜索でも光達は零の気を頼りに川を捜索しようとしたのだが、何故か零の気は忽然と消えていて零を見つける事が出来なかったのだ。
光と勇司の気を感じ取る力にジェノスのマテリアルサーチ。
これだけの方法を使っても見付からないとなると、零は一体何処に行ってしまったのか?それが分からない勇司とジェノスは暗い表情を浮かべてしまうが……
光「…だが、それでも捜すしかないだろう。アイツは今重傷を負っていて、しかもそのまま濁流に流されてしまったんだ。そんな状態のまま今も流されているとなると、アイツの身が危険だ……」
勇司「そりゃそうだけどさ……」
光「それに、もしこのまま零が見付からなければ……アズサはずっとあのままなんだぞ」
ジェノス「あっ……」
光の口から告げられた名前を聞くと勇司とジェノスは口を閉ざし、今のアズサの状態を思い出して気まずそうに顔を俯かせてしまった。
光「零は命を懸けてアズサを守った……自分のやるべき事を果たしたんだ。なら俺達も、俺達がやるべき事をやるだけだ。そうだろう?」
勇司「……だな。今アイツを助けてやれるのは、俺達しかいないもんな?」
ジェノス「よし……なら俺も今から現場に行ってくる!ストライクスプラッシュなら、小回りも聞いて捜し易いからな」
勇司とジェノスは光の言葉に力強く頷くと、ジェノスは先に零が行方不明となった現場である川に向かおうと部屋から飛び出していった。そして光と勇司もそれを追いかけるように部屋から出て行こうとしたその時、二人の前に通信パネルが現れた。
はやて(別)『光君、勇司君、ちょっとええかな?』
光「?はやて…?」
勇司「どうしたんだ?……まさか、何か捜索に進展があったのか?!」
いきなり出現したパネルに光が隣で疑問げに首を傾げる中、勇司は何か手掛かりになるようなものが見付かったのではと期待が込められた目で身を乗り出すが、はやてはその問いに首を左右に振った。
はやて『ううん、そっちはまだ進展ないみたいなんや……今は何処かに流れ着いてそうな可能性が高い下流を調べとるんやけど、まだなんとも……』
勇司「そ、そうなのか……じゃあ、何か別の用事でもあんのか?」
はやて『あぁうん……実は光君達に会いたいって言うお客さんが来とるんよ。何でも別の世界から来たとか何とか……』
光「別の世界から?」
異世界からの来客。そう聞かされた光と勇司は互いに顔を見合わせて首を傾げ、取りあえずその客に会ってみようと部屋から出ていったのであった。
◇◆◇
それから数分後、光と勇司は別世界からやって来たという客を待たせてる応接室の前に訪れていた。そして二人が応接室に入ると、其処には二人の青年と一体の異形が備え付けのソファーに座っていた。
勇司(?!お、おい光……アイツの隣にいるのってっ?!)
光(あぁ……間違いないな……)
部屋に入って一番最初に目に付いた異形を見て、何やら慌てふてめく勇司と冷静な態度で頷く光。すると、光と勇司が部屋の中に入って来たのを見た二人の青年の内の一人がソファーから立ち上がった。
「アンタ達か?この世界のライダーっていう、カブトとガタックは?」
光「そうだが……お前達は誰だ?うちの部隊長の話では、別の世界から来たと聞いたが……」
「あぁ、自己紹介が遅れたな。俺は刃山翔、別世界の住人でアンタ達と同じ仮面ライダーだ。それでこっちが……」
青年……翔が自己紹介してソファーに座っているもう一人の青年の方に振り返ると、青年と異形もソファーから立ち上がり自己紹介していく。
「俺の名は遠野総一。翔と同じ別世界の住人で、仮面ライダーNEW電王の装着者だ。よろしくな?」
『……テディだ。よろしく頼む』
勇司(や、やっぱりテディだ!おいおい光!本物だぜ?!本物のテディだよ?!しかもNEW電王もだってさ?!)
光(分かってる…一々騒ぐな……)
軽い自己紹介をした青年と紳士的な態度で深々とお辞儀した異形……"遠野総一"とテディを見て光に念話を送りながらはしゃぐ勇司だが、光はそんな勇司に呆れた様子で念話を返しながら三人に向けて口を開いた。
光「それで、別世界の住人のお前達がこの世界に何の用だ?……このタイミングで来たとなると、お前達も零の知り合いか?」
勇司「……え?」
何かを察したような目つきで翔と総一を見つめながらそう告げた光に勇司は思わず声を上げ、質問をされた翔と総一は関心したように頷いていた。
翔「大した洞察力だな……流石はカブトの装着者ってところか」
勇司「へ?じゃあ、アンタ等もジェノスと同じで…?」
総一「あぁ、零が行方不明になったって聞いて駆け付けたんだよ。零にはコイツが消えた時に世話になったからな……その恩返しがしたくて来たんだ」
光(テディが消えた時?…まさか、エピソードブルーのあれの事か?)
総一の話を聞いて一人何かを考える光だが、今はそれより優先すべき事があると思考を切り替えて口を開いた。
光「とにかく、零の捜索を手伝いに来てくれたなら助かる。正直、こっちも人手が欲しかった所だからな」
総一「?何だ、もしかしてあんまり進展してないのか?」
勇司「まあな……こっちも色んな方法を使ってアイツを捜してるんだけど、未だ手掛かりは何も……」
翔「そうなのか……分かった、こっちでも何か手掛かりがないか調べてみるよ」
光「助かる……まずは現場にいるジェノスとなのは達と合流してくれ。現場の詳しい状況はアイツ等が説明してくれる筈だ。俺達も用を済ませたらすぐそっちと合流する」
総一「あぁ、了解だ!」
光の指示を受けた翔と総一とテディは深く頷いて部屋から出ていき、ジェノスが向かった鉄橋付近の川へと向かっていったのだった。そして部屋に残された光と勇司は……
光「行ったか………勇司、俺達はラルクの所に行くぞ」
勇司「へ?……あ、そっか!アイツなら零の居場所を一発で見付けられるかもしんないしな?!」
光「そういうことだ、とにかく今は少しでも情報が欲しいからな。アイツに聞けば何らかの手掛かりが手に入るかもしれん…行くぞ」
ラルクという人物になら、何か零に関する情報が手に入るかもしれない。そう考えた光は勇司と共に応接室を後にし何処かに向かって行ったのだった。
◆◇◆
―機動六課・医務室―
一方その頃、六課の医務室には二人の人影があった。一人はこの医務室という城の城主で、一つのベッドの隣で困ったような表情を浮かべるシャマル。もう一人はそのベッドの上に座り込み、生気を失った瞳で手に持ったカメラを眺める少女……アズサであった。
シャマル(別)「えっと……アズサちゃん?その…そろそろお昼の時間だし、何か食べようか?」
アズサ「……………」
シャマル(別)「ほら、アズサちゃん昨日から何も食べてないでしょう?何かお腹に入れとかないと、身体がどんどん弱っていくわよ?」
アズサ「……………」
気を使ってアズサに話し掛けるシャマルだが、アズサは死人のような目でカメラを見つめたまま何も答えない。そんなアズサの様子にシャマルも暗い表情を浮かべて口を閉ざしてしまう。
シャマル(別)「……アズサちゃん。零君のことは、今六課の皆が必死に捜してくれてるの。きっとすぐ見付かる筈だから、元気出して?ね?」
アズサ「……………」
シャマル(別)「大丈夫……今回の件はアズサちゃんのせいなんかじゃない。零君もきっと生きてる筈だから……だから、アズサちゃんが自分を責める必要なんてないのよ?」
アズサ「……………」
シャマルはアズサを元気付けようと優しく言葉を掛けていくが、先程と変わらずアズサからはなんの反応も返って来ない。やはり自分が零を殺してしまったという精神的なショックが大きいのだろうと、シャマルは暗い表情でアズサの頭を優しく撫でていく。
シャマル(別)「…じゃあ、ちょっと食堂に行って何か持ってくるわね?少し出てくるけど、すぐ戻って来るから」
とにかく今はアズサに何か食べさせないといけないと、シャマルはアズサにそう告げて食堂から食事を持って来ようと医務室から出ていった。そして部屋に一人残されたアズサはピクリとも動かず、ただ生気のない瞳でカメラを眺めていた。そんな時……
『――こんにちは、アズサちゃん』
アズサ「…………?」
静穏に包まれた医務室に響き渡った声。今までピクリとも動かなかったアズサは其処で初めて顔を動かし、声が聞こえてきた方へと顔を向けた。するとアズサの目の前に突然歪みが現れ、其処から一人の銀髪の髪の男性がゆっくりと姿を現した。
アズサ「……誰……?」
「?あぁ、これはいきなり失礼しました……私の名はアレン。零君の知り合いですよ」
アズサ「零の……知り合い……?」
アレン「えぇ、と言っても……零君は『この姿の私』を知りませんけどね」
アズサ「………?」
銀髪の男性……"アレン"はそう言って苦笑いを浮かべるが、アズサはその意味が良く分からず小首を傾げてしまう。アレンはそんなアズサの様子にまた苦笑いを零しながらベッドの隣に置かれた椅子に腰に下ろし、何処からかフルーツ盛りを取り出してアズサに差し出した。
アズサ「果物……?」
アレン「此処に来る前に聞きましたが、貴方が昨日から何も食べていないと聞きましてね。これは私からのお見舞いの品です」
アズサ「……いらない……」
スッとフルーツ盛りを差し出して来るアレンだが、アズサはそれに対しいらないと力無く首を振って顔を俯かせてしまう。
アレン「何か食べないと、いつまで経っても元気にはなれませんよ?此処の皆さんも貴方の体調を心配しているようですし、せめて少しだけでも食べてみては?」
アズサ「…………」
アレンはアズサになにかを食べた方が良いと促すが、アズサは口を閉ざしたまま何も答えない。そんなアズサの様子にアレンは一度瞳を伏せると、フルーツ盛りを適当な場所に置きながら口を開いた。
アレン「……零君のこと、自分のせいだと思っているのですか?自分が零君を殺してしまった、と」
アズサ「っ…!」
アレンの言葉にアズサは顔を俯かせたまま小さく息を拒み、それに気付いたアレンは伏せていた目を開いて更に言葉を続けていく。
アレン「アズサちゃん……零君のことは貴方のせいではありません。今回の件は、貴方を利用して零君を消そうとした鳴滝さんが原因なんですよ」
アズサ「……でも……私が……私がいなければ……零がこんな目に合うことはなかった……私に関わったせいで……今も零は……」
アレン「…………」
アズサはアレンにそう言いながらカメラから手を離し、手の平を眺めながら生気を失った瞳を悲しげに細めていく。
アズサ「記憶はないけど……今でもこの手が覚えてる……零を突き刺した感触を……」
アレン「…………」
アズサ「誰かのせいになんて出来ない……操られていたとしても……実際に零を手に掛けたのは……私だものっ……」
確かにアズサは鳴滝に操られて零と戦ったが、実際に零を手に掛けてしまったのは自分なのだ。だから全部の事を鳴滝のせいには出来ないと、アズサは手の平にポツポツと小さな粒が落としながらそう告げた。それを聞いたアレンは口を閉ざし、無言のままアズサの頭の上に手の平を置いていく。
アレン「アズサちゃん……零君が君に言った言葉、今でも覚えていますか?」
アズサ「…?零の……言葉……?」
アレン「そう……君はなにもかも一人で抱え込んでしまうクセがあります。零君も言っていたでしょう?『何でお前が全部一人で抱え込んで死ななきゃならないんだ』と……」
アズサ「っ!……どうして……それを?」
今のは確かに零に言われた言葉だが、あの時は確か零と自分しかいなかったハズだ。それを何故アレンが知っているのかと不思議に思うが、アレンは「まぁ、元ですが私も神父ですからね。迷える子羊のことは何でも知っているのですよ」と何だか良く分からない言葉で返されてしまった。
アレン「アズサちゃん、確かに人は時に罪を犯します……その罪を犯したことに罪悪を感じる事も間違いではありません……ですが、何かも自分のせいだと思ってはいけませんよ?貴方のソレは他人の罪まで自分の罪だと思い、背負い過ぎてしまってる。それではいつか潰れてしまいます」
アズサ「…………」
アレン「それに君には、それより他にすべき事があります」
アズサ「……?私の……すべき事……?」
アレン「そう、君が今すべき事は自分を責める事でも、此処で大人しく眠ってる事でもありません……零君の帰りを待っててあげる事です」
アズサ「え…?」
零の帰りを待っててあげること。アレンの口から告げられたその言葉にアズサは思わず疑問げな声を漏らし、アレンは優しく微笑みながら更に続けた。
アレン「零君は必ず生きています。確かに無茶ばかりする子ではありますが……帰りを待っててくれる人達の下には必ず帰ってくる子なんです。ですから君は、彼が帰ってくるのを待っててあげなくてはいけません……零君が帰って来た時、彼が安心出来るようにね」
アズサ「……私が……零の帰りを……」
アレンの言葉を聞いたアズサはそう呟くと、ひざ元に置いた零のカメラを見下ろしていく。
アズサ「……私……待ってていいの?零の帰りを……」
アレン「えぇ、これは君にしか出来ない事です」
アズサ「……でも私は……零を傷付けて……」
アレン「さっきも言ったでしょう?それは君自身の罪ではありません。もしそれを君の罪などと言ってくる輩がいるのなら、私が零君に代わってその輩を黙らせてあげます。君は私や……此処にいる方々が守りますから」
アズサ「…………っ…………ぅ…………うっ……」
零を傷付けた自分が、彼の帰りを待っててもいいのだと。アレンのその言葉で少なからず心を許されたアズサはずっと堪えていた涙を瞳からとめどなく溢れさせ、アレンはそんなアズサをソッと抱き締めていく。
アレン「泣いていいんですよ?涙を流せるのは、アズサちゃんが優しい心を持っている証拠です……」
アズサ「っ!うっ…ぁ……うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……っっ!!!」
アレンのその言葉でアズサの中の箍が完全に外れ、アレンの胸の中で泣きじゃくるアズサ。アレンは子供をあやすような仕草でアズサの頭を優しく撫でながら、静かに穏やかな笑みを浮かべていく。
アレン(零君、君が守りたかった者は私達が守ります……だから早く帰って来て上げなさい。アズサちゃんの心を救ってあげられるのは……君しかいないんですから……)
アレンは胸の中で泣きじゃくるアズサの頭を撫でながらそう思い、ただ零が早く帰ってくることを強く願い続けていくのであった。
そしてその後、翔や総一の協力を得て捜索範囲を広げた機動六課であったが……未だ黒月零が発見される事はなかった……