仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
時刻は深夜、ミッドチルダのとある高層ビルの屋上ではボロボロの格好した一人の女性……先程の土手での戦いでディケイド達に敗れたカラフィナがふらつきながら歩いていた。
カラフィナ「はぁ…はぁ…はぁ……私が……私達が……あんな人形ごときに……敗れるなんてっ……」
カラフィナは忌ま忌ましげに唇を噛み締めながら此処から見えるミッドの街を睨みつけ、脳裏に先程の戦闘で戦ったアンジュルグの姿を思い浮かべていく。
カラフィナ「次はっ……次は必ず殺してやるっ……あの出来損ないの人形を……リリスの仇を……必ず!!」
ボロボロになった拳を血が滲むほど握り締め、次こそはアズサを消し去ってやるとアズサへの復讐を心に誓うカラフィナ。だが……
「――いいや……もうお前に……次はない……」
カラフィナ「?!!」
背後から聞こえてきた背筋が凍るほど冷たい声。それを聞いたカラフィナは一瞬心臓が止まったような錯覚を感じ、体を震わせながら背後へと振り返っていく。其処には……
終夜「――一週間ぶりだな……カラフィナ……」
カラフィナ「?!!しゅ…終夜……様……?!!」
そう、背後に立っていたのはカラフィナ達に今回の任務を与えた人物の一人である青年……闇無終夜が感情の感じられない瞳でカラフィナを見つめて佇んでいたのだ。声の正体が終夜だと知ったカラフィナは恐怖に染まった表情で後退りしていく。
カラフィナ「なっ…何故…何故貴方がっ……この世界に?!!」
終夜「……俺の部下は重要な任務の為に全て出払っていてな……だから仕方なく、俺が直々に出て来る事になったという訳だ……」
カラフィナからの問い掛けに何処までも冷たく、殺気すら感じられる口調で淡々と語る終夜。
終夜「そんなことより……一度ならず二度までも……奴らに敗北したようだな、カラフィナ?」
カラフィナ「も、申し訳ありません!!思いもしないトラブルが続いた上に、ディケイド達の邪魔があったせいで任務が思いの他上手く行かず!!」
終夜「ほぉ……それで?」
カラフィナ「で、ですが!あと一歩!!あと一歩というところまでは上手く行っていたのです?!ですからどうか!!もう一度チャンスを!!」
終夜「……もう一度……だと……?」
もう一度チャンスを与えて欲しい。そう告げてきたカラフィナの言葉に終夜の声がより一層低くなり、前髪で表情を隠していく。
終夜「―――カラフィナよ……貴様……それを誰に向かって言っているのか……分かっているのか……?」
―ゾワアァッ!!!!!―
カラフィナ「っっ?!!!あっ……ぁあ……しゅ……終夜……様……?」
終夜「最初に言ったはずだ……我々組織に失敗は許されない……我々組織の悲願を確実に達成する為にも……足枷となる物は全て排除する……とな……」
感情の感じられない口調でそう告げると共に、何処からか銀色の円盤のような姿をした物体が現れて終夜の周りを飛び回り、そのままゆっくりと終夜の腰に付いてバックル部分と思われる箇所の両端からベルトが現れて終夜の腰に装着されていき、終夜は何処からかリコーダーのような形状をした武器を取り出していく。
終夜「せめてもの手向けだ……俺が直々に……貴様を処分してやろう……変身……」
サガーク「ヘンシン」
終夜がリコーダーのような形状の武器……ジャコーダーをバックル横のスロットへと突き刺すと、円盤の様な姿をした銀色の物体……サガークの掛け声と共にその姿を徐々に変化させていき、チェスの駒のキングのような姿をした青い複眼のライダー……『サガ』へと変身したのであった。
カラフィナ「ぁ……あぁ……おっ……お許しをっ……終夜様っ……どうか命だけはっっ!!」
サガ『カラフィナ……お前はもう用済みだ……お前を送り付けてきたカイルからも、既にお前の処分の許可を得ている……』
カラフィナ「っっ?!!!カ、カイル様が……そんな……?!!」
カイルという人物からも既に処分の許可を得ている。サガの口から告げられたその言葉でカラフィナの表情は絶望へと染まり、サガはそんなカラフィナへとゆっくりと歩み寄っていく。そのサガから感じられるのは……絶対的な【死】
カラフィナ「い……いやっ……私はっ……私はまだああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!!?」
迫り来るサガを見てカラフィナの意識は限界を越え、恐怖と絶望に染まった悲鳴を上げながらアゲハワームへと姿を変えると共にハイパークロックアップを使用し、そのまま悲鳴を上げながら屋上から飛び降りていってしまった。
サガ『……無駄な事を……』
アゲハワームが飛び降りた場所を見つめながらそう呟くと、サガはゆっくりと白いフエッスルを取り出しサガークへと吹かせていく。
サガーク「ウェイクアップ」
サガークの掛け声と共に不気味な笛の音が辺りに響き渡ると、サガが右手に持つジャコーダービュートの鞭部分が怪しげな紅い輝きに包まれていき、ゆっくりとビュートの先を遥か下の街へと向け、そして……
―シュウゥゥゥ……バシュウゥッ!!!―
ジャコーダービュートの鞭部分が伸び出し、ミッドの街へと向かっていったのだった。その先には……
『……っっ?!!!!そ、そんなっ?!!!どうして?!!!どうしてぇ?!!!!!!』
ジャコーダービュートの向かった先……其処にはサガから逃れようとハイパークロックアップを使って必死にミッドの街を駆け抜けるアゲハワームの姿があったのだった。
サガのいる高層ビルの屋上から蛇のように追い掛けてくる紅いビュートを見てアゲハワームの中の恐怖が更に高まり、何とかビュートの追跡を振り切ろうと全力で走り出していく。しかし……
『――――な、何でっ………どうしてまだ追ってくるのよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!!!!?』
何処まで遠くへと逃げても、どれだけ速く走っても、既に高層ビルから10キロ以上も離れているというのに、紅い蛇は何処まで追い掛けてくる。
時折追跡を免れようと複雑な構造をした路地裏に逃げ込んでも、紅い蛇は止まることなくアゲハワームの姿を捉えて逃がさない。
逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ!!!!!!
逃げなければ死ぬ!!逃げ切らなければ死ぬ!!最早格好など構わず情けない姿で走り続け、また路地裏へと逃げ込み、途中で汚れたごみ箱を押し倒しながら路地裏の奥へと逃げる。だが……
『…………ぁ…………そん…………な…………』
路地裏の一番奥。其処にあったのは、アゲハワームの行く先を阻むように立ちはだかる巨大な壁だった。
壁の向こう側以外に道などない、此処まではずっと一本道だった。
つまりそれが意味するのは……
『い、いやっ…いやぁ?!まだ死にたくないッ!!!私はまだ死にたくないッ!!!誰かあぁッ!!!誰か助けッ!!!―ガタンッ……―……ぁ……?』
背後から響き渡った、不自然な物音。それを耳にした瞬間呼吸が止まり、アゲハワームがゆっくりと背後へと首を動かした瞬間……
紅い蛇がすぐ目の前にまで迫っていた……
『嫌ぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!!!!!!?』
そして、人気のない路地裏から女の断末魔の叫びと何かが何度も突き刺さるような音が響き渡ったのは、そのすぐ後だった……
◆◇◆
サガ『……終わったか』
ジャコーダーから何かを突き刺すような手応えを感じ取り、それを確認したサガは伸びたビュートを元の形態へと戻して変身を解除し終夜へと戻っていく。その時……
裕司『――終夜、少しよろしいでしょうか?』
終夜「……裕司か……どうだ?零達の方は……」
不意に終夜の隣に出現した一枚の通信パネル。其処には無表情の裕司の顔が映っており、終夜はミッドの町並みを眺めたまま裕司へと質問していく。
裕司『予定通り、カブトの世界に戻ろうとした零達を例の世界へと誘い込みました。同時に空間も遮断しておきましたので、そちらの世界にも現れたライダー共が零を追う事は出来ません』
終夜「そうか……漸く次の舞台に上がったか……」
裕司『…しかし、よろしいのですか?奴をあの世界に向かわせても……』
終夜「何、元々あの世界のアレは我々が処分するハズだったんだ……それを零が片付ければ、零はまた俺達と対等に渡り合える程の力を身に付け、因子の覚醒も早まるだろう……既に誰か、奴に監視を付けておいたか?」
裕司『えぇ……一応慎二を監視に付けておきました。奴なら真也達よりかは、任務を忠実に熟してくれると思いましたので』
終夜「慎二を?……例の戦闘機人達はどうなった?」
裕司『あれなら既に終えています。結果は我々の完全勝利……トーレは逃がしましたが、No.2 ドゥーエは捕獲に成功しました』
終夜「……そうか……それだけでも上出来と言うべきか……分かった。俺もすぐそちらに戻る」
それだけ伝えると裕司は小さく頷いて通信パネルは消えていき、それを確認した終夜はミッドの街を眺めながらポツリと呟き出す。
終夜「……すべてはお前を中心に回ってる……戦え、零……戦い続けろ……」
ミッドチルダを見下ろしながらそう呟くと、終夜は背後から現れた歪みの壁に呑まれて姿を消し、自分達のアジトへと戻っていったのだった。