仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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第三章/キバの世界⑤

 

―キャッスルドラン・玉座の間―

 

 

『──それにしても、王子が無事に見付かって良かったよホントに』

 

 

『ああ。即位式を前に王子の御身に大事があれば、民達にも不安を与える事になるからな。やはり一日でも早く即位の儀を……』

 

 

数時間後、キャッスルドラン城内にある玉座の間。其処にはワタルがガルル達アームズモンスター達と共に玉座の間に集い、ワタルの王即位の式を開く日取りを考えていた。だが、当の本人のワタルは何やら浮かない様子で俯いており、それに気付いたバッシャーは訝しげにワタルの顔を覗き込んだ。

 

 

『王子?』

 

 

「僕は……王にはなれない」

 

 

『なっ……何故だ?!今日もキバとなり戦っていたではないか!』

 

 

ワタルの突然の発言にアームズモンスター達も騒然となるが、無言のままそれ以上は何も答えないワタルに、ガルルは誰も座っていない玉座を指し必死に呼び掛ける。

 

 

『王子っ、既に玉座は十年以上空位!そのためファンガイアの中には掟を忘れ、人を襲う者も多い!あなたが王になる事を、誰もが望んでいるのです!』

 

 

ワタル「…………」

 

 

だからどうか考え直して欲しいと説得を試みるガルルだが、ワタルはやはり浮かない表情のまま口を閉ざし、椅子から立ち上がってそのまま何も言わず玉座の間から出ていってしまった。

 

 

『お、王子……』

 

 

『やはり、アイツじゃ若すぎる』

 

 

『だが、他にキバを継げる者はない。あの方がお戻りにでもなれば別だが……』

 

 

しかしそれも叶わぬ事だと、空白の玉座を見つめ頭を悩ませてしまうアームドモンスター達だが、三体は気付かなかった。その様子を影から覗く不審な影の存在に……。

 

 

 

 

 

◇◇◆

 

 

 

 

夜が明けた早朝。ワタルは誰にも告げず再びキャッスルドランから抜け出し、行く宛もないまま街の中を歩き続けていた。其処へ、後ろからトライチェイサーに乗った優矢がやって来てワタルの前に止まり、ヘルメットを脱いで笑顔でワタルに軽く挨拶する。

 

 

優矢「よっ!こんな朝早くにどうしたんだよ、ワタル?」

 

 

ワタル「優矢……」

 

 

優矢の顔を見て一瞬立ち止まるワタル。しかしすぐに顔を背けてしまい、そのまま何処かへと歩き出していく。

 

 

優矢「ま、待ってくれって!そのさ、昨日は大変だったと思うけど、零の奴のこと許してやってくれないか?アイツあんなだけど本当は良い奴でさ、俺の友達っていうか……」

 

 

ワタル「……友達……?」

 

 

その言葉にワタルは思わず足を止めて振り返り、優矢も徐にバイクから降りると、トライチェイサーの後部座席の上に手を置いて言葉を続ける。

 

 

 

優矢「どっか行きたいとこでもあるのか?なら乗ってけよ、連れてくからさ」

 

 

ワタル「……行きたいところなんて……それに、僕は何処にも行けやしない……」

 

 

何処か諦めを含んだような口調で俯くワタル。だが、優矢は笑みを浮かべたまま首を横に振ってみせた。

 

 

優矢「そんな事ないさ。お前が本当に其処へ行きたいと望めば必ず行けるし、頼ってくれたら俺が連れていく。何処にでも、何処までも」

 

 

ワタル「…………」

 

 

その時は俺にひと声掛けてくれよな?と、胸を張って笑顔を向ける優矢にワタルも何処か期待の眼差しを向けるが、すぐにそれを振り払うように顔を伏せてしまう。

 

 

そんなワタルの様子を見て優矢も小首を傾げるが、直後に何かを思い出したように懐を漁り出す。

 

 

優矢「そうだ……まだこんな時間だし、どうせ何も食べずに城を出てきたんだろ?ほら、これやるよ」

 

 

そう言いながら優矢はワタルに歩み寄り手を取ると、その手にポケットから取り出したキャンディを握らせていき、ワタルは渡されたキャンディを見て一瞬戸惑うも、優矢はそのままバイクに戻ってヘルメットを被りながらマシンに跨っていく。

 

 

優矢「あんま一人で悩むなよ!俺やヴィータさんもいるんだし、辛い事があったら何時でも相談してくれ!」

 

 

じゃあな!と軽く挨拶すると共にヘルメットのバイザーを下ろし、トライチェイサーを発進させて何処かへと走り去っていく優矢。その後ろ姿をジッと見送りながら、ワタルは優矢から貰ったキャンディを大事そうに手の中で握り締めていたのだった。

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

それから更に数時間後。朝食を終えて写真館を後にした零となのははこの世界での自分達の役目について手掛かりを探しに、再び街に出て住宅街にやって来ていた。

 

 

なのは「──うーん……此処にもそれらしい手掛かりはなさそうだね……」

 

 

零「そうだなぁ」

 

 

―カシャッ!―

 

 

なのは「前の世界じゃ格好の見た目とかですぐに分かったけど、ヴァイオリニストなんて何をすればいいのか検討つかないよね……」

 

 

零「だなぁ」

 

 

―カシャッ!―

 

 

なのは「これだけ探してもヒントも見付からないし、次は何処を探そうかな……ねぇ、どうしようか?」

 

 

零「なー」

 

 

―カシャッ!―

 

 

なのは「‥‥‥零君。私の話、ちゃんと聞いてる?」

 

 

零「ふうむ……お、此処からだとあの城が良い感じに写るな。一枚っと」

 

 

―カシャッ!―

 

 

なのは「……って、やっぱり聞いてなかったんでしょうッ?!」

 

 

こっちは真剣にこの世界での役割に繋がる手掛かりを探しているというのに、人の気も知らず適当に返事をしながらカメラで周りの風景を撮っている零になのはが怒鳴る。

 

 

だが、零はそんななのはのお叱りを受けても特に気にせず写真を撮り続けていく。

 

 

零「そう騒ぐな。こうして写真を撮っていれば、何か手掛かりになるものが写ってる事だってあるかもだろう?そういう訳で俺はこっちで忙しいから、そっちの方はお前で探しといてくれ」

 

 

なのは「零君のブレブレ写真じゃ手掛かり写ってても全然分かんないでしょっ?!大体これは零君の役目なんだよっ?!なんで私が……!」

 

 

零「忘れたのか?お前も俺と同じ役目があるんだ、だったらお前が探しても俺が探しても結局は同じだろ」

 

 

なのは「もぉー!!何でそう言う屁理屈しか言えないのかなぁっ?!昔からそうやって都合の良い事ばっかり言ってっ!!」

 

 

零「それが俺だぞ?」

 

 

なのは「むっかぁあああああああっーーーー!!」

 

 

フッ、と軽く鼻を鳴らしておちょくるように笑う今の一言で完全に怒ったなのはが声を荒らげ、募りに募った今までの不満を含めて零の文句をガーッ!と言いまくる。だが零はそれも何処吹く風と聞き流し、再び写真を撮ろうとカメラのファインダーを覗いた。その時……

 

 

―……ギィー、ギィーギィー……ギギィーッ……―

 

 

零「……ん?」

 

 

なのは「え?」

 

 

何処からともなく奇妙な音が響き渡り、零は写真を撮るのを止め、なのはも零への文句を止めて辺りを見渡していく。

 

 

なのは「ねぇ、これって確かワタル君が弾いてたバイオリンと同じ音だよね……?」

 

 

そう、なのはの言う通り、その奇妙な音は昨日ワタルが弾いていたバイオリンの音と良く似ているが、零はその音を聞きながら何処か不可解そうに目を細めた。

 

 

零「確かに似てるはいるが、ワタルが弾いてたのとは少し違う……なのは、あの家に行ってみるぞ」

 

 

なのは「え?あ、うん……」

 

 

零もその音の正体が気になったのか、なのはにそう呼び掛けながら彼女と共に奇妙なバイオリンの音が聞こえてくる方向、ワタルと初めて会ったあの廃墟のような家へと向かっていった。

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

ワタルと出会った廃墟。中は昨日と変わらず荒れていたが、其処には荒らんだ服を来た中年男性が窓際に立ってバイオリンを奏でていた。しかし男は懐かしそうな、だが何処か寂しそうな顔でバイオリンを弾き続けている。其処へ……

 

 

―♪~♪~♪~♪―

 

 

「……?」

 

 

その音に合わせるように不意に家の下から美しいメロディーが聞こえ、男は一瞬驚いて思わず演奏を止めたが、次第にそのメロディーに惹かれ心を委ねていく。

 

 

そしてその演奏を奏でていた零もなのはと共に階段を登って二階へと上がり、暫くバイオリンを奏でた後に演奏を止めて男と向き合った。

 

 

「……君達は?」

 

 

零「気にしないでくれ、単に通り掛かっただけだ……あんたは?」

 

 

「……以前この家に住んでいた者だ。愛する妻と、そしてその妻との間に産まれた子供と共に幸せな暮らしを送っていた……だが、そんな幸せも長くは続かなかった……」

 

 

そう言いながら手に握るバイオリンに視線を戻す男だが、その顔は何処か物悲しげに見える。

 

 

「夢見ていた……人間とファンガイアは共に生きていけると……だが、無理があったのかもしれないな。人間と共に生きるなどと……」

 

 

なのは「……もしかして、貴方はファンガイアなんですか?」

 

 

「……どうだろうね?では、私はもう行くよ。良い演奏をありがとう」

 

 

男は二人に礼を言うと、手に持っていたバイオリンを机の上に置いて家を出ていった。

 

 

なのは「零君……もしかしてあの人……」

 

 

零「……どうだろうな。仮にそうだったとしても、俺達が関わっていい事じゃなさそうだ……行こう」

 

 

なのは「……うん」

 

 

何かを察したなのはの言葉にそう答え、階段を降りていく零の姿を見てなのはも後を追おうと踏み出すが、その時……

 

 

―カチャッ……!―

 

 

なのは「へ?」

 

 

なのはが足を踏み出した瞬間、不意に何かを踏んだような感触と共に金属音が鳴った。それに気付いてなのはは自分の足を退かし足元を見てみると、其処には……

 

 

なのは「……腕時計?」

 

 

そう、其処にはボロボロに汚れている銀色の腕時計が床に落ちていたのだ。

 

 

なのははしゃがんでそれを手に取り、汚れを手で払ってまじまじと眺める。

 

 

時計自体は汚れてはいるが、壊れている様子はなく画面もちゃんと時間が表示されていてまだまだ使える様に見える。

 

 

もしや以前此処に住んでたというあの人達が使っていた物だろうか?そう考えながらなのはが首を傾げていると…

 

 

零「──おーい、どうしたなのは?何かあったのか?」

 

 

なのは「ッ!あ、ううん、何でもない!今いくから!」

 

 

もしかしたらコレもあの人にとって思い出の品かもしれないと思うと捨ててしまうのも躊躇してしまい、またあの人に会う事があれば綺麗にして返そうと考え、なのはは一度写真館に持ち帰ろうとその腕時計をポケットに仕舞い、零の下へ急ぎ階段を降りていった。

 

 

 

 

──その時、ポケットの中で腕時計の画面が僅かに輝き、ディケイドの紋章が浮き出ているとも気付かず……。

 

 

 

 

 


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