仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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第三章/キバの世界⑥

 

それから数時間が経ち、時刻は夜になった。あれから街中を捜索してこの世界で果たすべき役目のヒントを探し続けたものの、やはり何処を見ても人間とファンガイアが手を取り合って暮らす光景しか見られず、昨日のように掟を破ったファンガイアと遭遇する事もなかった。

 

 

結局この日も収穫となる手掛かりを得られず、歩き疲れた零となのはは写真館に戻る前に休憩しようと近くの公園のベンチに腰掛けていた。

 

 

なのは「はぁ……色んな所探し歩いたけど、結局何にも見つからなかったね……」

 

 

零「ああ……全く、こんな平和な世界で一体何をやれっていうんだ……」

 

 

此処まで何も異変がないと、いよいよ自分達がこの世界に訪れた意味はないのでは?と思い始めてきた。

 

 

……いや、元の世界から飛ばされてきたヴィータもいた事だし全くの無意味とは言えないが、この世界に来てからの自分達の行動を振り返ると誤解からファンガイア、ワタルと戦ったりと、寧ろ自分達が現れた事で平和なこの世界を荒らしてるようにしか思えない。

 

 

これじゃ本当に……と、優矢やワタルに言われた『悪魔』の呼称を思い出し掛けるも、それを振り払うように軽く頭を振り、零はベンチから腰を上げて写真館に戻ろうとなのはに声を掛けようとした。その時……

 

 

 

 

『フフフ……見つけたわよ、ディケイド♪』

 

 

「「……?!」」

 

 

 

 

不意に何処からともなく妖しげな声が聞こえ、零となのはは驚き共に警戒して辺りを見渡す。すると、二人の目の前に奇妙な白いコウモリがクスクスと妖しげに笑いながら現れた。

 

 

なのは「?えと、これって……コウモリ、かな?」

 

 

零「……もしかしてこいつか?優矢が言っていた変なコウモリってのは」

 

 

『失礼ね!私はキバット族のキバーラっていうのよ!……そんな事よりディケイド、お前、自分がこの世界に何をしに来たか……知りたくない?』

 

 

零「!お前、何か知ってのか?!」

 

 

何か訳知りな口調でそう語る奇妙な白いコウモリ……キバーラの言葉に零が思わずそう聞き返すと、キバーラは二人の周囲を飛び回りながら薄く微笑み、

 

 

キバーラ『えぇ、勿論知ってるわよ。……お前は、この世界を破壊しに来た』

 

 

零「……何?」

 

 

―ブォオオオオオオオンッッ……!!―

 

 

冷たい声音でキバーラが不穏にそう答えたと同時に、周囲の景色が突然銀色のオーロラに包まれて歪み始めていき、オーロラが晴れると、いつの間にか二人は何処かのスタジアムの観客席に佇んでいた。

 

 

なのは「え?こ、此処ってっ?」

 

 

零「景色が変わった……?まさか、また別の世界に……?」

 

 

見知らぬ場所にいきなり飛ばされて戸惑うなのはとは対照に、零は胸でざわつく嫌な予感から警戒して辺りを見渡していく。其処へ……

 

 

―カタンッ……カタンッ……カタンッ……―

 

 

「「!」」

 

 

周囲を見回す二人の耳に不気味な足音が届き、すぐさま音がした方へと振り返る。すると其処には、黄色のラインが入った黒鉄の鎧を纏う紫の瞳の仮面ライダーがスタジアムの階段を徐に下りてくる姿があった。

 

 

零「お前は……?」

 

 

『──貰うぞ。お前のベルトを……』

 

 

怪訝な表情を向ける零の問いにも答えず、紫眼のライダー……『仮面ライダーカイザ』は右手にあらかじめ持っていたギリシャ文字のχを形状とした銃剣、カイザブレイガンの銃口を二人に突き付ける。

 

 

零「ッ?!伏せろなのはッ!」

 

 

なのは「え?キャアッ?!」

 

 

―バシュッバシュッバシュッ!!―

 

 

それを見て零が咄嗟になのはを抱き抱えながらその場から飛び退いた瞬間、カイザはいきなり発砲して二人が立っていた場所に風穴を開けたのである。続け様に放たれる銃弾の雨をどうにか掻い潜り、零はなのはと共に客席の陰に身を潜めながら懐からディケイドライバーを取り出す。

 

 

零「クソッ……!あの時の訳の分からんライダー達の仲間か?!なのはっ、隠れてろっ!」

 

 

なのは「う、うんっ!」

 

 

恐らくクウガの世界で突然襲ってきたホッパー達と同じライダーの襲撃か、当たって欲しくはなかった嫌な予感の的中に思わず舌打ちしながらもなのはを避難させ、バックルを腰に装着した零はライドブッカーから取り出したカードを構えながらカイザの前に躍り出た。

 

 

零「変身ッ!」

 

 

『KAMENRIDE:DECADE!』

 

 

カイザ『チッ!』

 

 

―バシュンッバシュンッ!!―

 

 

カードを装填したドライバーのサイドハンドルをスライドさせ、電子音声と共に灰色のスーツを身に纏う零に向けてカイザが変身を妨害しようと容赦なく銃撃する。

 

 

だが、零のバックルから飛び出したカード状のプレートが銃弾を跳ね除けて零を守り、そのまま仮面に収まると共にディケイドに変身した零は左腰のライドブッカーを瞬時にガンモードに切り替え、カイザに向けて銃撃し反撃を開始していった。

 

 

―バシュッ!バシュッバシュッバシュッバシュッ!!―

 

 

カイザ『ハッ!ハァッ!』

 

 

ディケイド『グゥッ!ハッ!』

 

 

スタジアムを駆け回りながら互いに目掛けて銃を乱射し、激しい銃撃戦を繰り広げてゆくディケイドとカイザ。其処へ……

 

 

―バッ!!―

 

 

カイザ『デェアアッ!!』

 

 

ディケイド『ッ!ハァッ!』

 

 

―バシュンバシュンッ!!―

 

 

ディケイド『グゥッ?!』

 

 

カイザ『づあッ?!』

 

 

カイザがいきなりディケイドに向かって飛び掛かりながら銃を撃ち出していき、ディケイドも即座にカイザを狙い撃って撃ち落とし互いに倒れてしまうも、直ぐさま身体を起こし互いに向けて銃口を突き付けた。

 

 

ディケイド『ッ!何故俺と戦うッ?!』

 

 

カイザ『……邪魔なんだよ……俺の思い通りにならないモノは全てッ!』

 

 

―バシュンッ!―

 

 

そう言いながら銃の引き金を引いてディケイドの顔を至近距離から撃つカイザ。しかしディケイドも咄嗟に首を横に動かし紙一重で銃弾を避けながらカイザに掴み掛かり投げ飛ばすが、カイザは受け身を取りながらバックルのメモリーカードを抜き取って銃剣に装填し、刃を展開してディケイドに斬り掛かっていったのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

優矢「──な、何だよコレっ……?!」

 

 

一方その頃、親衛隊として街をパトロールしていた優矢とヴィータは衝撃的な光景を目の当たりにしていた。二人の目の前にはライフエナジーを吸われてしまった無数の人間や粉々に砕かれたファンガイアの残骸が辺り一面に散乱していたのだ。

 

 

ヴィータは近くに倒れる人間に急いで駆け寄り息がないか確かめるも、徐に手を離して悔しげに唇を噛み締めた。

 

 

ヴィータ「駄目だ、やっぱり限界までライフエナジーを吸われてやがるっ……多分他の被害者も、もう……」

 

 

優矢「そんな……一体誰が……っ……?」

 

 

生存者は期待出来ないだろうと断言するヴィータの言葉に悲痛な顔を浮かべる優矢だが、その時ふと、目の前の凄惨な光景を見渡してある違和感に気付く。

 

 

ライフエナジーを吸われてしまった人間の骸とファンガイアの残骸はキャッスルドランに向かって道中まっすぐ続いており、それに気付いた優矢はハッと息を拒みヴィータの方に振り向いた。

 

 

優矢「ヴィータさん!ワタルが危ない!キャッスルドランに戻ろう!」

 

 

ヴィータ「は?あ、ああ!」

 

 

嫌な予感を感じて叫ぶ優矢に押されながらも、ヴィータは同行していた同じファンガイアの親衛隊に現場を任せると、念のため写真館のスバル達にも連絡しようと携帯から電話を掛けながら、二人はワタルの安否を確かめる為に急いでキャッスルドランに戻っていった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「キャアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!?」

 

 

ワタル「……?!」

 

 

同時刻、キャッスルドランの玉座の間でワタルが窓から月を見上げていた最中、城内に突然悲鳴が響き渡り、驚愕を浮かべて思わず振り返った。

 

 

直後、入り口の扉が荒々しく開かれ、扉の奥から重厚な身体を持つカブト虫型のファンガイア……ビートルファンガイアが現れた。

 

 

『漸く見付けたぞ……王の印、キバの鎧……この俺が貰い受けるッ!』

 

 

ワタル「なっ……キバットッ!」

 

 

キバット『よっしゃあ!キバって行くぜ!』

 

 

敵意を剥き出しに迫るビートルファンガイアの襲撃に一瞬戸惑うも、すぐに真剣な表情に切り替わりキバットを呼ぶワタル。そしてワタルに応えその手に収まるキバットを手に近付けさせ、

 

 

キバット『ガブッ!』

 

 

ワタル「変身ッ!」

 

 

キバットを噛み付かせると共に顔にステンドグラスの模様を浮かび上がらせ、ワタルは腰に出現したベルトの止まり木にキバットをセットしキバへと変身していく。

 

 

だがビートルファンガイアはキバに変身したワタルを見ても臆する所か鼻で笑って悠然と迫り、キバはその佇まいから発せられる謎の威圧感に押されながらもそれを振り払うように身構え、ビートルファンガイアに突っ込み戦闘を開始していくのであった。

 

 

 

 

 


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