仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
零「――――っ……ぅ……ぁ……?」
フォーティンブラスの一撃によって木っ端微塵に吹き飛んだ霊山山頂。あまりの爆発の巨大さと威力に山頂は平たい平地へと様変わりし、地面にはパチパチと炎が走っている。その中で、いつの間にか変身が解除してしまった零は桜香を抱き締めるような態勢のまま目を覚ました。
零「……此処……はっ……ッ!桜香はっ……?」
朦朧とする意識の中、真っ先に桜香の身がどうなったのか気になり慌てて腕の中に抱いた桜香を見下ろすと、少しボロボロにはなっているが、大した怪我等は見当たらない。
零「無事か……良かったっ……ん……?」
桜香の無事を確認した零は安心して息を吐くが、その時自分と桜香の周りを包み込む桜色の三角形の形状をした結界の存在に気付き、零は首を動かしてそれを見上げた。
零「これは……結界?何でこんなものが……―ドシャアァッ!!―……え?」
いつの間にこんな物が張られていたのかと疑問に思う零のすぐ近くで、何かが落ちる音がした。零はその音を耳にして思わず振り返り、光りが鈍った目でそれを見て驚愕の表情を浮かべてしてしまう。何故なら……
姫「―――――――――――――――――」
零「……………さく………や…………?」
――振り返った先にあったのは、地面に赤い鮮血を撒き散らし、体から煙を立たせ、口から赤い物が吐き出され、全身を無惨にもズタズタに引き裂かれて倒れる姫の姿だったのだ。それを見た零が驚愕と動揺の混じった声で名前を呼んでも、返事は返ってこない。
…死んでいる、と思った。そう思ってしまうほど、今の姫の姿は目を逸らしたくなるほどズタズタだった。
『ふ―――はは、くははははははははははははははははははははは!!!まさか本当にその蟲共を守ろうとはな?!しかも自分の身を顧みずにその蟲共を救うとは……くはははは!!偽善も此処までくれば立派なものよなぁ?!!』
……その遠くでは、姫を傷付けた本人である白い異形が狂ったように笑っていた。その哄笑は高く、焦げた大気を超えて天に届くかのようだった。
『しかし味気ない、完全にこちらの圧勝か?防ぎ切る事も出来んとは拍子抜けだぞ桜ノ神……ああそうか?少しは手加減してやるべきだった。くくく、なにしろ相手は女子供だったのだしなぁ?ふはははははははははははははははは!!!』
……それ程に愉しいのか。フォーティンブラスは倒れ伏した姫を見ようともせず、ただ己の為に笑っていた。そんな耳障りな笑い声を聞きながら、零は自分達を囲む結界が消えたのを確認すると、ボロボロの身体を必死に引きずって姫へと近づいていく。
零「っ……咲夜!しっかりしろ!!咲夜っ!!」
姫「―――――――――――――――」
『くく……さて、ではそろそろ頂くとするか。少し汚れてしまったが、まあ良いだろう。その程度で品が落ちる女ではないのだしな』
零が枯れた声で必死に姫へと呼び掛ける中、笑い声が背後からゆっくりと近づいてくるのが分かった。それに気付いた零は必死に体を姫に近付けて再び呼び掛けようとするが、それで気が付いたのか、姫はうっすらと目を開けた。
零「ッ!咲夜?おい無事か?!咲夜!!咲夜、咲夜っ!!」
姫「――――ぁ――――っ」
声が届いたのか、姫の唇が僅かに開く。救いを求めるように息を吸って、それも苦しいと小さく咳き込んだあと……
姫「――――れ―――い?――――そこに、いるの――――か――――?」
目の前にいる零が判らないと、弱々しく声をあげた。
零「っ……待ってろっ……すぐにっ……!」
手を貸してやる、とは言えなかった。倒れているのは自分も同じで、体は腕しか満足に動かない。姫を元気づける言葉さえ今は見付からない。そんな零の無様な姿も見えないのか……
姫「…………ああ、そうか…………負けたんだな…………私は…………」
姫はぼんやりとした声で、光りのない目で必死に零の姿を探して……
姫「――すまない、零……どうか……君達だけでも逃げてくれ……」
ごぽっと、苦しそうに血を吐き出しながら、そんな事を告げた。
零「――――!!!」
怒りで、視界が真っ赤に染まった。
何故自分はさっき姫を止めなかった?
何故姫と桜香を無理矢理にでも連れて逃げなかった?
自分が無理でも、姫に桜香を任せて逃げさせるという道だってあったはずなのに……
そんな答えは単純……姫を無意識に頼り切っていたのだ。
同じ神なのだからきっと奴に対抗出来る、勝てるかもしれないと、そんな馬鹿な期待を心の何処かで持っていたのだ。
そんな筈ないのに……幾ら神と呼ばれていようとも、姫は全てを思うがままに出来る存在なんかじゃない。
ただ不思議な力を持ってるというだけで、それ以外は普通の人間と何処も変わらない。
超人的な力を持つライダーでもない、普通の女の子と大して変わらない力しかない姫が、あんな化け物相手に勝てる筈がない。
封印が効かなかった時点でその事に気付くべきだったのに、一体何をやっていたのか……
神だからきっと何とかしてくれる、神なんだからどんな奇跡だって起こしてくれるのだと……姫の嘗ての話を聞いてそんなワケがないと知っていたハズなのに、そんな馬鹿みたいな期待を持ってしまうなんて……!
零「――――、くっ!」
咲夜が此処までズタズタになったのは自分のせいだ。あまりの怒りの大きさに思わず自分の頭を掴み、このまま掴み潰してしまおうかと思ったが、今は後回しだ。そう思いながら零はふらつきながら立ち上がり、懐から取り出したドライバーを装着しながらフォーティンブラスと対峙した。
『……貴様……』
姫「…………れ…………い…………?」
零「っ―――、変身ッ!」
『KAMENRIDE:DECADE!』
血まみれの手でディケイドのカードを取り出し、ディケイドライバーへと捩込むように装填してディケイドに変身する零。そして変身して身構えるディケイドにフォーティンブラスは足を止め、道を阻むディケイドを睨みつけた。
姫「な、何をする気だ?!止めろっ!奴は君が勝てる相手ではない!!」
目が見えずとも感じたのか、体を必死に起こして姫が叫んでいる――――それで自分の中に押さえ込んでいた物が全部吹っ切れた。
勝てないなんて重々承知、それでも構わない。あんな咲夜の姿を見続けるよりはマシだ。
……そうだ。ただ俺は、これ以上アイツが傷つくのが嫌だから、こうして立っているだけなんだ。
姫「な――逃げてと言ってるのに、どうして……!」
ディケイド『っ……誰が逃げるかっ……お前を置いて逃げたところで、この蛇もどきが俺達を大人しく逃がすとは限らないだろう……なら、戦って隙を作ってから逃げた方が確実だ……』
本心は口に出さず、左腰のライドブッカーをSモードに切り替えて目前の敵を睨みつける。
姫「ば――止めろ零っ!!そいつはそんな――!!」
背後からの姫の声を振り払い、覚束ない足で一歩前に出る。間合いは十メートル。全力で踏み込めばヤツに斬りかかれる距離だが、敵は全く動かず、フォーティンブラスはわずかに目を見張ったあとくっ、と愉快げに笑い……
『――――殺すか』
ディケイド『ッ!―ドガアアアアアァァァァッ!!―……ぐッ?!』
感情の無い声でそう言ったと共に、フォーティンブラスは一瞬でディケイドの前に現れると共にディケイドの胸目掛けて剣の切っ先を飛ばした。突然の奇襲に驚きつつも咄嗟に反応し、ライドブッカーで防御態勢を取るディケイドだが、フォーティンブラスは息を吐く間も与えず嵐のような剣撃をうち下ろしていく。
―ガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキン!!ズガアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァアンッ!!!!!―
ディケイド『は―――っ!くっ!!』
ボロボロで満足に動かない体を必死に振り回し、息を吐く間もなく暴風のような剣撃を防いでいくディケイド。そんな一時の抵抗を見せるディケイドに、フォーティンブラスは腹ただしげに睨みつけてきた。
『蟲が……見苦しいにも程がある』
苛立ちを込めながら呟くとフォーティンブラスは僅かに後退し、何処からか異様な形状をした一本の銀色の剣を持ち出した。
ディケイド『……?なんだ……アレは……?』
フォーティンブラスが持ち出したそれは異様な雰囲気を漂わせる剣。ギザギザとした刀身に四つの眼球の様な装飾を埋め込み、剣から黒いまがまがしいオーラが溢れ出している。
『魔剣ディスクゥエル……蟲ごときに使うには惜しい一級品の品だが……貴様は粉々に消し飛ばさなければ気が済まん!!』
―ブオオオオオォォォォォォォォンッ!!!―
ディケイド『クッ!』
銀色の光が頭上から走る。フォーティンブラスが振り下ろした剣……ディスクゥエルはその命を刈らんと言わんばかりに暴風のようにディケイドへと襲い掛かり、ディケイドも直ぐさまライドブッカーを構え直してそれを迎え撃った。が……
―ガキイィィィィィィィィィィィィィィィンッ!!!チュドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオンッッ!!!!!!!!!!―
ディケイド『――?!!』
……たったの一撃。たったの一撃を受け止めただけでフォーティンブラスの魔剣から破壊の銀光が放たれ、一瞬でディケイドの身体を飲み込んでしまった。銀光に飲み込まれたディケイドはそのまま勢いよく吹っ飛ばされながら変身が解けて地面を滑り、止まった。
姫「れ、い?―――零……零……っ!!!!!」
零「―――さく、や………か?なんだ……わりと近くに………」
悲痛な声がすぐ横から響いてきた。その声のおかげでまだ自分が生きていると気が付き、零は内心少し安心した。なんだか吹き飛ばされた感じだが、咲夜が近くにいるのなら問題はない。それなら立ち上がって、すぐに咲夜まで駆け寄る事が――――
零「――――――あ――――――――れ――――」
思って立ち上がろうとした時、何故か上手く立ち上がれなかった。疑問に思って倒れたまま腕を見てみると、真っ赤だった。
ねっとりとした赤い粘膜に包まれた腕は、それ自体に出血はない。
姫「動くなっ!!もういい!!頼むからもう動かないでくれ……っ!!!!」
……珍しく咲夜の取り乱した声が聞こえる。どうやら傷を負ったのは胴体らしい。
さっきの一撃、フォーティンブラスの剣を受けて吹っ飛ばされたのは確かだろう。
なら傷は――ああ、何だ。
確かにこれなら、咲夜があそこまで取り乱すのも判る気がする。
動くのは右手だけ、左手は動かない。
そもそも左手がどうなっているのかも判らない。
零「――――――ぁ―――――――は―――――」
息も満足に出来ない。左肩から斜めにバッサリ。袈裟に斬られた体は、面白い位に肩口から腰まで綺麗に分かれていた。
少しでも動けば、中身が傷口からごっそりとずり落ちてしまいそうだ。
こんな状態になってもまだ生きているというのは、我ながら不気味なぐらい。
もしかしたらとっくに死んでいて、意識だけが幽霊のように残っているだけかもしれない。
本当にそう思ってしまうほど、こうして生きてられるのが不思議だった……