仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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第十七章/桜ノ神の世界⑫

 

―桜ノ神社―

 

 

時刻は夜中。町で暴れていた幻魔達は何処かへと消え去ったが、幻魔達の襲撃によって桜ノ町の殆どの機能が停止してしまい、病院では今でも怪我人が多く運ばれている等大混乱となっていた。

 

 

そしてブレイブライナーで運ばれた零と桜香、勇二によって運ばれてきた晃彦は寝室でそれぞれ治療を受けており、外では烈と異世界から手助けに来てくれた青年……"木野 龍弥"が時の方舟の動きを見張り、その間に居間では大輝達が集まって今の現状について話し合っていた。

 

 

絢香「――――姫様が……幻魔神に?!」

 

 

ベル「えぇ。自分の身を差し出す代わりに二度とこの世界に干渉せず、幻魔達も幻魔界に戻す……その条件で幻魔神からこの世界を守るつもりらしいわよ、あの神様」

 

 

大輝「まぁ、今の状況じゃそれが一番の打開策だろうね?幻魔達は幻魔神が存在する限り無限に現れるし、零も幻魔神に危うく殺され掛けた……君達もあのままだったら、幻魔達の数に圧されてどうなっていたか分からないし」

 

 

紗耶香「そんな……なら、姫様はこれからどうなるんだ?!」

 

 

大輝「多分幻魔界に連れていかれるんじゃないかな?どうやら幻魔神はこの世界に興味がなくなったらしいし、そうなれば彼女は一生この世界に戻って来れないだろうね」

 

 

カリム「そんな……」

 

 

幻魔達から自分達を守る為に、姫は自らフォーティンブラスに身を捧げた。更に姫が幻魔界に連れてかれてしまうと聞かされた一同は動揺を隠せず、その中で、稟が大輝に質問してきた。

 

 

稟「待てよ大輝。アイツ等はその幻魔界にどうやって行く気なんだ?というかそもそも、幻魔界って一体何なんだ?」

 

 

大輝「……幻魔界って言うのはその名の通り、幻魔しか存在しない世界さ。あの世界は幻魔神であるフォーティンブラスに管理されていて、侵入するも出ていくも彼の許可がなければどうする事も出来ない」

 

 

ベル「つまり神である彼女でも、幻魔界に入ってしまえばフォーティンブラスの許しがないと出ていく事は出来ない……ま、あの堕神がそう簡単にあの神様を手放す訳ないだろうし、一生鳥籠の鳥として生きていく事になるでしょうね」

 

 

大輝「そして彼等は其処へ戻る為にある舟……かつてギルデンスタンが開発していた時の方舟を使うつもりなんだろう」

 

 

絢香「?時の方舟って……まさか、霊山上空に出現したっていうアレのことですか?!」

 

 

大輝の説明を聞いた絢香は先程霊山の上空に現れたという巨大な物体を思い出して思わず聞き返すと、大輝は軽い口調で話を続けた。

 

 

大輝「ホントはこの世界の人間達を殲滅する為に造られてたらしいけど、長い間地中に埋まっていたせいでほとんどの機能が使えなくなってるらしい」

 

 

ベル「まあでも、次元を越える程度の機能はなんとか使えるらしいから、それで幻魔界に帰るつもりなんでしょ。多分今頃修復作業に入ってると思うから、出発は明日の日の出ぐらいかしら?」

 

 

紗耶香「っ!ならば、その前にあの要塞に乗り込んで姫様を……!!」

 

 

大輝「止めといた方がいいんじゃない?あの舟は殆どの機能を失ってるとはいえ、それでもこの世界を消し飛ばすだけの力は持ってる筈だ。加えてフォーティンブラスは零達を意図も簡単に倒した実力者だし、無限の兵力も持ってる……無闇に突っ込んでも殺されるだけだ」

 

 

淡々と説明していく大輝の言葉を聞いて紗耶香は思わず押し黙り、室内に沈黙が流れ始めた。

 

 

相手は腐っても神であり、その力はメンバーの想像を遥かに越えている。それに無限とも言える幻魔の大群を一斉に放たれでもしたら、幾らこのメンバーでもそれを凌ぎ切るのは難しい。

 

 

時の方舟の攻略と姫の救出、無限に襲い来る幻魔との戦いやフォーティンブラスの撃退。

 

 

このメンバーでそれを同時に行うとなると、少しばかり困難かもしれない。一同が一体どうするべきかと頭を悩ませていると、居間の襖が開いて勇二と黒い着物を着た青年……晃彦の治療をしにエグザムの世界から(アテナの力を少し借りて)やって来た"ゴウト"が現れた。

 

 

侑斗「ッ!ゴウト!荒垣はどうなった?!」

 

 

ゴウト「落ち着け侑斗殿。少し暴走し掛けてはいたが、先程治療して大分落ち着いた。今はリインIとアイリスが傍に着いておるから、心配はいらん」

 

 

稟「そっか……じゃあ、零さんの方は?」

 

 

勇二「零さんは……その、なんていうか……」

 

 

晃彦の無事を聞いて安心した稟が零の容態を二人に問いかけるが、勇二は何故か言い難そうに口ごもってしまう。そんな勇二に一同が首を傾げていると、ゴウトが代わりに説明し始めた。

 

 

ゴウト「零殿は現在ゼウス殿達の治療を受けているが……これが少々厄介な事になっててな……傷の治療が出来んのだ……」

 

 

紲那「?傷の治療が出来ないって……どういう事だ?」

 

 

何故傷の治療が出来ないのか?その意味が分からない一同は頭上に疑問符を浮かべていくが、大輝が代わってその説明をしていく。

 

 

大輝「フォーティンブラスが零に傷を負わせた時に使った剣……ディスクゥエルには、一種の呪いが掛けられててね。アレで傷を負わせられた者は呪いの効果で傷を治そうとすれば、逆に傷が悪化してしまうという効果がある……つまりどんな治癒魔法を掛けても傷は治らないって訳さ」

 

 

シャッハ「そんな……なら一体どうすれば……!」

 

 

大輝「心配なんかしなくても、一日安静にしていれば呪いの効果が薄れて治癒魔法が効くようになるだろう……ま、その間に時の方舟は幻魔界に入ってしまい、あの神様の救出は出来なくなるだろうね」

 

 

つまり、零が復帰するのを待ってる間に姫は幻魔界へと連れていかれてしまうという訳だ。そうなれば姫の救出は不可能に近いのだと理解した一同は難しい顔を浮かべ、零抜きでどうやって時の方舟を攻略しようかと考えていた。その時……

 

 

 

 

 

 

「……ならそうなる前に、アレに乗り込んで木ノ花を救い出せばいいだけの話しだろうっ……」

 

 

『……ッ!』

 

 

 

どうやって時の方舟を攻略しようかと考えていた中、居間の入り口の方から声が聞こえて一同がその方へと振り返ると、其処には大量の血が滲んだ包帯を全身に巻き、薄いYシャツを羽織った青年……零が悲痛な顔で壁に背中を預けながら立っていた。

 

 

紲那「零?!」

 

 

稟「何やってるんですか零さん?!駄目じゃないですか寝てなきゃ!」

 

 

零「っ……心配なんかするな……俺を誰だと思ってる?世界が恐れる破壊者だぞ?こんな傷でくたばる訳がない……」

 

 

今にも倒れてしまいそうな様子で立つ零を見て慌てて駆け寄る稟達に冗談めいた口調でそう言うと、覚束ない足取りで居間に足を踏み入れていく。

 

 

大輝「おや、まさかそんな体で動けるなんてね。普通なら余りの激痛で動けないハズなんだけど、勇ましいじゃないか?」

 

 

零「御託はどうだっていい……それより海道、お前あの舟の事を知ってるな?」

 

 

大輝「まぁ、大体はね」

 

 

零「なら教えろ……その口ぶりなら、あの舟への侵入経路も知ってるんだろう?それに木ノ花が何処に捕らえられているのかも、お前なら詳しく知ってるはずだ……」

 

 

大輝「……それを聞いてどうするんだい?まさか助けに行く気か?そんな身体で、彼女を?」

 

 

零「…………」

 

 

鋭い視線を向けながら静かに問いかける大輝。問いを受けた零はそれに答えずに口を閉ざし、それが肯定を意味している事に気付いた一同は慌てて零へと視線を集めていった。

 

 

侑斗「おい黒月っ、冗談は止せ!その体で敵陣に突っ込むなんて自殺行為だ!」

 

 

零「……なら大人しく寝ていろって言うのか……アイツが自分の意志とは関係無しに連れ去られようとしてるのを、指をくわえて見ていろと……」

 

 

カリム「今はそうするしかないんです!そんな身体で戦えば、幾ら貴方でも死んでしまう!お願いだから大人しく此処にいて下さい!」

 

 

零「…………」

 

 

死に体当然の身体で時の舟に向かおうとする零を止めようとする一同だが、零はそんな彼等の言葉に耳を傾けず大輝を見据えている。大輝はそんな零の目を見て肩を竦め、軽く息を吐いた。

 

 

大輝「成る程……君はソレを使って幻魔神と戦うつもりか?」

 

 

零「……ああ……どうやら奴に生半可な戦い方は通用しないらしいからな……目には目を、歯には歯をって奴だ……」

 

 

大輝「……そういうことか……なら、仕方がない」

 

 

大輝はそう言いながら静かに立ち上がり、冷たい表情で何処からかディエンドライバーを取り出し零の額に突きつけて構えていった。

 

 

稟「大輝?!」

 

 

紲那「おい!なんの真似だっ?!」

 

 

大輝「これ以上彼の好きにさせる訳にはいかないんでね……今より面倒なことになる前に、此処で俺が引導を渡してあげるよ」

 

 

零「……意外だな。そんなに俺を奴の下に行かせたくないのか?てっきりお前は、奴を倒す為に俺を利用するんじゃないかと思ってたんだが」

 

 

大輝「君が万全な状態ならそのつもりだったさ。だが今の君を行かせても最悪な事態になりかねない……忘れた訳じゃないだろう?君が前の世界でアズサを救う為に無茶をして、それで君のソレがどうなり掛けたのか」

 

 

零「…………」

 

 

勿論忘れたワケじゃない。前の光達の世界でアズサを救う為、この左目を使い、そして無茶をして死に掛けた事でコレが暴走しかけたことを。

 

 

当事者の大輝からすればコレがどんなに危険か知っており、あの時の二の舞になるかもしれないと考えているのだろう。だが……

 

 

零「――それでも……それでも俺はアイツを―――っ!!」

 

 

カリム「?!零?!」

 

 

零は大輝に反論しようとするも胸の激痛によってバランスを崩してしまい、カリムが咄嗟に体を抱き抱えて倒れずに済んだ。それを見た大輝もディエンドライバーを回転させながら懐へと仕舞って話し出した。

 

 

大輝「分かっただろう?今の君一人がそんな状態で時の舟に向かっても、わざわざ殺されに行くようなものだ……黙って大人しく寝ていたまえ」

 

 

零「っ……く……そっ……」

 

 

こうしてる間にも、フォーティンブラスは幻魔界へと向かう準備を着々と進めているのにと、零は内心焦りを浮かべるが大輝に冷たく告げられて思わず毒づいてしまう。

 

 

すると居間の入り口の方から二人組の異形と少女……侑斗が契約しているイマジンと妹であるデネブと岡崎柚子が誰かを探すように現れ、カリムに支えられる零を見て慌てて駆け寄ってきた。

 

 

デネブ『黒月?!こんな所にいたのか!』

 

 

柚子「駄目じゃないですか!そんな体で動き回っちゃ!さ、早く戻って下さい、アズサさんとゼウスさん達も一緒に探してくれてるんですから!」

 

 

零「…………あぁ…………分かった…………」

 

 

身体の限界が近いからか、零は渋々と頷いてデネブの肩を借り、そのまま居間を出て部屋へと戻っていった。そしてそれを見た大輝はその場から歩き出し、居間から出ていこうとする。

 

 

大輝「まぁそういう訳だから、彼女を助けに行きたいなら作戦会議でもなんでも勝手にしておきたまえ」

 

 

勇二「勝手にって……アンタはどうするつもりなんだよ?」

 

 

大輝「俺は俺で好きにさせてもらうさ。あの神様がどうなろうと、俺には関係のない話だ。じゃあね♪」

 

 

そう言って大輝は軽く手を振って居間から出ていき、ベルも無言でその後を追いかけるように居間から出ていったのだった。

 

 

侑斗「ったく、何なんだアイツは……」

 

 

ゴウト「協力する気があるのかないのか……ハッキリせん奴だ」

 

 

そう言って一同は大輝達が出ていった入り口を見て呆れたように溜め息を吐き、取りあえず時の方舟の攻略と姫を救出する作戦を立てる為の会議を行っていくのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◆

 

 

 

 

 

そしてその頃、桜ノ神社の屋根の上では大輝が屋根に寝転がって霊山上空に浮かぶ時の方舟を眺めていた。其処へ一人の人物……ベルが大輝の背後に静かに立った。

 

 

ベル「以外ね……アンタがあんな事するなんて思わなかったわ」

 

 

大輝「別に深い意味はないさ……今彼を行かせたら、彼の内側の力がどんな反応を起こすか分からない……下手すればフォーティンブラスと暴走した彼の両方を相手しなければならないからね。厄介事にはさせたくないんだよ」

 

 

時の方舟を眺めながら興味なさげに淡々と語る大輝。ベルはそんな大輝から時の方舟へと視線を向け、目を細めた。

 

 

ベル「それでどうするの?彼等に手を貸す気?」

 

 

大輝「……不本意だけど、そうなるだろうね……フォーティンブラスは揺り篭の存在を知る神の一人だ……もし彼まで揺り篭争奪戦に加わればスカリエッティ、組織、幻魔の三勢力を相手にしなければいけなくなる。そうなる前にフォーティンブラスは此処で潰すさ」

 

 

ベル「……ホントに複雑な事情が絡み合ってるわよね、貴方達の世界って」

 

 

大輝「そういうモノだって遠の昔に受け入れたよ……もし彼等の誰かが揺り篭を手に入れれば、様々な世界のお宝が失われてしまう。それが嫌だから戦ってるだけさ、俺は」

 

 

そう言って大輝は目付きを鋭くさせて時の方舟を睨みつけ、ベルは軽く息を吐いて大輝の隣に腰を下ろし、今もなお不気味な威圧感を放つ時の方舟を眺めていくのだった。

 

 

 

 

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