仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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第十七章/桜ノ神の世界⑰ー決戦8

 

 

―???―

 

 

 

零「――ぅ…………ぁ…………」

 

 

桜色の光に包まれたとある空間。何処までもまばゆい光が続いていく世界の中で、零はゆっくりと瞼を開いて目覚めた。

 

 

零「っ……此処……は……?」

 

 

まだ意識が完全に覚醒してないまま、何故かズキズキと痛む左目を押さえながら身体を起こし、辺りを見渡していく。

 

 

零「……?なんだ此処……俺は、何で……?」

 

 

光りに包まれる空間を見渡して頭上に疑問符を並べ、何故自分が此処にいるのか分からず混乱する零。その時……

 

 

 

 

 

 

「――此処は精神と物質の間……人と神が、契約を交わす際に招かれる世界だ」

 

 

 

 

 

 

零「……っ?!」

 

 

 

 

 

 

不意に背後から声が響き、零は驚きながらその声が聞こえてきた背後に振り返った。すると其処には自分と向き合うように立つ少女、姫の姿があった。

 

 

零「咲夜……?」

 

 

姫「……どうやら、無事に一命を取り留めたようだな」

 

 

零「?一命……?」

 

 

何の事だ?と訝しげな顔で聞き返す零だが、ふと自分の左胸が肌寒く感じ身体を見下ろした。其処には血に塗れた服の左胸部分だけが破れており、それを見た零は自然と今まで起きた出来事を思い出していく。

 

 

零「そうだ……俺は確か、奴に心臓を突き刺された筈なのに……何故だ……?」

 

 

今でも鮮明に覚えている。あの時心臓を突き刺された感覚も。それなのに、何故自分は生きてるのか?それが疑問でならない零は困惑に満ちた顔で自分の身体に触れていき、姫は瞳を伏せながら口を開いた。

 

 

姫「それは私が、君と契約の儀を行ったからだ……」

 

 

零「?契約の……儀?」

 

 

聞き慣れない単語を口にした姫に零は思わず疑問げに問い返し、姫は自分の手の平を見つめながら話を続ける。

 

 

姫「君も知ってるだろう?私が使う神の力の事を」

 

 

零「?あぁ、確か……あらゆる奇跡を具現化させるとかいう能力だろう?」

 

 

姫「そうだ……だが私は、今までその力の全てを発揮する事は出来なかったんだ……」

 

 

零「……?」

 

 

言葉の意味がよく分からず、零の頭上が疑問符で埋め尽くされる。

 

 

姫「分かりやすく言えば、私の力はずっと不完全だったというわけだ……何せ私は、本来なら人間と契約を交わす事で、その力を完全な物にして発揮する系統の神だからな……」

 

 

零「?契約を交わす事でって……」

 

 

そう言われ、零はある事を思い出していた。確か大輝なども精霊といったモノと契約を交わし、彼等の力を借りて戦っていた事もあったが……彼女もそういった系統の神だと?

 

 

零「――だが、俺はお前とそんな契約なんてした覚えはないぞ?」

 

 

姫「あぁ……それは私から一方的に契約の儀を交わしたからな……君の意思とは関係無しに、私は君との間に繋がりを創ってしまったんだ……」

 

 

零「何……?」

 

 

一方的に契約を交わしてしまった。それを聞いて零は僅かに眉間にシワを寄せ、姫はそんな零の様子を見て表情を曇らせた。

 

 

零「……助けられた身としては強く言えんが、それは契約とは言えないんじゃないか?契約っていうのは、当事者同士が合意の下でする事であって―――」

 

 

姫「それに関しては心配しないでくれ……さっきも言った通り、この契約は私が一方的に君との間に繋がりを創っただけで、まだ完全に契約成立とはされていない……君が望むなら、この契約をなかったことにする事も可能だ……」

 

 

零「そうなのか?……いやだが、それにしたって――――」

 

 

姫「分かってる……勝手にそんな事してすまないとも思ってる……だがこうするしか、君を助ける方法がなかったんだ……君と契約を交わし、本当の力を手に入れて君を治療するしか……思い付かなかった……」

 

 

零「…………」

 

 

顔を俯かせ、暗い雰囲気でそう告げる姫に零も思わず口を閉ざしてしまう。あの時、死にかけていた自分を抱き抱える姫の顔は必死な物だった。自分を助ける為にはどうすればいいのか、必死に悩んで悩んで考えた結果が、これしかなかったのだろう。それを考えて零は閥が悪そうに頬を掻き、姫は顔色を曇らせたまま顔を上げて話し出した。

 

 

姫「……零……こんな時に言えたことじゃないが……一つだけ、頼みを聞いてもらってもいいか……?」

 

 

零「?頼み?」

 

 

言い難そうに口をごもらせながらそう呟く姫。頼みと言われて零は小首を傾げ、姫は顔を少し俯かせながら話を続けていく。

 

 

姫「私は……私はずっと、自分以外の誰かに頼ることなく過ごしてきた……人間だった頃も……桜ノ神になったばかりの頃も……以前までは、自分以外の誰かは守るべき人々だからと……そう思って、誰かと力を合わせるという事を一度もしてこなかった……」

 

 

零「…………」

 

 

姫「君の言う通り、そんな生き方をしてきたから、私は自分の過ちにも気付けて来れなかった……今もそうだ……君達を守ると言っておきながら、私は奴に傷を付ける事すら出来ず、君達に助けられて、君は二度も傷付いて……私は、結局誰も守れていなかった……」

 

 

零「…………」

 

 

姫「……この契約の儀は、契約した人間を自分と共に歩む者として認め、契約者の立てた誓いの為にその力を振るうと決意する物でもある……だが私は、誰ともそんな契約を立てる気なんてなかった……そんな物は必要ないと、私が皆を守らなきゃいけないと……そんな使命感に突き動かされて……意地を張ってただけなんだ……」

 

 

姫は顔を俯かせたまま、唇を噛み締めて後悔するように呟き、零に向けて深く頭を下げた。

 

 

姫「だが今の私には、奴に勝つどころか対等に戦う事すら出来ないっ……だから頼む!君の力をっ……私に貸してくれっ……!」

 

 

零「……咲夜……」

 

 

姫「身勝手だとは分かってる……自分勝手な頼みだと分かってる……だけど気付いたんだ……私独りなんかが、何もかも出来る訳じゃない……私の力なんて、無力に均しいのだと……」

 

 

零「…………」

 

 

姫「私の全ての力を、君が自由に使ってもいいっ……この戦いが終わるまででもいい……皆と……君と一緒に戦わせて欲しいんだ……もう誰かが傷付くのも……それを見てるだけなのも……もう嫌なんだっ……」

 

 

……つまり、自分との契約に同意して一緒に戦わせて欲しいというわけか。零は無表情のまま必死に頭を下げながら頼み込む姫の姿を見つめ、暫く何かを考えるように瞳を伏せると、薄い息を吐いた。

 

 

零「―――悪いが……俺は神の力なんていらない」

 

 

姫「っ…………」

 

 

返ってきたのは、予想通りの答えだった。頭上から聞こえてきたその声に、姫は頭を下げたまま諦め気味に瞼を強くつむった。

 

 

零「俺はそんな物に興味はない。ましてや、そんな力を扱えるだなんて思ってもいないからな……だから……」

 

 

―スッ……―

 

 

姫「…………ぇ?」

 

 

目の前に何かを差し出された。姫は下げていた頭を上げてそれを見ると、それは右手……零が自分の右手を差し出してきていた。

 

 

零「―――全部なんていらない……ただ、俺が守りたいと思う人達を守れるだけの……お前の力を……少しだけ貸してくれ」

 

 

姫「ッ!……零……?」

 

 

お前の力を少しだけ貸して欲しい。そう告げた零に姫は驚いたように息を呑み、零はそんな姫の様子に苦笑を浮かべた。

 

 

零「予想外だったか?だが言った筈だろう?俺はお前を傍で支えると……そんな事を言ったからには後に引けんし、お前の傍から離れる訳にもいかんだろう……ちょっと目を離した隙に、またアホなボケをかましてアズサに悪影響を与えてもらっても困る。それを考えれば、契約とやらをしてお前を傍に置かせておいた方が俺も安心出来る」

 

 

姫「……ははは。成る程、君らしいな……」

 

 

零「それが俺だからな……それに命を助けてもらったからには、その借りはちゃんと返すさ……」

 

 

彼女のお陰で命を取り留め、因子の暴走も未然に防げた。その借りを返さねばと頬を掻きながらそう呟く零を見て姫は思わず笑みをこぼしてしまうが、すぐさま不安げな顔に変わって零を見上げていく。

 

 

姫「――だが、本当にいいのか?私は……疫病神だぞ……?」

 

 

零「それはこっちの台詞だ。俺の方こそ、世界を破壊する悪魔……破壊者だぞ?」

 

 

そう言いながら、零は不安げな姫に向けて再び右手を伸ばした。手の平を上に、不敵な笑みを浮かべながら―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零「――どうする神様……悪魔と相乗りする勇気……あるか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――まるで、『お前こそついてこれるか?』とでも言うように、真っすぐな瞳でそう告げた。

 

 

そんな彼からの問いに姫は僅かに目を見開き、青年を巻き込んでしまった負い目やこれからのことに対する不安が一瞬で消し飛んだ。

 

 

彼は自分と共に歩むことに迷いや恐怖もない。寧ろ、そんな感情を抱いてる自分に対して『いいのか?』と問いかけている。

 

 

これでは立場が逆ではないかと、手を差し延べてくる青年に姫は無意識に笑みを浮かべ……

 

 

姫「――あぁ……望むところっ!」

 

 

パシィッ!と、甲高い音と共に青年の手を力強く掴み取り、それと同時に辺りがまばゆい光に包まれていった――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――頑張って……零………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

―シュパアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!!!!!―

 

 

その一方、方舟のブリッジでは零と姫を中心に眩い光りが放たれ、ディエンドやフォーティンブラスは余りの眩しさに腕で顔を隠していた。

 

 

ディエンド『ッ!この光りはっ……!』

 

 

『グウゥッ!!あやつめっ、遂に血迷ったか?!』

 

 

二人から放たれる光を見てディエンドは何か心当たりがあるように呟き、フォーティンブラスが険しい表情で眩い光に包まれる二人を睨みつけながら舌打ちしていた。そして二人から放たれていた光が徐々に薄れて消えていき、光の中心点に立つ人物の姿が見え始めていく。その人物とは……

 

 

 

 

 

 

 

 

ディケイド?『…………』

 

 

 

 

 

 

 

 

ディエンド『ッ!零……?』

 

 

 

 

 

 

 

そう、光の中から姿を現した人物は零でも姫でもなく、零が変身したディケイドだったのだ。しかしその姿はディエンドが知る物ではなく、ボディは白と桜色を基礎にシャープに変化し、瞳の色は赤。右腕には桜色の籠手が装着され、背中には三対の白い羽根が生えており、身体全体からは気のような物が溢れている。

 

 

ディエンド『?あの気は……まさか神氣……?』

 

 

『ッ!桜ノ神っ、貴様ァッ!!!』

 

 

ディエンドがディケイドの身体から溢れる気が神氣だと気付いて訝しげな表情を浮かべる中、フォーティンブラスは尋常じゃない殺気を放ちながらディケイドを睨みつけていた。だがディケイドはそんな殺気をものともせず、ゆっくりと右手を前に出してフォーティンブラスに人差し指を向けながら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ディケイド?『――幻魔神・フォーティンブラス……さぁ!』

 

 

咲夜『此処で散らせろ!!』

 

 

『お前の華(いのち)をッッ!!!!』

 

 

―バシュウウゥッッ!!!ドグオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオンッッ!!!!!!!!―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ディケイドともう一つの声……ディケイドの中に居る咲夜が声を重ねて決め台詞を叫ぶと共に、姿を変えたディケイド……『ディケイド・アマテラスフォーム』の背中に生えた六枚の白い羽根が強大なオーラを放ちながら大きく展開され、ブリッジ内に巨大な皹を入れていったのだった……

 

 

 

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