仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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第一章/ライダー大戦①

 

 

―機動六課・ロビー―

 

 

──管理局所属、古代遺物管理部の機動課第六部隊。通称『機動六課』

 

 

それは嘗て、地球での闇の書事件に関わったとされる八神 はやてが設立し、数ヶ月前に発生したジェイル・スカリエッティ事件(通称JS事件)を終息へと導く貢献を果たしたとして、ミッドチルダではそれなりに名が知れ渡っている部隊の名だ。

 

 

しかし、あくまで試験的に設立・運用された部隊であり、当初から決まっていた1年という運用期間が間近に迫っている為、現在部隊内は局員達が撤去作業と次の部隊先への引っ越しに追われ中々多忙な日々に追われていた。そんな中……

 

 

「──ん…………んんっ…………あ、れ…………わた、し…………?」

 

 

ロビーの一角のデスク。机の上に山のように積まれた書類に囲まれながら、デスクの上に突っ伏して眠っていた栗色の髪をサイドポニーに結んだ女性……この機動六課の部隊の一つであるスターズの隊長を務め、管理局内でもエース・オブ・エースとしてその名が広く知れ渡っている"高町 なのは"が頬を伝う涙の感覚から目を覚まし、寝惚けた目を擦りながら辺りを見回した後、頭を抑え溜め息と共に項垂れてしまう。

 

 

なのは(あっちゃー……いつの間にか眠っちゃってたかぁ……昨日も遅くまで作業してたから、きっと疲れが残ってたんだっ……)

 

 

やってしまったと、なのはは思わず両手で顔を覆って軽く落ち込んでしまう。もうすぐこの機動六課とも別れ、教え子達も次の部隊で頑張る為に残された日々を訓練に費やしているというのに、教導官の自分がこれでは示しが付かな過ぎる。

 

 

なのは「あーもうだめだめ、しっかりしなきゃっ……って、アレ……?私、なんで泣いて……?」

 

 

きっと大きな事件が終わったばかりで気が抜けているんだと、自分に喝を入れようと両頬をペちペち叩こうとするが、其処で漸く自分の頬に痕が残る涙の存在に気付き、なのはは困惑を露わに涙の線が残る頬を拭った手をジッと見つめていく。

 

 

なのは(……そういえば、夢の中で変な光景を見てたような……アレって一体……?)

 

 

見た事もない様々な仮面の戦士達が何かと戦い、倒されていくという凄惨な夢。

 

 

そして、最後に現れた謎の仮面の戦士。

 

 

今でも鮮明に思い出せる先程の夢を思い出し、なのはは涙を拭った掌を見つめながら目を細めた。

 

 

なのは「ディケイド……何でそう呼んだんだろう……私……」

 

 

何故自分があの仮面の戦士の名前を知っているのか分からない。何処かで見た覚えがあるのだろうかと過去に自分が関わった事件の記憶などを思い返してみても、やはりディケイドという名に覚えはない。

 

 

そもそも結局、あの夢は一体何だったのか?もしや働き過ぎのあまり自分の身体が夢となって訴え掛けている無意識な警告なのではと、夢の内容に身に覚えが無さ過ぎるあまりそんな不安まで覚え始めていた、そんな時……

 

 

 

 

―……せって……!―

 

 

―で……が……!―

 

 

なのは「……?何だろ……?玄関の方が騒がしい?」

 

 

 

 

謎の夢について考え込んでたその時、何やらロビーの入り口の方から騒々しい声が響き、気になったなのははデスクから立ち上がって玄関の方へと向かっていく。

 

 

その道中、何故か作業中にも関わらず足を止めて遠巻きにロビー入り口の方を見つめてざわめく局員達の姿が多く見られ、頭上に疑問符を浮かべながら入り口の方に向かい彼らの視線の先を追うと、其処には……

 

 

「──いいから!早くあの男を出せって言ってるんだっ!」

 

 

「此処で働いてるって本人の口から直接聞いてるんだからっ!いないハズがないでしょっ?!」

 

 

「で、ですからそれは……!」

 

 

──ロビーの受付カウンターに大勢の一般人が押し寄せ、口々にクレームを口にしながら応答する局員に迫る光景があった。

 

 

なのは「な、何この騒ぎっ?どうなってるの?!」

 

 

「あ、な、なのはさん丁度良かったっ……!実は──!」

 

 

「どうもこうもないですよっ!アンタ等のとこの局員さんが撮った写真、何なんですかコレッ!」

 

 

なのは「しゃ、写真……?」

 

 

いきなり何の話だ?と、まだ頭が覚醒し切ってないが為に理解が及ばず一瞬困惑してしまうなのはだが、彼等が揃って手にしてる写真を目にした直後に段々と頭が冴え始め、「まさか……!」と、誰かが置いたと思われる受付カウンターの上の"見慣れた写真"を手にして見て、やっぱりかと項垂れてしまった。

 

 

なのは「……あ、あの、皆さんもしかして、全員同じ人に写真を撮られましたか……?黒髪で、目が真赤い、無愛想な……」

 

 

「そうだよっ!その人に町中でいきなり声掛けられて、『写真一枚どうですかー?』って言われてっ!」

 

 

「あの管理局のエースが撮る写真ならと喜んでモデル引き受けて、言われた通り此処まで取りに来たのにっ!何なのよこの写真っ?!」

 

 

腹ただしげにそう言いながら女性がなのはに突き付けるのは、"彼"が撮った数枚の写真。

 

 

しかし、その写真は何故かどれも酷く歪んでいてモデルになっている女性の顔が上手く撮れていない。

 

 

単純に下手というレベルではなく、中にはグニャリとアメ細工のように顔が歪んでるなど、最早不気味さすら感じる出来だ。

 

 

その最早見慣れた写真を見て間違いないと確信し、聞けば他の人達が持参した写真も同じようにまとなモノが一つもないらしい。

 

 

そうして彼等から一通り話を聞いたなのはは頭痛の走る頭を手で抑えて深々と溜め息を吐くと、受付カウンターの上の一角に束になって置かれてる『黒月零への苦情(クレーム)届』と書かれた書類を手馴れた手付きで一枚手に取り彼らの前に差し出した。

 

 

なのは「……取りあえず、彼への苦情のある方は名前と住所を筆記して受付の彼女に届け出て下さい……。彼の方は私が連れて、後で皆さんのご自宅に直接お伺いして謝罪をさせますので」

 

 

「そんなの待ってられるかよっ!」

 

 

「良いからあの男出せよっ!こっちは写真撮る時に金払ってんだっ!なのにこんな不出来なもん出されたんじゃ、一言文句言わないと気が済まないってのっ!」

 

 

なのは「申し訳ありません、生憎黒月一等空尉は只今休暇で外出中でして……ですがご安心下さい♪黒月の方は私が

 

 

か な ら ず

 

 

見つけ出し次第、皆さんの下にお連れして謝罪させますので♪」

 

 

「……え……あ、はい……わかりました……」

 

 

(ありゃー……なのはさんがまたお怒りだよ……こりゃ今日も零さん、血を見るな……)

 

 

(ついこの間も別件でやらかして、廊下で正座させられた上に首からプラカードぶら下げてなかったっけ……なんて書かれてたか忘れちゃったけど……)

 

 

(八神部隊長とフェイトさんが本局に出向中なのが唯一の救いかなぁ……前にあの三人相手に絞られた後、流石の零さんも死んだような顔になってたし……)

 

 

なのはの応対の内容に納得が行かず怒り心頭な様子の市民達だったが、彼ら以上の怒りの炎を背後に燃えたぎらせるなのはの素晴らしい笑顔の威圧感に気圧されて震え上がる彼らの姿を目にし、局員達は揃ってこれから地獄が待つであろう"彼"の身を案じて内心静かに合掌していくのであった。

 

 

 

 

 

◇◇◆

 

 

 

 

 

―自然公園―

 

 

ミッドチルダ中央区画にある、とある自然公園。綺麗な噴水や自然、様々な遊具などを取り揃えてる事からお年寄りから子供までの憩いの場としてそれなりに人気のあるその場所にて、傍らにマゼンタと黒の派手めのバイクを停め、一人の青年が芝生の上で片膝を着きながら風景を撮影する姿があった。

 

 

首から下げたピンク色の二眼のレフカメラのファインダーを真赤い瞳で覗き込み、青年が気に入った風景にレンズを向けてシャッターを切ろうと指に力を込めた、其処へ……

 

 

「──やっと見付けたぞっ!」

 

 

「……?」

 

 

背後から不意に怒鳴り声が聞こえ、怪訝な顔でファインダーから顔を上げた青年が振り返る。

 

 

其処には何やら強面の厳つい二人組の男達がズンズンッと公園の入り口の方から怒りを露わにした足取りで歩み寄って来る姿があり、青年の前に立つと共に男の一人が一枚の写真……六課に押し寄せたクレーム客が持参していたのと同じ、光が酷く歪んでまともに撮れていないピンボケ写真を取り出し突き付けた。

 

 

「六課って所にもいやしねぇから探したぞっ!何なんだこの写真っ?!」

 

 

「俺の『全てを撮ってやる』とか自信満々に言って人に金まで払わせといて、それで出来たのがこんなトンデモ写真かっ!?ふざけんなっ!」

 

 

ピンボケ写真の件に加え、彼を探す為に此処まで足を運ばされた事で余計に熱が入っているのか、怒り心頭な様子の男達。

 

 

しかし当の本人……"黒月 零"は男達が突き出す写真を真顔でジーッと見つめた後、男の一人の手から写真を手に取りあからさまに肩を落とした。

 

 

零「あー……また駄目だったか……やっぱ一朝一夕でそう簡単に上手くなる筈もないわな……」

 

 

「『また』?『やっぱり』?オメーやっぱまともに撮る気なんかなかったんじゃっ……!―ガバッ!―……あれ?」

 

 

溜め息混じりにガッカリした様子で自分の写真を眺める零に男の一人が思わず掴み掛かろうとするが、軽い身のこなしで避けられた上、男の手にいつの間にか一枚の茶封筒……零が男達から写真撮影の際に受け取った料金が握られており、何が起きたのか分からず困惑する男を余所に零が軽い口調で口を開く。

 

 

零「受け取った料金ならその封筒の中に全額入ってる。他にも金を取られた奴がいるんなら、六課の届け出に名前と住所を書いといてくれ。受け取った料金はいつでも返せるようにそのまま残してあるから、後で俺が個人で全員に返して回っておくよ」

 

 

「は、はあっ?ふざけんなっ!其処は先ず謝罪が先だろうがっ!」

 

 

零「ウン?謝罪、と言われてもなぁ……生憎、それが今の俺の自信作である事に違いはないんだ。出来が気に入らないという意見も分かるが、それも含めて"俺"でもあるし、実際に悪いとも思っていないのに心にも無い謝罪をするなんて俺には出来ん。まぁ代わりにと言ったらアレだが、次にまた変な勧誘や詐欺にでも遭った時に今回の事を思い出すといいぞ。その程度の価値はある教訓にはなっただろ?」

 

 

「んなっ……!こ、こんの野郎っ……!「待て」……えっ、あ、兄貴っ?」

 

 

悪びれる所か寧ろ開き直り、微笑を浮かべて飄々とそんな傍若無人な発言を口にする零に男の一人が再び憤って掴み掛かろうとするが、兄貴と呼ばれた男がそれを制止し、弟分の手から奪い取った茶封筒の中の料金を確認していく。

 

 

「……確かに払った金は全部入ってんな……しかし解せねぇ。目的が金儲けでもねえなら、この前の事件を解決した管理局のエーユー様がこんな事して、何でわざわざ市民様のお怒りを買うような真似してんだ?」

 

 

零「……またそれか……取りあえず、その英雄呼びは止めてくれ。実際にこの前の事件の解決に貢献したのはなのは達……機動六課のメンバーや、次元航行隊を率いたハラオウン提督とその部下だ。俺はただ自分の仕事を全うしただけに過ぎん」

 

 

兄貴分の男の英雄呼びにあからさまに嫌そうな顔を浮かべながらそう訂正しつつ、零はトイカメラのレンズを調整し、適当な風景を撮影しながら改めて男の質問に答えていく。

 

 

零「別に、何か大した理由があるって訳でもないさ。かれこれコイツで写真を撮り続けて……5、6年?くらい経つが、どれだけ撮っても何故かいつもそんな感じで一向に上手くならなくてな……最初は自分でも不出来な写真だとは思ってたが、此処まで来ると逆に愛着も湧いてきて『まあこんなもんだろう』と漠然と受け入れるようになってた」

 

 

カシャッ!と、そんな零の話の合間にもシャッター音が何度も鳴り響き、男達の方にもレンズを向けようとするも、彼の写真の出来を知っている男達は慌ててレンズから逃げるように両端に避けた。

 

 

零「……ただ最近、少しだけ普通の写真を撮りたいって欲が沸いてきたもんでな……。其処で一つ考え付いて、人から金を貰って撮るとなれば『これは失敗出来ない!』と自ずと何時もより気合が入って今度こそ上手く撮れるんじゃないか……などと考えた訳なんだが、その目論見も外れたみたいでなぁ……」

 

 

「なんだそりゃ……」

 

 

「ようするに何の意味もねえって事じゃねぇかよっ!ったく、こっちにまで無駄な時間使わせやがってっ!」

 

 

零「オイオイ、そう簡単に何でもかんでも無駄と決め付けるなんてあまりに早計だろう?例えば俺なんかは今回の一件で、自分の写真の腕前がそう簡単に上がる事はないと分かった。そっちは今後遭うかもしれない詐欺被害のシュミレーションが出来た。な?物は考えようって奴だ」

 

 

「仮にも公務員の台詞とは思えねぇ暴論だな、オイ……」

 

 

あまりに酷い開き直りように至極真っ当過ぎるツッコミを入れてしまう兄貴分の男。しかしやはりと言うべきか零は気にする素振りもなく、二眼のレフカメラのファインダーから顔を上げて溜め息を漏らし、

 

 

零「大体本当の無駄っていうのは、今後使われるかも分からないモノに力も時間も労力も注ぎ込むって事だ。それで言えば有名なエースオブエースなんて見てみろ?アイツ、未だに胸の脂肪が無駄に増え続けてると来たもんだ。今後何かに使う機会があるかも分からんというのに、あれこそこれ以上増やして何の意味があるというのか」

 

 

「ふーん……誰の何が無駄って?」

 

 

零「現在進行形で増え続けるお前の胸の脂肪以外に何があるってんだ?まぁ、お前に限らずフェイトやはやても似たようなもんだし、昔からそんな感じだったから今更って気もしなくもな、い……が…………」

 

 

全くなぁ、などと後ろ首を摩りながら自分の幼馴染組の身体的特徴の一部分をdisるという、下手をしなくてもセクハラ間違い無しの発言をする零だが、其処で漸く、自分の今の発言を拾ったのが目の前の男達ではない事、同時に今の声に滅茶苦茶聞き覚えがある事に気付いて固まり、今の声がした方へとギギギギィッ……と錆びれたロボットのようにぎこちなく振り返った。其処には……

 

 

 

 

 

なのは「──そっかぁー……私の胸ってそんなに無駄なんだぁー……なるほどなぁー……貴重な意見をありがとうねー?零くぅーん♪」

 

 

 

 

 

──局員の制服の上に外出用のコートを羽織り、後ろ腰に両手を組んだ高町なのはが、これ以上ないほどニコニコの笑顔を浮かべていつの間にか佇んでいる姿があったのだった。

 

 

……無論、その背後には轟々と燃え盛る赤い業火と巨大な般若の幻影が浮かび上がり、心做しか声のトーンがいつもより低く感じられた。

 

 

零「………………………………………………………あの…………いつからこちらに居らしていたので…………?」

 

 

なのは「んー?うーん、そうだなぁ……『謝罪、と言われてもなぁ……』……の辺りぐらいからかなぁー?」

 

 

零「……ああ、そんな前から……成る程……因みに、何故こちらにおいでになられたのか聞くのは野暮……というヤツでしょーか……?」

 

 

なのは「そうだねぇー、理由なら寧ろ零君の方が一番分かってると思うかなぁー♪」

 

 

零「…………ソウカー…………」

 

 

顔こそ何時もの見慣れた笑顔に見えるが、額にはビキィッとしっかり怒りの血管マークが浮かび上がっているのが目に見えて分かる。

 

 

それに気付いた無表情の零の額から一筋の汗が伝い、一度なのはに背を向けて深呼吸をし、一気に空気を吐いたあと……

 

 

 

 

 

ドバァッ!!と地を蹴り上げ勢いよく公園の入り口に向けダッシュする零だが、それを先に読んでいたかのように、歴戦のアメフト部員も顔負けのなのはの見事な腰タックルが炸裂し地面に抑え込まれていった。

 

 

零「ぬぅゥおおおおおおおおおおッッ!!!?しまったぁァああああああああああッッ!!!!」

 

 

なのは「犯人確保ぉおおおおーーーーッ!!大人しく観念しなさぁああああーーーーいぃッ!!!」

 

 

「なっ……何なんだこりゃっ……?」

 

 

「さ、さぁ……」

 

 

なのは「あっ、そちらのお二人も零君の写真の被害に遭われた方々ですねっ?ちょっと待ってて下さいっ!今から少し締め上げて大人しくさせた後に必ず頭を下げさせて謝罪させますからっ!!」

 

 

零「いだだだだだだだだだだだだだだだっっ!!!!な、何が"少し"だ嘘を吐けぇええええっっ!!!!今のコレも完全に私怨が入ってるだろうがぁああっっ!!!!あっ、待てっ、極まってるっっ!!!!今完全に極まってるそれ以上腕は曲がらんっっ!!!!グア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ッッッッ?!!!!」

 

 

ギギギギギギギギギィッ!!と、これ以上ないほど見事に決まったなのはの腕挫十字固から逃れる事が叶わず悲痛な叫びが公園中に響き渡り、こうして愚か者は正義の公務員の御用となったのであった。

 

 

 

 

 


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