仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
番外編/堕血水
―???の世界・謎の建造物内研究室―
終夜率いる組織が隠れ家とする巨大建造物内の研究室。薄暗い闇の向こうには、不気味な輝きを放つ無数の生態ポットが存在し、その中にはある物の姿があった。それは……
『……………』
異世界のライダー達を幾度となく苦しめてきた怪人達……グロンギ、アンノウン、ミラーモンスター、オルフェノク、アンデッド、魔化魍、ワーム、イマジン、ファンガイアが生態ポットの中に存在していたのだ。更に他のポットには、光の世界の怪人であるGワームや煌一の世界の怪人であるガルギリア、宗介の世界の怪人である邪神など外史の世界のライダー達の怪人も混じっていた。
綾「……さて、そろそろ始めましょうか……」
そんな怪人達が入った生態ポットの目の前に立つ女性……組織内の開発部である綾は生態ポットをガラッと眺めると、目の前に現れた電子モニターを手慣れた手つきで操作し始めていく。その時……
『グ……ググッ……グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァ!!』
生態ポットに入った怪人達から突如膨大なエネルギーが流れ、怪人達から流れたエネルギーは生態ポットに繋げられたラインを通り、その先にある透明な液体の入った一つのビーカーへと流れ着いていった。そしてビーカーの中の液体がエネルギーが流れた影響で徐々に紅く染まっていき、それを見た綾はビーカーを手に取り紅い液体の出来を確かめていく。
綾「……今回もなんとか、上手くいきましたね」
紅い液体の出来を確かめた綾は満足げに頷き、ビーカーに入った紅い液体を別の容器へと移し替えていく。そんな時……
―プシュウゥゥゥ……―
裕司「――綾、堕血水(おちみず)の開発はどうだ?」
研究室の自動ドアが開き、其処から組織のNo.3である裕司が室内へと足を踏み入れてきた。
綾「順調ですよ。今も一つ完成したところです」
部屋に入ってきた裕司にそう言いながら、綾は移し終えた容器に入った紅い液体を軽く揺らしていき、それを見た裕司は無言で頷いて怪人達が入った生態ポットへと視線を向けた。
裕司「以前NXカブトの世界のカイルが送ってきたGワームが加わったことで、何とか堕血水の開発も順調に乗り始めたな」
綾「ええ。最近では他の世界の怪人達も加わり始めたので、以前のような失敗を繰り返す事も殆どなくなりましたから」
そう言いながら綾は容器に入った紅い液体を目を細くさせながら眺め、裕司も生態ポットに入った怪人達に一体一体目を向けていきながら言葉を紡いだ。
裕司「そうだな……特に、最初の投与の時の失敗はまずかったからな……流石は神水の力と言うべきか」
綾「そうですね……No.0がお与えになったアルテマの欠片……当初はアレを液体化させた『神水』を人間の体に投与する事で、欠片に残されていた僅かな神氣を人間でも扱えるようにするという内容でしたが……」
裕司「ああ……神水を投与された実験体が神氣に耐え切れず死亡し、実験は失敗に終わった……人間がそう易々と神の力を扱える筈がないという結果だけを残して……」
その時の事を思い出したのか、苦痛に満ちた顔で生態ポットを睨みつける裕司。綾はそんな裕司の隣に立ち、生態ポットに入った怪人達を見つめていく。
綾「ですが、私達が戦う敵の中には神の力を保有している者達もいるし、因子の力とも対等に渡り合うには欠片の力が必要不可欠となる……だから……」
裕司「……様々な怪人達の持つ生態エネルギーで神水を濁し、人間の身体に対する拒絶反応を和らげる事で、始めて欠片の力を保有出来るようになった……それが真也達の扱う『羅刹』」
綾「しかも怪人達の力まで取り組み、そのお陰で真也さんはオルフェノクにしか扱えない地のベルトを人間のままで扱えるようになれた……でも……人間の身体に対する負荷までは取り除けなかった……」
裕司「あぁ……綺麗だった筈の水をわざわざ汚して濁し、それを人間に飲ませたような物だ……人間の身体に害を及ばさない訳がない……」
裕司は悲しげな声で呟く綾にそう答えながら自分の手を見つめ、拳を作るように手の平を握り締めた。
裕司「……まあ、その事について今更どうこう言っても仕方がない……綾、薬は出来てるか?」
綾「あ、はい。こちらに」
綾は裕司の言葉に頷き返しながら近くのデスクへ歩み寄って引き出しを開き、中から何かが入った小さな袋を取り出し裕司へと差し出した。
綾「これが裕司さんの分の安定薬です……力の暴走を防ぐ為にも、必ず毎日飲んで下さいね?」
裕司「あぁ、何度言われずともそうするさ……」
裕司は綾から差し出された袋をゆっくりと手に取り、スーツの懐に仕舞って綾から背を向け、そのまま何も言わずに部屋から出ていこうとする。だが……
綾「――あの、裕司さん……」
裕司「……?」
不意に綾が恐る恐ると裕司を呼び止め、呼び止められた裕司は訝しげな顔で綾の方へと振り返った。
綾「その……前々から思ってたんですが……ホントにこのままで良いんでしょうか……」
裕司「……どういう意味だ?」
綾の言葉の意味が分からず裕司は険しい表情で聞き返し、綾は気まずそうに目を逸らして生態ポットを見つめた。
綾「……いくら薬で暴走を防いでも、あの力が皆さんの命を削ってる事に変わりはありません……このまま力を使い続ければ、いずれ皆さんは……」
裕司「…………」
最後まで言葉を紡ぐ事なく、暗い表情で顔を俯かせる綾。そんな綾を見た裕司は綾から目を外し、紅い液体の入った容器を見つめながらゆっくりと口を開いた。
裕司「前にも言ったはずだ……そんな物は承知の上だと」
綾「それも分かってます、皆さんが自分の望みの為に命を張ってる事も……ですが……」
裕司「納得し切れないか?だがそういうお前も、叶えたい望みがあるから此処にいるんじゃないのか?」
綾「それ……は……」
裕司に言われ、綾は思わず自身の左腕を片手で押さえた。だがその左腕は生身の人間の腕ではなく、銀色に輝く鋼鉄……機械の左腕となっていた。その腕を見た裕司は険しげに眉を寄せ、綾から背を向けて部屋の扉を見据えた。
裕司「全てを捨てる覚悟で此処まで来たのだ。俺達は自分の望みを叶える為なら、命を捨てる覚悟だってある……この道は外道の道……引き返す事も立ち止まる事も許されない道だ……」
それだけ言い残すと、裕司はそのまま部屋を後にして王座の間へと向かっていった。そして綾は裕司の背中を無言で見送ると、目の前に立ち並ぶ生態ポットへと目を向けた。
綾「……そうですね……こんな物を造ってる時点で、私も同罪ですよね……」
小さな呟きが闇に包まれる部屋に響き渡る。そうして綾は椅子に座ってデスクと向き合い、次の堕血水と薬を量産する為に作業を続けていくのであった。