仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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番外編/アズサ、はじめてのおつかい⑤

 

 

―???―

 

 

暗闇に包まれた暗い空間。無限の闇が広がるこの世界の中心には一人の少女……先程YMO-104号と戦っていたアズサが俯伏せに倒れる姿があり、アズサは徐に目を開き呆然と目の前の光景を見つめた。

 

 

 

アズサ「……?此処……は……」

 

 

重たい瞼を開き、目覚めたアズサが真っ先に目にしたのは、何処までも続く闇。その光景を朧げな意識で目の当たりにしたアズサは頭上に疑問符を浮かべ、ゆっくりと起き上がりながら辺りを見渡していく。

 

 

アズサ「?私……確かさっきまで……『漸くお目覚め?』……ッ!」

 

 

事態が掴めず小首を傾げていると、背後から突然声が聞こえてきた。それを聞いて思わず振り返ると、其処には一人の少女……アズサと容姿が酷似した金色の眼の少女が立っており、アズサはその少女を見て小さく呟いた。

 

 

アズサ「アス……ハ……?」

 

 

アスハ『全く、相変わらず馬鹿やってるわね、アンタは』

 

 

アズサに酷似した容姿を持つ少女……アスハはそう言いながら呆れるように溜め息を吐き、アズサはそんなアスハを見て辺りを見渡し始める。

 

 

アズサ「もしかして此処は……私の心の中……?」

 

 

アスハ『そっ。アンタはあのデカブツに押し潰されて気絶し、アンタの意識はそのショックで此処に来たって訳よ。じゃなきゃ、私もこうしてアンタと向き合うなんて出来る筈ないし』

 

 

アズサ「……そうだったんだ……」

 

 

アスハの言葉で自分の推測が正しいと理解したアズサは辺りを見渡すのを止め、アスハはアズサの顔を見つめて溜め息を吐いた。

 

 

アスハ『にしても、アンタってホントに常識外れよね?どうして子供のおつかい程度で此処までやるのやら……』

 

 

アズサ「……だって、どうせ買うなら取りに行った方が金銭的にも良いし……」

 

 

アスハ『私から言わせれば、取りに行くより買った方が断然楽よ。何で芋なんか取る為にあんな化け物と戦わなきゃなんないわけ?めんどくさいったらありゃしないわ』

 

 

一体何を考えてるのやらと、ウンザリした様子で肩を竦めながら愚痴を零すアスハ。そんなアスハの様子にアズサもシュンッと落ち込むように顔を俯かせてしまい、アスハはそれを横目で見て頭をガシガシと掻きながら深い溜め息を吐いた。

 

 

アスハ『ったく、しょーがないわね……アズサ?ちょっとアンタの身体貸しなさい』

 

 

アズサ「……?どうして?」

 

 

アスハ『どうせアンタだけじゃあのデカブツ叩くのは無理でしょ?それにアイツは生半可な攻撃じゃ倒れない……私ならアイツを倒せるし、手伝ってあげるって言ってるの』

 

 

アズサ「……でも、これは私が頼まれたおつかいだし……」

 

 

アスハ『なら問題ないじゃない。私はアンタ、アンタは私なんだから……それにあんまり遅いと、零が夕飯の準備が出来なくて困るわよ?それでもいいの?』

 

 

アズサ「…………」

 

 

確かにこれ以上時間を掛ければ零は何時まで経っても夕飯が作れず困ってしまうし、他の皆にも迷惑を掛けてしまう。それだけは避けなければと、アズサは考え込むように俯かせていた顔を上げて……

 

 

アズサ「――わかった……お願いしてもいい……?」

 

 

アスハ『良いわよ。それに私も暴れたくて仕方なかったから、肩慣らしには丁度いいしね』

 

 

アズサ「……もしかして、それが目的……?」

 

 

アスハ『さーてね?じゃ、ちょっと行ってくるわ』

 

 

小首を傾げて問い掛けるアズサに対しそう告げると、アスハは背を向けながら手を振って歩き出し、それと同時に暗闇の世界が白光に包まれていったのだった。

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

―ケロロの世界・荒れ地―

 

 

『イモオォォォォォ……』

 

 

その頃、落下の衝撃で作り出された巨大なクレーターの中心では、アンジュルグを踏み潰したままYMO-104号が触手を再生させながら寛いでいた。そんな時……

 

 

 

 

 

 

―……ゴゴッ……ゴゴゴゴゴゴゴッ……!!!―

 

 

『……ッ?!イ、イモオォッ?!』

 

 

 

 

突如、YMO-104号の巨体が真下にいる何者かによって徐々に持ち上げられ始めたのだ。突然の事態にYMO-104号も動揺して戸惑う中、YMO-104号を持ち上げる人物……シュロウガは片手だけでYMO-104号を押し上げ、そして……

 

 

シュロウガ『ハアァァァァ……ソラァッ!!』

 

 

―ブオォンッ!!ドシャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッ!!!!!!―

 

 

『イ、イモオォォォォォォォォォォォォォォオッ?!!!』

 

 

シュロウガはとてつもない腕力でYMO-104号の巨体を軽々と投げ飛ばし、YMO-104号はそのまま地面を削るように滑って吹っ飛ばされていったのだった。そしてシュロウガは肩を軽く回すと、ゆっくりとYMO-104号へと近づいていく。

 

 

シュロウガ『全く、そんなデカイ図体で人様を踏み付けないでくれる?ぺしゃんこになったらどうしてくれんのよ?』

 

 

『イ、モオォォ……イモオオオオオオォォォォォォッ!!』

 

 

悠然とした態度で語りかけるシュロウガの言葉にも耳を貸さず、先程のお返しと言わんばかりに無数の触手を一斉に放つYMO-104号。それに対しシュロウガは軽く息を吐くと……

 

 

シュロウガ『――フンッ!』

 

 

―ズザアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッ!!―

 

 

『ッ?!!』

 

 

片腕をたった一振り、それだけで全ての触手達を斬り払っていったのだ。思わぬ展開にYMO-104号も動揺し、シュロウガは振るった手を握ったり開いたりを繰り返し調子を確かめていた。

 

 

シュロウガ『へえ……初めて使うにしては、私の身体にしっかりと馴染むじゃない……流石は私専用に作られたシステムね……』

 

 

身体の調子を確かめ終えると、シュロウガは未だ動揺した様子でこちらを見つめるYMO-104号に視線を向け微かに笑みを浮かべた。

 

 

シュロウガ『さあて、それじゃあ始めましょうか……第二ラウンドをねッ!』

 

 

 

 

―フッ………―

 

 

 

 

「………イモ………?」

 

 

 

 

―ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガァッ!!―

 

 

 

 

「イモアァァァァァァァァァァァァァアァッ?!」

 

 

 

突然視界からシュロウガが消えたと思いきや、シュロウガは相手の懐に入り見えない程のスピードで無数のパンチを打ち込んでいったのだ。更にYMO-104号を蹴り上げて上空へと飛ばし、瞬時に先回りして地上へと叩き付けると同時に膝蹴りを叩き込むと、シュロウガは一度距離を開いて右拳を頭上に掲げ、拳の中に剣を出現させた。

 

 

シュロウガ『シュロウガよ…闇を抱き、光を砕け…』

 

 

そう呟きながら拳の中に現れた剣を抜き取っていくと、まるで血のように流れる黒いオーラを右手に纏い、手の平を頭上に掲げて黒いオーラを撃ち放った。そうして放たれた黒いオーラはシュロウガの上空で漆黒の魔法陣を形成し、シュロウガはそれを確認すると抜き取った剣を消して魔法陣へと飛び立った。

 

 

シュロウガ『転神よ、シュロウガ!!』

 

 

高らかな叫びと共にシュロウガは魔法陣を突き抜けていき、その直後、シュロウガの身体は漆黒の鳥のような姿へと変化し、そのまま猛スピードで地面に倒れるYMO-104号へと接近し……

 

 

シュロウガ『堕落なさい!無限獄へ!!』

 

 

―バシュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥウッ!!!―

 

 

『ッ?!!!!』

 

 

YMO-104号へと突撃すると共に、YMO-104号の周囲が白いドーム状の謎の空間に包まれていったのだ。いきなり出現した謎の空間にYMO-104号も困惑していると……

 

 

 

 

―……ジジッ……ジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジィッ!!!!―

 

 

『ッ?!!!イ、イモオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォオッッ?!!!!』

 

 

 

 

突如、YMO-104号の思考に膨大な"何か"が流れ出したのだ。思考を蝕まれていくような感覚にYMO-104号は触手を辺りに叩き付けながらもがき苦しみ、それと共に何処からか高笑いが響き渡った。

 

 

シュロウガ『ははははははははははははははは!!!罪魂を欲し!!貪り!!!そして、自らの魂まで喰い尽くせえええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!!!!』

 

 

『イ、イモアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァアァッ?!!!!』

 

 

ブチブチブチと、頭の中でなにかがちぎれていくような感覚に断末魔に近い絶叫を上げるYMO-104号。それに呼応するかのように白いドームが黒く、そして血のように真っ赤に染まり切ると共に人型に戻ったシュロウガがドームを突き破って地上に着地し……

 

 

 

 

シュロウガ『……フッ……堕ちてみるのも……心地好い物よ……』

 

 

 

 

―ドッガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッ!!!!!―

 

 

 

 

自嘲するように笑みを零すと共に、シュロウガの背後でドーム状の空間が巨大な爆発を巻き起こし吹き飛んでいったのだった。そしてシュロウガが構えを解いてゆっくりとドームが爆破した場所へ振り向くと、其処にはYMO-104号が地面に倒れる姿があった。

 

 

シュロウガ『終わったか…案外簡単に片付いたわね』

 

 

ふぅ、と軽く溜め息を吐きながらそう呟くと、シュロウガはおもむろにベルトを外して変身を解きアスハへ戻り、すぐにアズサに身体を返しアズサの中へと引っ込んだ。

 

 

そして身体の所有権を取り戻したアズサは自分の身体を見下ろして負傷がないか確認すると、地面に倒れるYMO-104号の下へと歩み寄り、自分の中にいるアスハに呼び掛けた。

 

 

アズサ「ありがとうアスハ……これでおつかい、完遂出来た……」

 

 

アスハ『良いわよ別に……んで?どうやってそのデカブツ運ぶ気なの?一部だけ切り取って持って帰るとか?』

 

 

まあ普通ならそうするだろうけど、と付け足しながら語るアスハだが、アズサはそれに対し首を横に振った。

 

 

アズサ「そんなもったいない事しない……全部持っていく……」

 

 

アスハ『………は?って、アンタ馬鹿じゃないの?!これ丸ごと持っていく?!こんなの持って帰ったら皆驚くわよ?!』

 

 

アズサ「大丈夫……全部は持って帰らない……平行世界の皆に少しずつおすそ分けして量を減らしながら、持って帰る……」

 

 

アスハ『出来るか馬鹿!!こんなデカブツあっちこち担いでいったら大騒ぎになんでしょうが?!』

 

 

アズサ「そんな事もあろうかと……」

 

 

と、何故かいきなり自分のポケットに手を突っ込んでゴソゴソと漁り……

 

 

アズサ「ちゃららちゃっちゃっちゃ~……ミラージュコロイドバリアー……これを付けると透明化し、周りからも見えなくなるんだよの〇太くん……」

 

 

アスハ『誰よのび〇くんって……』

 

 

アズサ「?この前ヴィヴィオと一緒に見た猫型ロボットの――」

 

 

アスハ『別に説明求めてないから!!ってかどっから持って来たのよソレ?!明らかにアンタの持ち物じゃないでしょ?!』

 

 

アズサ「ん…此処にくる前にクルルから貰った…」

 

 

アスハ『アイツか……また余計な物をっ……って待ちなさいアンタ、なに無言でバリア張り付けてんの?本気で持って帰る気?!馬鹿止めなさい!!非常識にも程があんでしょ?!ちょ、やめ、止めろっつってんでしょ無視すんなやゴラァァああああああああああああああああああっっ!!!」

 

 

いつの間にかアンジュルグに変身し、バリアで透明化させたYMO-104号を何処からか取り出したロープで繋ぐアズサを必死に止めようと試みるアスハ。だがその努力も虚しく、アンジュルグは平行世界の皆さんにお芋のおすそ分けをするため転移してしまったのであった。

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

数時間後、光写真館前……

 

 

 

零「―――んで、何時まで経っても帰って来ないから探しに行こうと思ったら……何だコレはっ……」

 

 

写真館の前、黒いジャンパーを羽織って出掛けようとしていた黒月零は、目の前の物体を見て険しげにそう言った。そんな彼の目の先には……巨大なニワトリの遺体と巨大な卵達、そして平行世界の皆さんにおすそ分けしたYMO-104号の一部が無造作に転がっており、それを取ってきた張本人であるアズサは零を見上げて一言。

 

 

アズサ「頼まれたもの……取ってきた……」

 

 

零「……いや、取ってきたじゃなくてだな……」

 

 

あまりの衝撃的な光景を目の当たりにして言葉も浮かばず、取りあえず零は一回冷静になろうと額に手を当てながら深呼吸をした。

 

 

零「スー、ハァー……よし……まず聞くが、俺は確か頼んだ物を買って来いと言ったはずだよな?」

 

 

アズサ「?だから、狩ってきた」

 

 

零「字が違うしもう根本的に色々違ってんだろう……というか、どっから取って来たソレ?そのニワトリと卵は……?」

 

 

アズサ「ん……ある世界で突然変異して暴れてたから、退治して貰った……」

 

 

零「平行世界にまで行ったのかいっ……ならその芋は?」

 

 

アズサ「知り合いに協力してもらって取ってきた……でも大き過ぎたから祐輔や翔や稟のところとか、平行世界の知り合い全員におすそ分けしてきた……」

 

 

零「大き過ぎた?……一応聞くが、元々のサイズはどれくらいだ?」

 

 

アズサ「全長30~50メートル」

 

 

零「怪獣っ?!最早普通の狩りですらないだろう?!そんな物を平行世界のあっちこちに引っ張っていったのか?!」

 

 

アズサ「うん、みんな喜んでくれてた。最初は凄く驚いてたけど」

 

 

零「……だろうな……そりゃ驚くだろうな……」

 

 

いきなりそんな馬鹿デカイ芋なんぞ持ってこられたら誰だって驚くだろうさ……。

 

 

あとで芋を貰った皆に詫びの電話を入れなければと、アズサから話を聞いた零は頭を抱えて深い溜め息を吐いていき、アズサはそんな零の反応を見て不安げに眉を寄せた。

 

 

アズサ「もしかして、違った……?」

 

 

零「あぁ、もう色々間違えてるぞ……こんなの一体どうしろと……」

 

 

アズサ「…………」

 

 

零は巨大なニワトリとYMO-104号の一部を交互に見て頭を痛ませていき、それを見たアズサは自身が取ってきた巨大ニワトリ達を見つめ、表情を曇らせた。

 

 

アズサ「―――ごめん……なさい……」

 

 

零「……?いや、まあ別に謝らなくても――」

 

 

アズサ「でも……おつかいちゃんと出来なかった……だから……ごめんなさい……」

 

 

零「…………」

 

 

頼まれたおつかいをちゃんと果たせなかった事を詫びるように、顔を俯かせながら謝罪するアズサ。そんなアズサの顔を横目で見つめ、零は軽く息を吐きながらアズサが取ってきた物を見た。

 

 

零(まぁ、コイツはコイツなりに考えてやったんだろうしな……根本的に色々と間違ってはいるが、コイツの初おつかいにしてはこんな物か……)

 

 

今更此処で嗚呼だこうだと言っても仕方ないし、別にこれだって食えない物でもないだろうと。零は腰に手を当てながら薄い息を吐き、もう片方の手でアズサの頭をポンッと叩いた。

 

 

零「……ま、頼んだモノを持って帰ってきただけでも上出来だ。そう落ち込むな」

 

 

アズサ「……?怒ってないの……?」

 

 

零「別に食べられないワケじゃないんだろう?なら構わんさ……ただ、次からはきちんと店に行って買いに行けよ?もう狩りで取ってくるのは禁止だ。いいな?」

 

 

アズサ「……ん……分かった……」

 

 

零「分かればいい。さっさと手洗ってこい」

 

 

顎で写真館の玄関を指しながらそれだけ告げると、アズサは素直にコクリと頷き写真館の中へと入っていった。そしてアズサの背中を見送った零はヤレヤレと疲れたように溜め息を吐き、地面に転がる巨大な卵を手に取った。

 

 

零「全く、これだけで何人分の親子丼が出来るのやら……爺さんとオットー達の手も借りるか」

 

 

取りあえず夕飯を作って、その後きちんと常識というものを教えなければなと。卵を軽く叩いて苦笑いしながらそう誓う零であった。

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

―光写真館・洗面所―

 

 

そしてその頃、写真館内の洗面所ではアズサが洗面台の前で手洗いをしていた。蛇口から流れる水をジッと見つめながら両手を擦っていると、洗面台の鏡に写るアズサが突然アスハへと変わった。

 

 

アスハ『ほら、だから言ったじゃない。普通に買いに行っておけば良かったのにって』

 

 

アズサ「うん……アスハにも迷惑掛けた……ごめんなさい……」

 

 

アスハ『別に私は構わないけどさ、いい加減慣れてるし』

 

 

今更だしねと言いながら鏡に写るアスハは肩を竦めて溜め息を吐くと、アズサは手の動きを止めてジッと水を眺めながらポツリと語り出した。

 

 

アズサ「だけど……今日のおつかい、少し楽しかった……」

 

 

アスハ『そう?こっちはずっとヒヤヒヤしてばっかで、一時はどうなるかと思ったわよ。特にあのデカ芋の時とか』

 

 

アズサ「うん……でも……こういうおつかいをするなんて、前までの私じゃ考えられなかったから……」

 

 

アスハ『……え?』

 

 

ポツリと呟いたアズサのその言葉にアスハは思わず疑問げに聞き返し、アズサは水で濡れた手の平を見つめながら言葉を続けた。

 

 

アズサ「前の私は……零を殺す為だけに生きてきた。そうする事が私の存在意義だって、あの人に言われてそう思ってたから……」

 

 

アスハ『――そうね、私達……いいえ、アンタは元々その為だけに造られた人間だし……』

 

 

アズサ「うん……でも零に出会ってから、色々変われた気がする。だからアスハには悪いと思うけど、記憶喪失になって良かったって思う……そうじゃなきゃ、こんな風に楽しいって思う事もなかっただろうし……きっと今頃、自分の命を捨ててでも零を倒そうとしただろうから……」

 

 

アスハ『……確かに、昔のアンタならやり兼ねなかったでしょうね』

 

 

昔のアズサの事を知ってるからか、間違いないというように小さく頷くアスハ。

 

 

アズサ「アスハ……私、前より変われたかな?前より人間らしく……なれたかな……?」

 

 

アスハ『……さあね。常識はずれなところがアレだけど……でも――」

 

 

一度言葉を区切り、アスハは穏やかな顔でアズサの目を見つめながら……

 

 

アスハ『――前よりはマシになったんじゃない?今のアンタの顔は……以前よりずっと人間らしくなったし』

 

 

アズサ「……そっか……」

 

 

前より人間らしくなった。そう言われたアズサは言葉では言い表せぬ喜びを感じ、何処か嬉しそうに微笑みを浮かべて鏡に写るアスハを見つめた。そんな時……

 

 

『ぐうっ!おいアズサっ!お前も手伝え!!このニワトリ、俺達だけじゃ運べん!!』

 

 

アズサ「!ん……分かった……」

 

 

玄関から聞こえてきた零の苦しげな声を聞き、アズサはすぐさま濡れた手をタオルで拭いて玄関へと向かっていった。そして鏡に写るアスハはそんなアズサの後ろ姿を見送ると、軽く息を吐いた。

 

 

アスハ『やれやれ……零達がいるから、私はもう必要ないかなって思ったんだけど……これじゃあオチオチ寝てもいられないわね』

 

 

不出来な妹に呆れる姉ような態度で深い溜め息を吐くアスハだが、そんな態度とは裏腹に自然と笑みをこぼしていた。

 

 

アスハ『しょうがない……もう少し手助けしてやりますかね……せめてあの子が一人前になるまでは……』

 

 

写真館の玄関から聞こえるドタバタとした騒音を耳にしながら含み笑い、アスハはゆっくりと鏡の中から姿を消したのであった。

 

 

そしてこの数時間後、アズサが取ってきた食材のお陰で夕飯は豪勢な物となり、大食い組も大いに満足した夕食となった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――因みにこの数日後、以前アズサが退治した巨大ニワトリの子供である巨大ニワトリJr.が親の仇討ちで写真館を強襲し、写真館で暴れ回ったりキバーラを喰ったり、巧みなクチバシ捌きで女性陣の服を裂いたり、零がそれを見て顔を真っ赤にした女性陣に殴り飛ばされたりで大騒ぎになったのは、また別の話である……

 

 

 





アスハ


解説:アズサの心の内に存在するもう一つの人格。かつてアズサが裏世界にいた頃、『生き抜く為に戦う』という強い概念により生まれた存在。


普段はアズサの中から外の世界を見ていたのだが、アズサが記憶喪失になったことでその存在を忘れられ、アズサが記憶を失った間心の奥底で眠りに付いていたが、記憶を取り戻した事により眠りから目覚めた。


性格はアズサに比べて常識を持ち、アズサに欠けてる部分を取って合わせたような性格。瞳の色は金。何処か姉のようにアズサに接する事が多く、常識外れな行動ばかり取るアズサに頭を痛めているらしい。


ちなみにシュロウガは本来、鳴滝が裏世界での特訓を終えたアズサの中に眠るアスハの存在に気付き、彼女もディケイド抹殺に利用しようとアスハ専用に作り出し、シュロウガはアスハ、アンジュルグはアズサ専用のライダーとなる筈だった。


だがアスハがディケイド抹殺に協力的ではなく、更にアズサが記憶喪失になって一時的に人格が統一された事により、二つのライダーシステムは自動的にアズサ専用のライダーシステムと設定された。


シュロウガがアスハ専用に作られた事もあり、シュロウガの最強技であるレイ・バスターはアスハでなければ使用出来ない。その為、レイ・バスター使用時はアスハが表に出て使用する。

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