仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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第十八章/GEAR電童の世界⑮(後編)

 

 

―風見学園・体育館―

 

 

ルルイエ島から発生した闇は既に初音島にまで流れ、初音島の交通機関や各種通信設備などは全て使用不能となっていた。海はデモンゾーア出現に伴い大荒れの状態になって船も出せず、島の外へ逃げることも出来なくなった島の人々は島の至る所にある映画館やホテルといった場所に避難していた。

 

 

そしてその避難所の一つである此処、風見学園の体育館内にもざっと百人以上の人達が避難してきており、それぞれ携帯や小型テレビで現在も生中継されているルルイエ島のライダー達とデモンゾーアの戦いを静かに見守る中、朝倉兄弟もまたその中にいた。

 

 

音夢「兄さん…大丈夫ですか…?もし寒かったら私の毛布も…」

 

 

純一「俺の事なら心配ねえさ…それにしても…ホントに大変な事になっちまったな…」

 

 

首を回して周りを見れば、体育館内は既に大勢の人で埋もれている。体育の授業や昼休みなどで何時も見る体育館と違って重たい空気が流れ、まるで此処が自分の知らない場所のように思えた。音夢は不安げな目で純一を見上げると、両手で包んだホットコーヒーを強く握った。

 

 

音夢「私達…これからどうなっちゃうんでしょうか…もしかしたらこのまま…」

 

 

純一「な、何言ってんだ…大丈夫だって…だって今ルルイエ島じゃ煌一さん達が戦ってんだ。きっとあんな化け物、すぐにぶっ倒して「それは少し難しいかもしれんぞ」……え?」

 

 

不安がる音夢を励まそうとする純一の言葉を遮る様に、背後から突然青年の声が響き渡った。それを聞いた純一が後ろへ振り返ると、其処には純一の悪友である青年……杉並が歩み寄ってくる姿があった。

 

 

純一「す、杉並?お前もこっちに避難して…ってか、今のってどういう意味だよ?」

 

 

杉並「無論そのままの意味だ、My同志朝倉よ…そら、これを見ろ」

 

 

いきなり姿を現した杉並の登場に驚く純一を他所に、杉並は至って深刻な表情のまま持参した小型テレビを朝倉兄妹の目の前に置いた。テレビ画面には他の人々が見ているのと同じ、ルルイエ島の様子がニュースで生中継されており、其処には必死にスペースビーストの群れを食い止めるライダー達と、メフィストの猛攻に追い込まれるボロボロのGEAR電童の姿があった。

 

 

純一「ッ!これって…煌一さん?!」

 

 

音夢「そんな…あの煌一さんが…こんなボロボロに…」

 

 

杉並「それだけではない。こちら(初音島)へ向かおうとする怪物達を食い止めるライダー達も数に圧倒されており…更に、ライダーが一人やられたそうだ…」

 

 

その説明と同時に、テレビ画面が不意に移り変わった。其処にはデモンゾーアの前に敗れて石化という無惨な姿に成り果てたディケイドの姿が映し出されており、それが余計に二人の心に絶望感を与えた。

 

 

杉並「最早、この島が攻め込まれるのも時間の問題だろう…船は海が荒れているせいで出す事が出来ず何処にも…いや、今は世界中にもこの闇が広がってるらしいからな…何処へ逃げても同じかもしれん…」

 

 

音夢「そんな……」

 

 

「……もう……終わりだ……」

 

 

暗い体育館の中で、誰かがボソリとそう言った。純一達はそちらを振り返るが、誰が言ったか分からない。だが所々から、同じような声が幾つも聞こえてくる。

 

 

「もう終わりなんだ…俺達みんな死ぬんだよっ…」

 

 

「仮面ライダーが勝てない相手なんか……もうどうしようもないよ……」

 

 

「人間の敵う相手じゃない……人間なんかが……」

 

 

純一「…………」

 

 

聞こえてくる声は、どれも絶望に染まったものばかりだった。あんな化け物に敵うはずがない、この世界はもう終わりなんだと。弱々しい声を上げる町の人々の言葉を耳に、純一達も何も言えず暗い表情で俯いてしまう。その時……

 

 

 

 

 

 

「――まだ…負けてないもん…」

 

 

音夢「……え……?」

 

 

暗い闇の中から、幼い声が響き渡った。純一達がその声を辿って顔を向けると、其処には母親の傍らで毛布を肩に羽織った幼い男の子が、強い瞳で小型テレビに映るライダー達を見守っていた。

 

 

「負けないよ…僕は前に、あの青い仮面ライダー達に助けてもらったんだ…だから…絶対に負けない…」

 

 

「いや、でも……」

 

 

「放っておけ…所詮子供の戯言だ……「果たしてそうかしら?」……え?」

 

 

闇の向こうから、また別の声が聞こえてきた。自然と何人かの人々が顔を上げてその声が響いてきた方へと振り向くと、其処には体育館の入り口前に立つ一人の人物……脇で絞った半袖のTシャツにボロボロのジーンズ、黒い革製のロングコートという格好をした女性、ユリカ・アルテスタが悠然と立っていた。

 

 

ユリカ「確かに現状は絶望的よ…世界は闇に包まれ、唯一あの怪物に対抗出来る彼等も疲弊して危険な状態だし…ライダーも一人やられたわ……」

 

 

「っ……そうだよ…だからもうっ……」

 

 

改めて今の現状を突き付けられ、人々は絶望の影を落として俯いてしまう。だが……

 

 

ユリカ「確かに諦めたくもなる……くじけたくもなるわよね……けど、此処で諦めて良い訳がない……全てに絶望して、希望を捨ててしまっていい訳ではないわ……」

 

 

純一「……え?」

 

 

その言葉に、純一は思わず顔を上げた。ユリカはそのまま人々の間を歩いて先程の男の子の目の前に立ち、ゆっくりと膝を折って目線を合わせ、男の子の頭の上に右手を置いた。

 

 

ユリカ「こんな小さな子供だって、勝利をまだ信じているのよ?それなのに、何もせずに終わってしまって言い訳がない」

 

 

「…だけど…私達に出来ることなんて…」

 

 

ユリカ「いいえ…あるわ…貴方達に出来る…貴方達にしか出来ないことが」

 

 

純一「……それって、一体……?」

 

 

思わず、純一は無意識の内に声を出して問い掛けていた。その問いを受けたユリカはゆっくりと立ち上がり、瞼を伏せながら語り出した。

 

 

ユリカ「信じる事よ…最後まで希望を捨てず…彼等の勝利を強く、信じ続ける事…」

 

 

「…信じ…続ける…」

 

 

ユリカ「そう…彼等は貴方達が諦めさえしなければ…希望を持ち続けてさえいれば…何度だって立ち上がる事が出来る…何故ならそれが――」

 

 

閉じた瞼を開き、強い意思の篭った瞳で島の人々を見つめ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユリカ「――それが彼等……『仮面ライダー』なのだから……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……っ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉に、絶望で下を向いていた人々が次々と顔を上げていく。

 

 

再びテレビの映像を見つめれば、其処にはボロボロに追い詰められながらも、決して諦めない彼等の姿がある。

 

 

何度傷を負わされようとも、島の人々を守る為に戦い続ける、彼等の姿が……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……がん……ばれ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その姿を見つめる誰かが、そう呟いた。

 

 

「がんばれ……仮面ライダー……!」

 

 

今度はハッキリと紡がれた、彼等に対する声援。

 

 

それを口火に切るように、人々も画面の向こうに映る彼等に向けて叫び出した。

 

 

「頑張れっ……頑張って!仮面ライダーッ!!」

 

 

「お願いっ…負けないでっ!!」

 

 

「勝てる……アンタ達なら、絶対に勝てるッ!!」

 

 

「諦めないでっ!!」

 

 

「仮面ライダーッ!!!」

 

 

音夢「煌一さん…皆さん…!」

 

 

純一「そうだよっ…アンタはこんなことで負ける人間じゃない!だってアンタは、仮面ライダーじゃないか!!」

 

 

杉並「…そうだったな…俺が知る貴方は、どんな絶望にも負けない強い人だった…!!」

 

 

気が付けば、全員がテレビや携帯を手に一斉に立ち上がっていた。

 

 

先程までの絶望感がまるで嘘のように……いや、その絶望を打ち払うだけの力が、まだ彼等の中に残っていたのだ。

 

 

今自分達だけにしか出来ない、必死に戦う彼等に精一杯の思いを伝えるために。

 

 

絶望や恐怖に挫けぬ希望を胸に、自らの足で再び立ち上がり、彼等は叫び続ける。

 

 

全てを滅ぼす闇を前に戦う、戦士達に向けて……

 

 

 

 

 

◇◆◆

 

 

 

 

 

―桜公園―

 

 

巨大な枯れない桜の木。空は既に漆黒の闇に覆い尽くされ、黒い風が桜の木の枝を大きく揺さ振っている。そんな場所に三つの人影…さくら、カリム、シャッハの三人が、まるで神に祈るように手を組んで立つ姿があった。

 

 

さくら「煌一お兄ちゃん…皆っ…」

 

 

カリム「零…翔さん…」

 

 

シャッハ「アズサさん…姫さんっ…」

 

 

枯れない桜に背を向けて、強烈な風を正面から受けながらも、戦地で戦う彼等に向けて祈る三人。

 

 

余り外に長居すれば、いずれデモンゾーアの闇に当てられて即死するか、ライダー達の防衛を抜けたスペースビーストに喰われるかのどちらかしかない。

 

 

だがそれでも、彼女達はただジッと家で待つ事が出来なかった。大切な人達が戦ってる中で、自分達だけが安全な場所にいるなんて、我慢出来なかったのだ。

 

 

さくら「お願い…お婆ちゃん…煌一お兄ちゃん達を…守ってあげてっ…」

 

 

枯れない桜は闇に当てられたせいで、魔力を奪われて願いを叶えるだけの力が残されていない。

 

 

しかしそれでも、彼女達は自然とこの場所に足を運び、こうしてただ祈り続けていた。

 

 

今自分達が出来る事を……精一杯やる為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……な……で……』

 

 

さくら「……え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『負け……いで……!』

 

 

『がん…れ……!』

 

 

カリム「これ、は……?」

 

 

シャッハ「声……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

精一杯祈り続ける彼女達の耳に、ふと微かな声が聞こえたのは。

 

 

まるで風の音のように聞こえてくる一つ一つのそれに、三人は思わず辺りを見渡す。

 

 

その瞬間……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『頑張って仮面ライダーッ!!』

 

 

『仮面ライダーッ!!』

 

 

『負けないでッ!!』

 

 

『頑張れーーッ!!』

 

 

シャッハ「ッ?!これは…!」

 

 

さくら「島の……皆の……皆の声だ……!」

 

 

 

 

今度はハッキリと聞こえた、沢山の声……。

 

 

それはこの島を愛する人々の声。

 

 

絶望の闇を前に希望をなくしていた彼等が、再び立ち上がり、彼女達と同じように戦地で戦う彼等に対する声援だったのだ。

 

 

『お願い立って!もう一度立ち上がってっ!』

 

 

『僕達も諦めない!だから、貴方達も諦めないで!』

 

 

数々の声を聞く度に、三人の顔にも自然と笑顔が浮かび上がる。

 

 

まだ諦めていない……彼等の勝利を信じてくれている人達が、まだこんなにもいるのだと……

 

 

数々の声援を耳に、彼女達は互いに顔を見合わせ、頷き合い、再び手を組んで祈る。

 

 

彼等と共に、戦士達へ声を届ける為に……

 

 

 

 

 

 

 

『負けるなっ!負けないでくれ仮面ライダーッ!』

 

 

『仮面ライダーッ!!』

 

 

シャッハ「翔さん…アズサさん…姫さん…!」

 

 

 

 

 

 

 

 いつかは届く きっと 

 

 

 

 

 

 

 

『頑張れ!頑張れッ!』

 

 

『アンタ達なら勝てるッ!アンタ達は、仮面ライダーなんだからッ!』

 

 

『負けないでッ!』

 

 

 

 

 

 

 

    僕らの声が   

 

 

 

 

 

 

 

『俺達も希望を捨てない!最後まで諦めないッ!』

 

 

『私達も付いてます!だからお願い!勝ってッ!』

 

 

『仮面ライダーッ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 世界を 変えてゆける 

 

 

 

 

 

 

 

『絶対に負けたりしない!だってアンタ達は、俺達の希望なんだ!』

 

 

『だからお願い!負けないで仮面ライダーっ!』

 

 

カリム「皆さん…零…!!」

 

 

 

 

 

 

 

  時代を越えて――  

 

 

 

 

 

 

 

さくら「――負けないで……仮面ライダーっ……」

 

 

 

 

 

 

 

初音島の人々の思いが……希望が……願いが……光となって集い合う……

 

 

そして……

 

 

 

 

 

 

 

―シュウゥゥ……シュパアァァァァァァッ……!!―

 

 

カリム「ッ?!な、なに…?」

 

 

さくら「桜、が…?」

 

 

 

 

 

 

 

最早力を失い掛けていた筈の桜に、無数の光が集い、再び輝き出す。

 

 

花びらの一枚一枚が黄金の光でコーティングされ、さくらも今まで見た事がない美しい輝きを放つ桜。

 

 

そのあまりの美しさに三人が思わず目を奪われる中、桜の木が大きく揺れ動き、金色の光を乗せた優しい風が桜の木から放たれ、再び桜から輝きが失われた。

 

 

だが、金色の風は消える事なく、ルルイエ島に向けて流れていく。

 

 

それはまるで…島の人々の思いを…彼等へと運ぶかのように……

 

 

 

 

 

◇◆◆

 

 

 

 

 

―???―

 

 

姫「ぅ……ぁ……!」

 

 

零「おいっ、おいしっかりしろ咲夜!おいッ!」

 

 

精神世界に閉じ込められてしまった零は、腕の中に抱いた姫に向けて必死に声を荒げていた。何故なら今の姫は、自分の存在を維持するだけの力もほとんど失い掛け、全身から桜色の粒子が溢れ出し今にも消えそうになっていたからだ。

 

 

零(っ!どうするっ…どうしたらいい!このままだと咲夜がっ…!)

 

 

最早一刻の猶予もない。このまま此処にいては、姫は自分の身体を維持する事が出来ず消滅してしまう。

 

 

零(っ……もう…使うしかないっ…!)

 

 

残された手段は、この悪魔の力を使いこのクリスタルを破壊することだけ。今の彼女を救うには、最早この手段しかない。

 

 

決断を迫られた零は唇を噛み締め、心の中で決意し、因子を解放しようと左目のレンズにゆっくりと手を掛けた。その時……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―……シュパアァァァァァァァァァァァァアッ……―

 

 

零「……え……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如闇の向こうから、まばゆく暖かな金色の光が溢れ出し、零達が閉じ込められたクリスタルを包み込んでいったのだ。

 

 

零はそれを見て思わず手を止め、呆然と闇の向こうの光を見つめた。

 

 

其処に見えたのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『仮面ライダーっ!』

 

 

『頑張れ!頑張ってッ!』

 

 

『負けないで!仮面ライダーッ!』

 

 

『仮面ライダーッ!!!』

 

 

零「…………ぁ…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――其処に見えたのは、光と共に駆け寄ってくる、島の人々の姿……

 

 

諦めるな、負けるなと……必死に自分達に声援を送る……彼等の声だった……

 

 

零「……あれ…は……光?……人の……思い……?」

 

 

あの光が何なのか、何故か自然と理解出来た。

 

 

辺りを包み込んでいた闇が、彼等の光で次第に照らされていく。

 

 

それと共に、半ば心の中で諦め掛けていた零の中で何かが再び沸き上がり、光と共に駆け付けてくる彼等に向けて手を翳した。

 

 

その瞬間、それに呼応するかのように零の腰に巻かれていたディケイドライバーとティガメモリが突然金色に輝き出し、そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『GLITTER!DECADE!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高らかな電子音声と共に、ベルトから黄金の光が溢れ出し、その瞬間、まばゆい光が全てを包み込んだ……

 

 

 

 

 

 

 

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