仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

324 / 521
番外編/出会いと家族(後編)

 

睦月麻衣が出会った少女、それは彼女達が標的の一つとして狙っている黒月ヴィヴィオだった。最初は思わぬ出会いに麻衣も内心では戸惑いを隠せなかったが、今はそれも落ち着いて普段通りの無表情になり、現在は成り行きでヴィヴィオと一緒にブランコに腰掛けながら話をしていた。

 

 

麻衣「――そう……貴方のお父さん、今は遠いところに行ってるんだ……」

 

 

ヴィヴィオ「うん……パパ達、今は優矢お兄ちゃんを探しに行ってるんだって……だからまだ帰ってこないの……」

 

 

麻衣「……そうなんだ……」

 

 

ボールを両手で抱き締めながら話すヴィヴィオにそう言って返すと、麻衣は横目でヴィヴィオの横顔を覗き見た。その顔は何処か落ち込んでるように見え、零がいなくなってどれだけ寂しいのか予想出来た。

 

 

麻衣(それだけ懐かれてるって事なんだ……零達は……)

 

 

そう思い、麻衣はヴィヴィオと零達が一緒にいる家族風景を思い浮かべて思わず笑みをこぼした。とその時、麻衣は其処である疑問に気が付き、公園を見渡して頭上に疑問符を浮かべた。

 

 

麻衣「……そういえば……貴方一人?お母さん達は?」

 

 

ヴィヴィオ「?ママ達ならお買い物に行ってるよ」

 

 

麻衣「……じゃあ、此処には貴方一人で来たの?」

 

 

ヴィヴィオ「ううん、一人じゃないよ。ノーヴェ達と一緒。今ジュースを買いに行ってるの」

 

 

麻衣「……そう……」

 

 

一人で遊びに来てるわけではないと聞き、麻衣は安堵の表情を浮かべて公園を見回した。この公園は余りにも人影が少なく、子供一人で遊ばせておくには少々危なく思える。もしも一人で遊んでいたなら家に帰るように促すつもりだったが、付き添いがいるなら大丈夫だろうと考えていると……

 

 

ヴィヴィオ「――そうだ!お姉ちゃん、ヴィヴィオと一緒に遊ばない?」

 

 

麻衣「……え?」

 

 

突然ヴィヴィオがなにかを思い付いたようにブランコから立ち上がり、そう言いながら麻衣にボールを差し出してきた。

 

 

ヴィヴィオ「ノーヴェ達はまだ帰ってこないし、ママ達にも一人は危ないって言われてるし……お姉ちゃんと一緒なら、一人じゃないでしょ?だから、一緒に遊ぼ♪」

 

 

麻衣「え……でも……私は……」

 

 

ヴィヴィオの突然の提案に内心動揺を隠せない麻衣。彼女は知らないが、自分達は彼女を狙う敵対者。命令が出れば、彼女を捕まえて組織に連れていかなければならない人間だ。その事が後ろめたい麻衣はヴィヴィオと一緒に遊ぶ事に気が引いてしまい、そんな麻衣の様子にヴィヴィオも小首を傾げた。

 

 

ヴィヴィオ「ダメ…?もしかして、めいわく?」

 

 

麻衣「……そうじゃないけど……でも、知らない人と遊んだり付いていったりしちゃ駄目って、お母さん達に言われなかった?」

 

 

ヴィヴィオ「?うん、言われてるけど……でも、お姉ちゃんは知らない人じゃないでしょ?」

 

 

麻衣「……え?」

 

 

ヴィヴィオの発言に麻衣は思わず不思議そうに聞き返し、ヴィヴィオも邪気のない笑顔で言葉を続けた。

 

 

ヴィヴィオ「だってヴィヴィオ、さっきお姉ちゃんに名前教えてもらったもん。ヴィヴィオもお姉ちゃんに名前教えてあげたし、お話もしたし、全然知らない人じゃないでしょ?」

 

 

麻衣「…………」

 

 

明るげにそう言い放ったヴィヴィオに麻衣は一瞬呆然となるが、すぐに笑みを浮かべながら顔を俯かせた。

 

 

麻衣(ホント、言ってる事が目茶苦茶……そういう所は父親そっくり……)

 

 

そういえば昔一緒に居た時もこんな感じだったなと、麻衣は懐かしそうに微笑しながらヴィヴィオの顔を見つめた。

 

 

麻衣「……分かった。それじゃあ、貴方の付き添いが戻って来るまでね?」

 

 

ヴィヴィオ「!うんっ♪」

 

 

一緒に遊ぶことを承知してくれた麻衣にヴィヴィオは嬉しそうに笑い、麻衣もそんなヴィヴィオに釣られるように笑みを浮かべると、ブランコから立ち上がってヴィヴィオと一緒に遊び始めたのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◆

 

 

 

 

 

……それから暫く、麻衣とヴィヴィオは様々な遊びをして過ごした。鬼ごっこや達磨さんが転んだにケンケンッパ、ヴィヴィオが持参したボールや縄跳び、たまに公園の遊具を使って遊んだりなど。時間も忘れて遊び続けた二人は、今は一度休憩の為にベンチに座って休んでいた。

 

 

麻衣「凄いねヴィヴィオ……殆ど私の完敗だよ……」

 

 

ヴィヴィオ「えへへ♪でもお姉ちゃんも凄かったよ?特にあの縄跳び、ヴィヴィオより凄く上手だった♪」

 

 

麻衣「フフッ……縄跳びは子供の頃から得意だったからね……」

 

 

お互いの服が若干汚れてることも忘れ、今までの遊びを思い出しながら笑い合う麻衣とヴィヴィオ。

 

 

麻衣(……そういえば……こうやって何かを楽しいって思えたのは、何時以来だろう……)

 

 

『あの時』以来、自分は何かに対し笑う事すら少なくなった。真也や恭平と一緒にいる時から少しずつ笑顔を取り戻せるようになってきたが、こんな風に何かを楽しいと思って笑う事など、今までなかった気がする。『家族』を失った、あの時から……

 

 

ヴィヴィオ「?お姉ちゃん…どうかした?」

 

 

麻衣「!…ううん…なんでもない…」

 

 

どうやら考え込んでいたらしく、麻衣は顔を覗き込んできたヴィヴィオにそう答えて顔を俯かせると、少し間を置いて口を開いた。

 

 

麻衣「ヴィヴィオ……ヴィヴィオは、お父さんとお母さんのこと好き?」

 

 

ヴィヴィオ「?うん、好きだよ♪だってヴィヴィオの『家族』だもん♪」

 

 

麻衣「……そっか……家族だもんね……」

 

 

ヴィヴィオ「うん……お姉ちゃんは?」

 

 

麻衣「え…?」

 

 

ヴィヴィオ「お姉ちゃんは、お姉ちゃんのパパとママのこと好き?」

 

 

麻衣「……私は……」

 

 

ヴィヴィオからの問い掛けに、麻衣は口を閉ざして顔を俯かせた。

 

 

麻衣「―――私も好きだよ……今はもう……会えないけど……」

 

 

ヴィヴィオ「?会え…ない…?」

 

 

不思議そうに聞き返すヴィヴィオ。麻衣はそれに苦笑を浮かべながら、寂しげな表情でポツポツと呟いた。

 

 

麻衣「そう…私のお父さんとお母さんは、もう何処にもいない……死んじゃったの……」

 

 

ヴィヴィオ「……死んだ……」

 

 

麻衣「うん。だからどんなに会いたいと願っても……もういないの……私の家族は……何処にも……」

 

 

ヴィヴィオ「パパとママが……いない……」

 

 

父親と母親がいない。そう聞かされたヴィヴィオはポツリと呟きながら、悲しげな表情を浮かべて顔を俯かせてしまう。

 

 

ヴィヴィオ「じゃあ、お姉ちゃんはひとりぼっちなの?」

 

 

麻衣「ううん……今は一人じゃないよ。友達がいるし……単に、家族って呼べる人がいないだけ……」

 

 

ヴィヴィオ「家族……」

 

 

『家族』という単語を聞き、ヴィヴィオは顔を俯かせたまま難しげな顔を浮かべ始めた。そんなヴィヴィオの様子を見た麻衣は子供に聞かせる話ではなかったと今更になって後悔し、この話題のことを話すのは止めようと口を開こうとした、その時……

 

 

ヴィヴィオ「―――よし、決めたっ!」

 

 

麻衣「……へ?」

 

 

ヴィヴィオは突然声を上げてベンチから立ち上がり、そのまま麻衣の正面に立ち笑顔を浮かべながら……

 

 

ヴィヴィオ「だったらヴィヴィオ、今からお姉ちゃんと『家族』になるっ!」

 

 

麻衣「……え……?」

 

 

無邪気な笑顔でそう告げたヴィヴィオの言葉に、麻衣は思わずポカンとなった。ヴィヴィオはそんな麻衣の顔を見つめながら、両手を胸に当てて口を開いた。

 

 

ヴィヴィオ「あのね?ヴィヴィオも最初は家族がいなかったの……でも、パパやママ達が出来て、ヴィヴィオにも家族が出来た。ひとりぼっちじゃなくなったんだよ?」

 

 

麻衣「…………」

 

 

ヴィヴィオ「んと…だからね?ヴィヴィオがお姉ちゃんの『家族』になれば、お姉ちゃんの『家族』はまだいるって事になるでしょ?そしたらお姉ちゃんもひとりぼっちじゃなくなるから、きっと寂しくなくなるよ♪」

 

 

麻衣「……ヴィヴィオ…」

 

 

明るく笑いながら身振り手振りと必死に説明するヴィヴィオ。恐らく自分を元気づけようとしてるのだろうと、そう考えながら麻衣がジッとヴィヴィオの顔を見つめていると、ヴィヴィオは何かを思い出したようにポケットに手を突っ込んで何かを取り出した。

 

 

ヴィヴィオ「あった……はい、これっ!」

 

 

麻衣「……?」

 

 

ヴィヴィオは取り出した何かを麻衣へと差し出していき、麻衣はそれを見て疑問符を浮かべながら恐る恐る手の平を出すと、手の平の上に何かが置かれた。それは薄ピンク色の輝きを放つ小さな石のカケラであり、まるで半分に割れるように欠けていた。

 

 

麻衣「これ……」

 

 

ヴィヴィオ「さっき其処で拾ったの。ほら、ヴィヴィオも同じの持ってるんだよ♪」

 

 

そう言ってヴィヴィオが手を出すと、ヴィヴィオの手の平には麻衣が持ってる石の欠けた部分と思われる薄ピンクの石があった。

 

 

ヴィヴィオ「コレが『家族の証』♪だからお姉ちゃんは、今からヴィヴィオのお姉ちゃんだからね♪」

 

 

麻衣「…………」

 

 

無邪気に微笑むヴィヴィオの顔を見て、麻衣は手の平に置かれた石のカケラを見た。自分を家族と呼ぶ少女が繋がりの証としてくれた物。多分一時の感情でそう言っているだけで深い意味はないのだろう。だがそれでも、麻衣自身にも思う所があるのか、麻衣は手の平のカケラを何処か力強く握り締めた。その時……

 

 

 

 

 

 

 

『ヴィヴィオーっ!何処にいるッスかぁーっ?!』

 

 

『いませんね……確かこの辺りだった筈ですが……』

 

 

『ったく、公園までの帰り道ぐらいちゃんと覚えとけよなぁ……』

 

 

『なに言ってんスか、そういうノーヴェだってすっかり忘れてたくせにぃ~』

 

 

『誰のせいだっ!飲みもん買いに行くのに道に迷ってあっちこっち連れ回されりゃ、帰り道も訳分からなくなるってのっ!』

 

 

『ま、まあまあ!今はそれよりも早くヴィヴィオを見つけないと……υυ』

 

 

 

 

 

 

 

麻衣「ッ!今の声……」

 

 

ヴィヴィオ「あ、ノーヴェ達だ!」

 

 

遠くから聞こえてきた数人の少女達の声。ヴィヴィオはそれを聞いて声がした方へと振り返り、麻衣もヴィヴィオの視線を追ってその方を見つめた。

 

 

麻衣「今の声、貴方の付き添いの?」

 

 

ヴィヴィオ「うん、そうだよ」

 

 

麻衣「……そっか……それじゃ、私もそろそろ行かないと……」

 

 

今此処で彼女達に会うわけにはいかない。麻衣はそう考えながらベンチから立ち上がり、ヴィヴィオはそれを見て寂しげな表情を浮かべた。

 

 

ヴィヴィオ「お姉ちゃん…行っちゃうの…?」

 

 

麻衣「うん……貴方の付き添いが戻ってくるまでって約束だったし……私もこれからやらなきゃいけない事があるから……」

 

 

ヴィヴィオ「…………」

 

 

別れを惜しんでいるのか、ヴィヴィオは表情を曇らせながら顔を俯かせてしまうが、すぐに顔を振って笑顔を浮かべた。

 

 

ヴィヴィオ「分かった……じゃあ、もしまた会えたら、またヴィヴィオと一緒に遊んでくれる……?」

 

 

麻衣「……それは……」

 

 

期待と不安の篭った目で見上げてくるヴィヴィオに、麻衣は思わず押し黙ってしまう。

 

 

自分は彼女の敵で、彼女は自分達に狙われてる者。

 

 

その事を考えると答えを返すのに戸惑ってしまうが、ヴィヴィオは小さな手で自分の服の裾を掴んで見上げてくる。

 

 

麻衣はそれを見て何かを考えるように一度瞳を伏せると、ヴィヴィオと目線を合わせるように腰を折った。

 

 

麻衣「―――分かった……もし……もしまた会えたら……また一緒に遊ぼ……?」

 

 

ヴィヴィオ「ッ!うんっ♪」

 

 

麻衣のその返答にパアッと表情が明るくなり、それを見た麻衣は複雑そうに笑みを浮かべながら立ち上がった。

 

 

麻衣「じゃあ、私もう行くね……?」

 

 

ヴィヴィオ「うん、また絶対、一緒に遊ぼうね!」

 

 

麻衣「……うん……また……いつか……」

 

 

……叶うかどうかも分からない約束を口に、麻衣は手を振ってそう答えるとヴィヴィオから背中を向け歩き出し、そのまま公園の裏口から外へと出ていったのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◆

 

 

 

 

 

公園を出た後、麻衣は人気のない道路を歩いていた。

 

 

麻衣(……私……何をしてるんだろう……)

 

 

歩みを進める中、今も頭を過ぎるのは先程ヴィヴィオと共に過ごした時間。

 

 

それを思い出した麻衣はふと足を止め、手の平を開き先程ヴィヴィオから家族の証と言って貰った石のカケラを見つめた。

 

 

麻衣(……ヴィヴィオ……はやて……零……私は……)

 

 

自分は彼等の敵。因子とあの子を手に入れ、揺り篭を動かし、自分の生きる未来を作らねばならない。

 

 

そうしなければ、『自分』はまたあの暗闇の中に戻ることになる……今度こそ、『永遠』に。

 

 

麻衣(……私は……)

 

 

静かに瞳を伏せると、頭の中に先程のヴィヴィオの顔が自然と流れ込んでくる。それを思い浮かべた麻衣は複雑な表情を浮かべ、石のカケラを強く握り締め再び歩き出していった。彼女の仲間が待つ場所へと……

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。