仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
―カブトの世界・写真館前―
零「――漸く帰って来れた……というよりも、帰って来てしまったという方が正しいか?」
GEAR電童の世界を後にし、漸くカブトの世界に戻って来れた零の第一声がそれだった。零はげんなりとした様子で写真館を見上げ、翔と優矢は零の両脇に立ちながら同じように写真館を見上げた。
翔「結構長いこと異世界に滞在してたしなぁ……特にNXカブトの世界だけでも一週間以上は居たし」
零「その一週間は幸助の所で寝てただけなんだが……流石に言い訳にはならんか……」
優矢「ま、まぁ、頭下げて謝れば許してもらえるだろう?俺も一緒に謝るんだしυυ」
零「お前はまだ良いだろう、単に巻き込まれただけなんだから。それに一番問題なのは……」
そう言って零はゆっくりとした動作で、背後に顔を向けた。其処には……
アズサ「――此処が、零達の家……?」
シロ『うにゃー?』
姫「ほう、写真館が家とは中々珍しいなぁ」
カリム「此処にはやて達がいるのですね」
シャッハ「そのようですね。しかし、これでどうやって世界を渡るのでしょうか……?」
……其処にはこれから住む事になる写真館を見上げ、各々会話をする四人+一匹の姿があった。零はそんな四人を見つめると、写真館に目を戻し頭を押さえた。
零「……カリムとシャッハはまだ何とかなると思うが……問題はアズサと木ノ花の事をどうやって説明するか……」
優矢「いや、そんなに心配する事ねえだろ?きちんと事情を話せばなのはさん達だって分かって……」
零「突然行方不明になって心配掛けた上に、数人の女を連れてのこのこ帰ってきた男がそんな事で許されると思うか?」
優矢「あ……いや……それは……ねえ……?」
暗い影を落とす零の問い掛けに優矢は若干言い淀みながら翔を見るが、翔は何も言わず気まずそうに明後日の方を向いてしまう。
零「ハァ……まぁ、今さらああだこうだと言ってても意味はないし……観念するしかないか……」
そもそもこうなるんじゃないかって大体予想は付いてたしと、零は諦めたように溜め息を吐きながら写真館の中へと入っていき、翔と優矢も互いに顔を見合わせて苦笑するとアズサ達と共に零の後を追っていった。
◇◆◆
―光写真館・リビング―
そしてその頃、写真館ではなのは達が重苦しい雰囲気を漂わせながらリビングに集まっていた。その理由は勿論、行方不明となってしまった零と優矢の事である。
フェイト「――今日でもう一週間半だね……二人がいなくなってから……」
なのは「そうだね……今は優矢君を探しに行ってるみたいだけど、それもどのぐらい掛かるか……」
はやて「まぁ、翔君も付いとるようやから心配はいらへんと思うけど……零君は零君で無茶しそうやからなぁ……」
寧ろそれが災いして重傷を負ったりしたらどうしようかと、なのは達は絶える事なく溜め息を吐いていく。そんな三人の座るテーブルにチンクが栄次郎が煎れた珈琲を持って近付き、椅子に座って三人に話し掛けた。
チンク「そう溜め息ばかり吐くな。それでは幸せがどんどん逃げていくだけだぞ?」
フェイト「チンク……」
チンク「心配せずとも、黒月はきっと桜川を見つけて戻ってくるだろう。それに今私達に出来ることは何もない。ならば我々は、二人が無事に戻って来るのを信じて待つしかないさ」
チンクは落ち着いた様子でそう言いながら珈琲を口にして飲んでいく。なのは達はそんなチンクの様子を見ると、互いに顔を見合わせ苦笑いを浮かべた。
なのは「そうだね……こうしてたって仕方がないし、普段通りにしよう?普段通りに」
フェイト「うん、だね」
はやて「せやな、よっしゃ!それじゃあ景気付けにお菓子でも作ろうかな~♪」
チンクの励ましが効いたらしく、零達が戻るまで何時も通りに過ごそうと考えたはやてはお菓子でも作ろうとキッチンの奥へ向かい、なのはとフェイトはエリオ達と遊ぶヴィヴィオの様子を見てこようかとテーブルから立ち上がった。その時……
―ガチャッ―
翔「おーい、邪魔するぞ~」
優矢「えぇっと…た、ただいまぁ~?」
フェイト「―――え?翔に……優矢ッ?!!」
『エェッ?!!』
不意にリビングの扉が開き、其処から翔と引き攣った笑みを浮かべる優矢が部屋の中へと入ってきたのだ。一番始めにそれに気付いたフェイトが声を荒げると共に他のメンバーも驚愕し、一斉に優矢へと詰め寄った。
スバル「ゆ、優矢さん?!ホントに優矢さんなの?!」
キャロ「無事だったんですか?!」
優矢「え、あ、うんっ……一応この通りυυ」
フェイト「そ、そっか……良かったぁ……」
なのは「―――あれ?そういえば零君は?一緒じゃないの……?」
翔「ん?ああ、アイツならホレ、其処に……」
優矢の無事を確認して一同が安堵する中、翔はなのはからの問い掛けにそう答えながら扉の方を見た。すると其処には……
―…………ニョキッ―
零「……おぉう……帰ったぞぉ……」
……まるでモグラのように扉から首だけを出し、恐る恐るとした口調で挨拶する零の姿があったのだった。そんな零を見たフェイト達が喜びを露わにして零へと動き出そうとした瞬間、なのはが零へと飛び出し抱き着いていった。
零「ッ?!な…のは…?」
なのは「もうっ……ホントにっ……心配ばっかり掛けてっ!!」
零の胸に埋めた顔を上げ、なのはは目尻に若干涙を浮かべながら大声で怒鳴った。そんななのはから言い知れぬ怒気を感じ取った零は思わずたじろぎ、なのはは零の胸を叩きながら大声を出した。
なのは「いきなりいなくなってっ!皆がどれだけ心配したと思ってるの?!無事なら無事って、何で連絡の一つぐらいくれなかった訳?!」
零「あ、いや、それはその……色々あって出来なかったというか……何と言うか……」
なのは「ッ!ホントにそういうところは横着なんだからっ……それにその傷っ!一体なにっ?!またなんか無茶してきたのっ?!」
ビシィッ!となのはが勢いよく指差したのは、零の頭や頬などに何重にも負かれた包帯だった。それを指摘された零は今さらになって気付いてハッとなり、頬を抑えた。
零「あ、いや、これは別に無茶したという訳では……ないぞ……?」
なのは「ぜっっったい嘘!零君がそんな怪我をするのは絶対に無茶した時だもんっ!そうですよね翔さんっ?!」
翔「えっ俺っ?!あー……まあ……そうかもなぁ……」
零「おい翔ッ?!」
なのは「隠そうとしたって無駄っ!!他はっ?!他に怪我したところはっ?!」
零「い、いや、だから怪我したのはこれだけ―バシッ!―いぃっ?!!!!」
凄まじい怒気を纏いながら詰め寄ってくるなのはに思わず後退りしながらも怪我はこれ以外ないと告げようとするが、いきなり誰かに背中を平手打ちされ、その場に膝を付いて悶絶してしまった。そして零の背中を叩いた人物……はやては腕を組みながら激痛で悶絶する零をジト目で睨んだ。
はやて「ほーう?その様子やと、背中にも傷を負ってそうやなぁ……嘘はあかんと思うで、零君?」
零「ぐうぅぅっ……はやてっ……お前なぁっ……」
フェイト「多分まだあると思うよ?先ず始めに左肩、なのはが抱き着いてちょっと触れた時に一瞬痛そうな顔してたし。それとそっちの右足もそうだよね?若干体重掛けないように右足をちょっと浮かしてるもん」
零「フェイトッ?!」
優矢(すげえ……服の下に隠れて見えない筈の怪我を見抜いたよ……)
翔(流石は幼なじみって所か。いやはや、恐れ入るわ本当に……)
一瞬で零の怪我を見抜いてみせたはやてとフェイトを見て優矢と翔は若干苦笑を浮かべ、零は冷や汗を流しながらジト目で睨んで来るなのは達から逃げるように目を逸らしていた。
すずか「ま、まあでも、零君も優矢君もこうして無事に戻ってきたんだし……このくらいで許してあげよ?υυ」
なのは「駄目!すずかちゃんは甘いよっ!」
はやて「せや!こんな傷だらけになってるって事は、また自分の身体を無視して無茶したってことなんやで?!」
零「いや……だからこれは別に無茶した訳では「無茶に入るのっ!!」ぐぅ……」
間に割って入り反論しようとするも、迫力のある怒号で一喝され押し黙る零。こういう時の彼女達には、何を言っても聞いてくれやしない。ほら、他の奴らなんか余りの恐ろしさに遠くへ避難してるし……
フェイト「それに確か、零は三つの世界を回ってきたって言ってたよね?もしかして、三つの世界全部でも無茶したとか……」
零「……(ギクッ」
なのは「……零君?今何かギクッて言わなかった?」
零「……いや……さあ……多分気のせいだろう……」
フイッと、零はそう言ってなのはから逃げるように明後日の方を向いてしまう。なのははそんな零を見て更に目を細め、零と目線を合わせるようにしゃがみ込んだ。
なのは「正直に言って…?その怪我以外にも、なにか私達に隠し事があるんじゃないの?」
零「……………………」
まるでなにかを見透かすようなその問い掛けに、零は一瞬アズサと姫を救出する際に命を落とし掛けたことを思い出した。しかし零はなのはの目から逃げるように視線を逸らしたまま……
零「別に、そんな物ない」
なのは「本当に?」
零「ない」
なのは「ホントのホントに?」
零「くどい」
なのは「…………」
この怪我以外の無茶なんてしていない。その一点張りを通す零になのはは無言のまま抗議百パーセントの目を零へと向けるが、すぐに深い溜め息を吐いて立ち上がった。
なのは「……分かった……其処まで言うならもう何も聞かない……」
はやて「?!ちょ、なのはちゃん?!」
アッサリ引き下がるなのはにはやては驚愕を隠せず声を上げるが、なのはは呆れたような表情でそっぽ向く零を見つめた。
なのは「これ以上問い詰めたって、きっと何も話してくれないだろうし……本人がないって言うなら、私達はそれを信じるしかないよ」
フェイト「で、でも……」
なのは「二人も知ってるでしょう?零君がこうなった時は、絶対に自分が決めたことを曲げない……だからもうこの話しは止めよう?それに――」
「パパ~!!」
―ガバッ!―
零「っ?!」
まだ納得出来ないといった様子のフェイト達をなのはが宥める中、なのはの背後から一人の少女が飛び出し零の胸の中へと飛び込んでいった。突然のそれに零も思わずバランスを崩しそうになるもすぐに立て直し、胸の中に飛び込んできた物を見下ろした。
零「…ヴィヴィ…オ…?」
ヴィヴィオ「ひぐっ…ぐずっ…うぅっ……」
胸の中に飛び込んできた物の正体、それは零の胸に顔を埋めながら泣きじゃくるヴィヴィオであった。漸く帰ってきてくれた零の胸の中で、ヴィヴィオが今まで我慢していた寂しさを爆発させるように泣き続ける中、なのはは零の前に屈んで微笑した。
なのは「一番零君に会いたがってたのは、ヴィヴィオだもんね……零君がいなくなってから、ずっと寂しいの我慢していい子にしてたんだよ?」
零「……そう……だったのか……」
なのはから話を聞き、零は未だ胸の中で泣きじゃくるヴィヴィオの頭の上に手を置いて表情を曇らせた。
零「……すまん……お前等やヴィヴィオにも、迷惑掛けてばかりで……」
なのは「そう思うのなら、この埋め合わせはちゃんとすること。特にヴィヴィオには……ね?」
零「あぁ……本当に、すまなかった……」
なのは「ん、よろしい……それと―――」
頭を下げて謝罪する零を見なのははて静かに頷くと、ゆっくりと立ち上がって零に右手を伸ばしていく。
なのは「――まだちゃんと言ってなかったよね?……おかえり……」
零「……っ!」
穏やかに微笑みながらそう言って、なのはは零の前に右手を差し出した。それを見た零は差し出された右手となのはの顔を交互に見つめ、頬を何度か掻くと……
零「――ただい……ま……」
照れくさそうにぎこちない口調でそう返し、顔を逸らしながらなのはの手を静かに握っていったのだった。