仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
―王宮内・???の自室―
大輝「…………っ……………………ぅ…………」
時刻は早朝。夜が明けた空には清々しいほどの青空が広がり、朝を知らせるように小鳥の囀りが聞こえてくる。庭では王宮の兵士達が早朝訓練を行っている為、野太い男達の掛け声が響き渡ってきていた。
そして王宮内に存在するとある一室では、備え付けの豪勢なベッドで横たわっていた大輝が窓から差し込む朝日の光に当てられ、瞼を開いて目を覚ました。
大輝「…………此処…………は…………」
目覚めて直ぐな為に意識が朧げで、まだ意識が完全に覚醒していないまま視点を動かし、辺りを見回していく大輝。
大輝「……何処だ……此処は……」
最初に思った疑問を思わずポツリと口にしてしまった。どうやら何処かの部屋のようだが、何故自分がこんな場所にいるのか分からない。確か昨日、兵士達から逃げる為に王宮の屋上から泉に飛び降りた筈なんだがと、頭の中で今までの事を思い出しながら身体を起こそうとした。その時……
「――あ、気がつきましたか?」
大輝「……っ?!」
不意に真横から自分以外の人間の声が聞こえた。その声が脳に到達すると同時に意識が完全に覚醒し、大輝はバッ!と咄嗟に上体を起こして腰に収めたディエンドライバーに手を伸ばしながら声が聞こえた方へと振り返った。其処には……
「あっ?!だ、駄目ですよ起きたりしたら!まだ寝てないと?!」
大輝(……?女……?)
其処には、青と白の洋風のドレスを身に纏い、純白の髪を持った女性が洗面所と思われる場所から水の入った桶を持って出てくる姿があったのだ。そんな女性を見た大輝は疑問符を浮かべながら腰に収めていたディエンドライバーから手を離すが、女性はそれに気付かず慌てて大輝に駆け寄っていく。
「ほら、早く横になって下さい!軽い怪我は治療出来ましたけど、他の所は私の魔法じゃ治しきれなかったんですから!」
大輝「……治療?」
女性の言葉に大輝は不可解といった顔で小首を傾げるが、ふと自分の身体に白い包帯が巻かれていることに気づいた。
大輝「……もしかして、君が俺を此処まで運んで傷の手当てをしてくれたのか?」
「へ?あ、はい……昨晩、貴方が王宮の泉の側で倒れてるのを見付けて、それで怪我をしていたみたいだから治療しようと思って……あの、ご迷惑でしたか?」
大輝「……別に。まあ一応感謝はするよ……それで、此処は一体何処なんだ?」
「?あ、えっと……此処は私の自室ですよ?」
大輝「?君の部屋?」
「はい。えぇっと、もう少し詳しく説明すると……レデグレア王宮の中にある私の部屋ですね」
大輝「?!王宮の中…?」
レデグレア王宮の中にある自分の部屋。そう言われて大輝は思わず部屋の中を見回していく。室内の造りは豪華で、家具や化粧台等も一目で一級品の品だと分かるような物ばかりが並んでいる。これら全てが目の前の彼女の所有物だとすると……
大輝「……もう一つ質問があるんだけど……君は何者だ?」
「え?あ、そう言えば自己紹介がまだでしたね。私はシュレリア……シュレリア・リ・レイディアントと申します」
大輝(……?シュレリア・リ・レイディアント?)
自己紹介でシュレリアと名乗った女性の名前を聞き、その名に聞き覚えを感じた大輝は顔を少し俯かせると、何かを思い出したような表情を浮かべた。
大輝(シュレリア・リ・レイディアントって言えば、確かこの世界の大国であるレイディアントの聖女じゃなかったか?)
レイディアントと言うのはこのレデグレアと並ぶ大国の一つで、かつてこの世界を救った聖女を讃える平和主義国家であり、シュレリア・リ・レイディアントと言えばレイディアント国王の一人娘、そして聖女の生まれ変わりとも呼ばれている王女だった筈だ。
そんな彼女が、何故レデグレアの王宮にいるのだろうか?
大輝(同姓同名って訳じゃないだろうし、なんでその聖女様がレデグレアに……ま、別にどうでもいいか)
謎は残るが、自分には関係ないしどうでもいい話だ。そう思いながら軽く溜め息を吐くと、大輝は近くに掛けてあった革ジャンを手に取って羽織り、ベッドから立ち上がった。
シュレリア「ッ!ちょっ、駄目ですってば?!まだ寝てないと傷が……!」
大輝「別にこれぐらいどうだってないさ。それよりも大事な用があるから、君に世話されている暇はないんだよ……じゃあね」
シュレリア「え……って!ま、待って下さい?!そっちは!」
軽く手を振りながら部屋から出ていこうとする大輝を呼び止めるシュレリアだが、大輝はそれに構わず部屋の扉に近づいていき、もう一度エレメンタルストーンが保管されてある部屋に向かおうと扉のドアノブを掴んだ。が……
―バチィッ!!!―
大輝「……っ?!」
扉のドアノブを掴んだ瞬間、突然体中に痺れのような物が全身を駆け巡り、大輝は咄嗟にドアノブから手を離して右手を抑えた。今のは何だ?と疑問が隠せず扉に目を向けると、扉全体に何やら不可視の結界のような物が張られている事に気付き、シュレリアは慌てて大輝に駆け寄っていく。
シュレリア「ほら!だから言ったじゃないですか!その扉には今、侵入者対策の為に結界が張られているんです!」
大輝「っ……結界?」
シュレリア「兵士から聞いた話ですけど、昨晩王宮に賊……まあ泥棒さんが盗みに入ったみたいなんですが、どうやら王宮の中で取り逃がしてしまったらしいんです……それで王宮の中にまだ泥棒さんが潜んでいるかもしれないからと、泥棒さんが捕まるまで外出を禁止すると言って……」
大輝「……なるほど。それでこの結界を張って、君をこの部屋に閉じ込めた訳か……」
シュレリアから話を聞き、結界について理解した大輝はそう言葉を紡ぎながら扉を見つめた。
見たところ、どうやらこれはかなりの高等魔法の部類に入る結界らしい。
しかもさっき触れてみて分かったが、どうやらこれには反射能力まであるらしく、ドライバーを使って破壊を試みようとしても反射される可能性が高い。
破壊は不可能ではないが、無傷では無理そうだと判断した大輝は扉から背を向け、そのままシュレリアの横を通りすぎてバルコニーへと向かっていく。
シュレリア「?ど、何処に行くんですか?」
大輝「決まってるだろう?扉から出るのが無理なら、こっちから出ていくだけさ」
シュレリア「へ?……ま、待って下さい?!駄目ですそっちは……!」
バルコニーから外に出ようとする大輝に再び静止の言葉を投げ掛けるシュレリアだが、大輝はまたそれを無視してバルコニーへと出ていくが……
―ブオォォォォォォ……―
大輝「…………………………………………は?」
バルコニーに出た瞬間、大輝はバルコニーの周りに張られている円形型の結界を見てピタリと止まってしまったのであった。するとシュレリアが後ろから走り寄ってきて苦笑いを浮かべ、若干言い難そうに口を開いた。
シュレリア「あの、えっと……こちらの方にも、外からの侵入を防ぐ為に結界が張られてまして……外に出る事は本当に不可能なんです……」
大輝「………………」
背後で語るシュレリアの言葉を聞いて大輝は頭を抱えたい衝動に駆られながら溜め息を吐き、そのまま部屋へと戻ってベッドに腰を下ろした。
大輝「入口もバルコニーも外からの侵入を封じられ、中の人間が外に出る事も出来ないか……驚いたよ。君、かなり大事に扱われているようだね?」
シュレリア「あ、いえ、そんな……すみません……私のせいで、貴方まで一緒に閉じ込められる事になってしまって……」
大輝「ホントだよ……悪いと思うならどうにかしてくれないか?俺は君と一緒にこんなところに閉じ込められるのは御免なんだが」
シュレリア「……すみません……こればっかりは、私の力じゃどうする事も出来なくて……」
大輝「…………」
つまり、怪我を負う覚悟で結界を破壊する以外でこの部屋から出る事は不可能という訳だ。申し訳なさそうに謝るシュレリアを見てそう理解した大輝は深い溜め息を吐き、それを見たシュレリアは慌てて両手を振りながら口を開いた。
シュレリア「でっ、でも、ずっとこのままって訳じゃないですよ?兵士達の話だと、あと二週間経てば外に出られるって言ってましたし」
大輝「二週間?……それはつまり、俺に二週間も此処にいろって事かい?」
あからさまに嫌そうな顔で聞き返す大輝。ただでさえ自分は此処へ盗みに入っている上に、王宮内では今も兵士達が自分を探しているのだ。
そんな場所に二週間も滞在していれば捕まる可能性が大だし、なにより目の前の女に自分の正体がバレれば兵士達に突き出される可能性もある。そうなる前にさっさとエレメンタルストーンを盗んでトンズラしたいのだが……
シュレリア「だけど、この結界は壊したりすると外に伝わる仕組みになっていて兵士が来てしまいますし、貴方だってまだ怪我が完治していないでしょう?助けた側としても、貴方をこのまま行かせる事は出来ません!」
何やら妙に意気込んだ口調でむん!と胸を張りながら腰に両手を当てるシュレリア。そんな彼女の姿に大輝は「まためんどくさい奴に助けられたなぁ……」と胸の内で昨日の失敗を後悔していたりする。
シュレリア「あ、でも安心して下さい!ちゃんと怪我が治るまで私が看病しますし、泥棒さんを兵士に突き出すような真似もしませんから!」
大輝「別にそんなこと心配してるんじゃないんだけど……………って、ん?」
シュレリアの言葉に呆れながら聞き流しかけた大輝だが、今の会話の中で何かが引っ掛かった。
……"泥棒さんを兵士に突き出すような真似もしません?"
大輝「……………ちょっと質問なんだけどさ…………君、俺が何者なのか分かってる?」
シュレリア「……?だから、泥棒さんですよね?今王宮の兵士が必死に探している」
大輝「………………」
こちらの質問に対し、シュレリアはキョトンとした顔で小首を傾げながら不思議そうに聞き返してきた
……この女、まさかアホか?
シュレリア「あれ?もしかして違いました?王宮じゃ見掛けない格好してるし、泥棒さんは貴方が倒れてた近くの泉に飛び込んで行方不明になったって兵士達が言っていたから、てっきりそうなんじゃないかと……」
大輝「……いや、別に間違ってはいないけど……」
シュレリア「あ、やっぱり合ってましたか?私、こういう予想とかして当てるの結構得意なんですよー♪」
ヤッター♪とシュレリアは両手でパチパチと拍手しながら自分の予想が当たった事を喜んでいる。
……間違いない、この女アホだ。
大輝「……一つ聞いていいかい?普通そういうのって、気付いたらすぐ兵士達に知らせたりする物じゃないのか?」
シュレリア「?どうしてですか?」
大輝「どうしてって……俺、泥棒だよ?お宝を盗もうとした見ず知らずの犯罪者を匿うなんて、普通はそんなこと考えないと思うけど?」
それが常識だろう?と自分が言えた事ではないことを言いながらシュレリアから視線を逸らす大輝。しかしシュレリアはそんな大輝の言葉に首を傾げながら……
シュレリア「だって、泥棒さん怪我してるでしょう?そんな人を兵士に突き出すなんて出来ませんし、それにもし捕まってしまえば、処刑は免れません……自分が助けた人間をみすみす見殺しにするなんて、そんなの出来る筈ないじゃないですか」
大輝「…………」
真っすぐな視線で大輝の目を見つめながらそう告げたシュレリア。それを聞いた大輝は思わず呆れるように溜め息を吐いた。
大輝「大した奴だね、君は……そんな理由で俺を匿うのかい?見つかれば、君も共犯者として捕まるかもしれないのに?」
シュレリア「その時はその時ですよ……自分が助けた命は、責任を持って守り通す……死んだ母にそう教えられたんです。だから私も助けた側として、例え犯罪者でも、責任を持って泥棒さんをお助けします♪」
大輝「…………」
ニパッと子供のような笑顔を向けながらそんなことを語るシュレリア。
対して大輝は「本当にそんな理由で助けるつもりなのか?」とまだ信じられず、険しげにシュレリアを見つめていくが、其処で少し考えてみる。
大輝(……だが良く考えてみれば、コレは都合がいいかもしれないな。またわざわざ王宮内に潜入する手間が省けるし、此処は何重にも結界が張り巡らされてるから兵士も安全だと思って近づかないはず……それに彼女のことは不審な動きがないか見張っていれば問題はないだろうし、いざって時は人質として利用出来る……ある意味では、お宝を手に入れるチャンスかもね)
思考を巡らませ、この状況やシュレリアが自分の目的に利用出来ると判断した大輝はシュレリアに視線を戻して……
大輝「……良いだろう。君が其処まで言うなら、俺も一先ず君の世話になろう。正直、看病してくれる人間が居てくれるのはこちらとしても助かる」
シュレリア「ッ!はい!任せて下さい♪」
大輝に信用されたと思って嬉しいのか、シュレリアは両手でガッツポーズを取りながら妙に意気込み、大輝に近づいて右手を差し延べた。
シュレリア「それじゃあ、二週間の間だけですけど、よろしくお願いしますね。えっと……あ、そういえば貴方の名前は?」
大輝「……さあね……ま、適当に呼んでくれれば良いよ……」
シュレリア「そうですか……では泥棒さん、よろしくお願いします♪」
そう言いながらシュレリアは大輝に右手を伸ばすが、大輝は伸ばされた手を見た後興味がないといった様子でベッドに寝転がって反対側に寝返りを打ち、それを見たシュレリアは「もしかして照れ屋なのかな?」と小首を傾げていた。
怪盗と王女、妙な組み合わせで始まった二人の生活。
外に出られる日まで、あと二週間……